高二病でも恋がしたい   作:公ノ入

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このSS書いててちょっと失敗したなぁ、と思うこと。
凸守がなかなか出せねぇ……。


第十八話

――シュッ……プスッ!

 

 

ソフィア「痛ッ――何奴!?」

 

モリサマー「精霊の呼び声が聞こえました……」ユラリ…

 

八幡(タキシード仮面様!? ……じゃないね、モリサマーだね。分かってたよ。ていうか何なの、シャーペン投げるの流行ってるの?)

 

 

ソフィア「フッ……魔眼使いの仲間かい?」

 

モリサマー「馬鹿なことを。私は魔術師モリサマー。400年の時を生きる、精霊の代弁者。このような不浄なる者と相容れる存在ではありません……」

 

八幡(そっかー。じゃあ寄ってこないで欲しいんだけどなー……)

 

モリサマー「貴方も勘違いしないことですね、キヒヴァレイ。別に助けた訳ではありません。しかし、貴方を滅するのは私の役目……。このような所で勝手にやられては困るのです」

 

八幡「ベジータかお前は……(うーん違うなー。そういうタイプのツンデレは求めてないなー)」

 

 

ソフィア「魔術師風情が、この魔法魔王少女に敵うとでも?」

 

モリサマー「愚かな。精霊とともにある私は、自然の権化ともいえる存在。この地球(ガイア)そのものを相手取るに等しい行いであると知りなさい」

 

ソフィア「君が地球なら、その地球を支配する運命にある者が魔法魔王少女さ!」

 

 

八幡(中二病同士の戦いって、基本的に言ったもん勝ちなんだよなぁ……。さて、今のうちに帰――)

 

??「あのー……」

 

八幡「ふぇい!?」ビクゥッ

 

鈴木「なに、今のキモイ声……」

 

佐藤「ちょっと鈴木! えっと、ごめんなさい。こないだ図書室にいた人ですよね……?」

 

八幡「は、はぁ……そうですけど……」キョドキョド

 

佐藤「あの時はスイマセンでした……。勘違いしていたとはいえ、色々と失礼なこと言って……」

 

八幡「いや別に……き、気にしてねぇから……(何この子、普通すぎてなんか怖い……)」

 

鈴木「やー、あんまりにも目がキモかったから私も取り乱しちゃってさー。ていうかなんでそんな目腐ってんの? 病気?」

 

八幡「うるせえよメガネ、レンズに指紋つけんぞ」

 

鈴木「お前それやったらマジぶっ殺すからな」

 

八幡(あ、こいつは割と変な奴だよ! なんか安心する!)

 

 

鈴木「ところで……」

 

八幡「あん?」

 

 

 

ソフィア「カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク!」

 

モリサマー「取り返しなく!! 我が血に触れる獣を支配する。支配者は収奪を命じ、獣は武器を捨て家畜となれ!」

 

 

 

佐藤「あれ……何やってるの?」

 

八幡「あー……」

 

 

 

ソフィア「灰燼と化せ、冥界の賢者、七つの鍵を持て、開け地獄の門!」

 

モリサマー「我が名、悪夢にだけ囁かれ、生ある時には聞こえず、煩悶の鉄杭だけを残せ。ああ哀れ、剥ぎ取られた地の四つ足。お前にはなにもない――」

 

 

 

八幡「まぁ、なんだ……」

 

 

 

ソフィア「七鍵守護神(ハーロ・イーン)!!」ウオオオオオ!!

 

モリサマー「さしあたっては慈悲がない!!」ドリャアアア!!

 

 

 

八幡「……新しいオトモダチと、遊んでんだろ」

 

 

 

 

…………………………

 

…………

 

 

 

 

 

雪乃「一度、お昼にしましょうか……」

 

 

 床に倒れ伏した問題児二人の中心で覇王のごとく佇む雪ノ下の言葉に、異論をはさめる筈もなく全員が頷いた。

 まぁ普通に腹は減っていたので、反対する理由もないのだが。もう一時過ぎてるし。

 

 

丹生谷「あんた、全然手動いてなかったけど、ちゃんと書いてるの……?」

 

 

 来る途中にコンビニで買っておいたサンドイッチとマッカンをイソイソと取り出していると、不意に丹生谷がいぶかしげに声をかけてきた。

 ノートPCで立ち上げているメモ帳を見やると、驚きの白さが画面いっぱいに広がっている。

 

 マッシロシロスケ出ておいでー、出ないと目玉をほじくるぞー。この画面を見られると俺が雪ノ下に目玉をほじくられかねないので、そっとディスプレイを閉じた。

 

 

八幡「問題ない。午後から本気出す」

 

丹生谷「つまり、全然進んでないわけね」

 

 

 なぁに余裕ですよガハハハーとか返そうかと思ったが、明らかに死亡フラグなので止めておいた。

 

 目の前のジトッとした視線から逃れるように顔を逸らすと、ルミルミが例のバスケットから重箱とアルミホイルに包まれたオニギリを机に並べている。

 その蓋をパカッと開いた瞬間、おおーと小さな歓声が上がった。

 

