遭難!宇宙戦艦ヤマト!    作:エウロパ

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どうも、色々と吹っ切り始めたエウロパです!

皆さん先にお詫びします。
今回の話は異常に長いです。出現編最後のお話ですので、いつもの二倍から三倍位の長さになってしまいました……。
短い文章が好みの方には大変申し訳ありませんが、そういう方は何回かに別けて読むことをお勧め致します。

それでも良いと言う方は、お楽しみ頂けると幸いです。




第十六話 力ある者

「アーレイバーク級轟沈!」

 

「ズムウォルト級も連絡が取れません!!」

 

「空軍は!?空軍はどうなってる!?」

 

リリィの前を士官達が慌てふためく。

もう何分たっただろうか?体感時間では数時間にすら思える。

リリィはその様子を何も出来ぬままただ見ていた。

電気は数分前に停止し赤い非常灯に変わり部屋を不気味に照らしている。

地下司令部はまさに混沌としていた。

被害報告が無数に入りもはや通信では外の状況は分からない。

分かるのは地下まで来る震動。

深海悽艦の爆撃の強さを物語っていた。

グアム決戦……戦況がここまで変化すると誰が予想できただろうか。

先程までこちらがレールガンで敵を圧倒していたのに今ではレールガンは無力化されグアムは風前の灯だ。

この場で恐らくこの戦況を推測できていたのは恐らく一人だけだ。

それはハワード・ジョンソン。

彼はハワイ決戦を生き残った為、深海悽艦がどれ程、人知を越えた存在か知っていた。

 

「陸軍の状況は!?」

 

「ダメだ!通信設備が中心的に殺られてる!!」

 

「一体何機の深海悽艦が来やがったんだ!?」

 

ハワードは士官達が右往左往するのを見ながら腕を組んで黙っていた。

するとハワードはリリィの方を向かずに話始めた。

 

「……リリィ君。今までご苦労だった」

 

「ハワード司令……」

 

リリィがそう言うとちょうどその時、士官の一人が声を上げた。

 

「深海悽艦主力艦隊、進攻を開始しました!!このままではあと数分で第二次防衛線に到達します!!」

 

ディスプレイに外部のまだ生き残っていた望遠カメラの映像が映し出される。

 

「…………」

 

ハワードは静かにそのディスプレイの映像を見て頭に被っていた帽子を目元が隠れるくらいまで深く被り直した。

 

「…………もはやこれまでか」

 

ハワードは誰にも聞こえないように小さな声で呟いた……。

 

 

 

 

 

一方、同じく地下司令部にいた日本海軍のグアムに派遣されていた提督は大淀と共にパソコンの画面を必死で見つめていた。

 

「……大淀、通信はまだ、回復できなさそうか?」

 

「はい……ダメみたいです」

 

大淀はパソコンを操作しながら答える。

パソコンのディスプレイには外部への通信画面が表示されているがそのどれもが赤い文字で〝NO,SIGNAL〟と表示されている。

それは自軍の五月雨や長門達への通信も同じだ。

 

「頼みのアメリカ軍がこの有り様とはな……まるでお通夜だ」

 

提督も正直、この状況は予想外だった。

レールガンが出てきた時は勝利を確信して疑わなかったがまさかの土壇場でレールガンが無力化されズムウォルト級も撃沈させられるとは思わなかったのだ。

 

「なんとか……長門達と連絡をとらなければ……」

 

「提督。我々の基地が無事なら我々が普段の任務で使用している通信装置がまだ使えるかもしれません」

 

「なるほどな……よし、大淀すぐに地上へ出よう」

 

「では私が取りに行きましょう」

 

「いや、自分が取りに行く」

 

「し、しかし、それですと提督の身に危険が……」

 

「多少の危険はしょうがないさ……このままここに居ても指揮能力が失われているんだ。意味がない」

 

提督は不敵に笑うと席を立ち上がった。

 

「それでは私もご同行します」

 

大淀も提督につられて立ち上がろうとする。

すると提督は大淀の肩に手を置いて座るように言った。

 

「大淀はここに残って何か動きがあったら教えてほしい」

 

「し、しかし!!」

 

「頼んだぞ。じゃあな!」

 

提督はポンと大淀の肩を叩いて地下司令部の地上への入口へと歩いた。

 

「提督…………」

 

大淀は最初こそ動揺していたものの追いかける事はせずに提督に敬礼した。

大淀は今は追いかけずに居ることが賢明だと考えたのだ。

提督は右往左往するアメリカ軍士官達を横目にハワードとリリィがいる司令官専用の席の前を通る。

すると、リリィが突然、話しかけてきた。

 

「ちょっとあなた!!何処に行くつもりですか!?」

 

リリィは提督の腕を強く引っ張る。

提督はリリィの方を振り向いた。

 

「通信機を取りに我が軍の駐留している基地までな」

 

「危険です!!それに誰の許可を得て物を言っているんですか!?それに司令官が勝手な真似をして良いと思っているんですか!?」

 

リリィは駐留の目から見て明らかに焦っていた。

むしろイライラしている。

だがそれは提督も同じ……。

 

「……危険なのは承知だ。だが、部下の状況も分からず指示も出せない状況で何が指揮官だ!こんな穴蔵に立て籠っても意味はない!それなら危険でも外部の状況を調べ適切な指揮をとる方が有益だ!って、あ…………た、たまには提督みたいな事やらないと部下達に示しがつかないでしょ?アハハハ……」

 

提督はいつものヘラヘラしている雰囲気ではなく目が睨みを効かせて最初から中盤まで強い口調でリリィに言ったが途中で年下に大声を出していることに気がついたのか後半はアハハハ……と笑った。

 

「………………もう、勝手にしてください。貴方なんて死んでもあとで笑ってやります」

 

リリィは唖然としながらも提督からそっぽを向いて答えた。

それに対して提督はいつも通りにヘラヘラした様子で答える。

 

