遭難!宇宙戦艦ヤマト!    作:エウロパ

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皆様、お久しぶりです。エウロパです。

だいぶ遅くなりましたが……。
明けましておめでとうございます!!

今回は間話という名の本編をお送りしたいと思います。
今回登場する新たな宇宙艦娘の情報は後書きにてまとめてありますのでよろしければご覧下さい。
だいぶ遅れてしまったので今回のお話は文量増量パックとなっております!

では、今年も『遭難!宇宙戦艦ヤマト!』スタートです!!



捜索編
 間話第一話 決戦!ガルマン地球連合艦隊!


時に西暦2205年。

 

全宇宙で同時侵攻を開始した深海凄艦の魔の手は地球だけでなく銀河系中心部の核恒星系を中心に銀河の半分を支配している星間国家、ガルマンガミラス帝国ともう半分を支配するボラー連邦にまで及んでいた。

 

圧倒的な深海凄艦の戦力を前に銀河交差現象で大きく戦力を大きく失っていた両陣営は事実上瓦解し、デスラー総統率いるガルマンガミラス帝国とボラー連邦、共に再び壊滅の危機に瀕していた。

 

だが、それはこの宇宙に生きる全ての生きとし生ける者全てが抱えた問題であった。

深海凄艦が現れてより二年、既にいくつもの星々が深海凄艦の魔の手によって滅びているのだ。

 

そんな絶望的状況の最中、地球連邦はガルマンガミラス帝国と同盟を結び持てる全ての艦娘の戦力を使った冥王星での大決戦を挑んでいた。

 

地球防衛艦隊は超弩級宇宙戦艦アンドロメダを筆頭に宇宙戦艦ヤマト等、主力戦艦や空母を含めた艦娘の大艦隊で挑み、ガルマンガミラスの東部方面軍地球派遣艦隊指揮官のガイデル提督はシュルツ艦型超弩級宇宙戦艦ゲルガメッシュを旗艦とした以下、大型戦闘艦グスタフ艦、駆逐型デストロイヤーのグノール、三段空母のレリウド、駆逐型ミサイル艦のレームルの五人の艦娘と5つの艦隊を派遣した。

 

しかし、深海凄艦による予想以上の反撃を受け地球防衛艦隊とガルマンガミラス帝国軍の連合艦隊は無残にも壊滅の危機に瀕していた……。

 

 

 

 

 

<――全部隊に通達!艦隊旗艦より撤退命令が下された!全部隊は敵と交戦しつつ後退せよ!>

 

<第二艦隊、了解!これより後退する!>

 

<第三、第四艦隊も了解!>

 

<きゅ、救援要請!救援要請!こちら、第6艦隊!完全に囲まれた!自力での撤退は困難!!長くは持たない助けて――>

 

宇宙空間に地球防衛軍の艦娘部隊の悲痛な通信が響いていた。

つい先程まで自分達が勝ち進んでいた戦場は敵の大攻撃によりもはや大混乱の状況で地獄の様相を見せている。

何も無い漆黒の宇宙空間を無数の赤いビームや宇宙魚雷、ミサイルが行きかう。

閃光、爆発、熱線が生き残った地球防衛艦隊を襲う。

すでに全体の戦力は6割ほど消耗していた。

 

だが……

 

「フハハハ!どうだ!我輩の言うとおりであろう!」

 

そんな中、戦闘宙域よりも離れた宙域で地球の艦娘よりも明らかに肌が青い五人の艦娘が戦場の様子を眺めていた。

その内の一人の艦娘が腕を組んで得意げに笑っている。

 

「いや、確かに貴様の言う通りではあるが……」

 

「……ちょっと卑怯なのでは?」

 

「右に同意」

 

「うーん……私もちょっとこれはなぁ……てか、敵前逃亡?」

 

他の四人は気分が悪そうだ。

すると、下品な笑い声を上げた艦娘は不機嫌な顔をして頬を膨らませる。

 

「ええい!うるさい!うるさい!私はこの部隊の旗艦なんだぞ!私の命令に従えないのか!!」

 

4人を指差して怒るこの艦娘に対し四人は困った顔をする。

 

「まぁ、まぁ、落ち着けよゲルガメッシュ。私とお前の中だ。貴様がどんなに卑怯なヤツだろうと旗艦である限り従うさ。それに艦隊の戦力温存をしたという意味では貴様の方針は大正解だ」

 

「……グスタフさん。それ逆効果ですよ?」

 

「グスタフは戦闘は得意だけどこういう時は使えない」

 

「確かに、レリウドさんの言うとおりだなぁ」

 

彼女達は地球の同盟国、ガルマンガミラス帝国から派遣されてきた艦娘だ。

深海凄艦は西暦2203年に全宇宙で同時多発的に出現し様々な星間国家を攻撃した。

ガルマンガミラスも深海凄艦と戦っている星間国家の一つで銀河系で最大の領域を支配する大帝国だ。

今年に入るまでは地球とガルマンガミラスは音信不通の状態で互いの生存すらも分からない状況であったが艦娘による生存領域拡大と地球防衛軍旗艦の艦娘運用母艦としても使われる宇宙駆逐艦の冬月の活躍によって互いの連絡が取れ両国は同盟関係を構築し互いの戦力を融通しあう関係であった。

 

この五人の艦娘もその同盟によって地球にやってきた者たちだ。

最初に喋った順で言うと最初に下品な笑い声をあげたのは異色の経歴をもちどこから来るかも分からない謎の自信と出世の野心を持つ旗艦のゲルガメッシュ。その次は旗艦を戦闘の面から補佐をしている左頬に傷を負ったゲルガメッシュ艦隊の中で最も強力な戦闘能力を持ち惑星破壊ミサイルにまたがって移動しているグスタフ艦。標準的ガミラス艦であり艦体内では最も火力が低い大人しい性格が特徴の駆逐型デストロイヤー、グノール。航空戦力が担当で特徴的な三枚の飛行甲板を鎧の要に装着している敬語知らずでクールな性格の三段空母レリウド。最後はお調子者で艦隊内ではムードメーカー的な存在である何故かミサイルを実戦で使った事が無いミサイル艦、駆逐型ミサイル艦のレームルだ。

 

「ムキー!!ええい!さっきから聞いていればなぁ!お前ら我輩のおかげで生き残れているのをわすれとるのか!!」

 

「……確かにそうですけど」

 

「いつもの通りと言えばそうだが……」

 

ゲルガメッシュの言葉に駆逐型デストロイヤーのグノールとグスタフが俯く。

その表情はまるで悪い事をしているかのようだった。

何故、彼女達がこんな顔をしているのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての始まりは時を戦闘開始時まで少し前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全艦、ワープ完了!全部隊、点呼!」

 

グスタフは方耳に手を当て指揮下の5つの艦隊へと通信を送った。

 

