科学と非科学の歯車   作:グリーンフレア

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遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
中々更新できずすみません。



ACT.13 作戦名は大切なので

---4月18日 朝---

 

 オペレーション"メッセージ"から一夜あけたこの日。

当面は超からの返信次第で次の作戦行動を決める予定のため、返信待ちの現在は何をするということもなく、朝からこれまでに周辺の建物から集めた幾つもの物資を地下室へと運び込んでいた。

 

 全ての物資の移動が終わるとMGL140グレネードランチャーをコンテナから取り出すスピカとアルビレオの姿があった。2人は腕一本でちゃんとした照準が出来るかを試しているようで、スピカが実際に構えると姿勢だけは問題ないがこれに6発のグレネード弾を装填しそれを発射するとなるとかなり不安定な射撃姿勢だった。

 流石にTRIPOD1機では難があったようで、次はMGRで見せた2機で合体し人型形態なり上半身を担当するアルビレオがMGL140を構えてみる。その射撃姿勢は中々様になり安定もしているようだったが、そもそもTRIPODは隠密行動や偵察を基本として戦闘全般が不向きで、ローリングの邪魔になるMGL140を持つこと自体TRIPODの特徴の一つである機動性を潰す事になっていると月光は感じていた。

 

 

 

『うーん、グレランは諦めた方がいいんじゃないかなぁ。ぎりぎりアサルトライフルはセミオートで使えるだろうけれど、持ち運びはハンドガンとかが無難だと思う。』

 

『やっぱりたいちょーもそう思うニャ?クリスベクターとかMP7があればニャ~。』

 

『私は槍みたいな近接武器が欲しいかニャー。ナイフとワイヤーアームでそれっぽくは出来るけど限界があるニャ。』

 

『俺はこのP2000とナイフがあれば十分ニャ。それに機体にはスタンガンも付いてるしニャ。』

 

『私のMAVだと積載重量と出力は問題無いですが、本体をちょぉっと改造しないと武装化は難しそうですね~。』

 

 

 

 ちょっとしたアドバイスを切っ掛けにサポーター各々が武装や機体の改修点が次々と挙がり、戦力増強をするには色々足りない物があることに悩まされながらもアイラにメモをとっておくように指示を出す。

しかしアイラは「こんな事もあろうかと」といった自慢気な顔で各自の要求をまとめたメモを見せつけてきた。

 気を利かせてくれたアイラを褒めつつ月光自身の改修点も書き加えるてもらうと、更に具体的な要望をサポーター達から聞き取りそれらもメモに加えていった。

 

 その後もMGRに出てきたラプターやエトランゼだの20.3cm砲追加だのガチタン化だの千手仔月光だのフルアーマートライポッドだのメンタルモデル実装だの、全員好き勝手に言っている要望を聞いていると待ちに待ったメールの着信音が鳴る。

アイラによると使い捨てメールアドレスからの送信だったが、ウイルス等の確認を済ませてメールを開き確認した件名と本文の内容から超一味からの返信で間違いなかった。

 

 返信は要約すると交渉に乗るとの事だった。

会合場所は座標で示され、そこは学園都市の地下に張り巡らされた下水道の一角で地上には丁度龍宮神社がある辺りとなっていた。

日時は明日19日の23時と指定され、元々超一味にスケジュールを合わせるつもりだったため修学旅行前に交渉が出来るので月光にとっても都合が良かった。

 

 しかし会合場所は指定されたものの、肝心の地下下水道への入り口と龍宮神社付近の区画への道順が分からず彼女達と会う前に下水道のマッピングを自分達で行う必要が出てきた。

 

 

 

『と、言うわけでまずは地下下水道とやらに行ける出入り口を探そうと思う。』

 

『どこか当てはあるの?』

 

『どこかに地下に入るための施設があるかもしれないけど、マンホールとかを当たってみた方がいいかな?』

 

『それよりもここの発電室の排水口から降りていったほうが早いと思いますよ?』

 

『あぁ、そう言えばあったね。ならそこから下りてみるとしようか。』

 

『そうと決まれば早速行動開始ニャ!』

 

『後に続くニャ~!』

 

 

 

