やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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こうして雪ノ下陽乃は比企谷八幡と出会う。

side陽乃

 

夏休みも終わりを迎える頃、私は実家にいた

毎年夏休みはこんなものだ。家の用事でほとんど実家にいる。

私の実家はかなり裕福だ。父は県議員と建設会社社長をしている。

そして母は、とても野心深い人だった。

 

「陽乃、準備は出来た?」

「うん」

 

私は今から父の関係者があつまるパーティーに出席することになっている。毎年こんな感じだ。今も父からお呼びがかかって、出ることになった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

パーティー会場にはいろいろな人達がいる。

県議から父の会社の取引先の人から沢山の人が。

私は小さい頃からこのような場所に連れていかれた。雪ノ下家長女としてこうして表舞台にたっていた私はいつの日か自分に嘘をつくようになった。

本当の自分なんてなんなのかを私は忘れてしまっていた。

だってこの会場にいる人たちはみんな表だけしか見ていない。そこにあるのは表では笑顔を見せていても、裏では様々な陰謀が渦巻いている場所だ。

そんな環境にいたら私もいつの間にかそうなっていたのだ。

私は私自身でも外すことのできない鉄壁の仮面をつけている。そして完璧な笑顔も自然と出るようにまでなっている。

 

と、父が壇上の上にたってしゃべり出した。

 

「みなさま、パーティーに起こしいただきありがとうございます。わたくし共は――――――」

 

父はしゃべり続ける。時折笑顔に、時折真剣な眼差しでしゃべり続けた。

そしてしゃべり終わったあとから私の役目がはじまる。

 

「娘の陽乃です。いつもパーティーにご出席いただきありがとうごさいます」

 

このようなことを今から軽く30回は言う。それが私の役目だ。今までもそうだったし、これからもそうなのだろう。

 

私はいつものように完璧な笑顔を見せて回っていく。

昔から大人達と接してきたのでもう慣れた。仮面もはげない。

 

学校生活でもそうだった。周りの生徒たちは私に近づいてくる。まあ私が醸し出しているカリスマ性によってきているのだが。

私は学校で友人は作るが、その友人たちは表だけの関係だ。私自身そう望んでいるし、彼らもそれで満足だろう。

彼らは私の本心に気づくことはない。表しか見ないのだから当然だ。

 

しかし、そんな中ある先生が私の裏に気づいた。その先生は私に裏があるということに気づいて、その裏を的確に理解している。

今まで私は先生たちにも表しか見られていなかったし見破れなかったと思う。

だけど、その先生、平塚静先生だけは私の裏を見破ることができた。

 

「雪ノ下、私はお前のことをわかっている」

 

なんともストレートな言葉だが、そのときの平塚先生の表情は真剣そのものだった。

私はその時平塚先生は私のことをわかってくれる数少ない人だと理解した。

それから私は、親しみを込めて静ちゃんと読んでいる。最初は嫌がっていたけれども、だんだんそれで通っていった。

それが私が高校二年生の時だった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

それから私と静ちゃんは放課後特別棟にある空き教室で放課後にお話をしていた。

といっても、静ちゃんにも仕事があるので週に一度ほどだが。

静ちゃんは私のことをしっかり見てくれる。だから私は静ちゃんのことを少しずつ信頼していった。

今ではたまに静ちゃんの好物のラーメンを食べたりすることもある。それだけの中だった。

 

そしてある日、私は静ちゃんに会いにいくために職員室に行った。

その時、ある男子生徒が静ちゃんと話していた。

私はそこに割り込むことにした。

 

「静ちゃーん、遊びに来たよー!」

「こら陽乃、いつもいってるが気軽に職員室に来るんじゃない」

「いいじゃなーい!暇なんだモーん!…あれ静ちゃん、そのこは?」

「彼は比企谷だ。お前と同じく3年生だぞ」

 

私はそんな子知らなかった。まあ、ついてくる取り巻き以外は私は知らないんだけどね。

 

私はその子を観察することにした。

…背はそこそこ高いね。顔は、いいほうだけど、その目は腐っているね。…うん、なかなかいいじゃない。

 

「私は雪ノ下陽乃!よろしくね!」

「は、はぁ 」

 

私は完璧な笑顔を浮かべて握手を求めた。

するとその生徒は握手には応じたけど、なんだか私を疑り深くみている。若干緊張しているような面持ちだったが、それでも私を疑っているようにみえた。

…へえ、私をそんなふうに見れるなんてなかなかやるじゃない。

私はからかうことにした。

 

「なーにガチガチになってんの!」

 

ふっふっふ、心の中で反撃だよ!

と、静ちゃんは私のことを彼に紹介していた。

と、そのあいだにふと目に入った作文をみた。

…へえ、なかなかやるじゃない

私はその驚異的な作文をみてこの子を気に入った。

 

「君面白いね、気に入っちゃった」

 

彼は逃げようとした。けど私は彼の、名前は比企谷だっけ?その子の腕を掴んだ。

 

「じゃ、比企谷くん、私とお話しよっか!」

 

私はこの子のことを知りたいと思って空き教室に連れていくことにした。

 

これが私と彼の出会いだった。

 

 

続く

 




今回は陽乃の過去編と八幡と陽乃の出会いの陽乃目線ということです。
中途半端なところで終わったので、次回は続きからになります。

次回投稿は6月22日の17時です。
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