高二病でも恋がしたい   作:公ノ入

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第五話

 

 

モリサマー「書きなおしてきたわよ!」ドンッ

 

八幡「え、もう? ……いくらなんでも早すぎませんかね?」

 

モリサマー「さぁ読みなさい今読みなさいすぐ読みなさいハリーハリーハリーハリー!」

 

八幡「おいキャラが崩れてるぞモリサマー」

 

モリサマー「そんなことはどうでも良いのよ!」

 

八幡「あーはいはい。読めばいいんだろ。まぁ今日はパンだし、食いながらでも読めるか……」ペラッ

 

モリサマー「ふ……ふふふふ……さ、さいこうに、ハイってやつだわ……」フラフラ…

 

八幡「お前、目の隈が凄いことになってんだけど……。昨日寝てんの?」

 

モリサマー「ふ、ふふふ……降りてきたのよ……。昨日の夜、精霊が確かに私の元に……。こ、根源に触れたわ……精霊の言葉、世の理、あふれる囁きの泉を書き留めるため、私はひたすらペンを走らせ続けたわ……」

 

八幡(あ、コイツ相当末期だわ)ペラ…、モグモグ…

 

モリサマー「ほら、今も精霊が私のそばを飛んでいる……、うふふふ……」コックリ、コックリ…

 

八幡「それは多分、見ちゃいけない類のものだと思うぞ」

 

モリサマー「聞こえます……あなたの囁きが……森の声が……そう、ジャムを作るのね……材料は冬虫夏草とマンドラゴラ……ラフレシアの花弁も隠し味に一欠……コトコト煮詰めて、象牙の小瓶に詰めましょう……」

 

八幡「おーい……帰ってこーい……」

 

モリサマー「お味はいかが……? かゆ……うま……」パタッ

 

八幡「……おい? モリサマー?」

 

モリサマー「……」

 

八幡「マジで寝てるの? 風邪引くぞおい」ユサユサ

 

モリサマー「……」スースー…

 

八幡「はぁ……めんどくせぇなぁ……」

 

 

 

 

――キーンコーンカーンコーン…

 

モリサマー「ぅ……ぅん……うん?」パチ

 

モリサマー「あれ? 私……寝てた……? この上着、アイツのかしら……」ムク

 

 

――ペラッ

 

 

モリサマー「あ。……なにこれ、メモ?」

 

 

[ まだ読んでいる途中ですが、少し気になったので書かせてもらいます。率直に言うと、こういう魔導書っポイものを書くのにシャーペンを使うのは如何なものでしょうか。インクを使うちゃんとしたペンを使って書くと、よりソレっぽさが増すのではないかと思います。ぶっちゃけ、今のままだと小学生の落書き感満載です。  比企谷八幡 ]

 

 

――ドサッ

 

モリサマー「先に……先に言っときなさいよぅ……! くそう……くそぉう……!!」シクシクシクシク…

 

 

 

…………………………

 

…………

 

 

 

 

結衣「あ、ヒッキー!」ブンブン!

 

八幡「おー……」テクテクテク

 

雪乃「やっと来たわね」

 

八幡「別に遅れちゃいねぇだろ」

 

いろは「そうですねー。嫌味なぐらいに時間ピッタリですねー。まぁ取り敢えず行きましょうか。従兄弟達の方は、直接公民館に向かってると思いますんで」

 

 

 

――スタスタスタスタ…

 

 

結衣「こうして会うの、クリスマスパーティー以来だよね」

 

八幡「ああ、あのカラオケでやった打ち上げな」

 

雪乃「そうね、打ち上げね」

 

いろは「え? うちあげ?」

 

結衣「クリパだよ!? プレゼント交換とかしたじゃん!」ガーンッ

 

八幡「いや、そのプレゼント交換が一番グダグダだったじゃねぇか。後は適当にクリスマスソング歌ってたくらいで――」

 

いろは「あのー、せんぱい……」クイクイ

 

八幡「あん?」

 

いろは「打ち上げってなんですか?」

 

八幡「ああ、なんか由比ヶ浜がやりたいっつうから。25日に適当に集まってしたんだよ」

 

いろは「私、呼ばれてないんですけど」

 

八幡「え?」

 

結衣「」サッ

 

雪乃「」ササッ

 

 

八幡(こ、こいつら一瞬で目をそらして距離を取りやがった……)

 

 

いろは「打ち上げってアレですよね? クリスマスイベントの打ち上げってことですよね?」

 

八幡「……いや、違うよ? クリスマスパーティーだよ? 奉仕部で前からやろうって約束してたんだよ?」

 

いろは「さっきと言ってること違うじゃないですかー!」

 

八幡「うるせぇな、どうせお前だって生徒会の奴らと打ち上げぐらいしただろ」

 

いろは「してないですよ! あの後も何だかんだで残務処理とか大変だったんですよ!? 報告書とかも上げないといけなかったし、終わったらそのまま冬休み突入でしたから、せいぜい書記の子とマック寄ったくらいで……」

 

八幡「ああ、あのお下げの子な。打ち解けられてよかったじゃねぇか」

 

いろは「あ、はい、それはまぁ……ってそうじゃなくて!」ウガー!

