緋弾のアリア ~飛天の継承者~   作:ファルクラム

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第8話「その笑顔の為に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボロボロに傷付いた茉莉を腕に抱え、友哉はその場にいる者達を睨み据える。

 

 谷源蔵、信吾親子、比留間喜一、洋二、三矢兄弟。

 

 そして、その他の私設警備員達。

 

 彼等が茉莉を、ここまで傷付けた。

 

 それだけではない。これまでも多くの人達を傷付け、茉莉の心を傷付け、大人しい少女をして、犯罪紛いの行為に走らせるまでに追い詰めた。

 

 許されざる者達。

 

 友哉は茉莉を抱えたまま、自身の中で静かに炎が燃え上がるのを感じた。

 

 茉莉を、ここまでの行動に走らせたもの、それは間違いなく彼女の持つ純粋な怒りに他ならない。

 

 ならば、それは自分が引き継ごう。

 

 仲間が一発食らったら、一発返す。それが武偵の意地だ。

 

「き、貴様、何者だッ!? 誰の許しがあって、この屋敷に足を踏み入れたッ!?」

 

 源蔵が狂ったように喚き散らすのに対し、友哉は静かな瞳で一同を見据える。

 

 他の連中はともかく、用心棒と思われる3人、比留間兄弟達は多少、荒事に馴れた感がある。警戒するべきは、その3人くらいだろう。

 

「あ、兄貴、こいつだぜ。昨日、作業場に来たやつはッ!!」

 

 友哉の存在に気付いた三矢が、慌てたように喜一に報告する。

 

「あ、あともう1人、うすらでかいガキがいた筈だけどよ・・・・・・」

「ほう・・・・・・」

 

 弟の言葉を聞いて、喜一は値踏みするように友哉を見る。

 

 一見すると、少女のような外見をした少年。しかし、来ているコートは恐らく防弾仕様。更に、腰には日本刀を差している。加えて、既に振り下ろされた三矢のナイフの下から茉莉を助け出した事からも、只者でない事は判った。

 

「テメェ、武偵だな?」

「ええ」

 

 喜一の言葉に友哉は頷きを返す。ここで否定しても始まらない。

 

「一体、誰に雇われた?」

 

 武偵が現れた、と言う事は村の誰かが金を払って雇ったと考えたのだろう。

 

 だが、友哉は首を横に振る。

 

「誰にも。僕は、全て僕の意思で、茉莉を助ける為にここに来た」

「随分、酔狂な奴だぜ」

 

 友哉の返事に、喜一は苦笑交じりにそう言いながら、手にした日本刀を持ち上げて構える。

 

「で、威勢が良いのは結構だが、この人数を相手にどうするつもりだ?」

 

 改めて確認するまでも無く、周囲は谷家の私設警備員達に囲まれている。いかに友哉と言えど、手負いの茉莉を連れて戦えるとは思えない。

 

 その時だった。

 

「ぐァァァァァァッ!?」

 

 周りを囲んでいた私設警備員の1人が、悲鳴を上げて地面に倒れている。

 

 その場にいた誰もが、突然の事に呆気に取られる。

 

 すると、その背後に立っていた男が、煙草の煙を吐き出しながら言った。

 

「来るのが遅いんだよ、お前は」

「斎藤さん・・・・・・」

 

 斎藤一馬は、煙草を投げ捨てると、愛刀 鬼童丸を手に前へと出る。

 

「どうしてここに?」

「放っておいても、お前等がそのうち派手に暴れるのは目に見えていたからな。その隙に潜入させてもらった」

 

 相変わらず、行動パターンが一々癇に障る男である。ようするに一馬は、友哉達を囮にして谷家に潜り込んだのだ。

 

 しかも、潜入していた、と言う事は茉莉が戦っているのも見ていた筈。苦戦する彼女を、ただ黙って見物していた事になる。

 

「何だ貴様は。貴様も武偵かッ!?」

「冗談だろ。こんな温い奴等と一緒にするな」

 

 吐き捨てるように言うと、自身の懐から警察手帳を出し、開いて見せた。

 

「警視庁公安0課の斎藤だ。谷源蔵、並びに信吾、お前達には逮捕状が出ている」

 

 公安0課、と言う単語に、周囲は騒然となる。

 

 国内最強と言われる公的な殺し屋は、このような地方にあっても恐怖の対象である。

 

 だが、

 

「な、何を恐れる必要があるッ あ、あ、相手はたった2人ではないか!!」

 

 声を震わせながら、源蔵がヒステリックに叫ぶ。

 

「公安0課だろうが、武偵だろうが、稲荷小僧だろうが、この屋敷からは生かして帰さん!!」

「だ、そうだ」

 

 喜一は、口元に笑みを浮かべて言った。

 

 その目は濁ってはいるが、鋭く細められ、この状況を歓迎しているようにも見られた。

 

