食戟のソーマ―愚才の料理人―   作:fukayu

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 今年も一年お疲れ様でした。
 来年はソーマ二期や計十二回見に行かない映画などがありますが、この作品も細々ながら感想目指して頑張ります。











 おまけ 原作の叡山の対戦相手が榊奴だった場合

審査員A「不正?何の事かな?我々は叡山殿の実力を充分知っている。それを踏まえた上で料理を食すまでもなく勝敗は決していると言っているのだ」

審査員B「大体君の料理は我々の業界でも有名だ。大して美味しくもないものだと理解しているのにどうして我々が食べなければいけないんだ?」

榊奴「…………審査員としての役割を放棄するということですか?」

審査員C「そうではない。ただ時間の無駄だというだけだよ」

叡山「そういうこった。折角後輩のために一肌脱いだってのにカッコつかない最後にしてしまって後輩として申し訳ないと思ってるぜ?」

榊奴「―――別にいいよ。これくらい想定しなかったわけじゃない。君相手に無策で挑もうとする方が馬鹿だしね」

叡山「ほう?」

榊奴「本当は本気の食戟をしたかった。でも、こうなってはしょうがないよね。――――――こっちも奥の手を使わせてもらう!」

叡山「奥の手だぁぁ?一体何しようってんだ!」

榊度「俺は調理フェイズと実食フェイズの間に裁判フェイズを要求する!」

審査員A「!?裁判だとっ!?」

審査員B(まさか我々を訴える気か!?いや、あの榊奴操ならやりかねん!)

審査員C「無駄だ無駄だ!今の遠月は薊総帥の下、法関係にも完璧な布陣が敷かれている。どんなに優秀な弁護士を雇おうと勝負になどならん!!」

審査員A「いや、そもそも。君を弁護してくれる人間などいるのかな?もしいるのなら個人的に話をさせてもらいたいな!」

審査員B「全くですな」

審査員C「はっはっはっは」

叡山「そういうことだ。今更何をしようと俺たちに逆らった時点で終わりなんだよ、先輩ィィィィィ!!!!」

榊奴「それは――――――、どうかな?」

叡山「何っ!?」





榊奴「じゃ、お願いします。成歩堂先生!」

叡山&審査員達「「「「え!?」」」」














田所「その後、叡山先輩と榊奴先輩の食戟から始まった裁判は逆転に次ぐ逆転で最終的に薊理事長の虐待問題にまで飛び火し、新政権は崩壊。私達の遠月学園は以前の厳しくも楽しい学園に戻りました」


  真実の逆転END


 敗因―――不正をする際、相手が成歩堂弁護士を連れてくると想定しなかったから。



『F』の悲劇 潜入

 アリス達を送り届けた直後、榊奴は激務で疲労した体を休める事無く遠月学園に向かっていた。

 時刻は既に午前零時を回っていた学園は昼間の喧騒を忘れ、研ぎ澄まされた刃のように静かに日が昇り若き料理人達がその門を叩くのを待ち構えていた。

 

「流石にキツいかな?行けるかな?」

 

 黒を基調としたトレーニングウェアに着替え、幾重にも張り巡らされた監視カメラの死角で一人静かに体をほぐす。

 今のこの学園は昼間と違い、世界最高峰のセキュリティシステムで守られた鉄壁の要塞だ。来るものを拒み、出るものを阻む。遠月学園では次代を担う料理人達の玉の選定と同時に汐見ゼミ等を筆頭とした最新鋭の技術が大量に存在している。学園の生徒ならば誰でも学べる技術が外の世界では冗談抜きに数年後のものだったりするのだ。そういった意味で学園の機密性は某アンブレラ社と同等と言われており、夜間の侵入は至難の業といえる。

 日中?武装した兵士をものともしないKUMAやINOSISIを一撃で倒す生徒がいる状態でどうしろというのだ。

 

「でも、やらなきゃいけないことがある以上躊躇はしていられないか。よし、準備完了!」

 

 意を決したように榊奴は外敵を阻むように立ち憚る高さ5mの壁を料理人としての技術を利用して登り始める。料理人として食材を痛める可能性のある赤外線対策は万全だ。月間スパイ養成講座を定期購読し、半年間毎号付いてくるパーツを組み合わせて作り上げた暗視ゴーグルと頭の中の知識を総動員して進んでいく。日頃からもしもの時のために考えていた侵入ルートが役に立った。コツは地面の上を歩かず、敢えて木々を飛び移ることだとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠月学園には基本的に寮は存在しない。

