小鳥遊有(たかなしゆう)、22歳、男、O型。現在大学4年生で、就活中。
嘘です。
大手2社、中堅4社、名前も知らない適当に選んだ企業1社からお祈りされて、絶賛引きこもり中です。
こんなに祈られるなんてもしかして俺は現人神なんじゃないかと思ったけどそんなわけなかった。
ちなみに大学は単位を取り終わっているので、約束された卒業までのモラトリアムを過ごしている。4年の後期に進路決まってないけどまだ大丈夫。大丈夫と信じてる。
ぼっちだから他の奴らがどれだけ内定もらっても俺には関係ない。不安も焦燥感も生まれない。ぼっちの心を動かせるのは本人と親からのメールだけだ。
しかしぼっちの心強い味方であるキャリアセンターのお姉さん(アラサー独身・俺調べ)の話によるとそろそろ企業側も採用活動を終わらせる時期で、まだ採用を続けるのはよっぽど人が集まらない所か特殊な事情のある所だけになるらしい。
やばそう(小並感)
あんなテキトーな就活じゃこうなる未来は透けて見えていたけど、とにかく俺にはバイタリティーが足りなかった。
だって50社エントリーぐらいは当たり前とかそれだけでやる気尽きない?
働きたくないわけじゃないんだけど、俺は平均的な人間に比べて精神力とか気力的なものが極端に少ないのだ。
正直最初は「最速1社受けてそこで内定もらえば就活終わりじゃん」とか思ったりもしたけど、実際は就活には就活に必要な能力があってそれを磨くにはどうしても時間がかかることを最近になってようやく理解し絶望した。
そんな訳で余計に落ち込んだ俺は何をする気力もなく思考停止してニートと化しているのである。心の休養期間ってやつ?
あーあ。どっかに俺みたいな人間でも快く受け入れてくれる懐の広い企業はないもんかね。
入社さえすれば疲れない程度にそこそこ働きますよ。転職する気力もないから絶対辞めないし。え? 会社に寄生する社員はすぐ辞める新入社員よりもタチが悪いって? 気のせい気のせい。
ぼっちあるあるの「脳内の誰だかわかんない人との会話」をしながらテレビでも見ようとスイッチを入れると、ちょうどゴールデンのバラエティー番組をやっているところだった。
「おー、双葉杏が出てる」
何を隠そう、俺はこのニート系アイドルのファンである。
杏ちゃんは全ニートとニート予備軍の期待の星だって、はっきりわかんだね。
一部ではキャラなんじゃないかという声もあるけど、ニートの素質がある人間にはわかる。彼女は紛れも無い黄金に輝くニートの精神を持つ者だ。
数いるアイドルの中でも杏ちゃんが好きなのはなんとなく俺に似ていると思えるからなんだろう。
たぶん俺に容姿と性別と人としての魅力と性格の良さとアイドルとしての才能が加われば杏ちゃんになると思う。全然似てないかもわからんね。
きっと彼女ならトップアイドルまで登り詰めた後に引退して、印税生活でニートライフを実現させるだろう。
わりと本気でうらやましい。
そう感じるのは、印税生活もそうだけど自分に似ている(気がする)人間がみんなに好かれるアイドルをやっているっていうのが一番の理由なのかもしれない。
やっぱぼっちって他人から認められる機会が滅多にないからね。自己承認欲求っていうの? そういう気持ちが少なからずあるんだろう。
俺もあんな風になりたいような、なりたくないような……
なんか久しぶりに気持ちが前向きになっている気がする。後ろ向きな気持ちと合わせてプラマイゼロぐらいだけど、マイナスに振り切ってた最近の状況に比べればかなり前向き。
経験からしてこういう時に動かないとずっと動けないままなんだよね俺って。だからといって勢いで動くから上手く行かないんだけどさ。
今までの就活もそんな感じでとりあえずエントリーして逃げ場をなくしてから大して準備もせずに落とされるの繰り返しだった。
でも動かないよりはマシなはずだから動けそうな時に動くことにしてる。
というわけでーー
そうだ、アイドルになろう。
短編として書いていたんですけど1万字越えたあたりで長くなりすぎるなと思ったので短く切りました。
とりあえず書き終わったところまで一気に投稿します。
それにしてもここで切ると主人公がただのクズ。
できれば連続投稿する分までは読んでもらえたらなあと思います。