「それは手厳しいですね……それじゃ私はこれで。ハワード司令官それでは」

 

そう言い残し提督は駆け足で地下司令部の階段を上に登っていった……。

その後ろ姿をリリィは振り返り見えなくなるまで無言で見つめる。

 

「…………」

 

「こんな穴蔵に立て籠っても意味はないか……」

 

「……え?司令、何か言いました?」

 

ハワードが呟く様に言った言葉にリリィは反応した。

ハワードはうっすらと笑っている。

 

「ジャパニーズ……か。面白いことを言ってくれる。どうだねリリィ君、我々も外に出るかね?」

 

リリィはハワードの言葉に驚きつつも少し考えてから答えた。

 

「いいえ、ハワード司令官はここに居てください」

 

「何故かね?あのジャパニーズは外に行ったぞ?」

 

「何言ってるんですか?ハワード司令はもう今年で六十歳になるんですよ?私から見たらもうお爺ちゃんです。そんな人が外に出ても足手まといです」

 

リリィは面白いことを言うように、からかうようにハワードに言った。

そう、いつも通りに。

そうがんばった。

頑張ってみた。

そんなリリィの無理に気がついたのかハワードもいつものように切り返す。

 

「お爺ちゃんか……まぁ、間違ってはいないがね」

 

「ハワード司令はあんな日本の蜥蜴の尻尾とは違うんですからもっと堂々としてここで指揮を続けてください」

 

「フッ……もっと堂々としてか。そうだな、それじゃあ」

 

ハワードは席から立ち上がった。

士官達を見る。

するとさっきまで右往左往していた士官達が立ち上がったハワードの方を静かに見た。

そして、士官達の中から一人が声を上げた。

 

「司令官、ご命令を」

 

その言葉を聞いてハワードももう一度やる気を取り戻した。

ハワードはすぅ……はぁと深呼吸をすると口を開いた。

 

「これより地下司令部の人員をA班とB班に分ける!A班は全警備兵と手の空いている者だ。A班は直ちに全員武装し地上に出て通信回線の復旧と地上の状況を調べ報告せよ!残ったB班はこのままここに待機!司令部の機能を何としても維持するんだ!!ジャパニーズばかりにでかい口を叩かせるな!日本人にアメリカの意地を見せろ!!ここが落ちればグアムの指揮系統は完全に崩壊する!そうなればグアムは陥落だ!!何としても司令部の機能を回復させよ!!全ては合衆国の為に!!」

 

「「Yes,sir!!」」

 

士官達はハワードに敬礼した。

地下司令部の中には威勢の良い声が響いた……。

 

 

 

 

 

「これは…………まずいな」

 

外に出た提督は呆然とした様子で酷く変貌したグアム基地を歩いていた。

あちこちにコンクリートの破片がちらばりアメリカらしく綺麗な外観だった庁舎ビルや創庫には大きく穴が開きそのどれもが火災に見舞われている。

 

「この様子だと……通信機が無事かどうか……とにかく行こう」

 

提督は焦ったように言った。

深海悽艦の航空機に見つからないように隠れながら移動する。

普段なら基地まで十分もかからない距離を非常にゆっくり進んだ。

その提督の手にはホルスターから取り出した九ミリ拳銃が握られている。

深海悽艦には対した意味はないし威力も無いが無いよりはましだ。

移動途中には炎上するエイブラハム戦車やミサイル発射機、トラックやジープそれに迷彩色のヘルメットと防弾ジョッキを着けたアメリカ軍兵士があちこちに倒れていた。

そうした場所を越えてようやく、提督は誰もいないゲートを通ってグアム派遣日本海軍の基地に入った。

 

「はぁ……はぁ……どうやらここはまだ、無事のようだな」

 

日本海軍基地はほぼ無傷の状態に見えた。

司令部が入る三階建ての庁舎ビルもいつも通りの姿を見せている。

これなら恐らく通信機は無事のはずだ。

提督はまた走った。

 

「…………アメリカさん、こんな時も仕事してるな……」

 

庁舎ビルに入った瞬間、提督は殆ど棒読みで喋った。

言葉が勝手に出てしまったと言うべきかもしれない。

庁舎ビルの内部は沢山の書類や本が散乱していたのだ。

提督はその中から自分の足元に落ちていた一枚の紙を取り出す。

その紙には〝☆グアム日本海軍基地夏の日本祭り2036☆〟と英語で書いてあり艦娘達が書いた可愛いイラストと共に祭りの詳細な概要が記されていた。

毎年、日本海軍が開催しているグアムの一般住民とアメリカ軍関係者を招待して行われている地域親睦会の事だ。

 

「CIAか…………重要な書類を処分しておいて正解だ」

 

恐らくこの惨状はアメリカの諜報機関である中央情報局、通称CIAの仕業だと提督は覚った。

こんなに荒れているのは恐らく現在が戦闘中だったのと深海悽艦が爆撃してきたからだ。

証拠の隠滅は深海悽艦がやってくれると思ったのだろう。

そうじゃなくても暴徒が暴れたとか色々理由は作れる筈だ。

こんな状況だ仕方ない。

こんな危機的な状況でも味方同士の間では裏で銃を突きつけあっているのだ。

国家間の関係において真の味方など存在しない。

誰もが裏で様々な事をしているのだ。

他の提督はどう思うか知らないがグアムにやってきたこの提督はこういったことは慣れっこだったから何も思わなかった。

提督は手に持っていた紙を折ってポケットにしまうと通信機のある地下室へと急いだ。

地下室に入ると提督は大きな旅行バック程の大きさのある鞄を取りだし開けた。

そして、中身を見て笑みを浮かべる。

 

「よし。次はどこで通信するかだな……この通信機単体の出力ではここからでは繋がらない…………そうだ、あそこなら…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁーっ!!あっ雪風さん!そっちに行きました!」

 

