俺ガイルSS やはり俺の球技大会は間違っている。   作:紅のとんかつ

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試合のハーフ休憩です。







その5 彼は彼なりの本気があり、その生きざまがある。

 

 

 ハーフタイム。

 

 短い時間だが動きっぱなしだった俺達に僅かな休憩が与えられ、俺もベンチに座り一息つく。

 

 ルールブックによれば、休憩は10分。しかし休憩終了と同時にジャンプボールでありスタンバイの時間と合わせると休憩時間は長くない。

 

ハァと溜め息をつき、チームの様子を眺める。

 此方のチームの士気は低く、目に見えて体力の限界が近付いていた。点差は八点、相手の能力も士気も高い今この差は絶望的だろう。こちらが入れても、当然相手にだってチャンスはあるのだから。

 ようやく望んでいた試合展開に喜ぶ観客達。ウェーブまでやっている奴等もいた。やはり想像通り、誰もこっちが勝つ事なんて望んでいないのだ。

 

 皆口数は少なくベンチに座り込み飲み物を飲む。

 

 

「おい戸部! さっきのダンクもどきマジ笑ったよ! 流石戸部だわwww」

 

「いやそれ酷いっしょ……。マジ恥ずかしかったんだから」

 

 

 相手チームに話し掛けられて返事を返す戸部。

 お前本当凄いな体力、良くそんな元気出せるな。

 

 

 しっかし、このままだとマジこれで終わりだな。まだ策はあるにはある、あるんだが……。

 それらの作戦の全てが今のままではあの葉山隼人には通用しない事を俺は理解してしまった。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 ハーフタイム 葉山サイド

 

 

 三浦や海老名、由比ヶ浜からタオルや飲み物が配られ、そしてチームは楽しそうに談笑している。

 

 

 

「隼人お疲れ。はいこれタオルケット」

 

「ああ、ありがとう優美子」

 

「お疲れ様隼人君! いや、接戦だね!」

 

「ああ、戸部も本当良い動きするし、手強いな。たまたま上手くいってるけど、油断したらヤバそうだ」

 

 葉山の言葉に海老名は感心したように頷く。

 

 

「へぇ~、あの戸部っちがね~」

 

「ね! な、なんか格好良くない?」

 

 

 由比ヶ浜がそれとなくアピールするが、しかし途中で大岡達に茶化されてしまった。

 

「え~?ま~、あの戸部だしな~」

 

「……ま~ね~」

 

 

「……」

 

「いやでも戸部は本当に凄いって。これは、俺も負けてられないな」

 

 

(あんなに活躍してたのに、もう隼人君の活躍で霞んでるのかな……。ヒッキー、まずいよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 比企谷サイド

 

 

 それぞれがドリンクを飲み、タオルで汗を拭く。

 表情は暗く、誰も喋ろうとしない。ただ一人を除いて。

 

 

「いや! マジ隼人君相手にコレは善戦っしょ! 大健闘だってマジでさ!」

 

 

 戸部は皆を励まそうと必死に明るく振る舞っている。

 確かに、前半だけ見れば大健闘だ。だが、この消耗で後半に挑めば結果は見えている。皆それを解っているから、または余裕が無いから意気消沈しているのだろう。

 

「……まあ、相手が隼人君だし、しょうがない所もあるしさ!」

 

 

 相手が凄すぎた。そう言って落ち込む皆をなんとか元気付けようと頑張るも、戸部の投げかけも響かず皆俯いてしまっている。

 

「でも僕がミスしちゃって、点数取られちゃって。ごめんね、皆」

 

「いや戸塚もマジ頑張ってるっしょ! 戸塚のせいじゃないって!」

 

 

 暗くなる戸塚をオーバーリアクションで励ます戸部。

 手を振り回し、楽しそうな笑顔を作り、気にするなと体全体で伝えにくる。

 

 皆全力で頑張ってくれている。それが解るからこそ戸部は必死なのだろう。

 

 

 しかし、必死に皆を元気付けようとする戸部に冷たい一言が放たれた。

 

 

 

 

「そうね、戸塚君は頑張ってくれているわ。本当に頑張りが足りないのは、貴方じゃないの? 戸部君」

 

 戸部の背後から投げかけられた雪ノ下の一言にビクッと固まる戸部。

 雪ノ下の方に顔を上げる。そこには悲しそうな顔をした雪ノ下が腕で自分を抱きながら戸部を瞳で射抜いていた。

 

 

「戸塚君も材木座君も、あの比企谷君ですら練習の成果を出し健闘をしている。城山君も、柔道部でありながら素晴らしいプレーをしているわ。でも、貴方だけが本気でやってない。前半戦を見てて、それだけは解るわ。そうでしょう?」

 

 

 戸部がオロオロと狼狽え、そして襟足を引っ張りながら下を向いた。

 

 その気まずい空気を感じ、戸塚が立ち上がり、戸部と雪ノ下の間に入る。

 

 

