台本形式ってだけで0評価入れられるのは、流石にちょっと切ないよママン。
けど逆に、「敬遠してたけど読んでみたら面白かった」って感想を貰うと凄くニヤニヤします。
いいぜ、台本形式が地雷ってんなら――まずはその幻想をぶち壊す!
モリサマー「や、やめなさい何をしようというのですか……」
八幡「……」
モリサマー「クッ、殺しなさい! 辱めを受けるぐらいなら私は死を選――」
八幡「んじゃ遠慮無く」プシュッ
――あ゛あ゛ああああ~~~~~!!
モリサマー「ううぅ……ホントに……ホントに遠慮無くやるんじゃないわよぅ……」ポロポロ
八幡「傷口の殺菌はちゃんとしとかんといかんだろうが。ほら、左腕も出せ」
モリサマー「あ、ちょっと待ってまだ心の準備がああ゛あ゛~~~~~~!!」
八幡「一々大袈裟なんだよ……。後は鼻の頭と……額も擦り剥いてんのか。前髪が邪魔だな。確かこの辺に小町のが……ああ、あったあった」
――パチンッ
モリサマー(……髪留め?)
八幡「ほれ、目ぇ瞑れ」
モリサマー「え? あちょまっ」プシュッ
――ぬわああああああ~~~~~!!!
モリサマー「ううぅ……このような陵辱を……!」プルプルプル
八幡「例えネタでも、小町に聞かれるとシャレになんないからやめてくんない?」
モリサマー「小町?」
八幡「妹だ」
モリサマー「へー………………」
八幡「妹は目、腐ってないぞ」
モリサマー「なな、何も言ってないでしょう!?」
八幡「めっちゃ狼狽えてんじゃねぇか。まぁそんな訳で小町が帰ってくると面倒だから」グイッ
モリサマー「え?」
八幡「帰れ。足が平気なら一人で大丈夫だろ」グイグイグイッ
モリサマー「ま、待ちなさい! まだこの不夜城の探索が――」
八幡「知らん知らん、つーかさせるかそんな事」ガチャッ、ポーイ
モリサマー「わたた! くっ、この私に対してなんてぞんざいな扱いを……!」
八幡「じゃあな」バタン!
モリサマー「あ!」
――ガチャッ
モリサマー「ああ!? 鍵を! タイムラグ無しに鍵をかけた!? すごく感じ悪い!!」
モリサマー「ううぅー…………くそぅ……くそぅ……」トボトボトボ…
モリサマー「………………あ」ピタッ
モリサマー「……髪留め、付けたまんまだ……」
▽
小町「ただーいまー♪ ってうわぁ!?」
八幡「おー……小町お帰りー……」グッタリ…
小町「……お兄ちゃん。なんで床で寝てんの……?」
八幡「ああ……。お兄ちゃん、ちょっと重たいモノ受け止め損ねてな……」
小町「はぁ?」
八幡「最初はなんて事なかったんだが、何かだんだん腰の痛みが酷くなってきて……。まぁアレだ……取り敢えず、シップ貼ってくんない……?」
小町「うわぁー……その年で腰痛めるとか……それはちょっと小町的にポイント低いわぁ……」
…………………………
…………
…
翌日、俺は約束通り神社の石段下までルミルミを迎えに来ていた。
留美「八幡、おまたせ」
八幡「おう。来たか」
弄っていたスマホから顔を上げ、振り返る。
当たり前といえば当たり前だが、今日のルミルミは巫女服姿ではなく、極普通のコートを羽織り、もこもこマフラーで口元を覆っているという出で立ちだった。べ、別に残念がってなんか無いんだからね!
後ついでに言えば、何やら大きめのバスケットを右手に下げていた。
八幡「何持ってきてんだ? それ」
留美「ん。お弁当。お母さんが、皆と食べなさいって」
八幡「ほー……」
パカっと開けられた蓋の中身を除いてみれば、三段重ねぐらいの重箱と、幾つかのタッパがバスケットに詰められていた。
家庭科教諭お手製の弁当となれば、中々に期待できるかもしれない。
留美「あと、お父さんの抜け毛が危険で危ないからホントにお願いしますとも言ってた」
八幡「お、おぅ……ソレは……責任重大だな……」
弁当の対価は、同じ男の俺にとって余りにも重たく、切実な懇願であった。
八幡「ま、まぁ……取り敢えず行くか」
留美「あ」
ヒョイとルミルミの手からバスケットを取り上げ、歩き出す。
すぐ左に付いて来るルミルミの足取りは、パタパタと少しだけ忙しなかった。小町と歩くときよりも、速度をちょい下方修正。
ついでに、バスケットを右手から左手に持ち替える。
八幡「危ないから歩道側を歩きなさいな」
留美「あ、うん。…………八幡、なんか女の子の扱いに慣れてない?」
HAHAHA、面白いジョークだ。
八幡「慣れてるのは妹の扱いだ。俺のお兄ちゃんスキルはパッシブだからな。年下の手の掛かりそうな女の子、を条件に自動発動すんだよ」
一色相手にまで暴発するのは少々困りモノだがな。
留美「ふーん、そうなんだ。蹴っていい?」
八幡「え、なんで?」
はちまんなんか悪いことした? してないよね?