「分かりました!艦隊は……グアムはお守りします!!」

 

五月雨がチ級を砲撃して進路を変えたところを雪風が協力してチ級を追い込む。

 

『魚雷さんお願いします!!』

 

『魚雷一番から四番まで装填。さぁ、戦果を上げてらっしゃい!』

 

『戦闘はあまり好きじゃないけど…………仕方ない!!』

 

長門や五月雨達の耳に海中で戦っているイムヤやゴーヤやはっちゃんの声が聞こえる。

魚雷が発射されて深海悽艦のル級とチ級の二隻が水柱を上げて撃破された。

 

『やったー!命中!!』

 

『でも、キリがないでち……』

 

『そうね……でも、これじゃあさすがのハっちゃんも魚雷が足りないわ……』

 

「長門!このままじゃ防衛線が突破されるわよ!!」

 

ドォォン!!と陸奥の四一センチ連装砲が火を吹いた。

陸奥はこれまでにないほど焦ったようすで長門に言う。

それも当然の事だ。

何せ目の前には深海悽艦の大艦隊。

レ級を含めた多数の戦艦ル級と駆逐艦から重巡洋艦、さらにヲ級までのオンパレードだ。

それがどんどん自分達の方に。守るべき人達がいる島に迫ってきているのだ。

 

「分かっている!!だが、ここまで戦力差があると私にはどうにも……!!」

 

長門も悲痛な叫びを押し殺した様な声で言った。

確かに全艦娘が総力を上げて頑張っているがそれでも撃破できるのは全体の一部のみ。

戦況は対して変わらない。

さすがにこの状況は長門にも覆そうになかった。

作戦が完全に破綻している。

チェスで例えるなら無傷の敵にポーンだけで挑むようなものだ。

 

「どうすれば……どうすれば良い……」

 

長門がそう呟いたその時。

 

 

 

 

 

<――――これで、良いのか?――あーあーこちら、マイクのテスト中――マイクのテスト中――よし、やってみるか――こちらはグアム派遣日本海軍提督――だ。長門、五月雨、陸奥、雪風、ゴーヤ、イムヤ、はっちゃん――誰でも良い。この通信が聞こえたら答えてくれ――――>

 

 

 

 

 

「え、提督?」

 

「ていとく!」

 

最初に提督からの通信に気がついたのは五月雨と雪風だった。

そして、それに続くように他の皆も気がついた。

 

<良かった無事繋がったみたいだな。皆、無事か!?>

 

「だ、大丈夫です!提督!!私達は皆、無事です!!」

 

五月雨は提督に返信した。

それに対し提督は「そうか」と安堵の溜め息を漏らす。

すると、陸奥が割ってはいるように声を上げた。

 

「それより提督!そっちはどうなってるの!?どうやって通信を……」

 

<待て待て。いっぺんに喋るな。今は時間が惜しい。この通信ができるのも今だけだ。今順を追って説明する>

 

提督は急いだようすで言った。

それも当然、今提督がいるのは……。

 

<今、基地の東にある通信タワーの天辺にいる>

 

提督の発言に五月雨達は絶句した。

何故なら今、深海悽艦の艦載機はグアムの主要施設を爆撃している。

そんな中、通信タワーに居るなど自殺行為だからだ。

 

「ど……そうして、そんな所に居るんですか提督!!」

 

五月雨が叫ぶ。

すると、後ろから長門が五月雨の肩に手を置いた。

五月雨は後ろを見る。

 

「……やめるんだ。五月雨」

 

「長門さん……」

 

「提督も覚悟をして我々に通信しているんだ」

 

長門の言葉に五月雨はゆっくりと頷く。

 

<――まぁそう言うことだ。とにかく、今、分かっている情報を伝える――――>

 

そう言うと提督は現在の状況を語りだした。

 

<既に深海悽艦、艦載機隊の空爆でズムウォルト級を含めたイージス艦隊は全滅。地上施設も通信施設もレーダー施設もほぼ全滅だ――空軍の状況は分からないが恐らくフィリピン方面へ逃げたかこれも全滅だ。陸軍は南部の要塞に残っているが他の部隊は点々としている――――このままでは、残ったロケット砲もミサイルも深海悽艦主力艦隊の空母を牽制できなくなるだろう――そうなれば――――>

 

「「…………」」

 

五月雨達は提督の言葉に顔を青ざめた。

一体今日は何回、顔を青ざめれば気がすむのだろうと誰かが思った。

いや、もしかしたら全員が思っていたのかもしれない。

今、五月雨達、艦娘がこうして直援機の護衛もなく海の上にいれるのはアメリカ陸軍の牽制攻撃のお蔭なのだ。

この攻撃のお蔭で深海悽艦は艦載機を発艦できない。

だが、グアム南部に残ったアメリカ陸軍の拠点が爆撃され牽制攻撃が止まれば……深海悽艦は艦載機を発進させ五月雨達を含め誰も生き残らないだろう。

 

「……状況は分かった提督。それで我々はどうする?…………その為に連絡したんだろ?」

 

<ああ、そうだ――――全員今から言うことは良く聞け――――>

 

提督の言葉を聞き逃さないように全員がしっかりと聴く。

そしてそのあり得ない命令は下された……。

 

<――グアム派遣日本海軍司令官――として最後の命令を下す!これよりグアム日本海軍艦隊は全艦、戦線より離脱。マギラオゴルフクラブ米砲兵隊陣地に上陸し使える車両を調達してルート15、ルート4を通ってハガニアへ行け。そこから再び海路で移動しグアムからできるだけ離れろ!!そのあとは旗艦を五月雨に変更してフィリピンへ向かい協力者と接触してから補給を行ってそのままインドネシアへ行くんけ――――亡命だ>

 

提督の命令を聞いた皆はしばらく口をポカーンと開けた。

 

「亡命って……ど、どういう事なんですか!!提督!!最後の命令って!?誰にも見つからないようにって!?それに……私が旗艦って……」

 