「戸部君は頑張っているよ!だって、前半の点数のほとんどは戸部君が取った物だし、やっぱり一番上手だし、手加減なんてしているように見えないよ!」

 

 

 ……まぁな。

 戸部は動いているし、なんならうちのチームで一番活躍している。意図的に活躍の場を作っているのもあるが、それを活かして決めているのも戸部だ。けど、雪ノ下はそうは思っていない。戸部は、まだやれる事を知ってる。

 

 

「相手チームに話し掛けられてはへらへらと返事をして、プレーが遅れる。葉山君がコールを受ければ、葉山君のプレーを止めるのを躊躇う。そして大和君や大岡君と勝負になれば一歩下がってしまう。これのどこが全力だと言うのかしら? 本番の緊張を含めても、明らかに集中もしていない。そんなに周りの目が気になるの?」

 

 それもその通りだろう。

 相手チームに話し掛けらたらそれが速攻のチャンスだろうと返答してしまう。そして相手にやられれば照れ隠しで必要以上に話をする。さらに周りが葉山達の活躍を求めれば、それを止められない。

 

 

「確かに、この試合の作戦では貴方の負担は大きい。でも、貴方がこの試合での活躍を望んだのだから貴方も本気で……」

 

「違うな、雪ノ下。これが戸部の全力だ」

 

 そこまで言い切った雪ノ下の言葉を遮り、俺から反論を伝えた。

 

 俺の言葉に眉をしかめる雪ノ下。戸部もきょとんとした顔で俺に視線を向ける。

 

 

「……貴方迄そう思うとは意外ね。今までの練習成果や戸部君の相手チームへの態度を見ても、彼は全力でやって無い事は明らかでしょう? 彼はもっと出来る、力のある人間よ」

 

「そうだな。俺達のチームのキー・マンとしてはかなり致命的だろう。だが、それを含めて戸部の全力なんだ。俺や雪ノ下みたいなやり方は出来ない」

 

 

 俺の言葉に戸部が目を泳がせうつ向く。雪ノ下の表情も険しくなり、表情で俺の意見に否定的である事は伝わってきた。

 

 雪ノ下がこの試合で勝とうとするなら、それはもう圧倒的な力でねじ伏せるんだろう。この後の相手や周りとの関係を気にせず。

 俺がなんとかしてこの試合で勝とうと思うならそれこそ今以上に、人目を気にしないで相手チームを貶めるなり汚い手を使うなりする。相手に恨まれる事を厭わず。

 だが、俺達のやり方をするのは相手や周りを切り捨て、周りにどう思われても良いぼっち、もとい孤高な人間にしか出来ない。

 

 

 

「相手やギャラリーに気をつかい、空気を読みながらプレー、それが戸部の本気だ。社会だってそうだろ?周りに気なんか使わないで好き勝手やったら会社は回らない。適当な所で落ち所を見極め、上司や同僚の顔を伺いながら頑張んなきゃならないんだ」

 

 ソースは親父の愚痴。周りを気にせず全力を尽くしていればいいならば、それは簡単な話なのだろう。だが人が集まるならば、そこに一定以上のコミュニケーションや気遣いといった今後の関係性を含めて考え、物事を進めなくてはならないから大変なんだ。

 

 沢山の人間関係の中で生きる戸部にとっては、俺たちとは比じゃないほど重要な要素だ。

 

 

「だから戸部は全力。むしろ大健闘だろ俺達」

 

 しかも大和や大岡は課外活動からの付き合いで、あんなネガキャンメールまで出回った。葉山のお陰であの問題を乗り越え、親しくなったにしても、いつ壊れるか解らない。そう思っても無理は無い。

 

 ラインで返事が遅れただけで既読無視と軽蔑され、好きな人が被るだけで終わってしまう現代の友情において、それは今後の学園生活そのものに亀裂が入りかねない。

 俺の言葉は周りに伝わったのか、皆目を反らす。

 

 

 

 

 

 

 しかし、雪ノ下だけは表情を変えず、真っ直ぐ俺と戸部を見つめる。

 

 戸部も雪ノ下の視線に気付き、少し慌てた後、気まずそうに微笑む。

 

 

「い、いや~、なんか、空気悪くしてゴメンね? そりゃムカツクよね。皆俺の為に頑張ってくれてんのにさ! うん、マジで試合、次で挽回すっから!」

 

 

 明るく楽しげな話し方に、手を大袈裟に使い表現する。人好きそうな笑顔を振り撒く。しかし雪ノ下は微笑み一つ浮かべない。

 

 

「確かに? 隼人君には御世話になりまくりだし、なんか試合始まって改めて思ったけど、誰も俺らの勝ちなんて見に来てねぇよ! みたいな空気がヤバいじゃん? だから、ちと気負けしてたけど、でも今の雪ノ下さんの激励とか、ヒキタニ君のカバーでなんか気合い入ったわ! マジ!」

 

 

 こちらのベンチには戸部の声だけが響きわたる。戸部以外の誰も声を出さない。

 