<こちら第二攻撃艦隊。旗艦大型戦闘艦以下、全艦準備よし>

<こちら第三攻撃艦隊。旗艦大型戦闘艦以下、全艦準備よしだぜ!>

<こちら第四遊撃艦隊。旗艦高速空母以下、全艦準備よしですわ>

<こちら第五護衛艦隊。旗艦D型デストロイヤー以下、全艦準備よしです!>

 

「よし……」

 

グスタフはそう呟くと隣に居る自身の上官である旗艦ゲルガメッシュの方を向いた。

 

「全艦、準備良しだぞ。ゲルガメッシュ」

 

「ふっふっふ……そうか」

 

ゲルガメッシュは不適な笑みを浮かべる。

 

「深海凄艦め……この作戦が無事に成功すれば、ようやくこの辺境の星系から出る事ができる。そうすればきっと総統閣下は旗艦である私をお褒めになってくれるはずだ。そうすれば……ふふふ」

 

ゲルガメッシュは下品な笑みを浮かべた。

それを側からゲルガメッシュ艦隊のメンバーが見る。

 

「うわー……アレ絶対、不順な事考えてるよ」

 

レームルがドン引きした目でゲルガメッシュを見る。

 

「ゲルガメッシュは出世の事しか考えてないから。いつも通りと言えばいつも通り」

 

「……れ、レリウドさん、何もそこまで言わなくても……本当の事ですけど」 

 

「グノールちゃんはあんな大人になっちゃダメだよ?」

 

レームルはグノールに近づき肩に腕を置いて言った。

すると、三人の様子を見ていたグスタフが騒いでいるのに気がついた。

 

「おいそこ!集中しろ!戦闘中だぞ!」

 

グスタフは声をあげる。

 

「す、すいません!すいません!」

 

グノールが頭を何回も下げて謝った。

三人は怒鳴られた為、大人しくする。

 

「まったく……ん?」

 

すると、腕を組んでいたグスタフが突然、怪訝な顔をした。

眉間にシワをよせ冥王星の方面を睨みつける。

 

「ゲルガメッシュ……」

 

「ああ、我輩も分かったぞ」

 

ゲルガメッシュとグスタフは互いに険しい表情で顔を見合わせると一回頷きゲルガメッシュは方耳に手を当てた。

 

「あー、あー、こちらガルマンガミラス帝国太陽系派遣軍、第一艦隊旗艦、ゲルガメッシュだ!地球艦隊応答せよ!」

 

ゲルガメッシュは直々に通信回線を開き直ぐ近くに居る地球艦隊へと連絡を送る。

 

<――こちら、地球艦隊、第一主力艦隊旗艦、アンドロメダだ>

 

地球防衛軍の今回の作戦の現場総指揮を取っているアンドロメダが通信に応じた。

 

「我が方の戦艦のレーダーが冥王星より出撃する敵の大艦隊をキャッチした。至急方針を一考されたし」

 

<了解した。攻撃態勢を整えてくれ。直に交戦状態へと意向する>

 

「ゲルガメッシュ了解……ふぅ」

 

ゲルガメッシュは通信を切ると息を漏らした。

 

「どうした?ゲルガメッシュ」

 

グスタフが首を傾げる。

 

「いや、地球の田舎者共に指図されるのが無性に気に入らなくてな」

 

ゲルガメッシュは右手の親指の爪を噛む。

 

「そうか?私は強い相手と戦えるなら別に良いけど……」

 

「この戦闘狂が……」

 

ゲルガメッシュはグスタフに聞こえない様に小さく呟いた。

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いや、何も……だが」

 

ゲルガメッシュはニヤっと笑った。

 

この戦いで勝てば全てが終わる。

地球に派遣されて以来、それはゲルガメッシュにとって苦痛の日々だった。

ガルマンガミラス帝国の総統、デスラー総統は地球にかなりご執心されている。

デスラー総統は地球の使者が深海凄艦の包囲網を突破しガルマンガミラス本星へとやってきた時、直ぐに地球と同盟関係を締結した。

だが深海凄艦に襲われているのは地球だけではない。ガルマンガミラスも地球と同じく襲われ生存領域を圧迫されているのだ。

正直言って戦況はおもわしくない。

だが、総統はそんな状況下でも地球へと援軍を派遣した。

これを聞いた時、最初はゲルガメッシュも喜んだ。

総統に自分の力を見せれば昇進は間違いない。そう考えていたから。

だが、地球へと派遣される艦隊の指揮官の名前を聞いた時、ゲルガメッシュは落胆した。

地球へと派遣される艦隊を指揮していたのは、銀河大戦中に東部方面軍司令を勤めていたのにもかかわらず独断専行の結果、地球にまで手を出し総統の怒りを買い更迭され階級を落とされ小艦隊の提督にまで落ちたガイデル提督だったのである。

こんな、ヤツの下について自分は大丈夫なのかと、そう考えただけでゲルガメッシュの心の不満はどんどん溜まっていった。

しかもゲルガメッシュはガルマンガミラス時代の艦娘では無く大ガミラス帝国の艦娘だ。そのため地球の事があまり好きではない。

 

だが、そんなのはもう終わりだ。

この戦いに勝てば戦線は太陽系から太陽系外へと向けられるだろう。

今までの自分の功績を考えればこのまま順調に行けばゲルガメッシュの将来は安泰なのだ。

 

「絶対に成功させてやる……全員、聞け!!」

 

ゲルガメッシュは少々前の方へ出ると振り返り大きな声を出した。

ゲルガメッシュの突然の行動にゲルガメッシュ艦隊のグスタフ達五人が見る。

 

「諸君!我々はこの作戦、絶対に成功させねばならない!我らが帝国の領域では未だに野蛮な深海凄艦共が我が帝国の神聖な領域を侵しているのだ!我々は必ず勝利し戻るのだ!そして必ずや我らが親愛なるデスラー総統閣下に勝利の報をお伝えし我輩の出世……ゴホン、あー失礼、そして、必ずや我らが親愛なるデスラー総統閣下へと勝利の報をお伝えし我らがガルマン帝国の艦娘の勇姿を全宇宙へと知らしめるのだ!デスラー総統万歳!!ガルマンガミラス帝国万歳!!」

 

「なんか、すごく胡散臭いけど……とりあえず!」

 

ゲルガメッシュの本音が出かけた演説を聴いたレームルは元気よさそうにグスタフやグノール、レリウドの顔を見た。

 

「ああそうだな、演説の内容はともかく」

 

「やるしかない」

 

「そ、そうですね!」

 

演説を聴いていたグスタフ達5人はお互いに顔を見合わせ不敵な笑みを浮かべた。

そして、全員が右手を斜めに高く上げた。

ガミラス式敬礼だ。

 

「「「デスラー総統万歳!!ガルマンガミラス帝国万歳!!」」」

 

直後、ゲルガメッシュ艦隊の五人は自然とデスラー総統とガルマンガミラスを高らかに声を上げ賞賛する。

 

「……さぁ、はじめるぞ。戦いをな」

 

ゲルガメッシュはそう呟くと自信満々の笑みを浮かべた。

 

