遭難!宇宙戦艦ヤマト!    作:エウロパ

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第三話  遭遇

「あれ、なんだと思いますか?キリシマさん……」

 

「何って、ひとつしかないでしょう……」

 

ヤマトとキリシマは遠く海の彼方、水平線を見つめながら信じられないと言った顔をしていた

二人の視線の先には黒い人型の物体が群れをなして移動している

 

「「深海凄艦……」」

 

二人は深刻な顔をした

それもそのはず、本来地球には深海凄艦は存在しないのだ

 

現在、防衛軍が確認している太陽系内の深海凄艦の拠点は冥王星だけ

同盟を結んだガルマン・ガミラスの情報では外宇宙でも多数いや、無数の深海凄艦の拠点が存在するというが、とにかく地球には深海凄艦はいなかった、はずなのだ

 

はずなのだが……

 

「いったいどういう事なんです!?なぜ、深海凄艦が地球に!?」

 

「分かりません……一体どういうことなのか……」

 

ヤマトはアゴの下に手を当ててブツブツ言い始めた

 

「あの……ヤマト、さん?」

 

「……とりあえず防衛司令本部に行くのはまだ止めましょう。まずは艦載機で偵察し他方がいいと思います。防衛司令本部の状況を確認して――っ!?」

 

「レーダーに反応!海中より多数のエネルギー源が急速浮上中!この反応は……深海凄艦です!!」

 

キリシマの報告にヤマトは海を睨みつけた

 

「全艦、第一種戦闘配置!!砲雷撃戦用意!!」

 

「了解!!」

 

「敵が浮上した瞬間、火力を集中!そのまま敵を殲滅します!」

 

二人は主砲を動かし敵の浮上予測ポイントへ向ける

 

「……」

 

「…………」

 

「………………」

 

「敵、浮上!!」

 

水面が黒く染まり海水が盛り上がり荒波が立ち始め深海凄艦の姿が現れ始める

 

「主砲発射用意、撃てー!!」

 

「主砲発射!!」

 

ヤマトとキリシマの主砲から一斉にビームが発射され浮上してきたばかりの敵をなぎ払う

 

 

――――はずだった

 

 

「なっ――!?」

 

「主砲が!?」

 

ヤマトの主砲もキリシマの主砲もその砲口からビームは発射されずまったく、うんともすんとも、いわなかった

 

「こんな時に!?」

 

「ヤマトさん、前!!」

 

ヤマトは脳をフル活用して主砲のチェックを全力でおこなおうとしたが、そこにキリシマの叫び声が響いた

 

「えっ?」

 

ヤマトが敵の方を見るとそこには黄色と赤いオーラのようなものを纏った六隻の駆逐艦型深海凄艦がその大きな口を開けて砲口をヤマトの方へ一斉に向けていた

 

「ヤマトさん!!」

 

 

――――ああ、しまった

 

 

ヤマトは思った

昔、ヤマトがまだ艦娘になる前だったらこのくらいの攻撃、なんともなかったかもしれない

だが今のヤマトは艦娘、装甲を周囲に張っているとはいえその内側は生身の人間とほぼ同じ、駆逐艦とはいえあれだけの数のビームを一ヵ所に喰らえばヤマトもただではすまない

ヤマトの脳裏に先の戦闘で沈んだフソウの姿がよみがえった

助かったとして大破だ

防衛軍と連絡が取れない今のこの状況で大破などすれば沈んだも当然だ

 

ヤマトはダメもとで両手をクロスさせるようにして防御体制をとった

 

敵の砲口から激しい爆発音が聞こえ赤いビームの強力な熱戦が自分を襲う

 

 

――――だが、幸か不幸か予想に反してそんなことは起こらなかった

 

 

「一体なにが……起きて……」

 

攻撃を受けている感触はある

だがヤマトは不思議と痛くも痒くもなかった

ヤマトはゆっくりと目を開く

 

「へ?」

 

敵の攻撃を見たヤマトは間の抜けた声を出した

確かに敵はヤマトを攻撃している

だが、その攻撃はビーム兵器でもミサイルでも、宇宙魚雷でもなかった

敵は20世紀や21世紀頃に使われていたような火薬式の小さな口径の砲でこれまた宇宙戦艦の装甲には傷をつけるのも大変な威力の砲弾で攻撃を仕掛けていた

 

「……い、今です!」

 

ヤマトは慌てて思い出したようにパルスレーザー砲を取り出し敵に照準を合わせた

 

「……よし、動く!目標、敵、深海凄艦!パルスレーザー砲掃射始め!!」

 

パルスレーザー砲が確実に撃てると確信したヤマトはダメ元で最も近くにいた敵艦に照準を合わせて掃射した

本来ならパルスレーザー砲程度の火力では深海凄艦の装甲は貫通できないがなぜか二人の目の前の深海凄艦はヤマトが撃ったパルスレーザー砲であっという間に蜂の巣になり爆発した

 

これをみたヤマトは驚きながらもすぐに照準を他の敵艦に合わせてそのまま六隻の深海凄艦をなぎ払った

 

「……」

 

「…………」

 

「も、脆すぎる」

 

「恐らくこの深海凄艦は通常の艦艇ではなかったんのでしょう、そうとしか考えられません。ヤツらの宇宙戦闘艦艇がこんなに脆いはずありませし――あっ敵の本隊が我々の存在に気がついたようです、急いでこの場を離れた方がよろしいかと」

 

味方の艦がやられた事に気がついたのか遠くにいた深海凄艦の艦隊が進路をこちらに向けて迫ってきていた

 

「そうですね、主砲が撃てなかった理由はあとで考えましょう」

 

そういうとヤマトとキリシマは動かなかった主砲を気にしながら戦線を離脱していった――。

 

 

 

ヤマト達は深海凄艦に気をとられ気がつかなかったがこの場にはもう一人、ヤマトと深海凄艦の戦闘を海中から見ていた少女が一人いた

彼女はヤマト達が立ち去ったのを見ると海面に顔を出した

 

「ぷはー!、ゴーヤ、すごいものみーちゃった!」

 

 

 




最近、忙しいので多少の遅れはあると思いますが最低、月に二回は投稿しようと思っています。

早く日向の改二でないかな~



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