大学という場所は彼の周囲の環境をガラリと変えた   作:さくたろう

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どうもご無沙汰しております。さくたろうです。

ちょっと短編に浮気したり仕事が忙しかったりで投稿が少し遅くなりました。

9月は少し忙しい時期なので、ちょっとだけ投稿間隔が空くかもしれませんが、途中で終わることはしないのでよろしくお願いします(`・ω・´)

次回は11月文化祭ネタ
そして12月クリスマスになるかと思います。
シリーズとしては12月か1月で終わる予定でして他にアフターと八幡1年生時のことを書こうかなぁと思っております、はい


私と彼のハロウィン

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送信者:いろは

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タイトル:Re:せんぱい!

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添付ファイル:

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今日大学が終わったら先輩の家に

お邪魔するので予定入れないでく

ださいね(੭ु ›ω‹ )੭ु⁾⁾♡

あ、どうせ先輩に予定なんてない

と思いますけど(・ω<)☆

 

あと、お菓子も用意しておいてく

ださいね(๑˃̵ᴗ˂̵)و

 

 

     -END-

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「これでよし、っと……」

 

 十月三十一日、今日は世間で言うところのハロウィン当日。

 先輩はハロウィンなんて興味ないだろうけど、私にとっては先輩の家に遊びに行ける口実にもなるし、このイベントはしっかり活用させてもらいましょう。

 とりあえず、大学に行く前に用意していた衣装をバッグに詰め込み、ついでにお泊まりセットも持って大学に向かう。

 

 

 大学に着くと、先に来ていた碧に声をかけられた。碧は最近は朝が弱いようで、気だるそうに挨拶をすると、ため息をついた。でも朝が弱い割にはいつも大学には一番乗りなんだよね。それよりも最近、碧のおっさん化現象が進んでいるような気がするんだけど、まぁ口に出すとめんどくさそうだし触れないでおこうかな……。そんなことを考えつつも、私は今日の先輩とのことが楽しみで、陽気に挨拶を返していく。すると、なぜそんなにテンションが高いのかと尋ねられた。まぁ隠しても別に意味ないことだし言ってもいいかな……

 

「まぁねぇ、ほら、今日ハロウィンだしさ? せっかくだから先輩の家にお菓子もらいに行こうと思って!」

 

「あぁ、なるほどなるほど。それでそんなバッグがパンパンなのですね? ちょっと見せてごらんなさいよ」

 

 先輩のネタを出すと急にテンションが高くなる碧。というか口調おかしいけどどうしたの? 完全にふざけてる感じですよね、碧さん?

 

「……いろは、あんたこれ着るの?」

 

 そう聞いてきた碧の顔は、少しだけ引き攣っている。なんというか、母親が娘を心配しているような表情といいますか……そんなにおかしいかな? この衣装……

 

「え、なんかおかしかった?」

 

「いや、おかしいというか……やたら露出度高くないこれ」

 

 碧の言うとおり、今回私が選んだ小悪魔衣装は、上半身は胸元が大きく空いていて、下はショートパンツでおしり部分にはしっぽのようなものが生えている。露出度は確かに高めかもしれない……いや、改めて見ると中々に露出度高いかも、これ……。さっきまでは平気だったけど、碧に言われて少し恥ずかしくなってきた……。で、でもこれくらいしないと先輩だし……

 そんなことを思っていると、碧は少しニヤけながら全部お見通しですよ、と言わんばかりの表情でこちらを見てくきた。もうなんなのこの顔。あぁ……、あのニヤケ顔に軽くビンタしたいっ!

 

「まぁまぁ、そんな怖い顔で睨まないでよ? 私はいろはが順調に前に進めてるみたいで嬉しいだけなんだからさ……?」

 

 順調に前に進めてる、か……。本当にそうなのかな? 

 この前の合コンの時の先輩は、今までとは少し違う感じがしたけど。……そういえばあの時、クリスマスに温泉に行くって先輩言ってたっけ……。あの後、先輩の家についてからは、お互い少し気まずい感じになってすぐ寝ちゃったから、その話はしてないんだよね。

 

「いろは、携帯鳴ってるよ」

 

 どうやら考え事をしていたせいで携帯が鳴っていることに気づかなかった私は、碧に教えられて携帯を手に取る。先輩からのメールみたいだ。

 

 

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送信者:先輩

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タイトル:Re:Re:

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添付ファイル:

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了解。

菓子ならもう買ってある。

 

 

 

 

     -END-

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 相変わらずそっけないメールの返しですね、この人は……。しかし、お菓子をもう既に用意しているとは、それいろは的にポイント高いですよ? たまたま用意していたのか、それとも今日がハロウィンだと知ってて用意したのか。気になるところだけど、それを確認する度胸はちょっとない……かな。

 どうやら私が先輩のメールを見てるあいだに、涼香たちも来たようで、私たちは揃って一限目の講義へと向かった。

 何事もなく一限目を終えると、金沢先輩からメールが来ていた。

 

 

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送信者:金沢先輩

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タイトル:こんにちわ(。・ω・。)

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添付ファイル:

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いろはちゃん、今日サークルで文

化祭の出し物を決めたいと思うん

だけど来れるかな?