「第二攻撃艦隊、第三攻撃艦隊は前衛に出ろ!第五護衛艦隊は第四遊撃艦隊を護れ!全空母は艦載機発艦準備!戦闘機、雷撃機、爆撃機、偵察機を準備だ!」

 

<第二攻撃艦隊了解!>

<第三攻撃艦隊了解!前へでるぜ!>

<第五護衛艦隊了解です!護衛につきます!>

<第四遊撃艦隊、所属空母の艦載機発艦準備をおこないますわ!>

 

ゲルガメッシュの命令に従い第二攻撃艦隊、第三攻撃艦隊がゲルガメッシュ艦隊の頭上を飛行してゲルガメッシュ達の前に移動する。

主に空母で編成された第四遊撃艦隊では空母の艦娘が艦載機をいつでも発艦出来るように準備を始めた。

 

「それじゃあ、私も……」

 

三段空母のレリウドも艦載機の発艦準備を行う。

すると、そんなレリウドの方をゲルガメッシュが向いた。

 

「おい、レリウド」

 

「何?」

 

レリウドはキョトンとした様子で首を傾げる。

 

「お前には我輩が直々に命令を出す。それまでは他の艦に発艦命令を出しても貴様は待機しろ」

 

「にゅ?わかんないけど、わかった」

 

レリウドは命令を承諾はするが首を大きくかしげながら理解しきれなさそうにした。

 

「おいゲルガメッシュ、私は前に出なくていいのか?この戦力なら私が前に出たほうが良いと思うんだが」

 

グスタフが今までの自分の経験から自分が前に出なくていいのかとゲルガメッシュに聞く。

すると、ゲルガメッシュは腕を組みながら眉間にしわを寄せた。

 

「馬鹿を言うな。お前は我輩の艦隊の中で最も戦闘力が強いんだぞ。お前を前面に出したら誰が旗艦たる我輩を護るんだ。それに貴様を万が一失うことになれば我輩の経歴にも今後の艦隊にも大きな打撃となるだろ」

 

「…………」

 

「何だその目は……」

 

「だめだこりゃ」

 

グスタフは苦笑いを浮かべて両手を上げて分からないポーズをする。

これが気に入らなかったのかゲルガメッシュはグスタフ達を指差した。

 

「ええい!戦闘だ!もう始まるぞ!貴様ら、もっと集中し――お?」

 

ゲルガメッシュは声を上げたが途中で静かになった。

 

「……どうした?」

 

グスタフが険しい表情でゲルガメッシュに聞く。

すると、ゲルガメッシュは不敵な笑みを浮かべた。

 

「全艦よく聞け!地球艦隊の旗艦より要請が来た!これより地球艦隊と共に我が艦隊はいよいよ敵、深海凄艦へと一斉攻撃をしかける!野蛮な深海凄艦を一匹残らず殲滅せよ!地球艦隊に我がガルマンガミラスの力を見せ付けるのだ!」

 

ゲルガメッシュの言葉がガルマンガミラス艦隊各艦娘に響いた。

グスタフ達、ガルマンガミラス艦隊の艦娘たちに緊張が走る。

 

「全艦戦闘配備!目標、前方の深海凄艦艦隊!」

 

ゲルガメッシュの指示によってゲルガメッシュやグスタフ、グノール、レリウド、レームルを含めた各ガルマンガミラス艦達各自が迅速に戦闘態勢を整え砲やミサイル、魚雷発射管を準備し照準を深海凄艦へと合わせる。

 

<第二攻撃艦隊、発射準備良し!>

<第三攻撃艦隊、発射準備良し!>

<第四遊撃艦隊、発射準備良し!>

<第五護衛艦隊、発射準備良し!>

 

各艦隊から用意良しの報告の通信が響く。

 

「……ゲルガメッシュ」

 

グスタフが通信に耳を澄ませながら全砲を深海凄艦へと向けゲルガメッシュの方を見る。

 

「よし……発射!!」

 

ゲルガメッシュの威勢の良い号令がガルマンガミラス艦隊中に通信を通じて響き渡った。

 

その瞬間、命令を受諾したガルマンガミラスの各艦娘の持つ砲から独自の砲撃音と共に赤い閃光が一斉に放たれる。

地球艦隊もガルマンガミラス艦隊とほぼ同時に旗艦アンドロメダの指示によって一斉に蒼いビームを発射した。

砲撃に関して両者に違う点があるとすればビームの色と音だった。

ガルマンガミラス艦からは赤いビームがガミラス艦独特の発射音と共に発射されるのに対し地球艦も青いビームを地球艦独特の発射音と共に発射させていた。

 

赤色の光線。

 

ガルマンガミラス各艦から一斉発射されたビームと地球艦隊のショックカノンのビームの光は真直ぐと敵、深海凄艦の艦隊へと撃ち込まれた。

数百を超える戦力のガルマン、地球の連合艦隊から一斉発射された無数のエネルギー弾は冥王星に巣食う深海凄艦の艦隊へと飛んでいき敵艦を貫通、爆散、蒸発させていく。

 

<第一射命中!>

<敵艦隊、被害甚大!>

 

「よしよし……全艦、引き続き攻撃開始!連続射撃だ!撃って撃って撃ちまくれ!!」

 

ゲルガメッシュは報告を聞きご機嫌よさそうにするとさらに命令した。

 

敵艦隊はガルマン、地球艦隊の突然の攻撃にまだ対応が追いついていない様子。

ガルマン艦隊と同じように地球艦隊もこの気に乗じて電撃に一気に敵を殲滅する構えのようだ。

両軍は次々と砲撃を続行し深海凄艦に攻撃を仕掛ける。

深海凄艦側もわずかばかりの反撃の砲撃を撃ってきたがそれも直にやんだ。

 

「よーし、撃ち方やめい!ふん、たわいもない。グスタフ、戦況はどうなっている?」

 

「今のところ順調だな。敵の艦隊は迎撃の準備も整っていない。たぶん前回の海王星の戦闘で戦力を使いすぎたんだろう。戦力比はそうだな……5対3といったところか」

 

「ふっふっふ、ならば突撃あるのみだ!全艦、敵艦隊に向けて突撃!前進だ!」

 

「おい、おい、ゲルガメッシュ。この作戦は地球艦隊との共同作戦なんだ。ちゃんと進撃スピードはあわせろよ?」

 

ゲルガメッシュの調子に乗った様子にグスタフが心配そうに言う。

 

「わ、わかっているわそれくらい!こ、言葉のあやだ!全艦、地球艦隊と進撃速度をあわせて進撃!くれぐれも先走るなよ!」

 

ゲルガメッシュはグスタフの注意に対して若干慌てた様子で各艦に指示を出した。

その様子をグノール、レリウド、レームルも心配そうな視線を送る。

 

「うちの旗艦様は大丈夫かねぇ……」

 

レームルが苦笑いを浮かべながらグスタフに聞こえないよう秘匿回線でグノールとレリウドに話しかける。

 