 

 

雪乃「遅れてもいけないから公民館へ急ぎましょうか」スタスタ

 

結衣「うん、そうだね。あ、ゆきのんそっちじゃないよ! 左左!」スタスタスタ

 

 

八幡「あ、ほらアイツら行っちまうし。俺らも急がねーとなー」スタスタスタスタ

 

いろは「ううー! 後で絶対話し聞かせてもらいますからね!」スタスタスタスタ

 

八幡「マジレスすると、お前を誘うという発想が欠片も無かった」

 

いろは「酷い!?」

 

 

 

     ▽

 

 

 

 公民館に着くと、丹生谷達のグループは既に全員が揃っているようだった。

 

 丹生谷と魔法魔王なんたら、それから例のバカップルに、黒髪のおっとりした少女(どことなくめぐり先輩を彷彿とさせる)。最後に一色の従兄弟だ。結構な大所帯である。

 

 まぁ半分以上が名前も知らない連中なので、仲介は一色に任せよう。というか任せるまでもなく、従兄妹同士話を進めているようだが。

 

 

丹生谷「……」

 

 

 ふとそこで、丹生谷から、なにか物言いたげな視線が向けられていることに気づいた。

 

 こちらも、視線だけで「なんだよ?」問い返すと、丹生谷はふいっと一瞬だけ雪ノ下と由比ヶ浜を見やる。

 

 あん、こいつら? 別に単なる部活仲間だよ。なぁにその訝しげな目は? 俺が部活に入ってることがそんなにオカシイの? いやうん、そうだね、オカシイね。心配するな、自覚はある。

 

 なんだよそのジト目は。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。いや、俺ら会話は全くしてないけど。

 

 

いろは「すいませーん、なんかもうスグに会議始まるみたいなんで、取り敢えず移動してもらっていいですかー?」

 

 

 と、一色の上げた声に、俺達は揃って目を逸らした。

 

 

誠「お互いの自己紹介なんかは、また後でってことで」

 

 

 え、自己紹介とかすんの? それ必要? どうしよう無性に帰りたくなってきたんだけど。

 

 

結衣「ほらヒッキー何やってるの。皆行っちゃうよ」

 

雪乃「そっちは出口よ。目が腐りすぎて、自分が向いている方角も分からなくなったのかしらこの男は」

 

八幡「おい雪ノ下、それ盛大な自爆だってことに気づいてるか?」

 

いろは「はいはい、どうでも良いからさっさと行きますよー」グイグイ

 

八幡「おいやめろ背中を押すな。俺はずっと引かれ続けてきた男だから、押されるのには慣れてねぇんだよ。そして結婚相手も経済的に引っ張ってくれる女性を希望する」

 

雪乃「では馬に繋いで市中を引き摺り回しましょうか」

 

八幡「拷問ですよねそれ?」

 

雪乃「あら凄いわね貴方。一昼夜引き摺られて生きていられる自信があるなんて」

 

八幡「処刑かよ……ッ」

 

 

 抵抗虚しく公民館内へ連行される最中、振り返った丹生谷とまた一瞬だけ目が合った。

 

 

 

     ▽

 

 

 

 連行された先の二階会議室では、すでに多くに人々が会議の始まりを待っているようだった。

 

 ぐるりと部屋を囲むように四角く並べられた長机は、その殆どが席を埋められている。

 

 ただ、その表情は一様に重く、陰鬱に沈んでいた。中には頭を抱えて机に突っ伏している人間さえいる。

 

 件の主役――あるいはラスボス――の二人は、まだ顔を見せていないらしい。

 

 

いろは「え~っと私達一応見学って名目なんで、パイプ椅子適当に使って、壁際に座っててもらえますか?」

 

誠「俺ら、じーちゃんと話してくっから」

 

 

 そう言って、二人は例の頭を抱えている老人の元へと歩いて行った。

 

 ってアレがじーちゃんかよ。いかん、なんか思ってた以上に末期的だな。

 

 

勇太「なんか……空気重いな……」

 

六花「マナが淀んでいて非常に危険。このままでは不可視境界線の歪みが発生し、異界へのチャンネルが開かれる可能性も……」

 

結衣「ふか、麩菓子……?」

 

八幡「気にすんな。アレは材木座の戯言と同種のもんだ」

 

結衣「中二と? どゆこと?」

 

八幡「いいからほれ。さっさと座ろうぜ」

 

 

 隅っこに置かれていたパイプ椅子を手渡し、隔離するように由比ヶ浜を追いやる。

 

 下手に触れると色々と飛び火しちゃうからね。ああいう手合は距離を取るのが一番だ。

 

 ほら雪ノ下を見習いなさい。いつの間にか椅子に座って、完璧に我関せずモードでATフィールド全開だよ。アレもある意味中二的だけどね!