五月雨が叫ぶ様に言った。

当然だ。様は提督の命令はグアムを見捨てて逃げろと言っているのだ。

五月雨に続いて長門と陸奥が言う。

 

「そ、そうだぞ提督!!何がどうなっているのだ!?」

 

「そうよ提督。訳を聞かせて!!」

 

提督は少しの間黙ったが理由を口に出した。

 

<まず――五月雨を指名した理由だが五月雨の方が自分と最も長く付き合っているしこういった状況にはある程度知識があるからだ>

 

「五月雨がこうした任務が慣れているって……どういう」

 

陸奥が首を傾げるがその疑問には提督は答えなかった。

 

<――そして、グアムから離れる理由だが――――>

 

次の時、提督から発しられた言葉は五月雨達にとって信じられないことだった。

 

<――――もうじき――恐らくほぼ百パーセント、フィリピンから戦略核弾頭がグアムに撃ち込まれる――――>

 

その言葉に最初、誰も何の反応もしなかった。

理解できなかったのだ。

現実味がなかったから……今までニュースでしか聞かなかったから。

だが、その言葉の意味は重く真っ先に反応したのは長門だった。

長門は目を吊り上げあからさまに怒りを露にして掌を固く握った。

 

「ば、馬鹿な…………ふざけている!!我々は……味方だぞ!!」

 

「長門……」

 

陸奥は長門の方を見つめる。

長門にとって核は脳裏、魂に焼き付いた物だったのだ。

そんな長門の様子を見て周りにいた五月雨達も事の重大性をようやく理解した。

 

「か、核って…………どうして」

 

「核攻撃…………そういうことですか」

 

イムヤの震えた声に続くように五月雨が冷静な声で呟く。

そんな五月雨に対して他の皆が信じられない!とでも言いたいような目で五月雨を見た。

だが、長門と陸奥はすでに状況を断片的だが理解している。

とくに長門は核がどういう物だか身をもって知っているのだ。

そんな皆を見ながら五月雨は口を開いた。

 

「……皆さんはこのような事態になるのは初めてですからすぐに理解できなくて当然です……でも…………今回のは前の時よりも…………」

 

「ちょ、ちょっと五月雨!理由が分かったなら教え……」

 

<いいや、自分が言おう――>

 

「提督!核攻撃ってどう言うこと!?何が起きてるの!?」

 

「そうでち!教えてほしいよ!てーとく!!」

 

「はっちゃんも知りたいわ!」

 

<――――簡単に言うとズムウォルト級がやられて敗北が確定的なったためフィリピンのアメリカ軍司令部は撃つ手を撃ってきたという事だ――日本への警告の意味もあるがな――とにかく、この情報はほぼ間違いない。ハワード司令官はあの様子だと何も知らないようだったが――――>

 

提督は無線からも分かるくらいに暗い声で言った。

 

「そ、それじゃあ……提督は?それじゃあ提督はどうするんですか!?」

 

<――――心配するな。自分は――大丈夫だ。自分には安全なシェルターがあるからな――――とにかくだ。皆、自分の事は心配しなくて良いから、とにかく逃げてくれ――そして、生き残ってほしい――この命令は軍人としては最低かもしれない。でも、皆には死んでほしくないんだ。分かってほしい――――>

 

「提督……」

 

<と、そろそろ不味いようだ、すぐに――ここ――――はな――――>

 

「え、ど、どうしたんですか!?提督!!提督!!」

 

五月雨は泣くように叫んだ。

通信からの通信にノイズが入り声が聞こえにくくなる。

そして……。

 

<ピーガガガガガーーーーザッザッザーーーー>

 

完全に途切れた。

五月雨達は互いに顔を見合う。

 

「提督!?提督!!提督!!てい……」

 

「提督、大丈夫かな……」

 

「……たぶん大丈夫だろう。それよりも、これからどうするかだ」

 

「そう、ですね……」

 

五月雨の心配の声に長門も心配そうな顔を浮かべるがそれよりも先程の提督の命令の話を切り出す。

 

「…………」

 

すると、五月雨は一瞬顎に手を当て何かを考えるような動作をすると決心したように長門の前に出た。

 

「長門さん……皆さん……今は提督の命令に従いましょう。それが賢明だと……提督もそれを望んでいます」

 

「五月雨!あんた、司令官をグアムに残したまま逃げるって言うの!?あの、司令官の言うことよ?また、無理してるに決まってるわ!!」

 

イムヤが五月雨に声を張り上げる。

すると五月雨はイムヤの方を一気に振り向いて首を大きく横に振った。

 

「そんな事……そんな事分かってます!!」

 

そう言うと五月雨は涙をポロポロと流した。

 

「私だって提督の事が一番大切なんですから……でも、その提督が私達に逃げろって命令をしているんです……私も逃げたくはないです……提督をおいていきたくないです……ですが、これは提督の意志……私達は提督の命令をきかなければなりません!!」

 

五月雨のその言葉に全員、俯いた。

できるならば提督を助けたい。だが、 核攻撃がくる以上、提督のいる海軍基地に寄っている余裕はない。

そんな皆を長門は見回した。

 

「…………行こう。皆、異論はないな」

 

「「…………はい」」

 

全員が元気が無さそうな返事をする。

長門はそれを目を瞑り聞いて次の時、目を見開いた。

 

「全艦!!提督の命によりこれより戦線を離脱する!!マギラオゴルフクラブ米砲兵隊陣地に向か――――」

 

その瞬間、長門達は眩い閃光に包まれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、これからどうするんですかヤマトさん」

 

キリシマはヤマトに聞いた。

ヤマトは先程のキリシマの話を聞いてから意気消沈していたが時間が少したってから落ち着きを取り戻していた。

今は顎に手を置いてコスモレーダーやコスモタイガーから送られる情報や映像を精細している。

 