そんなに時間掛からないと思うか

ら、その後ハッチーとも遊べると

は思うな٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

 

 

 

     -END-

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 そっか……、もう文化祭の時期なんだなぁ……。先輩との文化祭は二年の時以来だなぁ。まあ、それも高校最後ということで、雪ノ下先輩と結衣先輩のために私は、そんなに先輩とは一緒に過ごせなかったもんね。となると、これが先輩と目一杯過ごすことができる初めての文化祭になるってこと!?

 そう考えると、私の胸が高鳴るのが自分でもわかった。本当に私は……どんだけ先輩のこと好きなのだろうか。

 それはそうとして……なんで金沢先輩は、今日私が先輩と遊ぶっていうこと知ってるんですかね? エスパーかなにかなのだろうか、いや、単に私がわかりやすいだけかも。

 この様子だと先輩もサークルに顔出すと思うし、私が行かない理由もないかな。

 

 

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送信者:いろは

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タイトル:了解です(`・ω・´)

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添付ファイル:

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講義が終わったら向かいますね!

 

文化祭とても楽しみなんで頑張り

ましょうね(>ω<)

 

 

 

 

     -END-

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 こんな感じでいいかな? 金沢先輩への返信を済ませて次の講義に向かう。

 それから特に変わったこともなく、今日の講義を終えた私は、少し時間が早いけどサークルの集合場所に足を運んだ。

 私が一番乗りのようで、集合場所にはまだ誰の姿もなかった。そういえばサークルのこういう集まりに参加ってあんまり行ってなかったかも。いつも先輩が行くときにくっついて行く感じだったし、金沢先輩たち以外の人達とはあんまり交流もなかったもんなぁ……

 携帯を弄りながらほかの人たちを待っていると、先輩と金沢先輩たちがやってきた。いつも通り仲が良さそうで、高校時代の先輩を知っている私にとっては、やはりグループに溶け込んでいる先輩というのは想像できなかったことで不思議な感覚だ。

 

「うす、早いな」

 

「こんにちは、いろはちゃん!」

 

 相変わらずテンションが低い先輩と優しく挨拶してくれる金沢先輩。

 

「先輩方こんにちはですっ」

 

 その後、しばらく先輩たちと談笑しつつ、サークルメンバーが全員集まると、文化祭の模擬店の出し物などの話し合いが設けられた。とりあえずとして決まったのは出店をしようということらしい。でもなんの店にするかで揉めている。私としては先輩と過ごせるのならなんでもいいのだけれど、上級生たちは何やらこだわりがあるようで、決まるまでに思いのほか時間がかかってしまった。

 結論から言うと、私たちのお店はラーメン屋台になった。誰の意見かは言わないでおくけど、普段、いや、こういう時に絶対発言しないような人が何故か乗り気で、この日、この提案を掲げ決めるまでに持っていった。でもラーメン屋台とかセットとか大丈夫なのかな? 

 とりあえず、今日は解散ということで話し合いは終わった。そのまま先輩と一緒に帰ろうとしたけど、このままだと先輩が玄関を開けて、そこにコスプレをした私が「Hapyy halloween!! Trick or treat」という台詞を言って、先輩の反応を楽しむというシチュエーションができないことに気づいた。うーん、それは少しまずいなぁ……

 

「一色、帰らねえの? うちくるんだろ」

 

 私がどうしたらこのシチュエーションに持っていけるか考えていると先輩から声がかかった。

 ていうかいきなり先輩から声かけるとかドキっとしちゃうじゃないですか心臓に悪いんでやめてくださいお願いします。……やっぱりやめないでください。

 

「あ、ハッチー、ちょっといろはちゃんと話があるから先に帰っててもらっていいかな? そんなには時間かからないと思うから」

 

 金沢先輩が私に話? なんですかね……?

 先輩は「わかった、じゃあ先に帰るわ」と言いその場を離れた。あ、これもしかして……?

 

「その大きなバッグ、今日のためのでしょ?」

 

 本当になんでわかるんですかねー。まぁそのおかげでさっきのシチュエーションを実行できそうですし、流石金沢先輩と言いますか、よく見てるなぁ、この人。 

 

「あはは、バレてましたか。なんでわかるんですかね?」

 

 金沢先輩はニッと笑いながら「去年の私もそんな感じのことをしようとしてたからかな?」と話す。この人もそんなことするんですねー。と、というか誰にしようとしたんですか! 先輩にですか、やっぱり敵なんですか!?

