乙女はアイドルになる   作:s.s.t

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前話の投稿後少ししたらお気に入りが100件超えてウレシイヤッターって喜んでたのに、この話投稿する段階で200件超えちゃいました。
日間ランキングにも載ってとても嬉しいんですがそれで作者の腕が上がるわけでもないんでほんとクオリティには期待しないでください。

今回も前後編に分けちゃってもう全然一話でまとめ切れる気がしないです。

思いつくままに書いてる方が楽なんですけどもっと短い方がいいって人がいたら言ってください。
前向きに検討して出来る限り善処させていただきます。


追記)感想欄を見たら読者の皆様は私が思っている以上に作品がホモくさいと感じられているようで困惑しました。
なにか注意を促すタグを付けた方がいいのではと心配になったのですが、そうした方がいいという人がいたら感想書く際にでもさらっと付け加えていただけるとありがたいです。
こっちはちゃんと実行します。





川島式エステ講座(25歳児付き)【前編】

「有ちゃん、事務所の中にエステルームがあるのは知ってる?」

「いや、知らないですけど」

 

 

俺は行動範囲が狭いから事務所内の設備とかはたいして知らない。

初日の案内もオフィスとかレッスン室とか重要な場所だけだったし。知らないところに1人で行くとか怖いし。

 

潜在的ニートは安定を好むから冒険はしないのだー。

いや逆に考えるんだ。「冒険者は冒険しちゃいけない」という格言に従っていると考えれば俺マジ冒険者。

 

 

「てゆーかエステってそんなものまであるんですか」

「ウチはアイドルに限らず所属タレントが多いし、スタッフも女性ばかりだから需要が大きいのよ」

「ほーん。よくそんなお金がありますね」

「有ちゃんはもっと業界のことを勉強しなさい。これでも346は最大手よ? これくらいは当然の投資だわ」

「人材を大切にする企業の鑑や」

(それにお金集めの上手い事務員がいるのよね)

「?」

 

 

しかし大きいのはわかってたけどそんなにでかかったんか。

芸能事務所なんてどこもこんな感じで派手なビル建ててんのかと思ってた。

 

どうりでまだデビューもしてない俺にまで給料払ってくれるわけだよ。

俺からしたらあんまりやりたくないことやらされてるからお金もらえるのはありがたいけど、客観的に見たらアイドル志望の子が教育受けさせてもらってるだけだしね。

下手したらこっちがレッスン料取られるレベル。

 

 

「有ちゃんには今日エステ体験をしてもらうわ」

「あれ? なんかデジャヴ?」

「女の子の嗜みとして一度はエステを経験しておかないとね。話にもついていけないでしょ?」

「そのセリフも前言いませんでした? まあ寝てるだけでよさそうだからいいですけど」

「詳しくはエステの大先輩がいるから2Fのサロンに行きなさい。はいこれ地図」

「進研ゼミ並みの既視感が私を襲う」

 

 

あれれー? おかしいぞー?

見た目は女、中身は男。その名は

 

 

 

イ ザ ナ ミ だ

 

 

 

しかし最初から弱い自分を受け入れている俺に傲慢な人間を無限ループに閉じこめるイザナミの術は効かなかった(解説口調)

 

ぼっちは基本自分に対して肯定的なのだ。なぜなら自分以外誰も肯定してくれる人がいないから。

 

カブトやイタチさんが傲慢になってしまったのも強い力を持っていて人間関係に縛られたことが原因。

つまりは働かずに社会的弱者となり人と関わらないようにぼっちであり続ける者こそがイザナミにも負けない正しい人間の姿だと言える。良い子はマネしないでね。

 

 

「遊んでないで早く行きなさい」

「はーい」

 

 

 

 

 

2Fエステルームにとーちゃくー。

したのはいいけど誰もいないっぽい。

 

1人じゃ入りづらいしどうしよ。

 

そーっと中を覗こうとしたりキョロキョロ周りを見渡してたら、物陰に誰かが潜んでいることに気付いた。

 

 

「む! そこにいるのは誰だ!」

「ひっそりとひそむ私。高垣楓です」

「なんだ楓さんか。あいかわらずつまんないですねー」

「アイムショック……」

「うっせえ回転椅子でグルグルさせんぞ」

 

 

この人は高垣楓。

年齢の割に子どもっぽい面が多いことから25歳児と呼ばれたりする温泉とお酒が大好きなアイドル。

あとしょーもないダジャレを常に会話におりまぜてくる。

 

