高二病でも恋がしたい   作:公ノ入

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第九話

 

八幡(公園に来たはいいものの……どこに居るんだ? アイツ)テクテクテク

 

 

モリサマー「来ましたね。不浄王、キヒヴァレイ」

 

 

八幡「ん?」キョロキョロ

 

モリサマー「どこを見ているのです。こちらですよ」

 

八幡(上? 木の上か?)ミアゲ

 

モリサマー「フフフ、相変わらずの淀んだ瞳ですね」プルプルプル……

 

八幡「…………」

 

モリサマー「しかし、不死者の身で有りながら陽の下を出歩けるのは、流石といったところでしょうか」プルプルプルプル……

 

八幡「お前…………ひょっとして降りられなくなったのか?」

 

モリサマー「……フッ、何を馬鹿な。風の精霊を従えるこの私がそのような事あちょっ止め、ま、松ボックリ投げるのはだ――ほんとダメだからマジやめて!!」ナミダメ

 

 

 

八幡「……降りられないんだな?」

 

モリサマー「はい……」

 

八幡「どうすんだ?」

 

モリサマー「ハシゴとか……無い?」

 

八幡「持ってるわけ無いだろ」

 

モリサマー「近所の家から借りてくるとか……」

 

八幡「俺にそんな難易度高い事求めるな」

 

モリサマー「…………」

 

八幡「……お前んとこの親、呼ぶか?」

 

モリサマー「それはちょっと……。こないだも怒られたばっかりだし……」

 

八幡「お前はしょっちゅう木に登ってんのか」

 

モリサマー「いや、こないだは水の精を探してたら池に落ちて……」

 

八幡「…………」

 

モリサマー「い、いやでも、ホントいたのよ! 溺れかけた時になんか人面魚っぽいのが横をヌメっと――」

 

八幡「水の精はどこに行った」

 

モリサマー「…………」

 

八幡「…………で、どうする?」

 

モリサマー「どうすればいいですか……」

 

八幡「自力で降りろ」

 

モリサマー「……マジ?」

 

八幡「マジ」

 

モリサマー「……何とかなりませんか?」

 

八幡「ならねぇよ。つか何でスカートで木に登ってんだよ。俺、下に近づけねぇだろうが」

 

モリサマー「あ、それは下に短パン履いてるから大丈夫」

 

八幡「あ、そうなの……」

 

モリサマー「うん」

 

八幡「じゃあ……下からサポートしてやるから」

 

モリサマー「から?」

 

八幡「自力で頑張れ」

 

モリサマー「自力はまかりませんか」

 

八幡「まからねぇよ」

 

 

 

 

 

モリサマー「ううう……腕が……」プルプルプル…

 

八幡「だから左だ左! 左に出っ張りがあるからソコに足かけろって言ってんだ!」

 

モリサマー「無いもん! 掛かんないもん!」スカッ、スカッ

 

八幡「ちゃんと下を見ろよ、下をッ」

 

モリサマー「嫌だ怖い!」

 

八幡「んな事言ってる場合かッ」

 

モリサマー「あ、ちょ……ホントもう腕……げん、かい……」プルプルプルプル…

 

八幡「よ、よし分かった。じゃあもう一旦上に戻れ。足場を確保して休憩しろ」

 

モリサマー「う、上? 上……む……むりぽ……」プルプルプルプル…

 

八幡「諦めんなバカ!」

 

モリサマー「だ、だって……」グシグシッ

 

八幡「だぁくそ、仕方ねぇ……それでもお前は四百年の刻を生きる魔術師か!」

 

モリサマー「ま、魔術師? ……そ、そうよ、私は魔術師モリサマー……こ、この程度……ッ」グググッ

 

八幡(よしっ。中二病を刺激して持ち直――)

 

モリサマ「精霊の力を借りれば、空を飛ぶことぐらい造作も無い筈……!」

 

八幡「え?」

 

モリサマー「今こそ目覚めよ、秘められし私の力! 精霊よ、風の導き手よ! 我が声を聞け!」

 

八幡「おいバカやめろそっち方面に希望を見出すな」

 

モリサマー「裏を表に、表を裏に、アストラルの白き力をこの身に宿せ! あぁあいきゃぁああんふらぁああ゛あ゛あ゛あ゛ー!!?」

 

八幡「アホかぁああああああ!?」

 

 

――ドザザザァアア!!

