高二病でも恋がしたい   作:公ノ入

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第四話

 

 

八幡「あ、マビノギオン校正しといたから」

 

モリサマー「……は?」

 

 

八幡「このビッシリ張ってる付箋の箇所全部な」

 

モリサマー「え? これ全部?」

 

八幡「全部だ。まぁ誤字脱字多すぎだな。後ら抜き言葉ばっかで厳格さ皆無。マジ聖典(笑)」

 

モリサマー「」イラッ

 

八幡「それから、名詞に英語やらフランス語やらイタリア語やらが入り混じってて統一感皆無なんだけど? こういうの書くならもうちょっと世界観を大事にしてくんない? モリサマーってどこの国の人? ねぇ何人なのモリサマー?」

 

モリサマー「そ、それは……私が転生を繰り返しているからで……」イライラ

 

八幡「ほーん、そうなんだー、そんな話、巻末に付いてるお前の生涯年表には全然書かれてなかったけどなー」

 

モリサマー「ぐぎ……ぐぎぎぎぎぎ……」イライライライラ

 

八幡「ま、それ全部直したところで、結局お前のマル文字で全部台無しなんだけどな」キパッ

 

 

――ブチッ

 

 

モリサマー「細かいことイチイチ五月蝿いのよこの腐れ目が!!」ドゴォ!!

 

八幡「ガハァッ!?」

 

 

モリサマー「くそう! くそう!!」ダッ

 

 

八幡「き……きるみぃ……べいべぇー……」ガクッ

 

 

 

…………………………

 

…………

 

 

 

 

――ガサガサゴソゴソ…

 

 

八幡「ったく、いきなり家に来たいとか、何かと思えば……まぁ気持ちはわからんでもないが。黒歴史を他人に握られてるとか、リベンジポルノ並みの恐怖だわな」

 

八幡「いらんモンは適当に押入れに放り込んでたはずだし、多分この辺に……お、コレか?」

 

 

 

 

 

八幡「おーい、見つかったぞー……」エッチラオッチラ

 

丹生谷「ちょっと、遅いわ……よ?」

 

八幡「よっこいせと」ドンッ

 

丹生谷「……え? このダンボールの中、全部……?」

 

八幡「ああ。だってお前、書き直すたびに押し付けてきてたろ」

 

丹生谷「わ、私は……なんて愚かなことを……ッ」ギリギリギリギリ

 

八幡(わー、下唇噛み締めて悔いてるわぁー)

 

 

八幡「しっかしよく書いたよなホント。これとか14版って書かれてるし。まぁ、俺が嫌がらせに校正しまくってたせいなんだろうけど」

 

丹生谷「ぐっ……やっぱアレ、嫌がらせだったのね……」

 

八幡「当たり前でしょうよ。他のなんだと思ってたの?」

 

丹生谷「うぐぐ……(反応が貰えるだけで無条件に喜んでた過去の自分を呪い殺してやりたい……)」

 

 

八幡「で? コレ持って帰んの?」

 

丹生谷「あ、当たり前でしょッ。置いとける訳ないじゃない……」

 

八幡「ふ~ん」

 

丹生谷「意地でも持って帰るわよ……ふぎぎぎぎぎ……ッ」プルプルプルプル

 

八幡(……いや、無理だろ)ハァ…

 

 

丹生谷「くはぁ! ゼーハー……ゼーハー……」

 

八幡「……お前ん家どこ?」

 

丹生谷「え?」

 

八幡「こっから歩いていける距離なわけ?」

 

丹生谷「だ……大体、歩いて30分ぐらいだけど……」

 

八幡「嫌なラインついてくるな……」

 

丹生谷「ハァ? なによそれ」

 

八幡「行こうと思えるギリギリの距離だってことだ……。自転車の荷台に載せれば運べるだろ。取ってくるから少し待ってろ」

 

丹生谷「あ、うん……」

 

 

 

     ▽

 

 

 

八幡「……」テクテクテクテク…

 

丹生谷「……(き、気まずい……)」テクテクテクテク…

 

八幡(……さみぃ。手袋してくりゃよかった)テクテクテクテク…

 

丹生谷(私、コイツとどういう会話してたっけ……? ああ、そうだ、いっつもモリサマーモードで会話してたんだ……)テクテクテクテク…

 

 

八幡(……ん? あれは……)

 

丹生谷(……あれ、あの前から来てる奴って)

 

 

??「……だから友達が…………後輩の…………」

 

??「……こっちも……うちの先輩の…………に連絡をとって……って、あ!」

 

 

八幡・丹生谷「「一色?」」

 

 

八幡「うん?」

 

丹生谷「へ?」

 

一色A「んへ?」

 

一色B「おう?」

 

 

八幡「……なに、お前ら知り合いだったの?」

 

丹生谷「あんたこそ、どこで知り合ったのよ?」

 

八幡「いや、単なる後輩だが」

 

丹生谷「は、後輩ってなんの? バイトか何か?」

 

八幡「何もクソも、普通に学校の――」

 

一色A「あー、先輩、先輩」クイクイ

 

八幡「なんだよ? つーか袖抓むな。あざと過ぎて警戒心しかわかん」

 

丹生谷(先輩?)