ちょっと前にPさんの紹介で知り合ったんだけど、第一印象で美人の年上お姉さんかと思ったらとんだマイペース幼児だったでござる。

キレイだなーと思った俺のときめきを返せよー。

 

 

「エステルームへようこそ有ちゃん。Pさんに言われて来たんでしょう?」

「楓さんが今日の大先輩なんですか?」

 

今日のわんこみたいな言い方になっちゃった。

 

「いいえ。お探しの大先輩は既に中にいるわ。私は話を聞いて面白そうだからついてきたの」

「仕事しなくていいの?」

 

自由すぎるぜ25歳児。

関係ないなら中で待ってりゃいいのにさっきのダジャレ言うためだけに待機してたの?

まあ別に貸切ってわけでもないんだし楓さんがいたいなら好きにさせればいいや。

さっさと中入ろう。

 

「なんか入りづらいんで楓さん先に入ってくれませんか?」

「有ちゃんのためなら悠々と先陣を切ってあげる」

「ギャグはひどいけど頼れる人だぜ!」

 

あ、どんどん先行かないで。置いてかれちゃう。

 

 

 

 

受付で名前と所属を書かされると通路を通ってどこかの部屋の前に連れてこられた。

 

 

「ごくっ……ここにエステの大先輩が」

「そう。アンチエイジングに命をかける28歳の元アナウンサーがこの中にいるわ」

「それもう答え言っちゃってるじゃん」

 

 

俺の緊張感どうしてくれるんだ。

今のでわかっちゃったのもちょっと悔しいし。

 

まあ変に身構える必要なくなったからいいか。それじゃあドアを開けてっと。

 

 

「川島さんの御宅はこちらでよろしいでしょーかー」

「可愛い後輩セットのお届けにあがりましたよ」

「あら、来たのね2人とも。遅いから先に始めさせてもらってるわ」

「なにその飲み屋に遅刻してきた後輩を出迎えるような言葉。ここエステだよね?」

 

なんかすでにマッサージっぽいことされてんですけど。

これって俺がエステ受ける役じゃないの?

 

川島瑞樹28歳。

この人も楓さんと一緒にPさんから紹介されたんだけど、こんな感じで今のところ自由人なイメージしかない。

仕事は真面目らしいけど俺は見たことないし、本当だとしてもどんだけオンオフ激しいの?

 

つーかくつろぎすぎぃ。

せめてこっちに顔向けてください。さっきからずっと顔にタオルかぶせた状態でしゃべってんですけど川島さん。

 

 

「わかるわ。生徒の有ちゃんを差し置いてなぜ私が先に始めているのか聞きたいのね。理由は待ってる時間がもったいないからよ」

「なるほどわからん」

「わからんと嘆いても何もかわらん……フフッ」

「楓さんはそれなにがおもしろいの?」

 

やべえよやべえよ。

なにこの2人。俺じゃ処理しきれないんですけど。

もしかしてアイドルって大人になるほど自分勝手になるもんなの?

 

「心配は要らないわ有ちゃん。増田さんから任された大先輩の役目は忘れてないから。このままでもエステのなんたるかを教えるなんて簡単なことよ」

「むしろ心配が増えたんですがそれは」

 

その状態のまま教える気なの?

三村大先輩でさえ面と向かって立ち合いしてくれたよ? あ、立ち合いじゃ力士か。立ち会いしてくれたよ?

 

「私も瑞樹さんと同じコースをお願いしますね」

「かしこまりました。そちらの寝台で横になってお待ちください」

「なんで楓さんも普通にお願いしてるの? ここに右も左もわからない後輩が放置されてるんですけどー」

 

マッサージ師? の人も慣れた感じの対応で受付に電話してるっぽいし。

この2人いっつもこんなんなの?

 

「エステのこと教えるだけなら口頭で十分だし初めての子は準備に時間がかかるのよ。その間私と楓もただ待機してるよりは一緒にエステ受けた方がいいでしょ?」

「あー、うん。そう言われるとたしかに暇させとくのは申し訳ないですね。でも準備ってなんですか?」

「カウンセリング……病院の診察みたいなやつね。有ちゃんが体のどこをキレイにしたいか聞いてどんな施術を施すか決めるものよ」

「なんだかめんどくさそうな話になってきたぞ」

「何個か質問されるだけよ」

「質問がしつこいもん……フフッ」

「ギャグが苦しいもん」

 

