大学という場所は彼の周囲の環境をガラリと変えた 作:さくたろう
次回は5月か夏の話にしようと思います。
4月の話に2ヶ月もかけてしまった……
「「「いろは、おはよー!!!」」」
誕生日の次の日先輩の家に泊まりそこから通ってきたと思われるいろはに友人たちが元気いっぱいで挨拶をする。
「ど、どうしたのみんな……、朝からやけに元気すぎない?」
「そんなことないよ~!ねぇみんな♪」
うわー、これはいろはさんもう逃げられませんねえ……
「いろはさぁ、みんなに何か言うことない~?」
「えー?なになに?あ、昨日ね友達に誕生日プレゼントもらったんだけど見て!これ可愛くない?」
えへへ~と、すごい緩んだ表情で私たちに比企谷先輩にもらったと思われるピアスを見せてきた。
惚気てるなぁこの子。私たちが誰からもらったか知ってるとも知らず……、いろは南無
「うわ~~、かわいいね!しかもいろはにピッタリじゃん!」
「でしょ!でしょ!こんなにセンスのいいものくれるなんて正直思ってなかったんだけどねー。なんかそういうところがあざとい……って違う違う。高校時代からの友達だからわたしにぴったりの買ってくれたんだよ、うんうん」
この子隠す気あるの本当。半分くらい自分で漏らしてるからね……、さすがに私もフォローできないし。
「さてさて、じゃあ積もる話はお昼にいろいろ聞きますかー、みなさん♪」
「「そうだね~♪」」
いろはは「え~、なになに。みんなどうしたの~?」と緩んだ表情でいるがこれが午後どうなるか私としても多少なりと興味はあるので楽しみに取っておくとしよう。
そして午前の講義が終わり、みんなで学食に向かうことになった。
講義中いろははずっと「えへへ~」とニヤけながらピアスに触れていたが、そこは多めに見てあげよう。うん、私って優しい。
しかし、やはり学食はこの時間混んでるなぁ。ぎりぎり5人座れる席を確保し、食券を買って並ぶ。
そしてみんなが準備出来たところで尋問タイムの開始である。
頑張れいろは!負けるないろは!
「で、いろはちゃん?私たちに何か言うことあるよね~?」
「え、なになに?本当わかんないんだけど……?」
「ほうほう、この子はまだシラを切る気ですよ、姉御……」
「仕方ないですねえ……。あれを見せちゃいますか」
そして友人の一人がスマホを取り出し、昨日撮った二人で歩いている写真を見せる。
「えっ!?」
まさか昨日のデートを撮られていたとは思いもしなかったいろはは言葉が出ない。
「いろはさん、これはどういうことですかね~?昨日は確か高校時代の女友達と遊ぶって話だったよね?」
ゴホッゴホッっと後ろの方から咳き込むのが聞こえる。私たちうるさかったかな……?
「え、えっと……、こ、これは……、そ、そうこの子ね、男装趣味があるんだよ!いやだなぁ、私も昨日知ったんだけどね?大学に入って何かに目覚めちゃったみたいなんだよー。」
いろは、その言い訳は辛い、辛すぎるよあんた……
後ろ姿ではあるけど完全にいろはが比企谷先輩にベッタリくっついている。
これは普通に見たらその辺にいるカップルだ。
「ふ~ん、その割にはなんかやたらくっついてるよね?見た目完全にカップルなんだけどなぁ」
「ほ、ほらそれくらいなら女友達同士なら全然するでしょ?特にその子とは仲良かったしさ?」
や り ま せ ん。
どんだけ百合百合してるのよ。
「というかね、私たちこのあとも尾行してたんだよね、卓球やってるいろはも生き生きとしてたね~」
「はぅっ……」
言葉に詰まったいろはは何故かこちらに救いの眼差しを向けてくる。
いや無理、この状況は私一人で助けるには不可能だからね?だからいろはさん……、思いっきりゲロっちゃおう♪
「ということで本題です。いろははこの人とどういう関係なの?やっぱり彼氏?昨日はこの人の家に泊まったんでしょ?」
「えっ、なんでそれも知ってるの?って、……もしかして聞いてた?」
「バッチリ!ね~?」
「「ねーー」」
おーおー、いろはさん顔真っ赤ですね。ちょっと可愛いな。
「えっと、その人は高校時代の先輩で、今はこの大学にいて同じサークルの先輩です」
「それでそれで?」
「みんなが思ってるようなあれじゃないんだけどなぁ……、まだ付き合ってないし……」
「まだ?ってことはいろはは付き合いたいんじゃないの?」
こやつ墓穴を掘ったな……。まあ大分気が動転してるみたいだし仕方ないのかも?