 

「別にそういうつもりでしようとしてたわけじゃないよ? 安心してね。それにしようとしてたのはハッチー以外のみんなでだから」

 

 どうやらまた顔にでてたようですね……。うーん、仮面を被るのが得意なはずなんだけどなぁ、どうも大学に入ってからはそんなこともないようだ。これも全部先輩が影響しているのかなぁ。

 それからしばらく金沢先輩と雑談をして、「そろそろ行っても大丈夫じゃないかな?」という金沢先輩の言葉で私は先輩の家に向かった。

 

 もう十一月ということもあり、日が沈むのが早い。私はとりあえず先輩の家の近くのコンビニのトイレで着替える。流石にこの季節にこの格好で先輩の家まで行くのは辛いので……いや、夏でもダメだよね、これ、その上に上着を来てそれから先輩の家に向かった。

 

 先輩の部屋の前に来た私は上着を脱いでコスプレ衣装になる、とそこで先輩の隣の部屋の玄関が開かれた。部屋から出てきた男性がこちらを凝視してくるのが凄く恥ずかったので、これは先輩に責任をとってもらうしかないですね……

 呼び鈴を鳴らすと部屋の中から「はいはい」と声が聞こえ玄関が開かれる。

 

「Hapyy halloween!! Trick or treat!! せ~んぱいっ」

 

「おまっ!? こいっ!」

 

 先輩は一瞬驚いた表情をしたあと、すぐに私の腕を掴んで部屋に連れ込んだ。え、なんですか? これ私が襲われちゃうパターンですか?

 

「お前、なんつー格好してんだ……」

 

「えー、可愛くないですかこれ? 先輩を驚かそうと思いまして」

 

 うーん、私が思っていたような反応はしてくれないようですね……失敗しちゃったかなぁ。怒った口調のあとに先輩が一息つき、今度はすこし照れた表情を浮かべながら口を開いた。

 

「いや、そんな格好で外にいたら危ねえだろ……そ、その、お前は可愛いんだし、少しは気をつけろ」

 

「えっ……?」

 

 先輩、最後の台詞もう一度お願いします! 録音したいんで。

 というか先輩、私のことを心配してくれてるだけなんですね。まったく本当に捻デレさんなんですから……そう思うと自分でも気分が良くなったのがわかった。

 

「と、ところで先輩、お菓子ください! 今日はハロウィンなんです! お菓子、もらえないと……悪戯、しちゃいますよ?」

 

 大きく空いた胸元を見せつけ、お尻から生えてる尻尾を右手に持ち、ふりふりと回しながら上目遣いで先輩を見つめる。

 

「わかったからその上目遣いで言うのやめろ、あざとい。今コーヒー淹れるから待ってろ」

 

 そのまま席を立ちコーヒーを淹れに行く先輩。むぅ……、しかし、今の私の台詞には少し自信があったんだけどなぁ……まったく動揺しないと言いますか、流石先輩と言いますか。

 

「あっちっ!」

 

「どうしたんですか、先輩!」

 

 大きな声が聞こえたので先輩の方に駆け寄ると、先輩がコーヒーをこぼしていた。というかカップに溢れるほど入れすぎていたんですかね、一つのカップにコーヒーがたぷたぷに入っている。

 

「すまん、ちょっとぼーっとしてた」

 

「しっかりしてくださいよ、先輩~」

 

「いや、お前のせいだから」

 

 私のせい? なにかしたんだろうか、まったくもって記憶にないですが。

 残ったコーヒーを淹れ終え、私たちは席に着き、先輩が用意しておいたお菓子の箱を開ける。

 

「ほらよ、ザッハルトルテだ。美味いらしいぞ」

 

 あの、先輩……それザッハトルテです。なんですか、ザッハルトルテって、誰かも間違ってましたねそういえば。

 

「先輩、それザッハトルテです、ザッハルトルテではないです。なんですかそれ」

 

 私がそう言うと「えっ、そうなの?」と本気で驚いていた。

 先輩の用意していたザッハトルテはとても美味しくて二人で食べるとすぐになくなってしまった。

 

「ふぅ……」

 

 コーヒーを一口飲んだ先輩はひと呼吸すると、カップを持ちながら先輩は立ち上がり、ベランダの窓を開けて外に出る。

 私もつられて外に出て先輩の横に立つと、秋の夜風がとても気持ちいい……

 ベランダから見える夜空に輝いた月がとても綺麗だった。

 

「先輩、月が綺麗ですね……」

 

「…………っ、そうだな……」

 

「先輩、どうかしましたか?」

 

「いや、なんでもない……月が綺麗だな……一色」

 

「それ私が今言ったんですけど……?」

 

 先輩の耳元が赤く染まった気がしたけれど、なぜそうなったのか私にはわからなかった。それから先輩は黙ってしまい、静かな時が流れる。先輩と二人だとこんな時間もとても愛おしく思い、横にいる先輩の肩に頭を預けた……

 

 

 

 その日の夜、私は夢を見た。寝ている私にそっと優しく口付けをする先輩……。先輩は優しく頭を撫でてくれてそれがとても心地よかった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

自分のシリーズってなんか毎度八幡が登場するのが遅い気がする。まあいろはと碧視点だし仕方ない部分もあるんですかね?

それでは感想等ありましたらよろしくお願いします。

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