エステなんて半裸で寝かされてなんかマッサージされたりクリーム塗られたりするイメージしかなかったんだけど、けっこう手間がかかるんだなー。

 

早くも帰りたくなったけど、なにか言う前に誰かエステの人が部屋に入ってきてしまった。

 

「失礼します。カウンセリングやりたいんだけど小鳥遊さんは……あ、いたいた。別室でやるから私について来てね。高垣さんはマッサージやれる子呼んだからもう少し待ってて」

「わかりました」

「わざわざ移動するんですか?」

「身体のことを聞くわけだし、プライバシーを守るための規則なのよ」

「優しい人だから私たちがいなくても平気よ。安心して有ちゃん」

「有ちゃんは勇気のある子……」

「いや別に1人で行くのが怖かったわけじゃないです」

 

完全に扱いが子どもじゃん。歯医者とかで親が側にいないと泣いちゃう子みたいな。

動くのがめんどくさくて聞いてみただけだったのにどうしてこうなった。

 

 

 

弁解すると言い訳だと思われそうなので諦めてエステの人の後ろについていく。

離れた部屋に行くということもなく、隣の部屋に入るとソファで向かい合って座る形になった。

 

「まずは自己紹介しましょうか。私はエステティシャンの山田です。エステルームのチーフもやってるわ」

「小鳥遊有です。チーフってえらい人?」

「うーんここのエステは完全に会社の一部だから、そんなに偉くはないかな。せいぜいあなたの担当Pと同じくらいよ」

「つまり絶対逆らってはいけないと」

 

Pさんと同格って何者だよ。

いや、別にPさん地位的にはただのプロデューサーでしかないけどさ。

 

あとエステで働いてる人ってエステティシャンっていうんだね。知らんかった。

 

「念のため言っておくけど小鳥遊さんが男だってことは私も他の子も知ってるから安心してね」

「あーそういえばそれを知らないと大変な事態になっちゃいますもんね」

「女装バレ防止策は増田さんからきっちり指示されてるから大丈夫よ」

「と言いますと?」

「まず川島さんにマッサージコースをオススメすれば高垣さんも真似をするでしょ。そうじゃなくても適当に理由つければいいし、それからリラックスしてもらう名目で顔にタオルをかぶせれば小鳥遊さんの裸が見られることはないわ」

「あのタオルにそんな意味が」

 

なるべく体を隠すの前提だとしても、そもそも見られないようにした方が安全ってことか。

どうしても男と女じゃ骨格が異なるから体見られちゃうと違和感持たれるかもだしね。

 

「じゃあカウンセリング始めようと思うんだけど、そうは言っても小鳥遊さんはなんにもわからないわよね」

「エステで何をするのかも詳しく知らないです」

「大まかに分けて3種類かしら。痩身とか歪み矯正のためのマッサージでしょ。それからニキビ対策や顔のむくみ解消、美白効果なんかが目的のフェイシャルエステ。最後に脱毛でこれはそのままね。細かく言うともっといっぱいあるけど初心者はこの3つを知っておけばとりあえずオッケーよ」

「へー。それ全部やるんですか? かなり時間かかりそうなんですけど」

「それを決めるのがカウンセリングなんだけど、実際に見た方が早いわね。脱ぎなさい」

「はい?」

「服を脱ぎなさい」

「えっそれは……」

 

あっちょっむりやり脱がそうとしないで!

 

やめてください!

いったいなにをする気ですか!

人を呼びますよ!

 

 

人を呼ぶ→誰か来る→女装した男→服をはだけて女性と取っ組み合い→おまわりさんこいつです

 

 

しまった! 罠だコレ!

2人っきりになった時点で勝てる要素がない!

 

「暴れんなよ……暴れんなよ……」

「やめて! 私に乱暴する気でしょう?」

「いや本当に暴れないで。 別に襲おうってわけじゃないから。お肌の状態とか見るだけよ」

「エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

「落ち着きなさい」

「痛い!」

 

なんか手の甲を指で押されたら全身がビリッとしたんですけど。

ツボでも押したの? まさか秘孔じゃないよね?

でも痛みのおかげか不思議なほど落ち着いた。

 

「あらお肌スベスベねえ。腕も足も細いし、やっぱりアイドルやる子は素材からして違うわー」

「あれ? いつの間にか脱がされてる?」

「下着はまだ男物なのね。ブラもしてないし。増田さんに頼んどくから早めに買ってもらいなさい」

「ブラとかマジ勘弁。私の尊厳と寿命がストレスでマッハになっちゃう」

「増田さんも良い子を紹介してくれるわねえ。お姉さん興奮しちゃうわ」

「ほんとに襲う気はないんですよね? この小鳥遊有の貞操だけは助けてくれますよねェ〜〜ッ!?」

 

まじで危ない人じゃないの山田さん?

