乙女はアイドルになる   作:s.s.t

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修羅場≪ハードスケジュール≫と踊≪ダンス≫っちまったんで更新遅れました。

前回からかなり間が空きましたけど生きてます。私は元気です。
アニメのウサミン回待ったり久しぶりで書き方思い出したりしてたらこんな遅い時期に。

また週1ペースで更新していくのでよろしければお付き合いください。



ウサミンのパーフェクト設定遵守教室(ブロマイド付き)【前編】

「有ちゃん、事務所の敷地内にカフェがあるのは知ってる?」

「来たよこのパターン」

 

さすがに3度目ともなればもう慣れたよ。

ダイエットとエステの次は何の体験をさせられるんだか。

 

「346カフェっていう名前はそのままのお店なんだけど行ったことあるかしら?」

「ぼっちにカフェなんてオサレな場所は無縁です」

「知ってたわ」

「なら聞くなし」

「もしかしたら誰かに誘われたってこともあるかもしれないじゃない? 私なりの気遣いよ」

「Pさんの気遣いが気遣いであったためしがない」

 

カフェってなんか高いお金払ってちょっとおいしいコーヒーやら紅茶やらを軽食と共に楽しむイメージだから、缶コーヒーやペットボトルのお茶しか知らない俺にはハードルが高い。

通勤する時にいつも346カフェの前を通るから存在は知っていたけどスルーしてた。

食事は社食で十分だし仕事が終わったらまっすぐ家に帰りたい派です。

 

「有ちゃんには今日メイド体験をしてもらうわ」

「脈絡がなさすぎる」

「女の子の嗜みとして一度はメイドを経験しておかないとね。話にもついていけないでしょ?」

「女の子の嗜みとはなんだったのか。メイドの話で盛り上がるガールズトークとか絶対少数派ですよ」

「詳しくはメイドの大先輩がいるから346カフェに行きなさい。場所は知ってるわよね?」

「いやいやいつもの流れで押し切ろうとしてもさすがにこれはスルーできませんって」

 

そもそもあのカフェにメイドなんていないよね?

注意して見てたわけじゃないけど普通のカフェだったのは間違いないし。メイドなんて一度も目にしたことないわ。

 

「つーか今まではまだ納得できる理由があったから文句言いませんでしたけど、メイド体験はマジで何の意味があるのかわかりません」

「まあ聞きなさい。今回のこれにもちゃんとした目的があるから」

「ならそれを話してください」

「先鋒を待たせてるから手短にね。簡単に言うと有ちゃんの女装バレ対策の一環よ」

「対策ですか?」

「最近美嘉ちゃんたちとの買い物とか愛海ちゃんの襲撃とか女装のバレそうな危機が立て続けにあったじゃない? 幸い私や武内君がいたからフォローできたけど、有ちゃん一人でも対処できた方が安心なのよね」

「つまり私だけでもピンチをしのげるようになれと」

「そういうことね。これでわかった?」

「一応は納得です」

「それじゃあ早く行きなさい。言っとくけど今日の大先輩は名前だけじゃなくて本物の大御所だから失礼のないように」

「りょーかいです」

 

Pさんがそこまで言うとはいったい誰が待っているやら。あんまり厳しい人じゃなければいいなー。

 

「あれ? というかよく考えたら今の話踏まえてもメイド関係なくない?」

「そこに気付くとは、やはり天才か……。直接は関係ないけどメイドの方が面白そうじゃない? だからよろしくねー」

「こんにゃろう」

 

今は急がなきゃいけないから行くけど、後で覚えとけよー。

いやでも怒りってエネルギー消費するから持続しないんだよね。やっぱ次会った時には忘れてるかも。

 

とりあえず346カフェに向かおう。

 

 

 

 

 

「ウッサミーン! キャハ☆ ウサミン星からやってきた歌って踊れる声優アイドル、安部菜々でーす!」

「わーいウサミンだー!」

「あ、あれ?」

「私ウサミンの大ファンなんです。ぜひ握手してください!」

「ハ、ハイ。どんと来いですよー」

「うわー感激だなー! とっても嬉しいなー!」

「あの、小鳥遊有ちゃんですよね? 増田さんのところの」

「ウサミンありがとね! それじゃバイバーイ!」

「どさくさにまぎれて帰ろうとしないでください! ナナが怒られちゃいますよ!」

「正直すまんかった」

 

