ドォオオオン……とレールガンの水柱が、またひとつ上がった。
だが、それは今までのものとは違った。
「そ、そんな…………」
その光景を見ていた長門は目を大きく見開き驚愕した。
それに対し陸奥が首を傾げる。
「どおしたの長門?」
「あ、あれ……」
長門は唖然とした様子で〝その〟深海凄艦を指を差した。
陸奥は訳がわからない様で長門の指差す方を見つめた。
目を凝らすとそこにはフードを被り大きな尻尾のようなものを生やした他の深海凄艦とは全然違う雰囲気の深海凄艦が見えた。
あれは……、
「あれは……戦艦レ級ね。確かに珍しいけど今さら驚くほどのこと?」
戦艦レ級。深海凄艦の戦艦クラスの中でも戦闘力がかなり高いタイプの深海凄艦だ。その数は多いわけではなく、滅多に出くわす事はない。
しかし、今回の深海凄艦の行動は異例の事が多くレ級が居ても陸奥は驚かなかった。
「いや…………それじゃない」
「じゃあ……なんなの?」
「見ていれば分かる」
陸奥は長門が意図していることが分からなかった。
だが、長門が焦っているのは理解できた。だからレ級を見ることにした。
<……ファイア!!>
号令と共に再びレールガンが稲妻のような閃光と共に発射された。
レールガンが砲弾やミサイルよりも速い速度で戦艦レ級に向かって飛んでゆく……。
そして、他の深海凄艦の様に爆発する…………はずだった。
「グアァアアアアアアアアアアアアア!!!!」
レールガンがレ級に命中する寸前、レ級は物凄い形相で叫び、尻尾をものすごい早さで振って、なんとレールガンの砲弾を弾き飛ばしたのだ。
弾き飛ばされたレールガンの砲弾がレ級の後方横側で海面に当り水柱を上げる。
レ級はニヤリと笑った。
「そ、そんな馬鹿な…………」
「レールガンが……」
その光景を見て陸奥も、五月雨達も、さっきまで歓喜の声を上げていたアメリカ艦娘達も戦慄する。
当然だ。人類が造り出した最強の砲を深海凄艦が弾き飛ばしたのだから。
「な、長門どういうこと!?」
陸奥は長門に聞いた。
長門に分かるかは分からなかったが陸奥は聞かずにはいられなかった。
「分からん…………一体、どうやってレールガンを…………」
長門はレ級をよく観察した。
その間にもレールガンはおよそ五発も撃たれその全てをレ級は防いだ。
その様子を見て、さすがの司令部も慌てふためいていた。
その様子が通信から伝わってくる。
<せ、戦艦レ級。レールガン効果なし!!>
<ば、馬鹿な!?深海凄艦ごときにレールガンが通用しないだと!?>
<れ、連続射撃だ!!何としても戦艦レ級を沈めろ!!>
通信や周りのアメリカ艦娘から絶望感が伝わってきた。
ズムウォルト級は諦めずにレールガンをさらに数発発射するが効果はない。
「…………そうか。分かったぞ」
長門はレ級を見ながら呟いた。
陸奥は長門を見る。
「……装甲だ」
「装甲?」
陸奥は首を傾げた。
「装甲?装甲ってあの装甲?」
長門が言っている装甲とはこの場合、艦船を構成している金属の塊の事ではない。
この場合の装甲とは艦娘の体の周囲を覆っている無色透明、無味無色の例えるならばシールドの事だ。
「そうだ。あれは恐らく装甲をうまく利用してレールガンを弾いているんだろう」
「そんなこと…………できるの?」
「以前、まだ私がこの基地に配属される前の事だ。そこでこんな話を聞いた事がある。とある鎮守府に配備されていた戦艦金剛が部下の駆逐艦を素手で敵の砲弾を防ぎ助けたとな……」
「私もその話は聞いたことがあるわ。有名な都市伝説よね」
「私も聞いた時は質の悪い冗談なのかと思ったが……どうやら事実のようだな」
長門は戦艦レ級がニヤニヤ笑いながらレールガンの砲弾を野球のボールの様に弾き飛ばす姿を見ながら言った。
陸奥も何も言わずに戦艦レ級を見つめるのだった…………。
一方でグアム海軍基地の地下司令部ではハワード以下、アメリカ軍将校達はこの異常な事態に狂乱していた。
「どういう事だ!!レールガンが効かないぞ!?」
「戦艦レ級なんてやつだ!?」
「レールガンは、最強の兵器じゃなかったのか!?」
士官達がモニターを見て騒ぐ。
その様子をハワードとリリィが、とくにリリィは苦い表情をして見ていた。
「やっぱり…………」
リリィは眉間にシワを寄せ手を握り締めた。
それに対しハワードはリリィを横目でちらりと見た。