「しょ、正直言うと指揮に関しては地球が羨ましいです」

 

「お、グノールちゃん言うねぇ」

 

「……そ、そうでしょうか?」

 

「グノールは実は腹黒」

 

「れ、レリウドさん!私、腹黒なんかじゃ……」

 

レリウドの言葉にグノールは必死に否定する。

 

「……ゲルガメッシュは」

 

「む、無視!?」

 

「ゲルガメッシュは戦闘の指揮はダメダメだけど、ゲルガメッシュといれば生存率が上がる。あれは良い事じゃないけどある意味才能」

 

「うーん、確かにそうかも」

 

レリウドの話にレームルは一度頷き納得を示した。

だが、その一方でグノールは理解し切れていない感じだ。

 

「……そ、その話、よく聞くんですけど、なんでなんですか?」

 

グノールは首を傾げる。

 

「あー、グノールちゃんはそう言えば私達と一緒になってまだ日が浅いから知らないのか」

 

「ど、どういう意味ですか?」

 

「この際教えちゃおっかな。ねぇ?レリウドちゃん」

 

レームルの言葉にレリウドは静かに頷く。

 

「うん。いいと思う。隠しても、いつかは、絶対に知る事になる」

 

「OK」

 

レームルはレリウドにそう言うとグノールの方を見る。

 

「グノールちゃん。ゲルガメッシュさんって結構、嫌ってる人が多いじゃない?付き合いの長い私達はともかく」

 

「そ、そうですね……」

 

「その嫌われているのには理由があるんだけど、実はうちの旗艦のゲルガメッシュさんは……」

 

グノールは生唾を飲み込んでレームルの話に聞き入った。

だが、ちょうどどの時。

 

<空母各艦へ!攻撃機部隊発艦せよ!目標は――>

 

地球艦隊旗艦からの通信が入ってきた。

 

「よし、聞いたな!我々も発進だ!全空母、攻撃機隊発進!!」

 

ゲルガメッシュが冥王星を真直ぐ指差して命令する。

 

「おっと、今はまずいからこの話は戦闘が終わった後でね」

 

「は、はい……」

 

事態が再び動き出したためレームルは話すのを止めた。

グノールは少し不満そうだったが仕方ないので我慢する事にした。

第四遊撃艦隊の高速空母と三段空母の面々は爆撃機と雷撃機、偵察機を順次、即座に発艦させる。

 

「ねぇ、ゲルガメッシュ」

 

「ん?なんだレリウド」

 

レリウドがゲルガメッシュにキョトンとした表情で話しかける。

 

「私は本当に発艦させなくて良いの?」

 

「ああ、お前はまだ良い」

 

「分かった」

 

レリウドは表情には出していないが、何故、自分だけ艦載機を発艦させないのか疑問だった。

だが、疑問に思っていてもそれを口に出す事はない。レリウドは敵が来ても対応できりように三連装砲を構えパルスレーザー砲を準備する。

 

 

 

今回の航空機隊の攻撃手順はこうだ。

まず地球のコスモタイガー隊とガルマンの急降下爆撃機、戦闘機部隊が共同で敵の航宙戦力を叩き、その後ガルマンの雷撃機と地球の爆撃機が冥王星の偵察けん地上攻撃を行うというものだ。

冥王星の汚染された大地には深海凄艦の港湾凄姫や飛行場姫、宇宙港姫等の惑星配備型の深海凄艦が居ると推測されている。

艦載機の地上攻撃で撃滅できればそれで良し、できなければ艦隊が宇宙から攻撃するのだ。

 

そうこうしている内にガルマン艦隊及び地球艦隊の空母から発艦した攻撃機部隊は一目散に深海凄艦の艦隊へと群がった。

深海凄艦側は既に空母がやられてしまったのか中破してしまったのか分からないが迎撃機を出す気配はなく戦艦や巡洋艦、駆逐艦を問わず主砲やパルスレーザー等で迎撃を試みようとしていた。

だが、既に大砲撃で大損害を受けた深海凄艦の艦隊には抵抗する力は殆ど残されていなかった。

 

蹂躙。

 

この二文字がこの戦闘における最も相応しい言葉といえよう。

それほどまでに敵は疲弊していたのだ。

 

 

 

「さすが地球の戦闘機」

 

レリウドは戦闘を眺めながら感想を呟いた。

地球の艦載機であるコスモタイガーはその連度の高さからかなり有名だ。

ガルマンガミラスにも強力な戦闘機はいくつもあるが地球の艦載機の性能、連度はかなり別格だ。

むしろ、戦闘機の性能よりも連度の方が遥かに驚異的だといえる。

そのためレリウドは自身の持てるレーダーやセンサーの全てを使って静かに艦載機戦の様相を見ていた。

 

<地上攻撃機部隊、敵艦隊を突破!これより冥王星へと降下する!>

<了解、敵を発見しだい直ちに報告せよ>

 

旗艦、空母の艦娘の報告が宇宙空間を行きかう。

冥王星へ降下してから、しばらくは特に状況は変わらない様子だがしばらくして状況が動き出した。

 

<こちら地球防衛軍第8航空隊!敵、惑星配備型の深海凄艦を多数発見!位置は冥王星の南半球、東経――>

 

どうやら先に見つけたのは地球の艦娘のようだった。

 

<敵の数は!?>

<惑星配備型は飛行場姫8、集積地棲姫16、港湾棲姫2、宇宙港姫1。また、停泊中の泊地棲姫が6、超弩級宇宙戦艦級10、巡洋艦級6です!敵の映像を送ります!>

 

「おお……」

 

送られていた映像を見た各艦隊でどよめきの声が上がった。

冥王星にいる敵の戦力の多さに驚いたのだ。

 

「こしゃくな奴め……まだ、これほどの戦力を隠し持っていたとは……」

 

ゲルガメッシュも面倒くさそうな表情をする。

 

「だが、解せんな。なぜ、それだけの戦力がありながら艦隊を展開していなかったんだ?」

 

「……出撃してこないところを見ると、たぶん先の戦闘で損傷したのを修理でもしていたんじゃないか?深海凄艦からしてみたら私達の電撃進撃はかなり辛かっただろうからな。消耗していてもおかしくない」

 

「なるほどな……それで?グスタフ、今の地上攻撃機部隊で撃滅できる戦力のか?」

 

ゲルガメッシュはグスタフの考察を聞いた後、それに納得し聞く。

 

「ん~……どうだろうな。正直、艦載機戦はあまり詳しくないからな……。おい、レリウド。空母のお前なら分かるんじゃないのか?」

 

話を振られたレリウドも少し考える。

 

「たぶん……全部は無理。いけても半分くらいだと思う」

 

「という事は、艦載機の地上攻撃後は私達、艦娘が直接、惑星配備型を攻撃するというわけかだな。まぁこの大艦隊なら決着は一瞬でつきそうだが。まぁ、でも安心しろ!もしもの時はこの私が自慢のこの惑星破壊プロトンミサイルであの星ごと消し去ってやるさ!」