だってメイドやりたくないんだもん。

そりゃ逃げようともするさ。

誰だってそーする。俺だってそーする。

 

「ウサミン星の挨拶にああいう返しをされるのはナナ予想外でした」

「テレビ出てるわけでもないんだからキャラ作らなくていいのに」

「ウサミン星人はキャラじゃないんです! あれが普通なんです!」

「それはそれで大変だろーに」

 

さきほどエキセントリックな挨拶をかましてくれたのはウサミンこと安部菜々さん。ウサミン星からやってきた永遠の17歳である。

主にバラエティーで幅広い活躍を見せる彼女だが、永遠の17歳というプロフィールのせいで年齢詐称疑惑の絶えないアイドルだ。疑惑っつーかもはや公然の秘密なんだけどね。

言葉の端々からどう考えても成人はしているとわかってしまうほどボロを出しまくっているのにそれでも絶対認めない姿がお茶の間にウケている。

年齢の話以外でもウサミンといういかにもな電波キャラを演じているのだがそれも決してキャラとは認めない。

個人的にはここまで来るとプロ根性が染みついていると感じられて好ましいアイドルなので、大ファンというのも嘘ではない。

 

最初にメイドの大先輩と聞いた時はどうしようかと思ったがウサミンなら学べることも多いだろう。Pさんグッジョブ。

 

「ということで改めまして小鳥遊有です。本日はよろしくお願いします、安部先輩」

「急にどうしたんですか!? さっきまでみたいにフランクな態度でいいんですよ?」

「まさか。大御所の大先輩に失礼があってはいけません」

「ナナは17歳のJKですから有ちゃんよりも年下です! アイドルとしてもちょっとだけ先輩なだけなのでそんなに身構えないでください!」

「あ、そう? それじゃウサミンよろしく」

「そこまであっさり変わるのも釈然としませんね……」

 

不思議とウサミンには敬語使わなくてもいいかなーって気になるんだよね。川島さんや楓さんみたいに年上相手だと敬語の方が楽なのに、ウサミンはタメ口の方が楽。

頭では年上ってわかってるんだけどねー。

 

ウサミンも俺のことちゃん付けで呼んでるし年上なのは間違いないはず。

JKっていう言い方もなんか古いし。

ていうか会ってまだ5分もしないのにさっそくボロが出かかってるのはさすがと言わざるを得ない。

 

本当は何歳なんだろうねウサミン。半分冗談とはいえ大御所なんて呼ばれるくらいだから事務所の中でも古株っぽいんだけど。

 

うーん。アイドル部門は結構新しい部署だから大御所って感じでもないし……少なくとも設立当初からいたとして……

 

「ウサミンは最長老様?」

「突然なんですか!? ナナはウサミン星人であってナメック星人ではないですよ!」

「今ので即座にDBネタだとわかるJKってどうなんですかねぇ」

「ド、ドラゴンボールは国民的な作品ですから! それにナナは毎週19:00のアニメも見ていたのでけっこう詳しいんです!」

「ゴールデンタイムのって再放送じゃなくてリアルタイムのやつじゃ……? フリーザ編は私が生まれるより前だったような」

「ああああいや19:00にやっていたアニメの再放送ってことですよもちろん! ナナは17歳ですからね! 20年も前のアニメをリアルタイムで見ているわけありませんよね!」

「もういい……もう休め……!」

 

 

どうしてちょっとふざけただけの一言からここまで傷口を広げられるんだ……!

