「――さん」
誰の声だろう?
誰かの声が聞こえる
「――マトさん」
この声には聞き覚えがある
でも思い出せない、頭がぼやっとする
沖田艦長でもないし、古代の声でもない、そもそも男の声じゃないし
と言う事は雪さんかな?
またいつものように古代とおのろけ話でもしているのだろうか
「ヤマトさん」
違う、そうだ
確かのこの声はキリシマだ
あれ?でもおかしい
キリシマは人間じゃないし声なんて聞こえないはずなのに……
あれ?あれ?そもそも、なんで私も人間じゃないのにこんな事を考えてるんだろう?
私は宇宙戦艦ヤマト、意識など無いただの平気のはずなのに……
もしかしたら真田さんの仕業かな?
真田ならやりかねない
あの人はいつも「こんなこともあろうかと」とか言って、面白いものを沢山作ってくれたし私のピンチを何度も救ってくれた
こんな事もあろうかとは一回しか言ってないけど……
これも違う、思い出した
そうだ、私は一度沈んだんだ
あのアクエリアスの海の底に……
それから……それから……それから……
「ヤマトさん!」
「――ん」
ヤマトがゆっくりと目を開けると目の前にキリシマが居た
キリシマは心配そうにこちらを見つめている
「よかった……全然目を覚まさないので心配したんですよ」
「ごめんなさい」
ヤマトはそう言って立ち上がると辺りを見渡しもう一度キリシマの方を見た
「……キリシマさん」
「はい、言いたい事はなんとなく分かりますが一応聞きます」
「……私達、今どこにいるのですか?」
ヤマトの目の前には先程まで居た冷たく暗い宇宙空間ではなく
青い海と青い空がどこまでも続いていた――
「残念ながら私もつい先程、目を覚ましたばかりで、何がなんだか……ですがここは恐らく地球ではないかと思うのですが」
「そうですね……スゥ~ハァ~」
ヤマトは深呼吸すると一旦しゃがみ手の指を海水を浸けた
「重力も大気成分も海水成分も地球のものと同じ様です。ほぼ地球で間違いないでしょう」
「やはり地球ですか……ですが私達は冥王星の近くに居たはずです。それなのになぜ……」
ヤマトはアゴの下に手を当て考え始めた
「確かに気になりますね……波動砲を撃った所までは覚えているのえですが……」
「私も同じです」
「まさか……波動砲が原因?」
「そんなことあり得るんですか?」
「さぁ……まだ分かりません、とりあえず地球防衛司令本部と連絡を取りましょう詳しい事はそれからです」
ヤマトはそう言うと片手を耳に当て念じるように目を閉じた
≪こちら地球防衛軍所属、宇宙戦艦ヤマト――――地球防衛司令本部、応答されたし――――繰り返す、こちら地球防衛軍所属、宇宙戦艦ヤマト――――地球防衛司令本部応答されたし――――≫
「……ヤマトさん!ダメです!こっちは繋がりません。そちらはどうでしたか?」
キリシマは少し焦った様子でヤマトに言った
「ダメです。こちらも繋がりません、それに……」
「それに?」
「……気がつきませんか?」
「え?」
ヤマトの言っている意味が分からずキリシマは頭を傾げた
「静か過ぎます」
「あっ……」
ようやくヤマトの言葉の意味を察したキリシマは両手を両耳にかざししばらく目を瞑った
「確かに……静か……ですね」
「地球防衛司令本部だけではありません。地球連邦政府に登録されている全周波数の通信が傍受できませんこれは……」
「何かが起きた、ということですね……」
「ええ、その通りです」
地球連邦政府、かつて地球にガミラスが攻めてきた時に当時の国際連合が元となって誕生した誕生した人類史上初の統一政体だ
つまり地球連邦政府に登録されている電波が地球上で皆無と言う事は地球に何ががあったと言う事なのだ
「これからどうしますヤマトさん?軍規では司令官が不在の場合はその場における最高階級者が艦隊の指揮を担う事になっています。つまり、今の旗艦はあなたです」
「分かっています。とりあえず地球防衛司令本部へ向かいましょう。あそこへ行けば何が起きたかすぐに分かるはずです」
「分かりました」
「それでは行きますが移動方法は一応海路で進みます、警戒も厳でお願いします」
「了解!」
キリシマの返事を聞いたヤマトは頷き補助エンジンを始動した
「艦隊出撃します!!」
第二話は簡単に言うとヤマトとキリシマが冥王星に居たはずなのに気がついたら地球でしたという回でした。
第三話は近日中に投稿しようと考えています。