「うぅ……。確かに私はその先輩のこと大好きだよ。大まかに言うと高校1年の冬くらいからずっと片思いしてる。大学も先輩を追ってきたんだ。高校の時に想いを伝えられなくて後悔したから……」
また後ろのほうからゴホゴホと咳き込む音がさっきよりも大きく聞こえる。なんだろうそんなうるさいかな私たち。
「それでこないだ再会して、昨日誕生日だからってデートしてもらったの。それが大学で初デート、だから付き合ってもないよ。私は今すぐにでも付き合いたいけど」
もうバレてしまったのならといろははどんどん自分の気持ちを友達たちに言っていく。私しか知らない秘密がなくなるのはちょっぴり淋しい気持ちもあるけど、共有できる嬉しさもある。
「それで昨日は何か進展なかったの?家に泊ったんでしょー」
「いやぁ、それが先輩ひどいんだよ?家に着くなり疲れた寝る、だもん。流石に悲しくなって泣きそうになったもん。私って先輩にとってそんなに魅力ないのかなって……」
「えー、本当に!?いろはと一つ屋根の下にいて何もしないとか……、あたし男なら絶対襲う自信あるよ!」
「あはは……、ありがと。まぁでもそこがまた先輩らしいと言えばらしいんだけどね。……それにそのあとしっかり相手してもらったし」
やっぱりハート強いなぁ。というかポジティブって言えばいいのだろうか。そして最後が声が小さくて聞こえなかった。
「まぁあと3年あるし、気長に攻めていくよ。最終的に隣にいれたら私の勝ちだしね♪」
ニッと笑って私たちにそう言ういろはの顔はどこかあざとく、だがその口調は真剣な雰囲気をまとっていた。
こういうところは本当にこの子の凄い、いや長所なのだろう。不覚にもその表情に見惚れてしまった。
「じゃあそろそろいこっか!」
友人の合図で全員が席を立つ。
午後の講義も頑張るとしますか!
* * * * * * *
いろはちゃんたちが席を立った後、私たちは彼を見つめる。
顔を真っ赤にさせて「こっちみんな……」と恥ずかしがっている男は先ほど後ろの席で話題に上がっていた比企谷八幡だ。
いろはちゃんたちは気づいていなかったようだけれど、私たちはさっきの会話の一部始終ばっちり聞いていた。流石に本人が聞いてるとは思ってないだろうし、あれはいろはちゃんの本音とみて間違いない。
流石のハッチーでもそれくらいはわかるでしょう?
「で、ハッチーはどうするの?」
私は優しく彼に尋ねる。
「どうって……、別に今すぐどうしようとか俺にはやっぱりまだわからん。」
「おいおい、せっかくあんなに可愛い後輩がお前のこと想ってくれてるんだぜー?ハチも答えてやれよ」
男子勢はイケイケムードでハッチーを煽る。でも彼はそう言われるときっと萎縮してしまうのだろう。
「まぁまぁ、ハッチーにはハッチーなりの考えがあるんじゃないの?」
「今すぐにあいつの気持ちに答えるのは無理だ。俺自体混乱してるし。ただ一色といるのが楽しいと感じる自分がいることは理解してる。それは高校時代もそうだったし。ただ、それがあいつが俺に抱く感情と同じかって言ったらそれはまだわからないんだ。それで急いでしまって間違って、今の関係を壊すのが怖いんだよ……」
これは彼の言い訳だ。彼はまた同じことを繰り返そうとしてる。そんなのはだめだ。
「ハッチー、私は恋愛感情って人それぞれだと思うんだ。だから必ずいろはちゃんと同じ想いをもたないといけないわけじゃないと思う。それにハッチーだって本当はわかってるはずだよ?」
「……?」
「雪ノ下さんと由比ヶ浜さんの時もそうやって違うと思って答えをださなかったんでしょ?それであなたは後悔した。私はあなたに後悔だけはしてほしくないよ。間違わない人間なんていないよ。1度間違ったならそれをちゃんと次に生かせばいいんだよ。人ってそうやって成長していくんじゃないのかな?」
ちょっとお説教になってしまっただろうか。私も人のこと言える立場じゃないんだけどな……
「はっ……、それもそうなのかもな」
少しは彼のモヤモヤをとれたのかな。少しは君の力になれた?私はね君の力になることを選んだんだよ。だって君が彼女を好きなことは知っているから。
「じゃあこれからはもうちょっと頑張っていこうね、ハッチー♪」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想、や誤字脱字等ありましたら教えて頂けると嬉しいです。
週一ペースですがこれからも書いていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。