「関係ない 脱げ」と言わんばかりの強引な脱がし方だったし。

俺の体じろじろ視姦してくるんだけど何に興奮してんの?

 

「失礼ね。私は女の子のキレイなお肌にちょっぴり熱い想いを抱いてしまうだけの普通のエステティシャンよ」

「私は男なんですけど」

「キレイな男のコの肌もイケるわ」

「こやつ真顔で言い切りおった」

 

へ、変態だーー!!

なんでエステティシャンやってるのこの人?

一番こういう職業やらせちゃいけない人種だよ。

 

「大丈夫大丈夫。私の性癖はみんな知ってるし、基本は見て愛でるだけだから」

「触ったりもしますよね?」

「そこはほら、お仕事だから私情は挟まないわ。エステティシャンのお仕事には誇りをもって真面目に取り組んでるのよ。それに私が危険なら増田さんがほっとくはずないでしょ?」

「うーんでもPさんは私で遊ぶところがあるからなあ」

 

いくらあの人でも担当アイドルの貞操を生贄にするほど鬼ではないかな?

いまいち信用しきれないけど、山田さんが問題起こす人じゃないってのは確かなのかもしれない。

 

「まあいいです。正直抵抗するのも疲れたんでもう好きにしてください」

(増田さんの言ってた通り押せ押せでいけばすぐ諦めちゃうのね。ちょろいわ)

「え?」

「あ、なんでもないのよ。それじゃあ身体の状態を見させてもらうわねー」

 

 

まだちょっと不安だけど山田さんに任せることにした。

知らない人の前で半裸になるのはキツいけどよく考えたらエステ中はずっとこのままなわけだし、いいかげん慣れよう。

 

その後手足やらお腹や背中の肌やらをじっくり見られ、顔についても普段してる化粧やスキンケアのことを聞かれて、やっとこさ今日のエステでやることが決まった。

 

 

 

後半へ続く(キートン山田風に)

 

 




kwsmさん回のはずが25歳児がなぜか付いてきて、予定になかったオリキャラがめっちゃ前に出て来たのが長くなった原因。


人物紹介のコーナー。kwsmさんは出番少なかったので次回。

●高垣楓(たかがきかえで)
作者がデレマス始める前から知ってたアイドル。
Y.AOI姉貴とHYMNの動画でイラストだけ見てたのでどんなキャラかは知らなかった。

お酒が好きでクール大人組はssでもよくネタにされ飲んだくれている。
温泉も好きで入浴姿は色っぽくて悩ましい。中身があれじゃなければ……。

ダジャレも好きだが面白いダジャレを言わせたいのに作者が良いのを思いつかない。でも元々面白くないダジャレを言う人だからその方がいいのかという考えもあり悩ましい。

25歳児とネタにされつつちゃんと子どもの面倒を見る大人な面も持っている。
主人公に対して大人スキルが発動するかはかなり微妙。
どっちも子どもっぽいところがあるからその時々でお世話することもされることもあるのだろう。

●山田さん(やまだ)
エステティシャン役でたくさんしゃべる人が必要だったので急遽名前を用意された。
名前の由来は性癖が師匠に似ているのでお山つながりっていうのを今考えた。本当はてきとう。
強いて言うならPさんの増田と同じ「○田」って名字にしたかった。

若い女の子の肌が好きでエステティシャンを目指したが、それだけだと捕まるのであらゆるスキルを身に付けている。
具体的には理容師や美容師、アロマセラピー、ボディマッサージ、リンパマッサージなどのエステに役立ちそうな資格を片っ端から取った。
他にも精密小型カメラの扱い、脅迫術、捕縛術、システマなどの技能を身に付けている。

現在は346プロ事務所エステルームのチーフ。
スペースを間借りして営業しているとかではなく会社の部署の一つみたいな扱いなので別に地位は高くない。
複数いるエステティシャンたちのまとめ役というだけ。
給料は会社から支払われるためちょっとお客様への対応が雑になることもある。

Pさんとは趣味が似通ってる部分(女の子好きなところとか)があるのでけっこう仲がいい。年も近く対等な関係を築いている。


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