「このままでは、グアム島にいる人類の軍隊は深海悽艦に蹂躙されますが」

 

「そうですね……」

 

ヤマトは腕を組んで深く考える。

ここでの行動が今後の行動方針に関わってくるからだ。

 

「傍観するという事も選択肢にあると思います。両者の行動には無理に介入せず、私達は私達の地球への帰還に専念するというのも……私は私達の地球への帰還を第一に考えるべきだと考えます」

 

キリシマの意見に目を閉じて聞いたヤマトはゆっくりと目を開いた。

 

「いえ……助けましょう」

 

ヤマトはしっかりとした口調で言った。

それに対してキリシマは冷たく意見を言う。

 

「本当によろしいのですか?」

 

「……どういう意味ですか?」

 

ヤマトがキリシマを目を細めて見る。

 

「ヤマトさん……覚えていらっしゃらないのですが?ヤマトさんがご自分で下手に介入することはしないと言ったではありませんか。それに2202年の銀河大戦の教訓を……」

 

「それは…………」

 

ヤマトは顔を俯いた。

キリシマの言う2202年の銀河大戦とは人類に四回目の滅亡の危機が訪れた時の事だ。

ヤマト達の地球はガミラス戦役後にほぼ一年おきに幾度となく人類滅亡の危機が訪れている。

一度目はマゼラン星雲を支配する星間国家、大ガミラス帝国による地球侵略、この時は地球は遊星爆弾で大地は干上がり大気は放射能に汚染された。二度目はアンドロメダ星雲より襲来した白色彗星帝国による地球侵略、この時の地球はアンドロメダを初めとした波動エンジンを搭載した最新鋭艦隊が全滅した。三度目は電撃的に地球に侵攻、地球史上初めて地球を完全に占領された暗黒星団帝国による地球侵略。そして、四度目がキリシマの言う西暦2202年の滅亡の危機。

 

だが、この時の滅亡の危機は誰かが一方的に侵略してきた訳ではない。

この時はなんと誰が撃ったかも分からない不発弾である超大型ミサイル〝惑星破壊ミサイル〟が太陽系外より飛来し太陽に命中、太陽の活動が異常に活発化し計算上このままでは地球どころか太陽系が滅びるという事態になったのだ。

これに対し防衛軍は宇宙戦艦ヤマトを銀河系に派遣し移住可能な星を探すことになったのだがその旅の途中立ち寄ったバース星でボラー連邦という銀河系の約半分を支配する巨大星間国家に接触した。

そこでヤマトの乗組員は現在、銀河を二分する大戦が発生している事を知った。

後にこのボラー連邦と戦っているのは白色彗星帝国との戦いで奇妙な友情がヤマトの艦長代理、古代進との間に芽生えた旧大ガミラス帝国の総統デスラーがたった一年で建国した大帝国、ガルマンガミラス帝国だという事を知ることになるのだがそれは最もあとの事だ。

とにかくヤマトはバース星でボラー連邦に友好的なムードで迎えられたのだがその最中、ヤマトを襲ったバース星の強制収容所から脱走した囚人達の処遇をめぐって古代進が感極まってボラー連邦の内政に干渉する発言をしてしまいそれ以降ヤマトどころか地球はボラー連邦に敵対する星としてこの銀河大戦に巻き込まれしまい人類に更なる危機を連れてきてしまったのだ。

それ以降、深海悽艦の登場によってボラー連邦は地球を攻撃しなくなったがボラー連邦との緊張関係は現在も続いているのだ。

これはヤマト始まって以来、最大の外交的の失敗であった。

 

「ですが、あの時とは状況が違います……」

 

「いいえ。状況は違っていても下手に介入すれば、我々にさらなる危険を引き起こしかねませんよヤマトさん。良いんですか?」

 

「…………」

 

キリシマの気迫にヤマトは黙った。

確かに2202年の時とは状況は違うかもしれない。

古代がとった行動は一人の人間としては間違ってはいないが外交的には軽率だった。

しかし、軽率な行動が新たな危機を生むというのは正しい事となのだ。

とくにこういった特殊な状況では……。

しかし…………、

 

「ですが……ですが私は!!」

 

ヤマトはらしくなく大きな声をあげた。

 

「私は助けたいです!!私は目の前で助けを求めている人々を見逃すことはできません!!」

 

「……………」

 

ヤマトは真っ直ぐな目でキリシマの目を見つめた。

キリシマは黙ったままだ。

 

「キリシマさん……キリシマさんは協力しなくても構いません……責任は全て私にありますので……」

 

ヤマトは申し訳なさそうに言うと一歩前に進み出た。

波動エンジンが出力を上げ今にも発進しようとしている。

 

「はぁ~~もう、仕方ありませんねヤマトさんは」

 

キリシマそうため息をつきながら言うとヤマトの肩を叩いた。

ヤマトはキリシマの方を向く。

 

「キリシマさん?」

 

キリシマはニコッと笑った。

 

「私も行きますよヤマトさん。あなた一人で行かせる訳にはいきませんしね」

 

「キリシマさん……ありがとうございます」

 

「それに、ヤマトさんならそう言うと思っていましたからね。安心です」

 

「キリシマさんのイジワル……」

 

してやったりと笑みを浮かべるキリシマにヤマトは頬を膨らませた。

 

「まぁ、まぁ、ヤマトさん。そんなに怒らないで下さいよ」

 

「むぅ~……まぁ、良いです。それじゃあ、行きましょうかキリシマさん!!」

 

「了解です!!」

 

二人はそう言うエンジンの出力を上げ海面を吹き飛ばし大きな水しぶきを上げて空気を切り裂き文字道理、空へと飛び立った。

二人はヤマトを先頭に急速に高度を引き上げスコールの雲を突き抜ける。

そして、二人は数分とたたずに高度1万メートルに到達した。

 

「……もう少しでグアム上空です」

 