 

グスタフはテンションを上げて自身がまたがっているグスタフの身長と同じくらいはある惑星破壊ミサイルを片手で軽々と持ち上げるとゲルガメッシュとレリウドに自慢するように見せた。

惑星破壊プロトンミサイルはガルマンガミラスが誇る超大型ミサイルで一発で惑星を破壊する威力があるミサイルだ。

ミサイルなのに防御力も高く敵艦が追突したり砲撃が当たったとしてもそう簡単には壊れる事はない。

その威力は艦娘になってミサイルがだいぶ小さくなっても同じ威力を持っている。

 

「お前はバカか!惑星破壊ミサイルは地球側から撃つなと止められているだろ!!貴様が何か失態をすればその責任は我輩に来るんだぞ!!自制しろ!」

 

ゲルガメッシュは焦った様子でグスタフを指差して注意する。

 

「す、すまん。惑星破壊となるとつい……」

 

グスタフは顔を赤くして恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。

 

「以後、気をつけろよ」

 

「……了解」

 

レリウドはそんな二人の姿を見てこっそりと笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

<地上攻撃部隊より入電!第一次攻撃成功!繰り返す!第一次攻撃成功!>

<飛行場姫5、集積地棲姫6、港湾凄姫2を撃破!宇宙港姫にはダメージを与えられなかったものの停泊中の泊地棲姫への爆撃成功!敵、被害甚大!>

<こちらの被害は!?>

<敵が迎撃機を展開した事により若干の被害を受けましたが補給後、戦闘継続は可能!>

<いや、艦載機隊は補給の為、帰還せよ。あとは衛星軌道から艦隊による一斉砲撃でしとめる>

<了解!>

 

「どうやら、私の惑星破壊ミサイルの出番はなさそうだな」

 

グスタフが空母と地球歓待の旗艦との間を飛び交う通信を聞いて名残よさそうに惑星破壊ミサイルに再びまたがった。

ちょうどその時、旗艦アンドロメダから通信が送られてきた。

 

<全艦隊につぐ。これより冥王星の地表に居る敵、惑星配備型深海凄艦へと総攻撃を開始する!全艦、冥王星の付近まで進撃開始!また、敵の残存艦がまだ居る可能性がある、見つけ次第攻撃せよ!>

 

「はぁ……ほら!全艦、あの地球艦の指示に従い冥王星付近まで進撃だ!前進!」

 

ゲルガメッシュはアンドロメダの指示に従い嫌々ながらも指揮下の艦隊を移動させる。

さっきまでは遠くから小さな球くらいに見ていた冥王星がどんどん近づいていき汚染され黒く染まった冥王星の衛星軌道付近にまで接近する。

先に地上を攻撃した艦載機も艦隊の到着前に一足先に一部部隊を除いて空母へと帰還した。

 

「ゲルガメッシュ、もうじき冥王星の衛星軌道上付近だ」

 

「全艦、地上攻撃用意!目標、惑星配備型深海凄艦!」

 

ゲルガメッシュは艦隊に指示を出す。

ガルマン艦隊の各艦は主砲やミサイル発射管を冥王星の地表へと向けた。

地球艦隊もショックカノンの照準を惑星配備型深海凄艦へと合わせる。

 

見ると、地上では惑星配備型の深海凄艦が続々と迎撃機や停泊していた艦を発進させていた。

さらに宇宙港姫は上空を見上げ大きく口を開け咆哮を上げると宇宙港姫の周りの地面がひび割れ崩れ隆起しそこから周囲数キロメートルに渡って黒々とした生物と機械を融合させたような巨大な物体が姿を現しその砲口を上空に向けて迎撃準備を整えた。

 

両陣営の間に緊張が走る。

 

<全艦……全砲門一斉射、撃てぇ!!>

 

アンドロメダの力のこもった声が通信で全艦隊に伝わった。

それと同時にガルマン・地球連合艦隊は冥王星に巣食う深海凄艦を、太陽系に巣食う最後の深海凄艦に向けて一斉攻撃を開始する。

 

ミサイルや宇宙魚雷、ショックカノン、ビームが連続して発射される。

 

深海凄艦側も地表から反撃する為、続々とビーム砲やミサイルを発射した。

 

先の戦闘とは比べ物にならない程の敵の攻撃がガルマン・地球連合艦隊に襲い掛かる。

 

「くっ……!惑星配備型風情が!!」

 

ゲルガメッシュは忌々しそうに言い放った。

深海凄艦のビームが何発もゲルガメッシュやグスタフ達をかすめる。

 

<被害報告!こちら第二攻撃艦隊!大型戦闘艦1隻中破!>

<こちら第三攻撃艦隊、ちょっとまずい状況だ!中型戦闘艦1隻が轟沈!2隻が中破!>

 

「ええい!貴様ら何をやっている!さっさと撃ち倒せ!!撃って撃って撃つんだ!!」

 

指揮下の艦隊の被害報告を聞いたゲルガメッシュは苛立った様子を見せた。

戦闘中にもかかわらず親指の爪を噛む。

 

だが、作戦は順調だ。

 

ガルマンと地球の艦隊攻撃は確実に惑星配備型に大きなダメージを与えている。

圧倒的な戦力を有しているのはあくまでガルマン・地球連合艦隊の方であり深海凄艦側はあくまで固体の戦闘能力が強いだけだ。

電撃的奇襲作戦によって主力艦隊の大部分を失い戦略の無いただ高い火力だけが、とりえだけの存在となった深海凄艦には勝ち目は無い。

 

この場に居る全ての艦娘が勝利を確信していた。

この冥王星を奪還すれば地球連邦は太陽系の全ての惑星を掌握する事になる。

そうすれば、地球の安全はある程度、保たれるし外宇宙へと進出し友好国の支援や偵察なども出来るようになるのだ。

 

だが、その時だった。

 

<緊急!緊急!>

 

「ん?なんだ!この忙しい時に!?」

 

ゲルガメッシュが若干、荒っぽく応対する。

通信は主に空母で編成されている第四遊撃艦隊からだった。

 

<こちら第四遊撃艦隊の旗艦、高速空母の――ですわ!私の部下の高速空母の娘の偵察機が冥王星の裏側を偵察中に何かを見つけたようなんですの!変わりますわね!>

 

そう言うと第四遊撃艦隊の旗艦は通信を部下の空母に代わった。

 

<だ、第四遊撃艦隊、二番艦の高速空母――です>

 

「あーそれで?何を見つけたんだ?くだらない事だったら怒るぞ!?」

 

<す、すみません!>

 

「おい、ゲルガメッシュ、脅えてるじゃないか!そんな対応ではダメだ。私にかせ!」

 

ゲルガメッシュの短気な対応にグスタフが半ば無理やり通信を変わる。

 

「お、おい!」

 

グスタフの行動に声を上げるゲルガメッシュを無視してグスタフは続けた。

 