 実際、喜一はこの状況を喜んでいた。何しろ、ボディーガードに雇われたものの、相手をするのは力の無い一般人ばかりである。これでは「千人斬りの比留間」と言われる剣の腕も、鈍ろうと言う物だ。

 

「やっぱり、たまには人を斬っておかないとな」

 

 その様子に、一馬はやれやれと肩を竦めた。

 

「どうやら、先に面倒事を片づける必要がありそうだな」

「そうですね」

 

 一馬の言葉に、友哉は頷きを返した。

 

 その時、2人の前に立ちはだかるように、洋二と三矢が前へと出た。

 

「兄貴、こんな奴等、兄貴が出るまでも無いぜ」

「そうそう、俺達に任せとけって」

 

 洋二は鉄棒を振り上げ、三矢は2丁の銃を構えて言う。

 

 そんな弟達の様子を見て、喜一は鼻を鳴らした。

 

「フンッ、良いだろう。任せるぞ」

 

 そう言うと、喜一は刀を下ろして数歩下がった。

 

 彼としては、この戦いで友哉と一馬の力量を見極めるつもりなのだ。洋二と三矢も、ある程度腕に覚えがある。彼等に勝てるようなら、友哉達は喜一が自ら剣を振るうに値すると考える。だが、もし弟達に敗れるようならそれだけの話。わざわざ自分が相手をするまでも無いと思っているのだ。

 

 対して、友哉はそっと、腕に抱えていた茉莉を地面に下ろした。

 

「友哉さん・・・・・・」

「大丈夫。後は僕達に任せて」

 

 そう言ってニッコリ微笑むと、比留間達に向き直った。

 

「ケッ 恰好つけやがってよ」

 

 友哉の様子を見ていた三矢が、挑発するように銃を掲げながら言う。どうやら、友哉の相手は彼がするらしい。

 

 見れば、一馬は洋二と対峙している。あちらは任せても良いようだ。

 

 友哉は無言のまま、腰から逆刃刀を抜き放つ。

 

 それを待っていたかのように、三矢が銃を放ちながら友哉に向かって来た。

 

「フッ!!」

 

 短く息を吐くと同時に、横へと跳躍して照準を外す友哉。

 

 しかし、三矢は逃すまいと、すかさず照準を修正して友哉を追い掛ける。

 

「オラァ!!」

 

 2丁の拳銃から、弾丸が間断なく放たれて来る。

 

 それに対して友哉は、ただ距離を置いたまま回避に専念するのみだ。

 

「どうした、武偵ってのは、ただ逃げるしか能がねえのか!?」

 

 挑発する言葉と共に、三矢は拳銃を仕舞い、2本のナイフを抜いて斬りかかって来た。

 

 左右から迫る斬撃。

 

 その攻撃を、友哉は正確に見極め、自身を安全圏まで逃がす。

 

 逃げる友哉を、三矢もまた高速で追撃してくる。

 

「ハッ、手も足も出ねェってか!? この臆病モンがッ!!」

 

 三矢の攻撃をことごとく回避する友哉に、三矢は間断無く挑発の言葉を浴びせていく。

 

「知ってるか!? 俺のように銃と剣を2つずつ使って戦う人間の事はよ、こっちの業界じゃ双剣双銃(カドラ)って言うんだぜ。つまり、テメェは、近付けばナイフで切り裂かれ、逃げようとすれば銃で撃たれるってわけだ。どうよ!?」

 

 三矢は距離が開いた事で、再びナイフを仕舞い、銃を取り出して構える。

 

 その様子を見ながら、友哉は足を止めて三矢に向き直った。

 

「ハッ、とうとう諦めたかッ!?」

 

 動きを止めた友哉の姿に諦めたと思った三矢は、真っ直ぐ正面に対峙して銃を構える。

 

 だが、

 

 友哉は右手に持った刀を、片手上段のように真っ直ぐ切っ先を上に向けて構えた。

 

「あん?」

 

 訝る三矢。

 

 次の瞬間、

 

「飛天御剣流・・・・・・」

 

 友哉はソフトボールの投手のように、手先が霞むほどの勢いで右手を後方から反回転、刀身を勢いよく地面に叩きつけた。

 

「土龍閃!!」

 

 地面に当たった瞬間、刃は足元を大きく粉砕。砕け散った地面は、散弾のように三矢に襲い掛かった。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァ!?」

 

 断末魔の悲鳴を上げて、地面に転がる三矢。その体には砕け散った地盤の破片が、無数に突き刺さってのたうちまわっている。

 

 その様子を、友哉は冷ややかな視線で見つめる。

 

「この程度で双剣双銃(カドラ)? 笑わせないでください。僕の友達には、あなたよりもずっと上手に双剣双銃を操る娘が、2人もいますよ」

 

 

 

 

 