 

 

「気を取り直して本題行こうウサミン。今日は何をするのかな?」

「は、はい。有ちゃんには今日一日346カフェでメイド体験をしてもらうことになっています」

「よし帰ろう」

「帰らないでくださいって!」

「やっぱりメイドは嫌です」

「男の子は度胸ですよ! こういう時は堂々としてください」

「いや男だからこそ堂々としちゃいけないでしょ……て、いうか、男?」

「有ちゃんは男の子ですよね? 増田さんからそう聞いてますけど」

「えっ。なに、どういうこと?」

「もしかして何も聞いてなかったんですか? えーとですね…………」

 

 

 

 

 

女装を隠すコツを学びに来たと思ったら女装がバレていたでござる。

ウサミンもカフェの従業員さんたちもみんな俺の事情は知ってるんだってさ。

従業員さんはともかくウサミンはアイドルだし、いつも通り女装してるのは隠さなきゃいけないと思ってたからびっくりした。

 

まあでもよく考えたら最初からバラしておいた方が色々都合良いし直接ウサミンからコツとか教えてもらえるもんね。当たり前っちゃ当たり前か。

 

ただしわざと俺に黙っていたPさんは絶許。

 

「午前中は軽い研修みたいなものを受けてもらって、お昼から夕方までメイドとして接客してもらいますね。服装以外は普通のウェイトレスと変わりませんから安心してください」

「メイド服である必要なくない?」

「ナナが有ちゃんに教えるのは自分の秘密がバレてしまいそうな時に上手く誤魔化す方法です。口では何て伝えればいいのかわからないのでナナの真似をしながら実地で学んでください!」

「ええー」

 

ウサミンの真似するって『キャハ☆』とか『ハートウェーブ!』をやらなきゃいけないの?

別にやれって言われたらやるけどさ。できればもっと理論的に教えてほしかった。

 

「これ有ちゃんのメイド服です。接客に関してはお仕事ですから厳しく教えちゃいますよー!」

「なんで楽しそうなんすか」

「最近はなかなかここのお店を手伝えていなかったので久しぶりなんです。お仕事が増えたのは嬉しいけどやっぱりナナの原点はメイドさんですから」

「メイド歴長い?」

「はい! デビューするまで苦節ン年、それまでずっとここみたいなカフェでメイドをしてました」

「へーJKなのに何年もやってたってことは中学生くらいから働いてたのかなーすごいなー」

「あ゛! その……し、親戚のおじさんが喫茶店をやっていたので小さい頃からそこのお手伝いを……」

「なるほど、おこづかいを稼いで養成所通うなりアイドルグッズ買って勉強するなりしてたわけですね」

「そ、そうです。よく気がつきましたね! 実は有ちゃんを試すためにわざと矛盾が生まれそうな言い方をしたんですよ! 疑う側の考えがわかれば疑われる側になっても対処しやすいですからね!」

 

そうやって必死な様子を見せるから余計に疑われるんだろうに。言い訳をする時こそポーカーフェイスが大事なんだね。

ウサミンは(反面)教師として優秀だなー。

 

「着替えたら接客の仕方を覚えましょうか! お店の人の手を借りるのは申し訳ないのでナナが教えちゃいます」

「アルバイト経験一切ないんでお手柔らかにー」

 

 

 

その後一から接客のイロハを叩き込まれた。

店員役とお客役に分かれてお手本を見せてもらったらそれを真似することの繰り返し。覚えるのはそれほど苦労しなかったけど意外なほど注意点が多かった。

特に敬語はアレだね、「こちら〜になります」とか「〜でよろしかったでしょうか?」とか有名だけど間違ってる言い方がたくさんあるから気をつけなきゃ。

 

これからフロアに出て実践である。

真面目に働いたことないから緊張しちゃうぜ。

 

 

「いらっしゃいませ。喫煙席と禁煙席、どちらがよろしいでしょうか?」

 

「ご注文は何になさいますか?」

 

「お待たせいたしました。ホットコーヒーとBLTサンドでございます」

 

「ただいま席にご案内いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか?」

 

「お会計は850円でございます」

 

「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

 

「こちらお熱いので十分にお気を付けください」

 

「コーヒーのおかわりですね。かしこまりました」

 

「2000円お預かりいたします。800円お返しいたします」

 

「ありがとうございました」

 

 

………………、ふぅー。

 

い そ が し い 。

 

 

なんかお客さん多くない? お昼時とはいえほとんどの席埋まってんですけどー。

こんなに混んでるところ見たことないのに今日に限ってどういうことなのこれ。

 