 スピカとアルビレオの2人はこれからの行動が決まると、すぐさま発電室の方へ転がっていった。

『鉄格子を外すには色々必要ですよね。』と苦笑いしながら工具箱を吊るした青葉も2人の後を追いかけた。

 

 残された月光・アイラとベナトナシュは資材の中から脚立やロープなどを使えそうな物をまとめ、それらの一緒にベナトナシュも背中に乗せ発電室へ向かった。

 

 

 

 荷物を載せてやって来た発電室では先に来ていたスピカとアルビレオそして青葉が鉄格子に集まっていた。

鉄格子は周りより一段低くなった床に備え付けられ、4隅4辺をボルトで固定されていたようだったが青葉から工具を受け取ったスピカ達によってそのほとんどが外されていた。

荷物を落とさないよう慎重に水車の脇を通って彼女達の所に着くと、丁度外された鉄格子が青葉によって吊り上げられて排水口から部屋の隅へと運ばれた。

 

 

 

『縦横1mの正方形ですが月光さんには小さい穴ですね。』

 

『まぁそんな気はしてたよ。それに底までの深さがかなりありそうだから、どのみちここから自分は下りれないだろうし。』

 

 

 

 青葉の報告に持って来た荷物をリトルチェイサー達に下ろしてもらいながら答えると鉄格子が外されたばかりの排水口を跨いで覗き込む。

発電室が明るいこともあり肉眼では真っ暗で滝のような音のする排水口はかなりの深さがあるようにも感じられたが、センサーや観測機器を使ったところ20mそこらで月光が思うほどの深さでは無かった。

 

 この排水口から地下下水道には一応繋がっているようだったが青葉の言っていた通り、どうやっても月光がこの排水口を下りれそうになかった。そのため今回、会合場所である龍宮神社地下へ続くルートとIRVINGが下水道へ入れる場所も探しつつ、マッピングする事を作戦目標とした。

 

 

 地下下水道のマッピングはリトルチェイサー達が手分けして進め、青葉も排水口から降下して下水道に入る予定だったが、本人の提案でGPS役として龍宮神社の方角やマッピング地点の地上部分の観測をするため学園の上空へと向かい、月光とアイラは地下と上空から送られてくる情報を照らし合わせて、下水道図と地上図の位置関係などの整合性を取るという配役になった。

 役割が決まり各自動き出そうとした時、思い出したようにアイラが一つの質問を投げかける。

 

 

 

『ところで、作戦名はどうするの?』

 

『地下下水道降下作戦だね。』

『オペレーション"Under Haven"なんてどうでしょう!』

『マッピング作戦でいいんじゃニャいか?』

『スピカの大冒険 ~図書館島に行ってみたい!編~ ニャ!』

『私は何でもいいかニャ~。』

 

『…今回はオペレーション"マッピング"に決定。作戦名で時間が掛けるわけには行かないので。』

 

 

 

 アイラが有無を言わさない言い様に加え、もっともな理由があるため各々不満はあったようだが異論は出ずオペレーション"マッピング"は実行に移された。

 

 

 

 

 

 排水口に伸ばした脚立を渡し流れ落ちる水にかからない所からロープを垂らしてリトルチェイサー達は地下下水道へと下りる。リトルチェイサー達から送られてくる映像を見ると原作で見た部分と大きく変わらない構造をしているようで、違いがあるとしたら連絡橋がない程度だった。

 水路の水深はそこそこあるらしく排水口はその真上に位置している為、そのまま下りる事はできず水路両脇の点検用通路に飛び移った。通路には照明が一定間隔で設置されているが光量が少ないこともあり非常に暗い。しかしリトルチェイサー達の目となっているFLIR(前方監視赤外線装置)のような機器には問題ではなく、暗視映像を送信してもらいつつ探索が始まった。

 

 

 

 

 

---同日 昼---

 

 

 月光を介しての青葉のナビゲートの下、散開したリトルチェイサー達は目的地の龍宮神社と主要施設に向けてマッピングを進めること半日。

 袋小路や滝になっている所に行き当たる等したが日が暮れ始めた頃になり、ようやく龍宮神社の地下にあたる水路に到達した。

原作において高畑とちびせつなが超一味に囲まれ、明日菜ら"高畑先生救援チーム"がロボット軍団と交戦した地点と一致する場所を見つけ、上空の青葉からも指定座標と一致するとの報告が入る。