「……やっぱりとは、どうした?」
「え?そ、それは…………」
リリィは後ろめたい様に目線を落とした。
「実は……レールガンには前から何か問題があるのではないかと思っていまして……」
「リリィ君。君も気がついていた様だな」
「……では司令も?」
リリィは少し驚いた。
てっきり自分だけがレールガンの性能に疑問を抱いているとばかり考えていたのだ。
「ああ……だが、レールガンには問題ない」
「…………レールガンには問題ないのですか?」
「そうだ。問題なのはレールガンの相手が深海凄艦だということだ」
「どういうことですか?」
リリィは首を傾げた。
レールガンには問題がない?相手が深海凄艦だというのが原因?リリィの謎は深まるばかり。
「リリィ君。君は10年前のハワイ決戦の事を知っているか?」
ハワードは遠い目で思い出すように言った。
「いえ、詳しくは知りません」
リリィは首を横に振った。
ハワイ決戦の事は内外的に箝口令がしかれている。その為、ハワイ決戦の事は誰もがその言葉だけは知っていても内容までは殆ど誰も知らない国家機密だった。ましてやリリィは優秀な副官とはいえ、近年、軍に入隊したばかりの兵だ。知らなくて当然だった。
「まぁ知らないのは当然だな。命令違反にはなるが……今は良いだろう。じつはな、私はあの時……あの場にいたのだよ」
「司令がですか!?」
「そうだ。あの時、私は……あのズムウォルト級ミサイル駆逐艦の艦長だった」
モニターを見つめるハワードの顔には怒りが現れ手に持っていたボールペンを強く握りしめる。
そしてハワードは当時の事を語り始めた。
「あのアメリカ海軍屈辱の日。今も忘れられん……あの時、我が軍はハワイに戦力を集結させていた。勿論、ズムウォルト級もだ。理由は突然出現した謎の敵、深海凄艦によって各国の海上輸送網が崩壊しつつあったからだ」
「でも……負けたんですよね」
「ああ……信じられない光景だったよ。世界最強の艦隊があっという間だった。イージスシステムも深海凄艦の強力なジャミングによって役に立たず接近してきたヤツらに対艦ミサイルを撃っても効果は殆どなかった。しかもヤツらの艦載機は我々のレーダーには映らない。どんどんやられていった……私の指揮していたズムウォルト級もレールガンを何発も撃った。通常の深海凄艦は容易く撃沈できたが……今、モニターに映っている様な特殊な深海凄艦には一切通用しなかったよ。今のこの光景は10年前の様だ……」
「どうして……レールガンが効かなかったのですか?」
「後に聞いた話によると深海凄艦や艦娘の周囲を覆っている装甲……これが原因だということだ。深海凄艦や艦娘が持っている装甲は科学的に分析すると軍艦の装甲並みの物質が超圧縮されている様な状態に近いのだそうだ。それが原因でトマホークや対艦ミサイル等の通常兵器が効かない。装甲が硬すぎるんだ。その特性を上手く利用できれば強靭な装甲を使ってレールガンをも無力化できるということだ。つまりレールガンには問題ない。問題なのは…………敵が深海凄艦という人類の科学と理解を遥かに超越した生命体だという事なのだ。そもそも生命体なのかも分からんがな。やはり……やつらと戦うには艦娘が必要なのだ……」
リリィはハワードの話を聞き背筋がゾッと寒くなり戦慄した。
自分が、自分達が何と戦っているのかそれを再認識したのだ。
「私達は……人類は勝てるのでしょうか?あいつに……あいつらに」
リリィはモニターを見て言った。
モニターにはニヤリと笑った戦艦レ級が映っている。
「さぁな。だが、今は何としても勝たなければならない。さもなくば……この島に住む我が合衆国の市民が。さらには膨張するロシアによって合衆国の本土が危険にさらされる。よって我らは勝たなければならないのだ」
普段は見せぬ気迫にリリィは驚いた。
「すいません司令。馬鹿な事を聞きました……」
リリィはハワードに謝った。
ハワードはそんなリリィを見て立ち上がった。そして、リリィの肩に手を置く。
「いや、気にしなくて良いよ……君はまだ、若い。若すぎる……不安になるのも当然だ。それに…………君達のような若い子供達を軍隊にいれなくてはいけなくなったのは我々が初戦で深海凄艦に完敗したからだ…………」
ハワードは罪悪感を表情に滲ませた。
その表情を見たリリィは顔を大きく横に振った。