「今日はお客さん多いですねー。きっと有ちゃんみたいな綺麗な子がメイドさんをやってるから話題になってるんですよ!」

「ウサミン効果じゃないんですか」

「ナナの時は別にお客さん増えたりしませんよ? 昔から働いてますから珍しくもないですし」

「昔から?」

「あ、あはは〜。そこまで長い期間でもないですから昔っていうのは言い過ぎだったかもしれませんねー」

「別に前フリしてるわけでもないんだから勝手に自爆しないでくださいよ」

「そんなことよりも! 有ちゃんってすごく接客する姿が様になってますよね。本当にアルバイト経験ないんですか?」

「ないですねー」

 

幸いというべきなのか両親は十分な金額を仕送りしてくれてたし、俺の趣味はネットサーフィンだからそっちの出費もない。

おかげでバイトもせず一度も社会に出たことのないヒキニートが生まれましたとさ。めでたくねえや。

 

あ、ちなみに就業中なんでウサミン相手でも敬語。休憩時間でもどこにお客様の目があるかわかんないしね。

 

「メイド服も似合ってますよ! 初めて着たとは思えない着こなしっぷりです!」

「全然嬉しくないんですけど。まあ自然に見えるっていうならウサミンの真似をしてるおかげですね」

「いやいやナナを真似したからってそう上手くはいきませんよー」

「何をすればいいかわかってるならそれを実行するのは難しくないですから。ウサミンはわかりやすいので楽です」

「そ、それはナナの考えがわかってしまうということなんでしょうか?」

「わかるのは考えじゃなくてキャラですけどね。ウサミンはとりあえず恥を捨てれば真似できます」

「キャラじゃないです! あとそれじゃナナが恥知らずみたいじゃないですか!」

「世の中恥を恐れずに行動する人間の方が成功するんですよ?」

 

ぜひともウサミンにはそのままの恥知らずであってほしい。

19歳になっても魔法少女を名乗るような人がいるんだから17歳で宇宙人を名乗る人がいてもいいじゃない。

 

「私なんか22歳でぼっちのニート予備軍ですからウサミンより恥ずかしい存在です」

「そ、そんな悲しいこと言わないでください。ナナなんかこの年までアイドルの夢を諦められなくてズルズル来ちゃった人間ですから、毎年まだいけるかもう駄目かって悩んで悩んで、もし今でもデビューできてなかったらと思うと」

「ウサミンウサミン、素が出てる」

「うぅっ。聞かなかったことにしてください……」

「ドンマイ。そのうち良いことありますよ」

「有ちゃんに慰めてもらうのも複雑です」

「こりゃダメだ。そろそろ休憩終わるんで先にフロア出てますねー」

「むしろ今のアイドル活動だっていつまで続けられるんでしょう……」

 

 

落ちこんだウサミンが安部菜々さんになってしまった。どうする?

 

>そっとしておこう

 

 




ウサミンはペルソナ4に混ざっても違和感ないと思います。
わかりやすく自分だと認めたくなさそうなシャドウもありますし。

アニメ2期の雲行きが怪しいような怪しくないような。
一応この作品はアニメがベースなので矛盾が出るとやりにくいんですよね。今のところは支障ありませんが今後矛盾が出たらアニメとは違う部分もあるんだよってことでふわっとした感じで受け止めてください。


人物紹介のコーナー。

●安部菜々(あべなな)
自称永遠の17歳でウサミン星からやって来た歌って踊れる声優アイドル。
設定と本人の言動にツッコミどころが多すぎるけれどそこが可愛い。

出身地がウサミン星で趣味もウサミン星との交信という徹底振り。
アニメを見る限り「ウサミンはキャラじゃない」という本人の主張は浸透していないが、キャラクターとしてのウサミンは受け入れられていると思われる。

年齢詐称疑惑については公式がいじっていくスタイルなので17歳でないことは明らか。色々な証拠から20代であることは確定しているらしい。

146cmという低身長に反してスタイルが良い。
しかし衣装は露出の少ない物ばかりで、特にへそ出し絶対NG。と思ったら最新の水着ガチャで解禁された。

「メルヘンデビュー!」というウサミンのソロ曲は中毒性ばっちりの電波ソングなのでぜひとも聞いてみてほしい。
ちなみにミミミンミミミンウーサミンというフレーズだが実際の歌詞だとミミミンではなくミンミンミン。これ豆な。


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