やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。 作:武田ひんげん
帰りのHRの時間にうちのクラスでは文化祭のことについて話し合っていた。
「では、文化祭の実行委員を最初に決めたい思います。男女一人づつなので、立候補する人は挙手をおねがいします」
前にたってクラス委員の男子生徒がそういうと、大抵は目を逸らしたりしていた。
その中で俺はゆっくりと手を挙げた。
…クラスの中が異様な雰囲気になる。なんであいつが?とかびっくりしたとか、あいつ誰だよ的なコソコソ声までバッチリ聞こえてきた。
「え、えーと…ひ、ひきたにくんでいいのかな?手を挙げたということは、そういうことでいいのかな?」
「ひきがやだけど、そういうことだ」
名前の読み間違えるなよ。ボッチにはよくあることだな。クラスで関わりを持たないから人々は名前を呼ぶことがない。よって名前を忘れて、もしくは名前を知らないことが多い。ウチのクラスの場合は後者が大多数みたいだけどな。
「えーと、男子は決まったので女子で誰かやってくれる人いませんか?」
女子はなかなか手が上がらない。まあ、男子が俺だからってのもあるだろう。ごめんね俺で。
「あの、誰もいないなら私やります」
そういって手を挙げたのは、クラスでも真面目なキャラで通っている黒縁メガネを掛けた地味な印象の女子生徒、名前は澤口?だったかな?
「あ、では女子の方は澤村さんということでいいですか?」
あ、澤村だったわ。前にたっている委員長がそういうとクラスの全員が頷いた。
「よーし、きまったな。じゃ、文実委員はこのあと放課後に早速会議室に行ってくれ。じゃ、おわるぞー」
先生がそういうと終礼がおわり解散となった。
俺はさっさと会議室に向かった。
――――――――――――
会議室につくと、もうすでに何人かの生徒がいた。会議室の中は入口から見て逆のコの字型になっていた。俺は
その中でも一番端っこの席に座った。
するとその俺の横に澤村さんが座ってきた。
「あ、あの、比企谷君だよね?えーと、よろしくね」
「ああ、よろしく」
簡単な会話を済ませた俺たちにはしばらく無言が続く。すると、俺の目の前に、
「ひゃっはろー比企谷くん!ちゃーんと約束守ってくれたんだねー」
「まあ、あれだけ言われればな」
「えらいえらい。あ、静ちゃんきたよー」
そういうと雪ノ下は俺の隣に座ってきた。
そのタイミングで平塚先生がこの学校の生徒会長の城廻と一緒に会議室に入ってきた。
「お前らこれで全員かー?私が文実担当の平塚だ。よろしくなー」
凛々しい声で言う様はとてもかっこいいと思ってしまった。
「文化祭実行委員会をサポートする城廻です。よろしくおねがいします」
こちらはゆるふわな雰囲気を醸し出していた。この生徒会長はおそらく校内ゆるふわランキングで堂々の一位を取るほどのゆるふわ系女子城廻めぐり。俺たちと同じ3年生で、雪ノ下と並ぶ校内有名人である。
「早速だが、文化祭実行委員長を決めたいと思う。仕事内容としては会議で物事を決めたりする時に中心になってまとめたりすることだ。誰か立候補するやつはいないか?」
平塚先生はそういうとこっちの方を見てくる。正確には雪ノ下を見ているのだろうが。
と、雪ノ下が手を挙げて、
「私がやります」
雪ノ下が凛々しい声でそう言った。その声には迫力がこもっていた。
「実行委員長は雪ノ下てことで異論はないか?……ないな、では実行委員長は雪ノ下ということで決定だ。雪ノ下、前に出て来い」
雪ノ下は前に出てくると、
「文化祭実行委員長になりました雪ノ下陽乃です。皆さんよろしくお願いします」
というと、いつもの完璧な笑顔を浮かべた。
…パチパチパチと、どことなく拍手が起こった。カリスマ性のある人ってこの人の事なんだろうと思った。
「ということで雪ノ下、後はお前と委員達にに任せた。好きなように文化祭を作り上げるといい」
というと平塚先生は、机に座って事務作業らしきものを始めてしまった。