 一方、一馬と洋二の対峙は、尚も続いていた。

 

「ぬんッ!!」

 

 洋二が鉄棒を振るい、一馬に叩きつける。

 

 対して、一馬は無言。その軌跡を正確に見極め、最小限の動きで回避する。

 

 横薙ぎの攻撃も、一馬には当たらない。こちらは、後退する事で直撃を避ける。

 

 先程からこの繰り返しだ。

 

 友哉ほど動きに派手さは無いが、一馬は最小の動きで洋二の動きを見極め、その全てを回避して行く。

 

「クッ、このッ!!」

 

 焦りを見せた洋二が、更に膂力に任せた攻撃を仕掛けて来る。

 

 だが、その攻撃が一馬を捉える事は無い。

 

「どうした、さっきから攻撃が当たっていないぞ?」

 

 一馬は、口元に薄笑いを浮かべながら言う。

 

 これまで一馬自身、何度か反撃する機会があったにもかかわらず、手出しをしていない。それが判っているだけに、洋二の怒りは沸点に達しつつある。

 

「この、青二才が、舐めるんじゃねェッ!!」

 

 鉄棒を両手で掴み、大上段から振り下ろす。

 

 対して今度は、一馬はよけようとしない。

 

 ただ黙って、迫って来る鉄棒を見据え、そして、

 

 ガシッ

 

「なっ!?」

 

 洋二は絶句する。

 

 何と一馬は、洋二が渾身の力を持って振り下ろした鉄棒を、右手一本で受け止めてしまったのだ。

 

 2人の体格差は、人間と熊ほどもある。どう見ても洋二の方が力は強いと思われる。にもかかわらず、一馬は受け止めて余裕の表情をしている。

 

「どうした木偶の坊。もう終わりか?」

「ぬゥッ!?」

 

 洋二はとっさに鉄の棒を引き戻そうとするが、まるで空中に制止させられたかのようにびくともしない。

 

 と、洋二が体重を後に逸らした瞬間を見計らい、一馬はパッと手を放した。

 

「う、うォォォォォォ!?」

 

 突然の事に、洋二はバランスを保つ事ができず、思わず数歩後ずさる。

 

 その隙に、一馬は左手に持った刀を、弓を引くように構え、右手は真っ直ぐ前へと伸ばした。

 

 次の瞬間、狼は鋭く疾走する。

 

 牙突

 

 鋭く突き込まれる切っ先。

 

 対して洋二は、まだバランスを崩したままである。

 

 そこへ、一馬の牙突が襲い掛かった。

 

 振るわれる一撃は、鉄棒を粉砕し、洋二の胸へと突き刺さる。

 

「グォォォォォォォォォォォォ!?」

 

 胸から鮮血を噴き出して、洋二は仰向けに地面へと倒れる。

 

 出血はしているが、あの巨体だ。死ぬような傷ではないだろう。加えて、一馬も手加減して技を放ったようだ。でなければ、洋二の上半身は軽く吹き飛んでいた筈。どうやら、殺す程の価値も無いと判断したらしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 洋二と三矢。

 

 比留間兄弟の内、2人までが倒れた事で、警備員達の間に動揺が走っている。

 

 何しろ比留間兄弟は、極悪非道ながら、その武力は凄まじく、今まで誰も敵わなかったのだ。それが、明らかに細身の2人の男(うち1人は少年)に叩き伏せられたのだから、無理も無い話だった。

 

「お、おい、だ、大丈夫なのか?」

「し、心配しなくても、大丈夫さ、パパ」

 

 戦況を見守る谷親子にも、震えながら様子を見詰めている。

 

 2人。

 

 僅か2人の男が、今やこの地方の支配者を塗り替えようとしている。

 

 そんな中でただ1人、動揺していない人物がいる。

 

「やるじゃねえか」

 

 比留間喜一は、白木の鞘から刀を抜きながら庭へと降りる。

 

 弟2人を倒した。ならば、自分が腕を振るうに、充分な相手と言える。

 

「次は俺が相手をしてやる」

「お、おお、良いぞ喜一。報酬分はしっかり働けよ!!」

「ま、負けるんじゃないよ!!」

 

 谷親子の声援を受けながら、喜一は友哉と一馬の前へ進み出る。

 

「それで、どっちが俺の相手をする? 何なら両方一緒でも構わんぜ」

 

 2人を同時に相手にしても、勝てる自信が喜一にはある。自分は弟達とは違うのだから。

 

 喜一の言葉に対し、友哉はチラッと一馬の方に向き直った。

 

「斎藤さん・・・・・・」

「好きにしろ」

 

 「どうしますか?」と聞きたかったのだが、聞く前に返事を返されてしまった。

 

 さっさと煙草に火をつけたところを見ると、本気でどうでも良いと思っているらしい。

 

 仕方なく、友哉は溜息をつきながら前へと出た。

 