 学園に通う生徒は近くで部屋を借りるか車などでの送迎が基本とされている。地方から上京し、決して裕福ではない田所恵としては学内に唯一存在するこの極星寮に入寮が認められたのは幸運だった。入寮試験で何度も落ち、他に行く宛がなく粘り切るしかなかったというのは内緒だ。

 

「お母さん、私ここでやっていけるかなぁ」

 

 部屋の窓から見える極星畑のとても学生が育てているとは思えない完成度に圧倒される。同時にとんでもない場所に来てしまったという後悔とも言える感情が湧き上がる。ただでさえ高レベルの授業に持ち前のあがり症も相まって入学から半年が経とうというのに未だ結果の残せない毎日。中等部では余程の事がないと退学にはならないとはいえ、高等部に上がってしまえば別。実力の足りないものは容赦なく切り捨てられてしまうこの世界でこのまま行けば最初の脱落者となってしまうことは火を見るより明らかだった。

 このままではマズイ。そう思うも実行に移せない日々。故郷の自分を信じて送り出してくれたみんなの為にもせめてこの学園で生き残る程度の実力をつけたいが、正直言って現状からどうやって抜け出せばいいかもわからない状況だった。

 

「よっと」

 

「え?」

 

 憂鬱になりながら外を見つめていた窓の隣にその人はいた。

 というか、飛びついてきた。

 全身を黒一色で統一されたユニフォームに頭にはゴーグル、背中には刀傷と思われる傷跡がある男が寮の壁に張り付いていた。

 

「え?え?何が――――」

 

「ちょっ!タンマ!!」

 

 一瞬の思考停止の後、最初に蘇った防衛本能から叫ぼうとした瞬間、口元を押さえて部屋へと押し込まれる。

 

「ゴメン!今叫ばれると流石にマズいんだ。いや、叫んでもしょうがない状況だとは我ながら思うがちょっとの間待って欲しい」

 

「んー!んー!!」

 

 生まれて十数年。

 こんな明らかな格好の人間に襲われる機会等この平和な日本であるはずもなく、恐怖で体が震える。

 

「あー、もう、こういう時は!」

 

(ッ!?こ、殺される!お母さん、お父さん、ごめんなさい。私ここまでみたいです!)

 

 男が背中が何かを取り出そうとしてハッキリと命の危険を感じる。

 恐怖から目を瞑り、一瞬の後フワリとした開放感が全身を包み、これが死ぬということかと思いにふける。

 

(あ、なんか諦めちゃうと落ち着いてきた。死ぬってこういう感じなんだー。なんかいい匂いもするし、わ、悪くはないのかな?)

 

 自室のベッドのようにどこか慣れ親しんだような場所に寝かせられ、ハーブの香りが鼻腔を刺激する。どうやら地獄というわけではないらしい。

 

「あ、ちょっとまってね。もう少しで出来るからー」

 

「あ、大丈夫です!」

 

「よし、出来た。もう眼、開けていいよ」

 

 言われた通りに眼を開ける。そういえば、さっきから話している人は誰なんだろ―――。

 

「へ?」

 

「ベタだけどカモミールティだ。ハチミツはいるかい?」

 

「あ、ありがとうございます?」

 

 さっきの不審者がお茶を入れてくれていた。しかも、手持ち無沙汰なのか部屋の清掃までしてくれていた。

 

「いやー、流石極星寮だねー。古いながらも器具が充実している。うん、いい寮だ」

 

「えーと、どうして――――」

 

 そこまで言おうとして戸惑う。

 一体どこから突っ込めばいいのか。こんな時、友人の榊涼子や吉野悠姫なら上手く突っ込めるだろうが、この状況内気な恵には荷が重い。

 次の言葉が出ず、オドオドしているとそれを察したのか男が口を開く。

 

「いやー、悪いね。学園に侵入しようとしたら思った以上に手こずっちゃって。ドーベルマン程度ならどうとでもなるんだけど、まさか忍者を放し飼いにしているとは思わなくてね。見通しが甘かったという他無い。途中から「薙切インターナショナル」で開発中の警備ロボットが出てきたときは焦った。あいつらビーム撃ってくるんだぜ?確かにビームは男のロマンだけどさ。もうちょっと出力抑えないと肉焼くにしても焦げちゃうと思うんだよね」

 

 忍者?ロボット?一体何を言っているのだろう。

 もしかして自分は夢でも見ているのかもしれない。だって、明らかに匂いや見た目から美味しいはずのハーブティからは普通という感想しか浮かばないし、きっと入寮試験に受かった事で張り詰めた神経が切れて変な夢でも見ているんだろう。

 

「――――で、止む終えず飛び移った窓にキミがいたんで、悪いと思ったんだけど隠れさせてもらった」

 