「こちら、戦闘補佐艦のグスタフだ。何を見つけたんだ?」

 

グスタフは落ち着いた様子で聞く。

 

<じ、実は、ぼくの偵察機が冥王星の裏側を偵察して帰還する途中、外宇宙より飛来する国籍不明の超大型ミサイルを発見したんですけど……>

 

「「…………」」

 

高速空母からの突然の報告に、聞いていたグスタフとゲルガメッシュは数秒沈黙した、そして。

 

「ちょ、超大型ミサイルだと!?」

 

「そ、それで、そのミサイルの情報は!?どこのミサイルだ!?国籍は!?艦娘のミサイルか!?」

 

グスタフが声を上げたのが、かわきりだった。

グスタフに続いてゲルガメッシュも頭を混乱させた様子で叫ぶ。

その二人の異変にレリウドやグノール、レームルも砲撃戦を展開しながらも気がついた。

 

空母からの緊急報告は続く。

 

<こ、国籍は分かりません。ガルマンガミラス帝国、地球連邦、そのどちらにも登録されていない物でボラー連邦、ゼニー合衆国、ガトランチス、ディンギル……いずれの物とも違います>

 

「では、深海凄艦か!?」

 

<い、いえ、どうも違うみたいです。反応から艦娘、深海凄艦どの装備でもありません。望遠観測によると超大型ミサイルは計3発。大きさは少なくとも1000メートル以上はあって、外宇宙より三千宇宙ノットの速度で冥王星へと高速接近中です!このままではあと数分で冥王星へと到達します!>

 

「「…………」」

 

ゲルガメッシュとグスタフは報告を聞き入れて再び沈黙した。

困惑と言っても良いだろう。

 

ゲルガメッシュとグスタフの頭の中はいくつもの疑問が浮かんでいた。

一体何処の星間国家がこんな宇宙の危機にミサイルを撃ち込んできたのか。

何故、攻撃をしてくるのか。

様々な疑問が頭を駆け巡る。

しかし、考えているような、そんな悠長な時間は無かった。

ミサイルは後、数分で冥王星近海にまで到達するのだ。

二人は頭の中の疑問をむりやり払いのけるとこの事態にどう行動するか瞬時に考えた。

 

「と、とりあえず地球艦隊に報告しよう!」

 

ゲルガメッシュはグスタフに提案する。

だが、グスタフは浮かない表情をした。

 

「無理だ……」

 

「ど、どうしてだ?」

 

「今、地球艦隊は惑星配備型と激しく交戦している。通信も込み合っているはずだ。何せ地球とガルマンでは通信技術上どうしても若干のタイムラグが出る。のこり数分では精々警告を出すの限界だ。それに残り数分では我々も逃げられない……」

 

「そ、それじゃあ、どうすればいいんだ!?」

 

「お前はとりあえず、地球艦隊に超大型ミサイル接近の警報を発信しろ。そうすれば嫌でも地球艦隊の旗艦は自分から連絡をとってくるはずだ。その方が私達からするよりも早い」

 

「わ、わかった!」

 

ゲルガメッシュはグスタフの提言に頷くと直ちに地球艦隊へミサイルの接近警報を発信した。

 

「発信したぞ!で!?我輩たちはどうする!?」

 

「私に任せろ……まぁ惑星破壊ミサイルでない事を祈るしかないが……全艦!聞いての通りだ!現在、外宇宙より何者かの超大型ミサイルが接近中だ!全艦!惑星配備型深海凄艦との交戦を維持しながら緩やかに後退!対惑星破壊ミサイル防御陣形を取れ!ミサイルの冥王星への着弾に備えろ!一応……間に合うとは思えないが小ワープの準備!」

 

<<<<了解!!>>>>

 

ガルマン艦隊はグスタフの命令で一斉に艦隊の陣形変更を行った。

グスタフの言った防御陣形はその名の通り惑星破壊ミサイルに対応する為の防御陣だ。

この陣形は惑星がミサイルによって爆発した時に一艦でも多くの艦を生き残らせる為の陣形だが今、ガルマンと地球の艦隊は冥王星に最接近している。

この状況でミサイルが着弾しそれが惑星破壊ミサイルであった場合、生き残る事はほぼ不可能だ。

本当ならば少しでも遠くへ逃げるのが一番だが、今は地球艦隊の指揮下のため勝手な行動はガルマンガミラスやデスラー総統の顔に泥を塗りかねない為できなかった。

 

<ちょ、超大型ミサイル接近!冥王星近海に侵入!!>

 

その報告を聞いた瞬間、ガルマン艦隊の面々は身構える。

 

しかし5秒、6秒、7秒、8秒、9秒……。

 

到達予想時間は何も無く過ぎていった。

 

「……な、なにも起こらない?」

 

「ど、どういうことだ……?まさか不発?」

 

ミサイル到達予定時刻を迎えても何も起こらない状況に一同は困惑を示し周囲をキョロキョロ見回しながら状況を確認する。

 

「はぁ……どうやら、取り越し苦労だったようだな」

 

ゲルガメッシュが安堵の表情を浮かべる。

だが、その時。

 

<き、緊急事態発生!緊急事態発生!こちらは地球艦隊旗艦、アンドロメダだ!全艦、原宙域より緊急離脱!!後退せよ!!繰り返す!後退せよ!!>

 

アンドロメダがかなり焦った様子で通信を放ってきた。

レリウドやグノール、レームルがゲルガメッシュを見る。

そんな視線を感じてゲルガメッシュは首を大きく横に振った。

 

「い、言っておくが我輩はミサイルの接近警報を出しただけだぞ……?まだ、詳しい事は説明していないが……それにミサイルは不発だったんじゃ……」

 

「ゲルガメッシュじゃないという事は……」

 

否定するゲルガメッシュを見てグスタフは警戒した様子で周囲を睨み付ける。

 

「あ、あれは……」

 

するとグノールが小さく呟いた。

 

「ど、どうした、グノール?」

 

グノールの方をゲルガメッシュが見る。

 

「あ、あれを……」

 

グノールはそう言うとある方向を指差した。

 

「なんだ、あれは……」

 

グスタフはグノールの指さした方を見て目を見開きその正体をレーダーで知ると顔を青ざめる。

グスタフだけではないその方向を見た全ての者が顔を青ざめていた。

 

 

 

それは、冥王星の裏側から来ているように思えた。

黒く大きな雲。

宇宙空間は漆黒なのだがその雲はそれよりも黒く思えた。

雲はどんどん大きくなってゆく。

一瞬、目にした時は誰もが思った。

なんだろう、あれはと。

だが、レーダーやセンサーが雲を映した瞬間、誰もが正体に驚愕し戦慄した。

 

 

 

「し、深海凄艦だと……」

 

「すごい数……でも一体、どこから」

 

「こ、こんなのどうやって戦える数じゃ……」

 

グスタフとレリウド、グノールが呟くように言った。

我に返ったグスタフが急いでゲルガメッシュの方を向く。

 