「僕が先にやります」

「良いだろう」

 

 友哉は正眼に、喜一は八双に、互いに刀を構える。

 

 一同が無言のまま、対峙する2人を見守る。

 

 次の瞬間、喜一が動いた。

 

「シャァッ!!」

 

 接近と同時に、刀を横薙ぎに振るう。

 

 その動きに、一瞬、友哉は目を剥いた。

 

『速いッ!?』

 

 後退しながら、心の中で呟きを洩らす。

 

 自信を持つだけの事はあり、喜一は素早い踏み込みによって、友哉に先制攻撃を仕掛けて来た。

 

 とっさに後退する事で、喜一の間合いから逃れる友哉。

 

 喜一はそれを追って、更に前へと出る。

 

「らァッ!!」

 

 振るわれる剣は、友哉の手元や足元に狙いを定めて振るって来る。

 

 人間の体の構造上、どうしても下半身を狙って攻撃を受けた場合、反応が遅れてしまう事が多い。例えば防ぐにしても、足元までカバーするのは難しいし、回避した場合でも、地面に足を着き、エネルギーを地面に伝達する関係から、どうしても、まず上半身を逃がしてから、下半身を逃がすと言うプロセスが必要になる。

 

 つまり、人間の下半身は、非常に攻撃を防ぎにくい部位なのである。

 

 喜一はそれを理解しているが故に、足元へと攻撃を集中しているのだ。

 

「そらッ!!」

 

 斬撃が、友哉の足元を襲う。

 

 それに対して、友哉は大きく後退して回避する。

 

「逃がすかッ!!」

 

 対して喜一も刀を振りかぶり、友哉を追って前へ出ようとした。

 

 次の瞬間、

 

 友哉は右手で刀を構え、左手は刃に当てた状態で、一気に喜一との距離を詰めた。

 

「なッ!?」

 

 神速の動きに喜一は一瞬驚いて息を飲むが、その行動は、友哉にとっては欠伸が出るほどに遅い。

 

「飛天御剣流 龍翔閃!!」

 

 高速で振り上げられる刃。

 

 閃光と化した剣閃を、喜一は目視する事すらできない。

 

 その一撃は喜一の顎を容赦なく撃ち抜いた。

 

「グオォォォォォォ!?」

 

 大きく宙を舞い、そして、喜一は地面に叩きつけられた。

 

 そのまま大の字に転がり、起き上がって来る気配は無い。白目を剥いている所を見ると、完全に意識を手放しているようだ。

 

 比留間三兄弟は、その悉くを討ち取られた事になる。

 

 それは同時に、この地方を牛耳っていた「谷政権」の崩壊をも意味していた。

 

「う、うわぁぁぁ、もうだめだー!!」

「に、逃げろォ!!」

 

 地面に無惨に転がった谷兄弟の無様な姿を見て、警備員達は我先にと逃げ出して行く。

 

 最早、自分達の主を守ろうとする意思すら完全に放棄した様子だ。

 

「こ、こらッ、お、お前達、どこに行く。ワシを守らんかッ!!」

 

 逃げ散っていく警備員達に手を伸ばす源蔵だが、誰一人として、その声を聞く者はいない。

 

 だが、警備員達も逃げる事はできなかった。

 

 先頭の人間が門に達しようとした時、

 

「オラッ!!」

 

 突然、殴り飛ばされて地面に転がる。

 

 見れば、背の高いぼさぼさ頭の少年が、口元に交戦的な笑みを浮かべて立っているのだった。

 

「おいおい、親玉を置いて、自分らだけ逃げようってのか? そうは問屋が卸さねえっての」

 

 足止めをして来た作業員達を一掃した陣は、そう言って警備員達の前に立ちはだかる。

 

 その背後には、イングラムを構えた瑠香の姿もある。

 

 ほぼ無傷の2人は、凄みの効いた視線で警備員達を睨みつける。

 

 既に戦意を完全に喪失した彼等に、尚も戦意旺盛な2人の武偵の相手をするのは不可能だった。

 

 自身を守る最後の砦にも、あっさりと見はなされた源蔵。

 

 その姿には、この地方の「領主」としての風格は一切無く、ただの豪華に着飾った肥満体親父がいるだけだった。

 

 そこへ、一馬が冷たい目をしたまま歩み寄ると、懐から1枚の紙を取り出して広げて見せた。それは潜入捜査官を通じて、東京の警視庁から取り寄せた逮捕令状だった。

 

「谷源蔵、並びに信吾。お前達には脱税、暴行、殺人教唆など14の容疑で逮捕状が出ている。しかし、まあ、叩けばまだまだ埃が出そうではあるな」

 

 口元に笑みを浮かべながら、一馬は源蔵に顔を近付ける。

 