 

留美「これ、お母さんが皆でって作ったものなので……遠慮せずに食べてください」

 

誠「すげー。ウチの母ちゃんのオール冷凍食品とは大違いだ……」

 

くみん「おいしそうだね~」ホワホワ

 

 

勇太「おーい、二人とも起きろ。飯だぞー……」ユサユサ

 

六花「ううぅ……クッキーは……クッキーはもう食べられません……」

 

七宮「お腹いっぱいなんです……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

勇太「あ、あの七宮までもがキャラを捨てて……だ、大丈夫だ、ちゃんとおいしそうな弁当があるから!」

 

 

雪乃「流石、家庭科教師ね……」

 

いろは「え、そうなんですか?」

 

雪乃「彼女は、うちの鶴見先生の娘さんよ」

 

いろは「あー、そういえば苗字同じでしたねー」

 

 

結衣「はぁー。私もこういうお弁当作ってみたいなぁー……」

 

 

 瞬間。部室内がシンと静まり返った。

 ふらふらと起き上ろうとしていた中二病患者二人も、再びバタンと床に倒れ伏す。

 肩がフルフルと震えているところを見るに、おそらく死んだフリのつもりなのだろう。いやクマじゃねえけどな。

 

 先程までの和やかな雰囲気はどこへやら。

 ゴクリと生唾を飲む音さえ躊躇われる緊張の中で、唯一雪ノ下だけが静かな微笑みとともに口を開いた。

 

 

雪乃「そうね……。それじゃあ、一口サイズで簡単に口に放り込め――摘まめるモノを作ってきてもらおうかしら」ニッコリ

 

結衣「それ絶対別の用途で使うつもりだよね!?」

 

 

 いやもう、ほんと勘弁してください……。

 蹂躙系SSは、読む人によっては地雷認定されちゃうんだからね!?

 

 

 

     ▽

 

 

 

 昼食も終わり、再び二班に分かれての作業となった。

 

 

雪乃「少しやり方を変えましょう」

 

 

 そう言って雪ノ下が企画班に提示した方法は、二人一組で10分を持ち時間とし、ホワイトボードに順番にアイデアを書き連ねていくというものだった。

 似た系統のアイデアは近くに並べて書き、別のアイデアから連想したものは黒い線で繋げる。組み合わせることができそうだと感じたアイデアは赤い線で繋げる、というものだ。

 

 なるほど、このやり方なら一部の声が大きい者(約二名)に会議を席巻されることもないし、アイデアの連想や組み合わせを視覚的にイメージしやすい。

 おそらくブレインストーミングにマインドマップ的な手法を組み合わせたのだろう。

 合体技カッコイイ! メドローアとか超燃えるよね。でもロト紋の合体魔法はちょっと名前がダサいと思います。

 

 なかなかに興味を惹かれる方法だったが、流石にこれ以上自分の手を止めていると、またクッコロ(クッキーでコロッと逝かされるの略)されかねないので、大人しく目の前のディスプレイに集中することにする。

 つってもコレどうまとめよう。マジ難易度高いんだけど……。

 

 

丹生谷「描くエピソードをある程度取捨選択してみたから、ちょっと見てもらえる?」

 

八幡「え? お、おう……」

 

 

 やだ、モリサマーさんったらぼーっと資料見てるだけだと思ってたのに、ちゃんとお仕事してたのね。サボってたの俺だけかよ。

 え? 黒めぐりんさん? あの人はあれだよ、空気清浄機みたいなもんだよ。空気の様な存在感を持つ俺があのホワホワ感に癒されているから、多分間違いない。

 

 

丹生谷「ていっても、このままのエピソードは使えないと思うけど。ある程度の改変というか、創作が必要よね……」

 

八幡「そこなんだよな。どこまで創作が許されるのか、正直感覚が掴めん。まぁ、世の伝承やらなんやらなんて、割と突拍子のないもんばっかだし、開き直っちまって良いのかもしれんが……」

 

丹生谷「とにかく一度書き上げて、神主さんに見てもらえばいいでしょ」

 

八幡「えぇー……。ダメ出し受けて書き直しとか正直めんどいんだけど……」

 

丹生谷「アンタが私にそれを言ってくれるわけね……」ヒクヒク…

 

八幡「いや、あれはお前が好きで書いてたもんだろう。俺は悪くない」

 

 

 いつだかの光景とは逆の立場ながらも。

 否応なく懐かしさを感じさせるそのやり取りに、丹生谷はどう思っているのだろうかとふと疑問に思った。

 

 らしくない感傷だと自分でも思いながらも、朱書きが加えられた鶴の手記に目を落とす丹生谷の顔をちらりと盗み見る。

 けれど、心理は読めても感情は理解していないと平塚先生からもお墨付きを頂いている俺に、そんなものが分かる筈もない。

 分かる筈もない、のだが――。中学時代の俺は、コイツの考えがわからずに悩むなんてことが、果たしてあっただろうか?

 

 記憶にはない。当時は気にもして居なかっただけかもしれない。

 今となっては、その判別さえつかなかった。

 

 


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