「げ、ゲルガメッシュ!急いで指揮を!早くしなければ手遅れになる!!」

 

「そ、そんなの分かっておるわ!」

 

「ならば、急いで地球艦隊と共に後退し迎撃の態勢を――」

 

整えよう。そうグスタフがゲルガメッシュに提案しようとたその時。

 

 

 

「……撤退!!全艦直ちに小ワープで撤退だ!!ワープしろ!!」

 

 

 

ゲルガメッシュが叫ぶように命令した。

 

「なっ!?」

 

グスタフを含めその場に居たガルマン艦隊の艦娘たちは深海凄艦の大群とは別の意味で驚愕する。

 

「げ、ゲルガメッシュ!貴様、正気か!?地球艦隊を置いて戦場から逃げると言うのか!?」

 

グスタフがゲルガメッシュに詰め寄った。

するとゲルガメッシュは血相をかいた顔になる。

 

「死にたいのか貴様は!?」

 

ゲルガメッシュはそう言い放つと真っ先に敵に背を向けエンジンをフルスロットルで発進させた。

 

「ま、待て!」

 

グスタフはゲルガメッシュを止めようとする。

 

「ど、どうするんですかグスタフさん!?」

 

グノールはゲルガメッシュの突然の逃走に困惑した様子で判断をグスタフに委ねる。

 

「くそっ!またか!!」

 

だが、グスタフはグノールの質問に答えず苛立った様子で自身の頭を押さえた。

そのけんまくぶりにグノールは身を引きレームルの近くによる。

 

「れ、レームルちゃん……どうしよう……」

 

「よし、よし、大丈夫だから。絶対に大丈夫だからね」

 

泣きそうな顔になるグノールをレームルは軽く抱きしめ優しい言葉をかける。

だが、そのレームルの表情にもどこかこの事態の深刻さがにじみ出ていた。

 

「い、今、グスタフさんがまたかって言ってたけど……」

 

「……ねぇ、グノールちゃん、私がさっきゲルガメッシュさんは他の艦娘からよく嫌われているって言った話覚えている?」

 

「え?う、うん……覚えてるけど」

 

「まさか、こんな早く時がくるなんて思わなかったけど……グノールちゃん、時間が無いから落ち着いて聞いてね。実はゲルガメッシュさんは、そのなんていうか……普段の指揮は中の下か中くらいじゃない?だけど、ある事だけはガルマンガミラスの艦娘のなかで一番早いの」

 

「……なにが早いんですか」

 

「……逃げ足がね」

 

「に、逃げ足?」

 

「そう、逃げ足がね……ゲルガメッシュさんは総統への忠誠心は人一倍あるけど自分の身が本当に危なくなった時はすぐに逃げちゃうのよ」

 

「ど、どうしてそんな人が旗艦になれるんですか!?」

 

グノールは当然の疑問を投げかける。

 

「ゲルガメッシュさんは良い意味でも悪い意味でも上司に媚びるのが得意だから……これが、ゲルガメッシュさんが嫌われている大きな理由。自己保身で野心家で、普段は威張ってるけどいざって時は正直、あんまり役にはたたない旗艦。そして、逃げ足が加わって、それがゲルガメッシュさんが指揮している艦隊の生存率が高い理由……」

 

「そ、そんな……」

 

グノールがレームルの話を聞いてゲルガメッシュという存在をようやく理解し落胆した。だが、そんな、とっくにワープして逃げていてもおかしくないゲルガメッシュから通信が来る。

 

<おい!貴様ら!!何をグズグズしている!?早くしろ!!早くせんと本当に先に行くぞ!!>

 

望遠で見るとゲルガメッシュは遠くからこっちに文句を言っていた。

レームルは苦笑いを浮かべる。

 

「あれが私達の旗艦だよ。正直言って他の艦隊の旗艦の方が旗艦らしい。でも、悪い艦娘ではないんだけどねぇ……あんな性格だけど何故か私も嫌いにはなれないんだよねぇ。その辺はグノールちゃんにも分かるでしょ?」

 

グノールは遠くから焦った様子で声を上げているゲルガメッシュを望遠で見る。

その表情を見てさっきまで大きく落胆していたグノールは小さく笑う。

 

「わ、私にはまだ、ゲルガメッシュさんは良く分かりませんが……悪い艦娘ではない事くらいは分かります。本当に悪い艦娘だったら私達なんか置いてとっくに逃げてると思います」

 

「……そうだ。奴は悪い奴ではない。それに奴が逃げ出すのは艦隊に危機が迫っているという証だ」

 

「グスタフさん……」

 

「うん。ゲルガメッシュはああ見えて人一倍臆病だし逃げ出す事もあるけど悪い艦娘じゃない。あの性格はきっと昔の艦長か指揮官が原因だと思うけど、ずっと一緒にいれば不思議と嫌う事はできない、と思う」

 

「レリウドさんも……」

 

グスタフとレリウドがゲルガメッシュの方を見る。

 

「だが、軍人としてはなってない!だから、私がいつか必ず奴の媚を私の実力で旗艦の座を奴から奪い取ってこの手で必ず奴を改心させてみせる!」

 

グスタフはガッツポーズを決めながら言った。

 

「いいと思うな、それ。グスタフ、グッジョブ」

 

レリウドはグスタフにグットサインをだした。

 

<おい!!何をしているんだ!!もうじき、敵の射程圏内に入るぞ!!早くしろ!!>

 

ゲルガメッシュが再び叫ぶ。

グスタフはそれを聞くと険しい表情に戻った。

 

「……どうやら、ここは奴の指示に従うしかないようだな」

 

グスタフは冥王星の方向を見る。

外宇宙の方角からやってきた深海凄艦の大軍勢はますます近づいていた。

とても戦える数ではない。

 

「全艦!ゲルガメッシュの指示に従い撤退だ!!全艦、小ワープ用意!ゲルガメッシュに続け!!」

 

グスタフはそう各艦隊に指揮を出すとエンジンの出力を上げてゲルガメッシュの居る方へと向った。

グスタフはゲルガメッシュに追いつく。

 

「遅いぞ!!貴様ら!!何をしていた!!」

 

「まぁまぁ、ゲルガメッシュさん、今はそんなこと言っている場合じゃないでしょ?」

 

グスタフへ詰め寄るゲルガメッシュをレームルがなだめる。

 

「おお、そうだった。そうだった。全艦そろったな。よォし!!全艦ワープ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様ら!あの光景を見てもまだ、その口がきけるか!!」

 

ゲルガメッシュは冥王星で深海凄艦に敗退し現在進行形で激しい攻撃を受け壊滅の危機に瀕している地球艦隊を指差す。

どうやら地球艦は逃げ切れた艦から順にワープして戦闘宙域から脱出しているようだ。

もはや艦隊の統制はとれていない。

 

「おい、ゲルガメッシュ。第一攻撃艦隊と第二攻撃艦隊、第三遊撃艦隊、第四護衛艦隊と連絡がついたぞ」

 