「ハワード司令達は何も悪くありません!悪いのは深海凄艦です!お願いですから、そんな顔をしないでください!」
「…………すまん」
リリィの必死な顔を見てハワードは笑顔を少しだけ浮かべた。
「よし……どうやってヤツを倒すか考えよう」
「イエッサー!」
リリィは笑みを浮かべ深く頷いた。
だが、その時……。
「司令!!緊急事態です!!」
士官達の一人が叫んだ。
その瞬間、地下司令部が上下に揺れる。
司令室に赤い非常灯が灯り警報が鳴り響いた。
「ど、どうした!何が起きている!?」
ハワードは士官達に言った。
士官達も右往左往しながらハワードに状況を報告する。
「北部より深海凄艦の艦載機の大編隊が現れ空爆を開始しています!」
ハワードはその報告に目を見開いた。
「どういうことだ!?深海凄艦の航空母艦級は全艦、第一次防衛線に集結していたはずだろ!?」
「そ、そのはずなのですが……」
「まさか…………別動隊か」
被害報告はまだ続く。
「北部、第一から第八までのレダーサイト沈黙!!」
「市街地、激しい空爆を受けています!!」
「国際空港管制塔、爆破されました!!」
モニターには各所に設置された監視カメラの映像がいくつも映し出された。
そのどれもに、無数の深海凄艦の艦載機が映っている。
「まずい……このままでは艦隊がやられる……」
モニターのグアム島のマップ上に北部の方から次々と赤い文字でLOSTの文字が表示された。
その意味は施設が破壊されたか音信不通になったという意味だ。
その勢いはあと少しでズムウォルト級率いるイージス艦の艦隊がいる所へとどんどん近づいていた。
「陸上部隊とイージス艦に迎撃命令!!何としてもズムウォルト級と発電所を死守せよ!!」
「イエッサー!!」
陸軍に本格的な迎撃命令が下った瞬間だった。
ハワードやリリィ達がいるシェルターの外の地上はまさに地獄だった。
陸軍が対空戦車や誘導ミサイルで深海凄艦の艦載機を必死に攻撃するが艦娘のレーダーならともかく、人類のレーダーには映らない相手に苦戦していた。
戦車が破壊されミサイル発射機が次々と集中的に爆撃される……。
ついに歩兵部隊は肉弾戦にうってでてロケットランチャーやミサイルランチャーを装備して深海凄艦の艦載機を攻撃し始めた。
空港が燃え、病院が燃え、街が燃え、人が燃えて被害は拡大の一歩を辿っていた。
海の方では最終防衛線でアーレイバーク級ミサイル駆逐艦が対空戦闘準備を整えていた。
<深海凄艦の艦載機隊接近!!>
<ESSM攻撃始め!!>
ズムウォルト級を護衛する一隻のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦より対空ミサイルが一斉に発射される。
飛翔したミサイルは深海凄艦の艦載機隊の手前で炸裂し広範囲にわたって深海凄艦凄艦の艦載機隊を攻撃し撃墜した。
多数の艦載機を撃墜したが、これでは足りない。艦載機隊はアーレイバーク級の絶対防空圏内に続々と突入する。
アーレイバーク級はCIWSで迎撃を試みるが艦載機隊の撃滅には至らずアーレイバーク級やズムウォルト級の近くに爆弾を落とし大きな水柱をいくつも上げた。
そしてついに、その爆弾の一発がアーレイバーク級の側面に命中し爆発と轟音が轟き、数分もしない間にアーレイバーク級は海の藻屑とかした。
最後の一隻となったズムウォルト級もミサイルやCIWSで応戦しようとするが、もはや迎撃は間に合わず数発の爆弾と二本の魚雷を撃ち込まれ完全に轟沈したのだ。
その最後はあまりにも呆気なく、とても先程まで深海凄艦をレ級の登場まで圧倒していたとは思えない程だった……。
「長門さん!グアムが!!」
五月雨が焦った様子でグアムを指差した。
五月雨と一緒に見ている雪風、イムヤ、ゴーヤ、はっちゃんの顔は完全に青ざめている。
それは長門、陸奥も同じだった。
グアムが真っ赤にメラメラと光っている。
「グアムが……燃えてる……」
「ズムウォルト級が……」
誰かがそう言った。
周囲ではアメリカの艦娘達がさっきまでの威勢を完全に失い、五月雨達と同じ様に顔を青ざめている者。泣いている者がいた。
そんな中……。
「…………提督は」
五月雨が呟いた。
五月雨の方を長門達が見る。
「提督は大丈夫……ですかね?」
五月雨の問いに長門と陸奥が答えた。