 

 そういやアイツ、世界を変えるとか言ったことあったよな。あれ? 考えてみると雪ノ下も結構高レベルの――

 

 

雪乃「何か今、途方も無い侮辱を受けたような気がしたのだけど」

 

八幡「……ぃ、いきなり何言い出してんの?」

 

雪乃「……気のせいかしら? まあいいわ」

 

 

 っぶねー! やべぇちょっとドモりかけたし! 出てなかったよな? 顔に出てなかったよな?

 

 つーかホントなんなのコイツ。勘がいいってレベルじゃねぇだろ。

 

 中二病なんて普通格好だけでしょ。中身まで伴わせるんじゃないよ全く。

 

 二人並んで座る雪ノ下と由比ヶ浜から少しだけ距離を置いて、パイプ椅子に腰を下ろす。

 

 そのさらに左側に、これまた微妙な距離をおいて丹生谷が座った。

 

 

八幡「そういやお前、この件知ってたの?」

 

雪乃「知らないわ。姉さんとはこの所会話もしていないし、母は必要なこと以外私に話さないもの」

 

結衣「じゃあ、お父さんは?」

 

雪乃「凸守家が関わっているのなら、父はノータッチよ。ずっと出張に出ていると聞いていたけど、おそらくこれが理由で逃げていたのでしょうね」

 

八幡「は? それってどういう――」

 

 

――バンッ、と。唐突に会議室の扉が開かれた。

 

 悠然とした足取りで入室してくる二人の女性の姿を見た瞬間、どういう訳か俺の脳内で“パーパーパン!!”とキル・ビルのテーマ曲が流れだした。

 

 いや、うん、後ろにつき従う黒服さん達のせいだと思うけどね。

 

 どっちかっつーとアレだな。『新・仁義なき戦い』のテーマ曲と言ったほうがベターだな。雰囲気マジ極道。

 

 会議室に入ってきた二人は、それぞれ示し合わせたかのようにザッと左右に別れ、淀みなく足を進める。

 

 その内の一人は、言わずもながな雪ノ下陽乃。女子大生然としたカジュアルな服装ながらも、その内から溢れだす圧倒的なオーラは隠しようもない。いや、普段はそれなりに抑えて親しみやすさを演出しているが、今は隠す気がないのだろう。

 

 ただ、さすがに俺たちがこの場にいるのは予想外だったのだろう。こちらを見た瞬間、僅かに眉を上げていた。

 

 そしてもう一人は――

 

 

八幡「ッてオイ。誰だよあれ」

 

 

 予想していたものとは余りにもかけ離れたその姿に、俺は思わず丹生谷を問い質していた。

 

 

丹生谷「誰も何も、アンタが親父ギャグ呼ばわりしたデコッパチと同一人物よ」

 

八幡「いやいや、どう考えても別人だろおい。雰囲気欠片も残ってねえじゃん……」

 

 

 膝まで届くような長い金髪を真っ直ぐに下ろし、憂いを帯びた瞳を細めて歩くその様は、駅で出会ったハンマーツインテールとは似ても似つかない。

 

 細く小柄な体型と、それを包み込む淡い色合いのワンピースが相まった姿は、まさに深窓の令嬢そのもので、雪ノ下姉妹以上のお嬢様オーラを醸し出している。

 

 

丹生谷「まぁ、信じられない気持は良くわかるけどね。間違いなく本人よ……」

 

八幡「マジかよ……。ああそうだ雪ノ下、お前もアレと面識――おい、どうしたその首」

 

 

 振り返った先で。

 

 雪ノ下と由比ヶ浜が、首をクキッと全く同じ角度に傾け、呆けたような顔を向けていた。

 

 

雪乃「どうしたというか……ええそうね、どうした事態なのかしらねこれは」

 

八幡「いや、本気で意味がわからんのだが」

 

結衣「えっとねヒッキー……その人と知り合いなの……?」

 

八幡「丹生谷とか? 中学の同級生だけど。言ってなかったか?」

 

雪乃「聞いてないわね。早苗さんの友人が来るとしか……」

 

八幡「まぁ、俺と丹生谷の関係なんてどうでもいい事だろ。大したこっちゃないし」

 

丹生谷「ッ……自分で言っといてなんだけど……。アンタにその名前で呼ばれると、違和感がすごいわね……」

 

八幡「元に戻すか? モリサマー」

 

丹生谷「やめなさい呪うわよ」

 

 

 ふえぇ、目がマジだよぉ……。ていうか、中二卒業しきれてないだろコイツ。

 

 

結衣「もりさまぁ?」

 

八幡「あー、アレだ……アダ名みたいなもんだ。コイツ、下の名前が森に夏ッて書いて“シンカ”だから」

 

結衣「ひ、ヒッキーが、アダ名で呼ぶような仲……」

 

 

 いや、ただ単に本名知らなかっただけなんだけどね。

 

 

一色祖父「あーえー……それではその、人も揃ったことですしー……会議を始めたいと思いますが……構いませんかね?」

 

陽乃「ええ、もちろん」フッ

 

真・凸守「今日も、よろしくお願いしますね」ニコッ

 

 

 一色の祖父の言葉により、会議が始まろうとする中。雪ノ下と由比ヶ浜は、未だ首を傾けたまま固まっていた。

 

 ていうかそれ、疲れないの?

 

 

 


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