 

一色A「相変わらず失礼な……。まぁ、それはそれとしてですね。こちら、頭が残念な従兄弟の一色誠です」

 

一色誠「ども」

 

八幡「は?」

 

誠「で、丹生谷。こっちが腹が黒い従姉妹の一色いろはだ」

 

丹生谷「いとこ?」

 

一色いろは「はじめましてぇー。……マコトは後で髪を剃る」

 

誠「お前が先に言ったんじゃん!?」

 

 

八幡「あー……何だそう言うことか。無駄に混乱したわ」ポリポリ

 

いろは「それで先輩。そちらの方の紹介がまだなんですけど?」

 

八幡「え? お前の従兄弟に聞けば良いじゃん」

 

いろは「先輩とどういう関係なのかってのが、気になるところなんじゃないですかー! 在り得ないことは重々承知しつつもまぁ一応礼儀として聞いておきますけど、彼女ですか?」

 

八幡「お前の『礼儀』の定義ってどうなってんの?」

 

いろは「ああ、そうですね。冗談でも先輩の彼女とか言っちゃうのは、相手の人に失礼すぎますよね。礼儀を欠いてました」

 

八幡「俺帰るわ」クルッ

 

いろは「ああー! 冗談、冗談ですからー!」グイグイグイ

 

 

 

丹生谷「…………」

 

誠「へぇ、珍しいな」

 

丹生谷「何が?」

 

誠「いや、いろはが本性さらけ出してるからさ。アイツ、相手が男だと大抵猫かぶって良いように扱おうとするんだよ」

 

丹生谷「へぇ……」

 

誠「…………な、なんか、怒ってね?」

 

丹生谷「私が? 何に対して?」

 

誠「い、いや、違うんならいいんだが! ……ちなみに、どういったご関係で?」

 

丹生谷「中学時代の知り合いよ。単なるね」

 

 

 

いろは「待ってくださいってば! ちょうど先輩に話があったんですよー!」

 

八幡「尚更帰りたくなったんだが」

 

いろは「まぁまぁそう言わずに。ホントヤバくてですねぇ……まぁ実際にヤバイのは、私じゃなくて私達の祖父なんですけど」

 

八幡「そうか……お見舞いにはこまめに行ってやれよ?」

 

いろは「いやそういう意味のヤバイではなく。ていうか先輩もちょっと関わりがある事なんですからね」

 

八幡「あん? 俺が?」

 

誠「そうそう、丹生谷にも聞いて欲しいんだよこの話」

 

丹生谷「私も?」

 

 

いろは「え~、何から話したもんですかね……。取り敢えず、うちの祖父って今町内会の会長やってるんですけど」

 

八幡「へー」

 

いろは「まじめに聞く気皆無ですね……。まぁ、その関係で町内のお祭りの運営とかにも携わってるんですけど……ほら、冬にもこの辺りでやってるじゃないですか」

 

丹生谷「2月ぐらいにやってるあれ?」

 

八幡「ああ、あのしょぼいヤツな。つーかなんでんな時期に祭り開いてんのか、前から疑問だったんだけど」

 

誠「あーそれはなんか、近くの神社に由来した風習とかで、昔から行われてたらしい。詳しくは知らんけど」

 

いろは「で、そのまぁ、ショッボイ祭りをですね。何を思ったかもっと盛り上げていこうって、祖父が変なやる気を出しちゃいまして。幸いと言っていいのかどうか、予算を出してくれるスポンサーを見つけてきちゃったんですよ」

 

八幡「良いことじゃねぇか。つーか、そんな話を俺に聞かせてどうしろと?」

 

いろは「いや、ここからが問題でして」

 

誠「爺ちゃんが話をつけてきたスポンサーってのは、二つあってな。どっちも、この地元の名士の家なんだが……。実はこの両家、えっらい仲の悪い犬猿の間柄だったらしんだわ。祭りの会議の時とか、両家の代理人がぶつかり合って、さながら代理戦争みたいな感じらしい」

 

 

八幡「いやだから――」

 

丹生谷「そんなの私達に聞かされても――」

 

 

いろは「で、そのスポンサーの片方ていうのが、先輩もよく知る雪ノ下家で」

 

八幡「……は?」

 

誠「もう片方が、丹生谷がよくつるんでる後輩の家、凸守家だ」

 

丹生谷「……へ?」

 

 

 

 

八幡・丹生谷「「……はぁああああ!?」」

 

 

 

 




え? サキサキ?
あぁ、そうだね……。悲しい事件だったね……(アニメ二期を見ながら)


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