ヤマトは下を見ながらキリシマに言った。

ヤマトとキリシマの眼下には低く広がる灰色の雲が広がっている。

黙視では見えないがこの下で死闘が繰り広げられているのだ。

だが、ヤマトやキリシマにとって、地球の雲など、何の障害にもならない。

ヤマト達には下の様子は全て〝筒抜け〟なのだ。

 

「……キリシマさん。今からの行動についてですが」

 

ヤマトは真面目な顔で言った。

キリシマも聞き入る。

 

「キリシマさんは私の後ろについて、援護に回ってください」

 

「ちなみに理由を聞いても?」

 

「先程のキリシマさんのお話を考慮しても、深海棲艦が本当に我々の知る深海棲艦とは違うものなのか確証がない以上は従来の深海棲艦に対する対策が必要だと思います」

 

「まぁ、それが妥当な判断ですね。かりに深海棲艦がビーム兵器を持っていたら私はひとたまりもないですから……」

 

「それでは行きましょうか……準備はできていますね?」

 

「はい」

 

「敵は別働艦隊より発艦させた艦載機隊を展開しているようなので我々も艦載機を発艦させましょう。自分達の母艦が狙われていると知ればイヤでも母艦へ引き返すはずです。それでは……コスモタイガー隊発進準備!全機対空対艦攻撃装備!発進口オープン!」

 

ヤマトの号令と共にヤマトの背中についている波動エンジンの下の部分についているコスモタイガーの発進口が開いた。

ヤマトの中ではミサイルが次々と装備される。

 

「コスモタイガー隊発進!!」

 

ヤマトの発進口から続々とコスモタイガーが発進した。

発艦したコスモタイガーは編隊を組んでグアムへと降下を始める。

 

次にヤマトはグアムがある雲の下に体を向けて睨み付けた。

 

「これより敵にたいし一斉に奇襲攻撃を仕掛けます!全艦戦闘配備!!砲雷撃戦用意!!目標、深海棲艦主力艦隊!!」

 

「了解!砲雷撃戦用意!!」

 

キリシマの復唱と共にヤマトとキリシマの主砲がゆっくりと動き始めた。

砲身は全て雲の下の標的に狙いを定める。

目標はもちろん、深海棲艦だ。

 

「キリシマさん、まずは深海棲艦主力艦隊の超弩級宇宙戦艦級及び大型空母級を撃破します。駆逐艦や巡洋艦は一先ず後回しにしてください!」

 

「分かりました!」

 

「一番砲搭用意よし!二番砲搭、三番砲搭用意よし!主砲一斉射!撃てッ!!」

 

ヤマトがそう叫んだその瞬間、ヤマトとキリシマの主砲から独特の砲撃音と共に強烈な蒼と翆の閃光が一斉に放たれた――――。

 

 

 

 

 

「な、何!?何が起きたの!?」

 

陸奥は上空を見て突然の事に叫んだ。

突然、空から強烈な閃光が五月雨達を照したのだ。

上空を見れば今まで有ったスコールの厚い雲が円形に吹き飛びまるで台風の目のようにすっかり青空が広がっている。

そしてその中心から伸びている閃光は一筋の線を描いており計六本もの蒼と翆の光の線が深海棲艦の主力艦隊へと落ちていった。

そして、光の線が深海棲艦主力艦隊の戦艦ル級数隻に命中したと思った次の瞬間。

 

――――ズッドオオオオオオオン!!!!

 

今までにない、見たことないほどの巨大な水柱が高く上がった。

その勢いはすさましく、水柱は光の線が落ちた戦艦ル級だけでなく周囲の深海棲艦主力艦隊を巻き込むように高く上がっている。

衝撃波はすぐに海面を波紋するように伝わり五月雨達がいる辺りの海面が大きく揺れた。

 

「キャッ!?」

 

「い、いたい何が起きてるでち!?」

 

「まさかもう、核攻撃が……!?」

 

あれだけの大きな水柱。

皆、核攻撃を疑った。ついに撃ってきたのではないかと思ったのだ。

だが……、

 

「いや、違う……あれを見ろ!!」

 

長門が信じられないといった表情で上を見ながら言った。

全員もそれに釣られて上の方を見る。

長門が見たその方角には遠くでよく見えないが黒い点の様な物が空高く空にぽっかりと空いた雲の穴の真ん中辺りに飛んでいるのが見えた。

ちょうど、先程の閃光が現れた辺りだ。

 

「あ、あれはなんだ…………」

 

長門が呟いた。

周囲を見ればアメリカの艦娘達も五月雨と同じ様に何が起きたのか分からなそうにただ、波に揺れている。

 

「本当に何が起きてるの……」

 

この場にいる全員がその答えを持ち合わせていなかった。

 

 

 

 

 

「目標に命中!!超弩級宇宙戦艦級深海棲艦、四隻、空母級深海棲艦二隻を撃破!!続いて第二射!主砲発射!!」

 

ヤマトはコスモレーダーで自分が撃った深海棲艦が文字通り〝消滅〟したことを確認すると徹底的に深海棲艦を撃滅するために再び主砲を発射した。キリシマも後に続くように砲撃する。

二人の放ったエネルギー弾は先程と同じ様に目標の深海棲艦に吸い込まれるように命中した。

再び巨大な水柱が上がるがそんな中でもヤマトとキリシマの目は敵の様子がしっかりと見えていた。

やはり、今度の砲撃も百発百中で深海棲艦は消滅した。

ヤマトもキリシマもこの砲撃で確かな手応えを感じていたが手応えがありすぎて二人の心境は複雑だった。

 

「ヤマトさん……私、また超弩級宇宙戦艦を三隻撃破です」

 

「そう、ですか……では、やはりそうなのかもしれませんね……」

 

「実際に私の主砲が通用するのを見るのは何だが複雑な気分です……」

 

キリシマの言葉にヤマトは気分を落とした。

それに対してキリシマは苦笑いを浮かべる。

 