「恐らく大丈夫だろう……提督達がいる場所はグアムで一番安全な場所さ…………今はな」
「そう…………今はね」
ズムウォルト級が破壊されたということは深海凄艦に対する人類側の対抗手段が無くなったと言うこと……。
それはこのグアムが深海凄艦の手に墜ちると言うことを意味している。
そうなれば今は安全な場所に居るだろう提督達もいずれは……。
確実にグアムには滅びの時がひたひたと近づいていた……。
グアム全体を覆う死の影が一層濃くなりつつなり始めた頃。
誰にも知られる事もなく静かにグアムでの戦闘の行く末を監視していたヤマトとキリシマはコスモレーダーや偵察に出したコスモタイガーから送られてくる詳細な情報を見て驚愕していた。
「な…………なんなんですか……これは…………」
ヤマトが圧し殺したような声を出す。
「私達は……夢でも見ているのですか?何故、双方ビーム兵器も宇宙魚雷も使わずにあんな脆弱な武装で戦闘をしているのでしょうか……」
ヤマトとキリシマはこの決戦を最初から見ていた。
その戦闘はヤマト達の常識を斜め上にいくもので、理解できないものだったのだ。
ヤマト達の常識では深海凄艦との戦闘はビーム兵器や宇宙魚雷やミサイルのせめぎあいだ。
しかし、今、目の前で繰り広げられている戦いはそうではない。
今、目の前で繰り広げられているのは……、
〝旧時代的〟な砲弾と水中魚雷が飛び交う〝旧時代的〟な戦いだったのだ。
さらに不可解な事にヤマトとキリシマの目には両者の姿は装備こそ旧時代的であるものの顔や姿はヤマト達の宇宙にいる艦娘や深海凄艦と酷似していた。
深海凄艦に限っては飛行用の装備が無いだけで殆ど姿は変わらない。
「艦娘が貧弱な武装を使っているのはまだ理解できます……何らかの装備の問題があるとすれば今の状況も理解できます。ですが……深海悽艦が使っている装備は意味が分かりません。一体何が起きて……」
ヤマトは顎に手をあて考えた。
「…………やっぱり」
キリシマが映像を見ながら呟いた。
ヤマトはキリシマの方を見る。
「やっぱり、そうなんですよ。ヤマトさん…………」
「やっぱりって……何の事ですか?キリシマさんはこの状況が理解できたのですか!」
ヤマトはこの理解できない状況につい大きな声を出してしまった。
そんなヤマトに対してキリシマは首を横に振る。
「いいえ…………私も完全に理解したわけではありません。でも、少し分かった気がします。ヤマトさん、この地球の時代はいつだと思いますか?」
「この地球の時代ですか?…………恐らく、技術水準から見て二一世紀初頭頃ではないかと…………それがどうかしたのですか?」
ヤマトは首を横に傾げた。
キリシマの言おうとしている意味が分からなかったのだ。
「ヤマトさん。私が前に言ったこと覚えていますか?」
「前に言ったこと?…………あっ」
ヤマトはキリシマが前に洞窟で言った言葉を思い出した。
――――この世界の艦娘って、本当に私達と同じ存在なのでしょうか――――
「で、でも、艦娘は沈んだ宇宙戦艦の魂の欠片です!それはどんな世界でも変わらないはず…………」
「はい、私もこの戦闘を見るまではそう思っていました。いいえ、そう思いたかったのかもしれません。同じ姿の艦娘を見てから……どんな宇宙であろうと自分と同じ宇宙戦艦の艦娘がいるって私達は孤独ではないと…………でも、ヤマトさん。思い出してください。私達が初めて〝この地球〟の深海凄艦と遭遇した時の事を、ヤマトさんはこの地球の深海凄艦と戦いました。そして、この地球の深海凄艦の攻撃を受けました。そして、勝ちました。しかも、ショックカノンや宇宙魚雷ではなく駆逐艦級にパルスレーザー砲で……私達の宇宙ではあり得ない事じゃないですか!」
「そ、それは……」
ヤマトの脳裏にこの地球に来てすぐ、深海凄艦の駆逐艦級と交戦した時の記憶が思い出された。
あの時、深海凄艦はヤマトのショックカノンが故障をしていることを良いことに主砲の一斉射撃をおこなった。
ヤマトは強力なビームが撃たれると覚悟していたがビームは撃たれず深海凄艦は旧時代的な砲弾で攻撃してきていた。
だが、恒星間航行ができるヤマトにそんな武装が通じるはずがない。ヤマトはすかさず起動可能な対空迎撃用のパルスレーザー砲でダメもとの攻撃をしたのだ。
通常、パルスレーザー砲では深海凄艦の装甲を傷つけることはできない。