「えーでは、早速文化祭の取り組みについて決めたいと思うけど… ねえ生徒会長ちゃん、毎年スローガンとかから決めてるの?」
「うん、そのとおりだよ」
「じゃ、スローガンから決めて行こっか!なにか、いい案がある人いるかな?」
……誰も手を挙げない。
「うーん、さすがに挙手する人はいないかー。じゃ、私が考えたものを発表してもいいかな?」
そういうと皆が頷いた。
と、雪ノ下はホワイトボードに書き始めた。
「「総武と言えば、踊りと祭り!同じ阿保なら踊らにゃSing a song!!」」
…なんというか、すごいな。これを考えつくのはまたすごいな。
すると生徒会長が
「これでいいと思う人は拍手を〜」
というと、皆は拍手をした。
「では、これで決定です〜。では雪ノ下さん、次の議題
を」
「ありがとね、生徒会長ちゃん。じゃ、次は個々の役割を決めたいと思いまーす」
ということで、役割が振り分けられた。
ちなみに俺は澤村と一緒に記録雑務となった。俺にぴったりの仕事だ。
「比企谷君、よろしくね」
「おう」
この会話さっきもした気がしたんだが。
全員の役割が振り分けられたところで雪ノ下は時計を見ながら、
「じゃ、今日は時間もそろそろ来たしこれでお開きにしたいと思いますー。明日から頑張っていきましょう!では解散!」
と雪ノ下がいうと皆が会議室から出ていきだした。
俺もここから出ていこうとしたら、
「ちょっと比企谷くん、何帰ろうとしてるの?」
雪ノ下に呼び止められた。え?なに?まさかこの後特別棟にいけってことか?
「なんのようだ?俺は帰りたいんだけど?」
「もーいじわるー。わかってるくせに」
うりうりと肘で小突いてきた。…ちょっとはずかしいんですけど。横にいた城廻生徒会長とかぽかんとした顔で見てくるし。
「…今日も集まるのか?」
「そうよ…といいたいけど、集まれそうにないんだよねー。これから文実関係で忙しくなりそうだから」
「なるほどな。わかった、これから文実がある間は集まらないということで。じゃ」
今度こそ帰ろうとしたら、また腕を掴まれて引き止められた。
「…なんだ?」
「あのねー、比企谷くんに頼みがあるんだけど」
「頼み?ロクでもないたのみなら即断るけど」
「大丈夫、そんなんじゃないから。えーとね、君にはこの文実で私の補佐もやって欲しいの」
「…は?」
いやいや、もう俺には役職が与えられてるんですけど。
「その…だめかな?」
え?なんか雪ノ下がか弱い乙女風の雰囲気をだしてる。こいつこんな雰囲気だせるのか?いや、ちがう。きっといつもどおりの演技だ。並の男なら簡単に引っかかるくらいなクオリティーだが、鍛えられた俺は簡単には引っかからないぞ。
「そんな雰囲気出しても無駄だぞ」
「えー冷たーいー。やっぱり比企谷くんには通じないかー」
「だてにお前と絡んでねーよ」
「でも、やってもらいたいんだよ、…本気で」
雪ノ下はさっき委員長に立候補した時みたいな真面目な表情でそう言ってきた。
…さすがの俺でもそんな表情されたら、
「…本気だな?」
「うん」
「…わかった。さすがにそこまで言われたら断れねーよ」
「ありがとー!相変わらず素直じゃないけどねー」
「うっせ。とりあえず、俺は何をすればいいんだ?」
「明日から本格的にスタートだから、今日はかえっていいよー」
「わかった。じゃ」
「うん、また明日ね、比企谷くん」
ということで、俺は文化祭実行委員長補佐になった。
というか、雪ノ下はなぜあんなに文化祭に力を入れるのだろう。
そりゃ、みんな成功とかはさせたいというのはわかる。でも雪ノ下は事前に平塚先生に自ら立候補するほど力を入れていた。
俺はそこに引っ掛かりを覚えていた。
続く
さて12話ですね。
今回からは文化祭編になります。
日本語力不足により描写がわかりづらいところがあるかもしれません。
それから城廻めぐりが登場ですね。設定は変えてますが。
次回投稿は6月26日の17時です。
感想等よろしくおねがいします。