キリシマが超弩級宇宙戦艦級の深海棲艦を撃破……ヤマトが言うなら普通の事だがキリシマの場合はこれは本来あり得ないことなのだ。

ミサイルや宇宙魚雷ならまだしもキリシマの主砲である光線砲の威力は非常に低い。

そもそもキリシマは波動エンジンが搭載されていない艦だ。

波動エンジンが搭載されていない艦船のエネルギー兵器は出力が低いため本来なら超弩級宇宙戦艦級はおろか駆逐艦級でさえ装甲に傷をつけられない。

それなのにそのエネルギー兵器が深海棲艦の〝ヤマト達の世界〟でいう〝超弩級宇宙戦艦級〟に効くということはヤマトとキリシマの目の前にいる深海棲艦はヤマト達の知っている深海棲艦ではない事を意味していた。

つまり、キリシマの仮説が実証されつつあったのだ。

 

「……とりあえず今は目の前の敵を倒すことだけを考えましょう。戦闘を優先します。やるべき事をやってしまいましょう」

 

「そうですね……分かりました。今は目の前の敵に集中します」

 

ヤマトとキリシマは気を引き締め直すと主砲を構え直し戦闘を再び再開した。

ヤマトとキリシマの主砲から発射されエネルギー弾が深海棲艦を次々と撃破していく。

深海棲艦は突然の思いがけない所からの奇襲に慌てふためき最初の一斉射で陣形は崩壊した。

 

「グァアアアアアアアアアアアア!!」

 

それでも一部の戦艦ル級が砲を上空に向けヤマトとキリシマを迎撃しようと試みるが高度が高すぎて砲弾が届かなかった。

結局、その深海棲艦も次々と撃ち込まれるショックカノンと光線砲に最後まで翻弄され他の深海棲艦と運命を共にし光に包まれ消滅していった。

それは戦艦レ級も……

 

「グゥガアアアアアアアア――――」

 

困惑と怒りに満ちた叫び声……。

それがアメリカ軍の秘密兵器であるレールガンを完全に無力化した深海棲艦の最期の断末魔だった。

多くの深海棲艦がまともな抵抗もできないままに、状況がまったく分からないままに〝消滅〟していった。

その光景はもはや戦闘ではなく一方的な〝虐殺〟にも近かった……。

 

深海凄艦の主力艦隊が全滅するまでの時間。その間僅か、十数秒の出来事である。

 

「ヤマトさん……敵、深海凄艦主力艦隊を殲滅……しました」

 

「そう、ですか………コスモタイガー隊も北部の海域にいた深海凄艦の軽空母級と補給に戻ってきた艦載機隊を全滅させたようです…………」

 

ヤマトとキリシマはバツの悪そうな顔をした。

二人とも顔が青ざめている。

それも、そのはずだった。

なぜなら、呆気なさすぎるからだ。

ヤマトとキリシマの介入から僅か約五分。

ヤマトとキリシマが倒した艦隊の規模はヤマト達の世界水準で考えれば弱小星間国家ならばその国家を攻め滅ぼせるほどの艦隊規模だった。

それがどうだ。

戦闘開始から一分もたたない内に深海凄艦の艦隊はなすすべも無いままほぼ全滅したのだ。

この精神的影響はヤマトとキリシマにはキツかった。

 

「ヤマトさん……私、深海凄艦が敵だっていうことは分かっているんです……分かっているんですがこれは…………」

 

「キリシマさん。そこから先は言わないでください」

 

「すいません……」

 

ヤマトはキリシマの言葉を遮った。

キリシマの言いたいことは言わなくてもヤマトも良く分かっている。

いくら敵でも無抵抗の相手を一方的に攻撃するのは気持ちの良いものではなかった。

 

「キリシマさん…………どうやら、私達はこの世界で〝強力〟な力を手にしてしまっているようです……」

 

「……はい」

 

「私達は……もっと知らなければなりませんね。この世界を……」

 

 

 

 

 

 

ヤマトやキリシマもこの状況は勿論信じられない事ではあったが何よりこの光景を一番信じられなかったのはグアム島にいたアメリカ軍と日米両艦娘達であった……。

 

 

 

 

 

「し、信じられません……」

 

「あれだけいた深海棲艦の主力艦隊が一瞬で……」

 

「夢でも見てるの……?」

 

五月雨も長門も陸奥も他の皆もまるで夢でも見ているかのよな顔で目の前の非現実的な光景を眺めていた。

すると、その時だった。

 

<ピーーーーガガガガガ!!!!>

 

「こ、今度は何!?」

 

「耳が痛いよぉ!!」

 

五月雨達はいきなりの事に皆、耳を両手で押さえた。

ものすごい音量の通信ノイズが走ったのだ。

それは何の素振りもなく突然の事だった。

 

「長門、これって……!?」

 

「ああ……非常に強力な通信波だ。今までこんなのは聞いたことがない……」

 

長門と陸奥は耳を押さえながら今何が起きているのか必死に考察しようとした。

しかし、いくら考えても意味が分からない。

だが、長門はしばらく、そのノイズを聞いているとあることに気がついた。

 

「……通信を調節しようとしているのか?」

 

「……どういう事ですか?」

 

「恐らく……誰かが我々に通信を送ろうとしている……」

 

「誰かって誰が…………まさか」

 

長門と陸奥は空を見つめた……。

 

五月雨達が謎の通信波を受信していた頃、その謎の強力な通信はグアム海軍基地の地下司令部でも捉えていた。

 

「し、司令!強力な通信波がグアム全島に向けて送信されています!!」

 

「ここまで強力な通信波は聞いたことがありません!!」

 

通信係の士官がヘッドホンから流れるノイズを聞きながら言う。

 

「一体……何が起きているんだ…………」

 

さすがのこの状況にハワードもリリィも唖然としていた。

 

<ジジジジーーーーーージッジッ…………>

 