「いえいえ、いいですよー」

 

「そうかい?そう言ってもらえると助かる」

 

 夢だと思えばなんてことはない。悪い人ではなさそうだし、そこまで気にすることないんじゃないかと思えてくる。今もせっせと引越ししてから録に整理の出来てない室内を眼にも止まらぬ速さで片付けていってくれるし。

 

「あ、これはどうする?」

 

「それはこっちの棚でお願いします」

 

「はいよー」

 

 中学一年の少女の指示で物音一つ立てずに部屋を片付けていく全身真っ黒な男。

うん、これが夢でなければ大変だ。

 

 それにしてもこの人、知識が凄い。

 持ち込んでバラバラになった参考書などをわかりやすいように正確に並べていってくれる。そして、すかさずハーブティのおかわりを入れてくれる。

 

「あの、料理―――よくするんですか?」

 

「ん、ああするよ?あんまり上手くないけどね。あ、ごめん。ついつい癖で片付けてしまった!俺としたことが女の子の部屋を勝手に!―――周りの連中がどいつもこいつもだらしないせいだ!本当にごめんなさい!!」

 

「い、いえいえ、私こそ、片付けてもらっているのに自分だけこんなにくつろいでしまって!ご、ごめんなさい!!」

 

「いやいや、今回は全面的に俺が悪いから!キミに謝られるとどうしようもない。そうだ、なにか相談に乗ろう」

 

「そ、相談ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、なるほどな」

 

(何やってるんだろう、私)

 

 聞き上手というのか、恵の話を真剣に聞いてくれ、要所要所で相づちを打ってくれる男にいつの間にか緊張せずに話せるようになり、気付けば遠月学園での不安を全て打ち明けてしまっていた。

 

「つまりは自分に自信がないってことか。うん、じゃあ逆に考えてみよう。君が自分に自信を持って―――自分の料理を全力で出したいと思うときはどんなとき代?」

 

「自分の全力ですか?」

 

「そうだ。これは俺の持論なんだけど、料理ってのは自分のために作るときよりも誰かの為に作る時の方が前に進めると思う。確かに自分の為に作る料理は才能や努力の続く限り進めるだろう。どれだけ自分が進んだかわかりやすいからね。でも、誰かの為に作る料理はその誰かの感想がないと成長した実感がわかないけど、彼らのことを思えば思うほどなんだか力が沸いてくる気がするんだ。その思いが――――誰かを思いやる心がある限りその料理人は前へ進み続ける」

 

「思いやる心…………」

 

 その後、男は自分の夢は『料理で誰かを笑顔にすること』だと教えてくれた。

 ゴーグル越しに見える目はどこか優しくて、それが決して嘘ではないということを教えてくれる。

 

「料理は『心』ってのはあながち間違ってはいないと思う。勿論、知識や技術も必要だけどね。それら全てを引っ括めて『料理ってのは皿の上に自分の全てを乗っけること』だからさ。別に無理して先のことを考えることはないよ。経験上、多少やんちゃしても中等部の間は余程の事が無い限り退学にはならないし、準備期間だと思って自由にやることをオススメするよ。そして、高等部に上がった時に自分の全てを引き出せるようにその心の刃を研いでおくといい。――――もし、その時が来て俺がそばにいれば、キミを全力で応援すると約束するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「応援する」

 

 そう言って、その人は窓から飛び出していった。

 ここは一応二階なんだけど、関係なかったみたいだ。

 

 最後に、もう覚えたからといって置いていってくれたいくつかのレシピに目を落とす。恵の眼から見ても完璧とも言えるバランスで組み立てられた黄金のレシピ。いつか使いこなせる日が来るのだろうか。

 

「自由に、か。そういえばここに来てからずっとそんな余裕なかったな。まだ緊張せずにやれる自信はないけど頑張ってみよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっぶねー、このまま長居すると流石にふみ緒さんに殺されるところだった」

 

 後日、極星七不思議に『極星寮の黒い妖精』が追加されることを彼はまだ知らない。




 一体、主人公はどこを目指しているんだ?
 今回、主人公は背中の傷から入った毒で意識が朦朧としていたので若干テンションがおかしいです。なので、田所ちゃんに会ったことは覚えていません。あ、毒は気合で直しました。料理人だし、当然だよね?

 そして、田所ちゃんが意図せずに魔女のレシピを入手。彼女が使いこなせる日は来るのでしょうか?




後日

魔女「えー、私のレシピ無くしちゃったんですかー?」

榊奴「すみません」

魔女「折角みーくん用に作った(実力の足りない人間が使うと発狂する可能性有り)のにー。ま、いいですかね。そんな大事なものでもないですし」

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