ワープ後、はぐれてしまった指揮下の艦隊と連絡を取っていたグスタフがゲルガメッシュに報告する。

 

「おお、それで?奴らは今何処にいる?」

 

「あの状況でワープ座標を上手く調整できなかったからな。合流はどうも地球か火星で行ったほうがよさそうだ」

 

「そうか……無事なんだな?」

 

「ああ、大丈夫みたいだ」

 

グスタフは笑顔で頷く。

 

「なら、我々もこんな所にもう用はない!これだけ艦隊がめちゃくちゃな状況なんだ。我輩達へのお咎めも無いはずだ!」

 

「はぁ……胸を張って言う事か……」

 

「ええい!とにかくだ!これより通常航行で火星前線基地へと向かう。途中で地球の残存艦がいれば救助しろ!出来るだけ多いほうが見栄えも良い!それじゃあ、ゲルガメッシュ艦隊!火星へ向けて発――」

 

発進。そうゲルガメッシュが言おうとしたその時だった。

 

「な、なんだ!?この光は!?」

 

突如、冥王星の方角から眩い強烈な白い閃光が発しられた。

 

「こ、今度は一体なんだって言うんだ!?」

 

「なんかヤバそう」

 

「言ってる場合か!!」

 

ゲルガメッシュがレリウドに突っ込みを入れる。

 

「あ、あの光どんどん大きくなっていませんか……?」

 

「ま、まずい!?そ、そうだ!ワープだ!!全艦ワープ!!」

 

「ワープしたばかりだからワープはしばらく使えない」

 

「そ、そうだった……」

 

ワープを思いついたゲルガメッシュだったが、レリウドに諭されて直ぐには不可能である事に気がつく。

 

光は冥王星を飲み込み深海凄

艦の艦隊すらも飲み込む。

そしてその光は急激に巨大化しゲルガメッシュ達に迫ってきた。

 

「ぜ、全艦、回避ー!!回避だあああああああ!!」

 

「か、回避って何処に!?」

 

レームルが大きな声を出す。

 

「……手遅れか」

 

グスタフは悟ったように腕を組むと静かに目を瞑った。

 

「あ、あわわわわ……」

 

「グノールちゃん!!」

 

レームルは叫ぶと混乱したたずむばかりであったグノールを抱きせ光から護ろうと光に背を向ける。

 

「マジですか……最期に艦載機、発進させてあげたかった……」

 

レリウドは自身の飛行甲板を抱え目を瞑った。

そしてゲルガメッシュは、

 

「わ、我輩はまだこんな所で沈むわけには……我輩は手柄を上げて総統閣下にお喜びしてもらい我輩も出世街道を……ぬ、ぬわああああああああああああああああああああああああああ――――――!!」

 

ゲルガメッシュのこの叫びを最期にガルマンガミラス帝国東部方面軍太陽系派遣艦隊ゲルガメッシュ艦隊は冥王星の戦闘宙域付近から発生した謎の光に飲み込まれていくのであった。

 

はたして、ゲルガメッシュ艦隊の命運はここで尽きてしまったのか。

 

突然、外宇宙より現れた超大型ミサイルと深海凄艦の大軍勢。

これが何を意味するのかこの時はまだ誰も知らない。

全ての正体が分かるのはまだ、先の事なのだ。

 

敗走するガルマン地球連合艦隊。

 

はたして地球はこの危機を乗り越える事ができるのか。

 

地球の運命やいかに。

 

 




ガルマンガミラスの艦娘

共通した特徴、全員、肌が青い。

【シュルツ艦・ゲルガメッシュ】

 【概要】
 ・シュルツ艦の同型艦と考えられるゲルガメッシュの艦娘。
  ドロップされた時から記憶喪失の為、来歴不明。
 ・元々は他のシュルツ艦とは違う装備を持っていたが研究の為、全て撤去され従来
  のシュルツ艦の装備が与えられた。
 【外見】
 ・三連装無砲身型主砲2基、中型三連装砲1基、小型三連装砲4基
  魚雷発射管多数の艤装を装備。
 ・髪型はツインテール、髪色は薄紫
 ・艤装以外はマント付きのガミラスの指揮官制服を着ている。
 ・胸Eカップ
【性格】
 ・自己保身で野心家。

【グスタフ艦】

 【概要】
 ・グスタフ艦の艦娘。
 【外見】
 ・惑星破壊プロトンミサイル1基、正面ミサイル発射管1基、三連装砲1基
  回転速射砲2基、三連装ミサイル発射管2基の艤装を装備。移動する際によ
  く自分の背丈ほどの惑星破壊ミサイルにまたがって移動している。
 ・髪型はショートボブ、髪色は茶色。顔の左の頬に傷。
 ・艤装以外はマント付きのガミラスの指揮官服を着ている。
 ・胸Fカップ。
 【性格】
 ・戦闘好きでがさつな性格。

【駆逐型デストロイヤー・グノール】

 【概要】
 ・駆逐型デストロイヤーの同型艦、グノールの艦娘。
 ・ゆきかぜのミサイルで轟沈した艦。
 【外見】
 ・三連装無砲身砲5基、舷側部大型レーザー砲2基、五連装パルスレーザー
  機銃2基の艤装を装備。頭には艦の一番の特徴とも言える艦首の目玉状の
 パーツをかたどったヘルメットの様な艤装を被っている。
 ・髪型はセミロング、髪色は紫色。
 ・艤装以外は宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ちに登場した一般ガミラス兵の
  制服を着ている。身長は部隊内で一番低い。
 ・胸はAカップ。
 【性格】
 ・大人しい性格

【三段空母・レリウド】

 【概要】
 ・三段空母の同型艦、レリウドの艦娘。自動惑星ゴルバとの戦いで轟沈した艦。
 【外見】
 ・飛行甲板3基、三連装主砲1基、対空パルスレーザー砲の艤装を装備してい
  る。艦載機も60機搭載しておりガミラスファイター、急降下爆撃機、雷撃機
  を装備。飛行甲板は2枚を両肩に一枚を前に装備し鎧の様に装備している。
 ・髪型はショート、髪色は白色。
 ・艤装以外はマント付きのガミラスの指揮官服を着ている。
 ・胸はBカップ。
 【性格】
 ・クールな性格。

【駆逐型ミサイル艦・レームル】

 【概要】
 ・駆逐型ミサイル艦の同型艦、レームルの艦娘。完結篇に登場したタイプ。
 【外見】
 ・ミサイル発射管型ビーム砲4基、後部大型レーザー砲1基、三連装無砲身
  砲1基の艤装を装備している。ミサイル発射管型ビーム砲を含めた特徴的な
  目玉型の艦首型艤装を片手に装備している。戦闘時には両手持ちである。
 ・髪型は舞風風のポニーテイル、髪色は金色。
 ・艤装以外は宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ちに登場した一般ガミラス兵の
 制服を着ている。
 ・胸はCカップ。
 【性格】
 ・つねに明るい性格

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