地下司令部内に謎の通信が流れる。

だがそれは最初はノイズだらけだったが次第にノイズが小さくなっていきついにはノイズは消えた。

 

「「…………」」

 

地下司令部のハワード率いるアメリカ軍士官達も……、

 

「「…………」」

 

海の上で一部始終を見ていた五月雨達、艦娘達も……グアムに居る者の殆どがその通信の内容に聞き入っていた。

そして、ついに…………。

 

 

 

<ジッジ――――――こちらは地球連邦。地球防衛軍艦娘宇宙艦隊所属、宇宙戦艦ヤマトです――深海凄艦の艦隊は主力、別動問わず我々が殲滅しましました。これにて本島における全戦闘の終結を宣言します。また、海上には貴軍らの航空機パイロットが多数漂流しており、すぐに救助活動をおこなう事を強く要望します――――>

 

 

 

「へ?」

 

「…………地球連邦?」

 

「地球防衛軍……?」

 

「宇宙戦艦……ヤマト?大和さんて改二になると宇宙戦艦になるの……?」

 

「てか、今、戦闘は終わったって……あれだけの短時間であの大艦隊を全滅させたというの!?」

 

謎の通信からまるで昔のSF映画やアニメに出てきそうな単語が幾つも出てくる中、五月雨達は開いた口が塞がらなかった。

だがある単語を聞いて通信を聞いていた艦娘達の誰もが何かが頭に引っ掛かった。

 

「あ、あの……今、通信で〝宇宙艦娘艦隊〟とかって言いました……?」

 

「う、うん……言ってた…………」

 

「そんなのあるんですか?初耳なんですが……長門さんと陸奥さんはどうですか?」

 

「いや、私に聞かれても……」

 

「さすがの私もこんな都市伝説聞いたことないわ……」

 

五月雨に始まりイムヤ、長門、陸奥が困惑した表情を見せる。

周りのアメリカの艦娘も同様だ。

しかし、この場に。グアムに…………一人だけ、この状況に困惑もせず目を輝かせて〝地球上で誰よりも〟少しだけ状況を理解していた潜水艦の艦娘が居た……。

それは…………、

 

 

 

「あぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

突然、ゴーヤが空に浮かぶ黒い点。深海凄艦の主力艦隊を一瞬で凪払った〝黒い点〟を指差して叫んだ。

一同が驚いて一斉にゴーヤを見る。

 

「ど、どうしたよ急に!?」

 

「はっちゃん、ビックリしたわ!」

 

「一体どうしたゴーヤ!」

 

ゴーヤの隣に居たイムヤとはっちゃんは隣で騒がれたため、長門は訳を聞くためにゴーヤに聞く。

 

それでもゴーヤは非常に興奮した様子で黒い点そ指差して「あーあー」と言っていた。

 

「落ち着け!!!!」

 

「ひゃあ!?」

 

長門がイラッとした様子でゴーヤを怒鳴るとゴーヤは静かになった。

 

「落ち着けゴーヤ!!落ち着いて話せ!!何を言いたいのか分からん!!」

 

「は、はい……」

 

「ゴーヤちゃん」

 

「陸奥さん……」

 

「良い?落ち着いて深呼吸して。そしたら、ゆっくり話してみてくれる?」

 

「わかったでち……」

 

ゴーヤは陸奥のアドバイスで二、三回深呼吸をすると落ち着きを取り戻し五月雨達に喋り始めた。

だがそれでも興奮は収まっていないようだったが会話ができているだけマシだったので誰も何も言わなかった。

 

「あれは絶対、ゴーヤが前に見たスーパーな艦娘でち!!」

 

「スーパーな艦娘?」

 

長門が首をかしげる。

 

「長門さんには前に言ったハズでち!!」

 

「ま、前に?」

 

「そうでち!!」

 

長門は記憶を遡った。

必死に思い出そうとするが今週は忙しすぎた為、良く分からない。

 

「長門……もしかしてあの事なんじゃないのかしら?」

 

長門が思い出せなくて困っているとの横で陸奥が助け船を出した。

 

「あの事?」

 

「ほら、あれよ。ゴーヤが偵察から戻ってきたときに言っていたじゃない」

 

「偵察…………あ、あれか!!」

 

長門は手を一回叩く。

思い出したのだ。

確かにゴーヤは一度、偵察から戻ってきたときに長門と陸奥に良く分からない謎の報告をした。

その内容は……、

 

 

〝戦艦大和と霧島似の艦娘が機銃からレーザーを撃って深海凄艦の水雷戦隊を一瞬で蜂の巣にした〟

 

 

という非現実的な妄想じみた報告だった。

この時は長門も陸奥もゴーヤが疲れ幻覚でも見たのだろうと思い相手にしなかったが…………この状況になった以上は疲労だけでは説明つかなくなっていた。

 

「まさか……それじゃあ、ゴーヤが見たのは夢や幻覚ではなく……あれの事だったのか……」

 

長門は上を見ながら言った……。

一方のグアム島の地下司令部の地上入り口付近ではハワードとリリィが地上に出てきてポッカリと開いた雲の穴を見上げていた。

 

「リリィ君……」

 

「はい。司令」

 

「これから……大変なことになるぞ…………」

 

 

 

 

 

 

 




さて、今月もエウロパがお送りする雑談です。

最近、熱いですよね。
私、今、田舎に帰ってきてるんですが、やっぱり都会より田舎の方が過ごしやすくて最高です!
ただ、最近、免許を取るように親から命が下ったので嫌々教習所に行ってるんですが……ヤバイです!
5日ほど前に都会の方に用があったので1泊2日で行っていたんですが、
なんと帰り道の駅で……階段で後ろから全力疾走していたサラリーマンに追突されたんですよ……その結果、階段から落ちて重度の捻挫……もう、今年は免許無理かも……。

皆さんも、背後から迫る人や水分補給には十分、注意してくださいね。


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