 

 

モリ八「「ぐえッ!」」

 

 

 

…………………………

 

…………

 

 

 

 

結衣「あれ、ヒッキー。そっち公園だよ?」

 

八幡「神社行くなら、公園横切ったほうが近いんだよ。つかすぐ隣だし」

 

雪乃「鶴御神社に亀治公園、ね……。何か関わりがあるのかしら?」

 

八幡「さぁ? 知らん。丹生谷、なにか知ってるか?」

 

丹生谷「なんで私に聞くのよ」

 

八幡「お前、よくこの公園探索してたろう。木に登ったりとか」

 

丹生谷「え、なに、よく聞こえない。死ぬの?」

 

八幡「どんな飛躍の仕方だよ」

 

 

結衣「へ、へぇ……ふ、二人で遊んでたりしてたんだぁ……」

 

八幡「いや違う。あれは遊んでたとかそんなのでは断じてない」

 

丹生谷「……」

 

雪乃「では何なのかしら?」

 

八幡「…………一言では名状し難いな」

 

丹生谷「ゴメン、私もあんまり昔のこと思い出したくないから……」

 

結衣「そ、そっか……。ごめんねー」

 

丹生谷「ううん。こっちこそ」

 

 

 

 

雪乃「……結局、あの二人はどういう関係だったのかしらね」

 

結衣「ああ言ってるけど多分……凄く、親しかったんだと思うよ」

 

雪乃「彼女に、なにか聞いたの?」

 

結衣「ううん。ただ、クリスマスの時の事説明した時、ヒッキーが手助けしたこと意外そうに聞き返してきて。でも凄く納得したような顔もしてたの。……それってさ、そういう事でしょ? ヒッキーの事、凄く良く知ってるの」

 

雪乃「そう……。そうね」

 

結衣「それになんか、離れて歩いてるのに、歩幅あってるし……」

 

 

八幡「……」テクテクテク…

 

丹生谷「……」テクテクテク…

 

 

雪乃「……まぁ、考えても仕方ないわ。あまり趣味の良い詮索とも言えないし」

 

結衣「う、うん……そうだね」

 

 

     ▽

 

 

八幡「久々に来たけど……相変わらず寂れた神社だな」

 

雪乃「静かね。宮司は常勤しているのかしら?」

 

丹生谷「確か境内の奥に住居が会って、そこに定住していたはずだけど……」

 

雪乃「では社務所も奥かしら?」

 

結衣「しゃむしょ……?」

 

八幡「神社の事務所だ。ま、取り敢えず行ってみるか」

 

 

結衣「あ、ヒッキー! 鶴の像があるよ。やっぱ、この神社って鶴と関わりがあるのかな?」

 

八幡「知らん」

 

雪乃「妙ね。何故こんな外れに有るのかしら。しかも外を向いているし」

 

丹生谷「……丁度、公園を見下ろす形になってるのよね」

 

八幡「へぇ、詳しいな」

 

丹生谷「べ、別に……たまたまよ」

 

八幡(やっぱ、この辺も探索してやがったな)

 

結衣「あ、アレがしゃむしょかな?」

 

八幡「ああ、なるほど。住居と繋がってんのな」

 

 

 

 

 

結衣「すいませーん!」

 

 

 やはりというか何と言うか。こういう事に物怖じしない由比ヶ浜が、真っ先に社務所に入り声を上げた。

 

 しかし帰ってきたのは、シーンとした静けさのみ。

 

 

結衣「……あれ?」

 

雪乃「反応がないわね」

 

丹生谷「奥の住居に引っ込んでるんじゃないの?」

 

結衣「う~ん……すいませーん! 誰か居ませんかー!!」

 

 

 先程よりも更に大きな声で由比ヶ浜が呼びかけると、ようやく奥から「はーい」と控えめな返事が帰ってきた。

 

 少女のものだろうか。どこか幼さを感じさせる声だった。というか、どこかで聞いたことが有るような……。

 

 しかしその記憶を辿るよりも先に、パタパタと足音が近づいてくる。

 

 

??「すいません、お待たせしました。ただ、今は宮司が寝込んでいて、祈祷などは受けられないんですけ……ど……?」

 

 

 長い黒髪を後ろで結わえ、小さな巫女服に身を包んだ少女の姿を見た瞬間、俺は目を見開いた。

 

 雪ノ下も同様だろう。由比ヶ浜などは、「ふへ?」とアホ丸出しの声を上げている。

 

 

 

 唯一、丹生谷だけが、俺達の様子に訝しげな表情を浮かべていた。

 

 

??「……はち、まん?」

 

八幡「……ルミルミ?」

 

留美「ルミルミゆーな、キモい」

 

 

 クリスマス以来のぞくぞく感が、俺の背中に走った。

 

 どう考えてもご褒美です、本当にありがとうございました。

 

 

 




ストックがだんだん無くなってきました……。
尽きる前に、なんとか最新話書き上げないと……。

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