「言っとくが、既得のコネに頼ろうとしても無駄だぞ。今頃長野県警じゃ、お前の息が掛ってる連中に一斉検挙が掛っている。それと並行して、谷家の持つ財産には凍結指示が出されている。東京のお偉い先生方も、金の無くなったお前には見向きもしないだろう。つまり、お前は名実ともに、ただのオッサンに成り下がったってわけだ」

「そ、そんな・・・馬鹿な・・・・・・」

 

 呆けたように、虚空を仰ぐ源蔵の口からは、やがて乾いた笑い声が聞こえて来た。

 

 そんな源蔵に一瞥をくれてから、もう一人対象者に目を向けた。

 

 が、

 

「・・・・・・・・・・・・フンッ」

 

 混乱に乗じて逃げたらしく、信吾の姿はどこにもなかった。

 

 更に、友哉と茉莉の姿も消えていた。

 

 

 

 

 

 転がるように屋敷の中を駆け抜け、信吾は一目散に裏手へと駆け出ていた。

 

 とにかく、脇目もふらずに走り続ける。

 

「クソッ、クソクソッ」

 

 口からこぼれる呪詛の言葉。

 

 なぜだ?

 

 どうして、こんな事になった。

 

 一体、自分が何をしたと言うのか。

 

 自分は何もしていない。だと言うのに今、理不尽にも武偵やら刑事やらが来て、自分を逮捕しようとしている。

 

 こんなの受け入れられる訳がない。自分のような善良な市民が、なぜ逮捕されねばならないのか。

 

「こ、これと言うのも・・・・・・」

 

 比留間兄弟。あいつ等が、あんなガキどもに負けたせいで。

 

「何が比留間兄弟だ、何が《千人斬り》だ。役立たず共が。高い金を払ったと言うのにッ!!」

 

 それに、我先にと逃げ散った警備員共もだ。何の為の警備なのか。

 

 父親を置いて来てしまったが、今はそんな事関係無い。誰だって自分が可愛いに決まっている。助かりたかったら、自分で何とかすれば良いんだ。

 

 その時だった。

 

「何処に行くんですか?」

 

 背後から、少女の声が信吾を呼び止めた。

 

 ビクッと足を止め、恐る恐る振り返る。

 

 そこには、白い上衣に緋袴と言う巫女装束を着た瀬田茉莉が立っていた。

 

 茉莉は混乱に乗じて逃げようとしている信吾を見付け、ここまで追って来たのだ。

 

 その姿を見て、信吾は顔をくしゃくしゃにしながらも、どうにか笑顔を浮かべる。

 

「お、お嬢さん、どうかわたしを助けてください。こんなの、理不尽すぎます!!」

 

 縋りつくようにして、信吾は媚びた声で茉莉に言う。

 

「今回の件は、全て父がやった事で、私は何も知らなかったんですッ 本当ですッ それなのに、逮捕されるなんて。こんなのはあんまりです!!」

 

 見下げ果てるとはこの事だ。

 

 谷親子の専横と横暴ぶりは、皐月村で知らない者はいない。それなのに、その罪を全て父親に負わせ、自分は何も知らないと言い張るつもりらしい。

 

 茉莉は無言のまま、信吾に歩み寄る。

 

 それを了承と受け取ったのだろう。信吾は口元を歪めて笑みを浮かべ、自分も茉莉に歩み寄ろうとする。

 

 しかし、次の週間、銀の閃光が、信吾の顔面をまともに殴打した。

 

「おぶゥッ!?」

 

 鮮血を噴き出した信吾の鼻は、見事なまでに粉砕され、ひしゃげていた。

 

 茉莉は背に隠し持っていた菊一文字の峰で、信吾の顔面を思いっきり殴りつけたのだ。

 

「ひっ、ヒィィィィィィ!?」

 

 鮮血を流す鼻を押さえ、信吾は尻もちを突いて後ずさる。

 

 それに対して、茉莉はゆっくりと追い詰めていく。

 

「今更、どの口がのたまってるんですか?」

「ひぎぃぁぁぁぃぃぃッ」

「あなた達のせいで、一体どれだけの人が傷付いたと思ってるんですかッ?」

「い、痛いィ痛いィ痛いィ」

「父を、おばさんを、村のみんなを・・・・・・」

「助けて、お願い助けてェ・・・」

「私の大切な人達をたくさん、たくさん傷付けておいてッ」

 

 茉莉は菊一文字の刃を返し、ゆっくりと振り上げる。

 

 その冷めた瞳から発せられる凄惨な殺気は、最早人のそれではない。

 

 古来より、狐は物の怪の類に例えられる事が多かった。ならば、稲荷小僧に扮して戦うと決めた時、茉莉もまた、自身を物の怪と化したのかもしれなかった。

 

 生まれて初めて、自分に向けられる殺気に、信吾は魂の奥底から恐怖する。

 