▽
総武高の校門あたりまで来ると、ちょうど反対側から丹生谷たち他校の連中を引き連れて歩く、一色の姿が見えた。
どうやら、ここまで連中を案内してきたらしい。
よお、と軽く手を上げると、何故だかドンヨリとした恨みがましい視線を向けられた。
どこかで見た目の色だなーと思い起こせば、今朝洗面台の鏡で見たばかりである。一色の目が腐っていた。
八幡「何だ、どうかしたのか?」
いろは「……それ、先輩が聞きますか?」
八幡「なにが?」
いろは「うわぁ、マジ自覚ねぇ……」
一色の目の腐敗がますます深まっていく。いや、ホント意味がわからんのだが。
いろは「……昨日の夜、うちのハゲ従兄弟から『総武高まで案内してくれ』って電話がかかって来たわけですが」
八幡「ああ」
誠「ハゲじゃねぇよ! 坊主だよ!」
一色いとこ(名前忘れた。でも多分こんな名前だった筈)のツッコミは全員が華麗にスルーした。
いろは「その時初めて、今日奉仕部で集まりが有ることを私が知った事実を、先輩はどう思いますか?」
瞬間、一色の背後に居た全員が、サッと耐えかねるように目を逸らした。
いや訂正。唯一黒めぐりんさんだけは、あいも変わらずほんわか笑顔のまんまである。
この人ひょっとして、本家めぐりんよりもめぐりん力高くない? ほんわか強度が並大抵じゃないよ。
八幡「…………」
ソレはソレとして、顎に手を当てて昨日の出来事を思い返してみる。
確かあの時、雪ノ下は平塚先生に連絡して、丹生谷にはあいつの高校の連中に連絡を頼んだ。由比ヶ浜は……あ、アイツアドレス交換に勤しんでただけじゃん。
八幡「ああ、ホントだわ。誰もお前に連絡してないわ」
いろは「何でですかー!!!」
一色が爆発した。
常日頃よりリア充爆発しろと願っている俺だが、こういう爆発の仕方は面倒くさいので止めてもらいたい。
爆発する時は俺から3㎞以上離れて、リア充達の多くいる雰囲気の明るい場所で爆発しよう。八幡との約束だぞ。
八幡「仕方ないだろ、由比ヶ浜はわりとアホなんだ。ちょっと忘れてたぐらいで、アイツを責めるのは良くないぞ」
いろは「今責めてるのは先輩ですよ! 結衣先輩がアホなのは知ってますけど、先輩がちゃんと連絡しといてくれればよかったじゃないですか!」
八幡「いや、お前の連絡先知らんし」
勇太(知らないんだ)
誠(知らねぇのかよ)
丹生谷(まぁコイツだしね……)
六花・七宮((流石は孤高の不浄王!!))グッ
くみん(お昼寝日和のいいてんきだなぁ~)ホワホワ
いろは「じゃあいいですよ! 交換しますよアドレス! 今まで目が怪しすぎて粘着が怖かったから躊躇してましたけど!!」
八幡「お前は本当に交換しようという気があるのか……?」
いろは「何が不満なんですか!」
八幡「不満しかねぇよ。まぁいいか。今回の件で、何だかんだで必要になりそうだし……」
ポケットからスマホを取り出しロックを外す。
新学期始まったら、生徒会の面倒事に呼び出される危険もあるが、そうなったら着拒しよう。
八幡「で、どうやって交換するんだ? LINE? ふるふるか? ふるふるだな?」
いろは「いやまぁ、ふるふるでいいですけど……何でそんな得意気なんですか?」
八幡「べ、別に覚えたばっかで使ってみたかったとかそんなんじゃ無いんだからね!」
留美(使ってみたかったんだ……)
丹生谷(使ってみたかったのね……)
いろは(何この先輩キモい)