 

 目的地とルートを割り出し主目標を達成したリトルチェイサー達は拠点に帰ろうとしていた時、通路が狭いと感じていた月光が、新たに通路幅や天井までの高さを測るよう3人に指示を出した。

 

 

 

『隊長、計測が完了したニャ。』

 

『ん、ありがとう。…どこもかしこも狭いなぁ。これじゃあ会合地点までは水中を進むしかないか。』

 

『! 皆、ここの水路の水深を測って。』』

 

 

 

 次に月光の言わんとする事を感じ取ったアイラが、移動を再開しようとしていたリトルチェイサー達に指示を飛ばす。3人がすぐさま計測を始めた様子に月光は、いい子達に恵まれたなぁ等と思いながら早速挙がってきた計測結果を特にアイラを褒めつつ、届いた水深とついでに計測された水流の速さに目を通す。水路の底は平らで、水深も1.50m程度で水流も足を取られる程では無かった。

 更に他の地点でも計測してもらうと、大体同じ結果となっていて当日の移動には水路を歩いて移動することになりそうだった。

 

 

 ルートが判明しているためリトルチェイサー達が拠点に戻ってくるのにさほど時間は掛からなかったが、会合場所までのマッピングでは地下下水道への出入り口を発見出来ずじまいだった。

そこで作戦第二段階として活動拠点周辺に広がる地下下水道を中心に、リトルチェイサー達が手分けして出入り口の捜索に取り掛かった。

 

 しかしこの一帯の下水道は各方面に向けての分岐点であったようで、思った以上に広く複雑な構造で探索は難航していた。

下水道に降りるには最終手段として考えていた排水口の拡張しかないのでは、と月光とアイラが相談をしていると拠点の北側で探索をしていたアルビレオから、地上へ向かっているらしきトンネルを見つけたという報告が入る。

 

 アルビレオから送られる映像を見ると狭かった通路から一転、それなりの広さのある空間に「休憩室」と書かれた扉と軽トラックぐらいなら難無く通れそうなトンネルがあった。

 そのトンネルを調べると3回折返して上って行った先にシャッターがあった。上空に待機している青葉にアルビレオの現在地に向かわせると、商業区と倉庫群の境界付近に「立ち入り禁止」と張り紙のある車庫のような建物があった。

 

 2人がシャッターを叩いてみるなどしてこの場所から地下下水道へ入れるのを確認し、シャッターには鍵穴があり少し錆び付いていたが青葉のピッキングと内側からのアルビレオの補助で難無く開けることが出来た。

 

 

 

『結構このシャッターも錆び付いているのでしょうか?』

 

『んー、頻繁に使うとしたら詳しく点検した方が良さそうニャね。』

 

『青葉ー、アルビー。ベナトも連れてきたけど何か手伝うことはないかニャー?』

 

『厳密には俺が先導してきたんだがニャ。』

 

『それじゃあベナト君とスピカちゃんはすぐそこの休憩所って部屋を調べておいてもらえるかニャ? 私もまだ中は見てないから気を付けてニャ。』

 

『わかったニャ』『了解ニャ!』

 

 

 

 4人がかりでこの下水道入口とトンネルに残された資料や痕跡を調査して分かった事は、下水道の保守点検用に作られた施設で今は電気が通っておらず数ヶ月以上は人の出入りがないようだった。

 下水道側の広い空間は作業場として機材やゴムボートを用意する場所だったようで、小さな係留柱と作業場の隅にかなり劣化したゴムボートとエンジンが放置されていた。

 また、地上の下水道入口の前を通る荒れた細い車道は、商業区と倉庫群の境界で施錠されたゲートで封鎖され簡単に通行できないようになっていた。

 

 

 

『青葉の報告だと周りに人気はないみたい。』

 

『多分地下へは問題無く下りれるだろうけど一応行ってみようか。ここからの道順も確認してみたいし。』

 

『では、上から見ても発見されづらいルートをそちらに送りますね!』

 

 

 

青葉から下水道入口までのルートを受け取ると月光は活動拠点を後にした。

 




 今日からPC版MGO3がオープンベータ開始ですね。
投稿された頃には恐らく戦場へと行っていると思います。

次回もあまり大きな進展はないと思います

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