 自分が一体、誰を怒らせたのか、と言う事を今更理解したのだ。

 

「お、お願い、しましゅ・・・殺さないで・・・・・・」

 

 目に涙を浮かべ、懇願する信吾。

 

 その姿を見ながら、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 茉莉はゆっくりと、刀を下ろした。

 

 それまで彼女を包み込んでいた凄惨な殺気は、綺麗に消え失せ、代わって、何かを失ったような虚脱感が全身を覆っていた。

 

「やらないの?」

 

 友哉が彼女の背後から声を掛けたのは、その時だった。

 

 茉莉が信吾を追ったのを見て、友哉もまた彼女を追い掛けてここまでやって来たのだ。

 

 対して茉莉は、刀を鞘に収めながら、ポツリと言った。

 

「・・・・・・殺す価値もありませんから。それに、」

「それに?」

 

 問い返す友哉に、茉莉は顔を上げ、力無く微笑を浮かべて言った。

 

「もし、ここでこの人を殺してしまったら、もう二度と友哉さん達と一緒にいる事ができない。そう思ったんです」

「・・・・・・そっか」

 

 友哉もまた、笑顔を返す。

 

 茉莉は最後の最後で、稲荷小僧としての自分よりも、武偵としての自分を選んだのだ。友哉にはそれが、とても嬉しかった。

 

 だが、事態はまだ終わっていなかった。

 

 背中を向けている茉莉。

 

 その茉莉に、信吾は隠し持っていた銃を向けた。

 

「馬鹿め、誰がお前らなんかに捕まるかよ!!」

 

 銃口が、真っ直ぐ茉莉に向けられる。

 

 次の瞬間、

 

 その眼前に、友哉が立ちはだかった。

 

 友哉は、経験、状況、対象、条件などから、凡そ3秒先までに起こる事を想定し、予測し得る「短期未来予測」を使う事ができる。その短期未来予測が、信吾の次の行動を読んでいたのだ。

 

「・・・・・・つくづく、救えない男だね」

「ヒッ!?」

 

 低く、冷たく囁かれる声。

 

 その眼光から発せられる殺気は、先程の茉莉の比ではない。

 

 信吾が恐怖で息を飲んだが、最早完全に手遅れだった。

 

 斬線が無数に走り、その悉くが信吾に殺到する。

 

「飛天御剣流 龍巣閃!!」

 

 無数の斬撃を、その体に受けて、信吾の体は吹き飛ばされた。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァ!?」

 

 耳障りな断末魔の声を聞きながら、友哉は刀を鞘に収める。

 

「『気絶しない程度』に威力は押さえといたから。暫く、地獄の中でのたうち回るんだね」

 

 そう言うと、襤褸布と化した信吾を置き捨て、友哉は茉莉の肩を抱いて歩きだした。

 

 

 

 

 

 庭に戻ると、既に長野県警からの応援部隊も到着しており、残った警備員達や使用人達を拘束し、更に邸内の家宅捜索も始まっている様子だ。

 

 そんな中で、仕事を終えた一馬は煙草を吹かして、その状況を眺めていた。

 

 公安0課から派遣された一馬の任務は、源蔵と信吾の捕縛である、それ以外の事に関しては、他の人間の仕事であるらしかった。

 

 茉莉は意を決すると、一馬の方に歩み寄った。

 

「・・・・・・何だ?」

 

 横目で一瞥する一馬に、茉莉は硬い声で告げた。

 

「・・・・・・私を、逮捕してください」

「茉莉ッ!?」

 

 目を剥いたのは友哉である。

 

 確かに、茉莉が稲荷小僧としてやった事は犯罪なのかもしれない。しかし、それは谷家の専横に端を発している。そこで茉莉を罰するのは理屈としてはともかく、道理的には筋が通らない話である。そもそも、警察が全く当てにできないからこそ、このような事態になったのであるから、尚更の話である。

 

 だが、そんな友哉を茉莉は穏やかな声で制する。

 

「良いんです、友哉さん」

「茉莉・・・・・・」

「私がやった事は、決して許される事じゃありません。罪は罪として、購わなければならないんです」

 

 そんな茉莉に対し、一馬は吸い掛けの煙草を投げ捨てると、足裏で踏み消して振り返った。

 

 茉莉は5月の「魔剣事件」の際に、一度逮捕されている。あの時は司法取引と言う形で赦免されたが、今度はそうはいかないだろう。

 

 と、その前に、彼女を庇うように友哉が立ちはだかった。

 

「友哉さん・・・・・・」

「許さないよ」

 

 声を上げる茉莉に、友哉は断固とした口調で言った。

 

「こんな事は絶対に許さない。茉莉、君がもし、犯罪者として裁かれなければならないって言うなら、僕はここで、どんな事をしてでも君を守って見せる」

 

 その眼光は鋭く一馬を睨み、手は腰の刀に掛けられる。

 