だが、この時はなんと一瞬で深海凄艦を蜂の巣にし轟沈させた。
この時はヤマトもキリシマも深海凄艦がこんなに脆いはずがない。きっと特殊な艦艇なんだと思いその場を立ち去ったが……。
「それに、この地球の深海凄艦は〝私達〟から見れば明らかに異常です!もし仮に今目の前にいる深海凄艦が私達の宇宙の深海凄艦と同じものだったとしましょう。ならばなぜ、この地球にいる深海凄艦は地球攻略にここまで時間をかけているのですか?なぜ、わざわざビーム兵器や宇宙魚雷を使わず旧時代的な砲弾で戦争しているのですか?もしこれが私達の宇宙の地球なら海を全て支配された時点で人類は一日と持たずに滅んでいるはずです!さらに艦娘もおかしいです!ここまで追い詰められてもショックカノンや宇宙魚雷も使わないなんて……普通はあれば使っているはずです!…………それに両者、あの貧弱な武装の攻撃でお互いダメージを受けて沈んだりしているんですよ?さっきの通常水上艦艇が深海凄艦に放っていた超電磁砲なんて私のこの光線砲よりも出力が弱いのに宇宙戦艦級の深海凄艦を何隻も撃沈したんですよ?」
「…………」
ヤマトはキリシマの言葉に何も言い返せなかった。
キリシマの言っていることは全て正論だったのだ。
「……そう考えれば私が考え付いた現時点での結論は一つしかありません」
キリシマはヤマトの目を見つめて言った。
「私達の地球は二十三世紀。この宇宙の地球は技術水準から推測して二十一世紀初頭ここが本当に二十一世紀だった場合。時代を見てもこの地球には宇宙戦艦はまだ存在しないと考えるのが妥当です…………つまり、私達の元になった宇宙戦艦がこの地球には存在しない」
キリシマの仮説が真実に近づきヤマトは目を見開いた。
「この地球の艦娘と深海凄艦は……少なくとも艦娘達は…………あきらかに私達とは大本が全くの別の存在です」
ヤマトがこの宇宙の地球に漂流してから約一週間、このキリシマの話が最もヤマトを驚かせ驚愕させたのであった。それは話していたキリシマも同じ…………。
二人はようやく気がついたのだ。
この地球上に宇宙戦艦はたった二人しかいないという真実に……。
そして、今思えばこの日からヤマトとキリシマの運命はこの世界を巻き込みながら翻弄され、さらなる混沌の渦に飲まれてゆくのであった…………。
グアムの周辺で様々な変化が置き始めている頃。
フィリピンのルソン島中部にあるアメリカ軍のとある基地でも奇妙な動きが起きていた……。
「……そうか」
男は電話を切った。
電話を机の受話器に戻すと男は椅子に深々と座りうなだれるように下を向いた。
「……………………」
そして、しばらくの静寂の時が流れた時、男は自分の横で控えていた部下の男に残念そうにこう呟いた。
「作戦は……失敗だ」
「それでは……」
「ああ……そうだ…………まさか、味方に撃つ事になろうとは…………」
男は机に目を向けると机の引き出しに手をかけ開いた。
そして中から赤い電話機を取りだすと受話器を持ち上げ耳に当てた。
数秒間コール音の後に誰かが出る。
そして男は口を開いた……。
「私だ。すでに大統領は作戦命令書にサインをなされた……コード191を発動。準備ができしだいグアムに対し……
核攻撃を開始せよ」
夏……体中が痛すぎる……
グアム決戦はこのⅢをもって終わりです。
次回はいよいよヤマトが……。
一応補足として説明しますがレールガンを跳ね返すという発想はアニメの金剛からきました。
人間側の通常兵器は一応、深海凄艦をある一定の効果はありますが相手は深海凄艦ですので倒すのには一苦労です。ズムウォルト級がもし艦娘なら深海凄艦にレールガンを跳ね返される事は無かったかもしれませんが残念ながら通常兵器なのでこのような結果になりました。
ちなみに艦娘も深海凄艦も敵の攻撃を跳ね返せるのは一部の熟練度が非常に高い艦だけです。熟練度が高いといっても誰でもできるわけではありません。ごく一部です。
この話で言いたかったのは深海凄艦と戦うためには艦娘が必要ということです。
分かりにくかったらごめんなさい。
ヤマト達の部分はやはり難しいですね。
この状況でヤマト達が何を考えているのか考えるのが難しい……。
これで良かったのか自分でも迷うところです。
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