 正直、友哉と一馬の間には歴然とした実力差が存在する。例え本気で掛かっても、友哉は一馬に敵わないだろう。

 

 だが、それでも、友哉は己の命を賭けてでも、茉莉を守ると決め、牙を剥く狼の前に立ちはだかっていた。

 

 それに対して、一馬は詰まらなそうに鼻を鳴らすと、視線を向けずに口を開いた。

 

「俺はこれから忙しいんだ。余計な事に、首を突っ込んでられるか」

「・・・・・・え?」

 

 キョトンとする茉莉に、一馬は新しい煙草に火を付けながら言う。

 

「谷親子の護送と取調べ。更に、連中と繋がりのある大物の洗い出しと検挙。やる事は山積みだ。稲荷小僧なんて言う、いるかどうかも判らん、不確かな物にかけてる時間は無いんだよ」

 

 そう言ってから、一馬は友哉に視線を向ける。

 

「お前もそいつの飼い主なら、首輪くらいしっかり繋いどけ」

 

 そう言うと、一馬はそれ以上何もいわずに歩き去って行った。

 

 後には、立ち尽くす茉莉と、見守る友哉だけが残った。

 

「えっと・・・・・・」

「つまり、」

 

 戸惑う茉莉に、殺気を消した友哉は、溜息交じりに苦笑しながら説明してやる。

 

「茉莉がこれ以上、悪さをしなければ、今回の事は目を瞑ってやるってさ」

「はあ・・・・・・」

 

 何となく、納得できるような、それでいて釈然としないような、そんな複雑な感情に捕らわれる。何だか、一大決心を肩透かしされた気分だった。

 

 その時、

 

「おーい!!」

「茉莉ちゃんッ、友哉君ッ!!」

 

 警備員達の一掃し終えた瑠香と陣が、こちらに走って来るのが見えた。

 

「あ・・・・・・・・・・・・」

 

 そんな2人の姿に、茉莉は足を止めて振り返る。

 

 2人もまた、茉莉の無事な姿を見て、ホッと息をついた様子で立ち止まる。

 

「茉莉ちゃん・・・・・・」

 

 ポツリと、名前を呟く瑠香。

 

 と、次の瞬間、瑠香は足早に歩み寄り、

 

 パァンッ

 

 茉莉の頬を張り飛ばした。

 

「瑠香、さん・・・・・・」

 

 叩かれて赤くなった頬を押さえ、茉莉が顔を上げると、瑠香は目に涙をいっぱい浮かべて睨みつけていた。

 

「馬鹿ァ、本当に、心配したんだからァ!!」

「・・・・・・ごめ、なさい」

 

 小さく、茉莉の口から謝罪の声が漏れる。

 

 叩かれた頬よりも、友達に心配を掛けてしまった心の方が、何倍も痛かった。

 

 そのまま瑠香は茉莉を抱きしめると、茉莉もまた、ぎこちなく瑠香の背中に手を伸ばす。

 

 どちらが先だったのか。少女2人は互いに抱き合ったまま、子供のようにわんわんと泣きだしてしまった。

 

 泣きじゃくる少女達の様子を、陣は溜息をつきながら肩を竦める。

 

「これで、一件落着、って事で良いのかね?」

「良いと思うよ」

 

 そう言って、友哉もまた微笑ましそうに笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 その様子を、少し離れた森の中から観察する影があった。

 

「まったく、心臓に悪い連中だ」

 

 夜の闇にも鮮やかな銀髪を靡かせて、ジャンヌ・ダルク30世は、やれやれと呟いた。

 

 一部始終を見守っていた彼女としては、かなり冷や汗ものだった。茉莉が1人で突入した時などは、デュランダルを抜いて飛び込んで行こうと思ったくらいだ。

 

 だが、幸いな事に友哉達が助けに入った為に、事無きを得た様子にホッとする。

 

「これも、全てお前の筋書き通りか?」

 

 そう言って、背後にいる男に声を掛けた。

 

 スーツ姿に無表情の仮面を付けた男は、ジャンヌの言葉に対して肩をすくめてみせる。

 

「確かに、シナリオは私の物ですが、勝利を掴んだのは彼等の実力ゆえですよ」

 

 由比彰彦は、そう言って仮面の奥で微笑を浮かべる。

 

 対してジャンヌは、胡散臭い物を見るような眼つきをする。

 

「よく言う。こうなる事を予想して、瀬田の情報を私に流したくせに」

「否定はしません」

 

 アッサリと彰彦は言う。

 

 茉莉が抱えている事情を察知し、それを旧知のジャンヌに伝える。ジャンヌは恐らく、茉莉と仲が良い友哉達に連絡を入れる事だろう。そうすれば、友哉達が必ず茉莉を助けに行く筈。そこまで予測した上での行動だった。

 

「今度は何を企んでいる? どうせまた、碌でもない事だろう」

 

 鋭く睨むジャンヌに対し、彰彦は少し真剣味を帯びた声で返す。

 

「まあ、その考えは半分正解ですね」

「半分?」

「ええ、イ・ウーの崩壊、そして緋弾の次代への継承により、世界は再び動き出そうとしています。間もなく、大きな戦いが始まるでしょう。その中で、私達《仕立屋》も、生き残る為に戦わねばなりません。今回の件は、そのデモンストレーションも兼ねているのです」

 

 今回、仕立屋はイ・ウーを離れた状態であるにもかかわらず、見事に対象を支援して見せた。裏社会においても、この功績は無視できない。これで《仕立屋》健在をアピールできた訳である。

 

「それで、あとの半分は?」

「それは、まあ・・・・・・」

 

 彰彦は、珍しく少し照れたように顔を逸らしてから答える。

 

「最後の、親心、ですかね?」

「はぁ?」

 

 あまりに予想外な返事に、怪訝な顔をするジャンヌを余所に彰彦は、瑠香と抱き合ったまま泣きじゃくっている茉莉に目を向けた。

 

 彼女の身の上を案じていなかった訳じゃない。これでも一時期は、自分の部下として戦っていたのだから。だから、何とか助けてやりたいと思っていた。それが今回、思いもせず、その機会が巡って来た為、彰彦は彼女を影から手助けする為に、行動に移したのだ。

 

「さて、私は帰る」

「おや、もう、ですか?」

 

 てっきり、茉莉達と会って行くのかと思っていた為、彰彦は不思議そうな目でジャンヌを見た。

 

「明日は早い。何しろ、遠山の要請でサッカーなる物の試合に出ねばならないのだ」

「ジャンヌさん、あなた、サッカーできたんですか?」

 

 意外そうな声を発する彰彦に、ジャンヌは心外だとばかりに、顔をしかめて返した。

 

「馬鹿にするな。要するに、日本で言う蹴鞠の事だろう。それくらい書物で学習済みだ」

「・・・・・・・・・・・・本当に、大丈夫ですか?」

 

 何とも不安感いっぱいの答えに、彰彦は溜息しか出ない思いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後

 

 茉莉は走っていた。

 

 病院の廊下を走ってはいけない事は判っている。だが、今の茉莉には、そんな事は関係なかった。

 

 入院している高橋のおばさんから連絡を受け、着の身着のままで走って来たのだ。

 

 おばさんの方も重傷ではある物の命に別条は無く、比較的早いうちに意識も取り戻していた。

 

 そのおばさんからの連絡に、茉莉は慌てて走って来たのだ。

 

「茉莉ちゃん、こっちよ!!」

 

 名前を呼ばれて振り返ると、高橋のおばさんが手を振っているのが見えた。

 

 おばさんは頭や腕に包帯を巻いているが、見た限りでは普段通りに元気そうに見える。

 

「おばさんッ」

「こっちこっち!!」

 

 手招きをされて、病室に入る。

 

 個室のベッドの上には、全身に包帯を巻いた1人の男性が横たわっていた。

 

 茉莉は恐る恐る、ベッドに近付き、男性の顔を覗き込んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・お父さん」

 

 そっと、呼びかける。

 

 すると、

 

「・・・・・・ま、つり?」

 

 そっと、小さく目が開き、名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

 思わず、涙がこぼれる。

 

 数年ぶりに聞く父の声の、何と暖かい事か。

 

 高橋のおばさんは、父の意識が戻ったと茉莉に伝えて来たのだ。

 

「・・・・・・大きくなったね、茉莉」

「あれから、3年も経ったんですよ。当然です」

 

 そう言って、泣き笑いの表情をする。

 

 茉莉は父の手を握りながら言う。

 

「全て終わりました。もう、何も心配する事はありませんよ」

 

 谷親子は逮捕され、現在は東京の警視庁で取り調べを受けている。噂では黙秘を続けているそうだが、既に資産の凍結、協力者の検挙も終えている。後は押収した資料から証拠を見付ければ、自白無しでも送検できる。

 

 他の者達、作業員や警備員、比留間兄弟達もまた同時に逮捕され、取り調べを受けている。当分、警視庁と長野県警は寝る暇すら無いだろう。

 

 だがこれで、長くこの地方を縛っていた呪縛が、解き放たれた事になる。

 

 そこでふと、父は何かに気付いたように、茉莉の背後を見た。

 

「茉莉、彼等は、友達かい?」

 

 振り返ると、病室の入り口に友哉達が立っているのが見えた。

 

 その姿を見て、茉莉は最高の笑顔を浮かべた。

 

「はい、私の、仲間達です」

 

 

 

 

 

第8話「その笑顔の為に」      終わり

 

 

 

 

夏休み編     了

 


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