 雪ノ下は視線を逸らすことなく戸部が喋るのを黙って見つめた。

 

「……い、いや、でもだからなんての? マジやってやるっつ~か、その、俺に、マジは求められて無いのは解ってるっつ~か、この試合でさらにっつ~か……。ゴール入れたらがっかりされるし、隼人君にボール取られたら皆喜ぶし……」

 

 

 戸部は全力だ。

 この試合だけじゃない。

 毎日、毎日生きてる中全力で人との関係を守ってる。

 ヘラヘラおどけて、友達が女に挟まれて困ってたら睨まれても割り込んで、後輩のワガママを見下す事なく対等に聞いてやって、好きな子が出来ても雰囲気を壊さない為に友達にだって真面目にならない。

 それは人と関わるのを怖れて人と離れた俺達と違い、全力で仲間の空気を守ってきたんだ。だから、だからこそギャラリーの反応が堪えるんだ。

 

 雪ノ下のまっすぐな視線に耐え切れず、戸部の躍けて笑顔で、声もやかましくて動きもせわしなくて。そんな風に取り繕う戸部が、話している内にどんどんお調子者の仮面が、メッキが音を立てて剥がれ落ちていくのを感じる。いつものうっとおしい笑顔は、どこか痛々しい嘘笑いに変貌していった。

 

 

「なんてーか、なんてーか、いや、ハハッ。……なんか怖くなっちゃって……」

 

 

 

 …………。

 

 戸部はとうとう俯いて黙ってしまった。

 真剣な眼差しに、雪ノ下の凛とした態度に自分の態度が映り込み、それに耐え切れず目を逸らしてしまったかのように。

 

 一色も戸塚も、何も言えず俯いている。

 俺も、何か言った方が良いのか、と言葉を頭の中で選んでいた。

 

 

 そして何も言わずに俯いてしまった戸部を、それまでただ見つめていた雪ノ下が両手で顔を優しくあげ、目を見る。逸らすことを、取り繕う事を許さない、という風に。

 

 

「戸部君」

 

 

 その呼びかけは、さっきまでと違い、どこか優しい、まるで姉が弟を、母が子供に語りかけるような声音だった。

 

 

 

 

「誰もイラついてなんかいないわ。私達にまで怯えないで頂戴。貴方が何をしても今になって見捨てるなんて真似、私達がするわけ無いでしょう。貴方が相手チームだけじゃなく、私達やギャラリー迄意識してて、不器用ながらとても他人を気遣う人物という事はもう解っているわ。でもね、人の顔だけ気にして、物事に本気になる事も無くヘラヘラしているだけの人が魅力的に見えると思うの?」

 

 

「……!」

 

 

 今回の根本的な依頼、好きな人にかっこいい所を見せたい。その最大の目的を雪ノ下は戸部に対して訴えた。

 

 その言葉に、戸部も、そして俺もハッとさせられる。

 

 

 まあ、そうだ。

 確かに、薄っぺらいな。

 

 

 いい人で終わる。

 これはやはり、相手に自分の汚い所を見せるのを恐れ、上部だけ優しくしているだけだから、お互いの距離が深くなる事が難しく、それなりに良いだけの関係で終わるのだろう。

 

 しかしいい人で終わる人は、怖がってはいるが手を抜いている訳じゃない。全力で、好きになって欲しいから良い事をし、嫌われるかもしれない本音を隠す。彼等だって全力で頑張っている。

 

 だが、それはやはり欺瞞的な部分も多い。

 

 だから相手に踏み込んで開いた心の分しか親しくなれない。

 

 戸部はそれを踏み越えなければならない。

 そう雪ノ下は言うのだろう。

 

 

 

 

 

 

「あ、あの~」

 

 静まっていた空気の中おずおずと手を上げる一色いろは。

 

「私も思うに、やっぱり好きな人に自分の魅力を伝える為には、アプローチってその都度やり方変えないといけないと思うんですよ。戸部先輩の明るくノリが良い所は、もう伝わってると思います。だから、今度は、たまには、格好良い所を見せるのも良いと思います。私も」

 

 

 一色もまた、戸部に乗り越えて欲しいと言葉を送る。

 

 

「だから今さら戸部先輩が滑ったりノリが悪かった位で誰も嫌いになったりなんかしませんよ? 空気を壊しまくる私が言うんですから間違い無いです♪ ……だから私達の事も、葉山先輩達の事も信用してください」

 

 

 

 コイツらはあくまで、戸部に戦えと言う。励まし、支えると伝える。

 

 

 俺は戸部のやってる事は間違ってないと思ってる。

 人と仲良く、嫌われなくするのは難しい。毎日顔を合わせ、努力をしてようやく仲良くなれるのに、嫌われるのは言葉一つで十分だ。

 俺は人と繋がる事を放棄した。だから何かを言える立場じゃない。俺にはコイツらみたいに優しい言葉を贈れない。

 

 そして戸部の今までの頑張りを否定したくない。今まで、必死に皆の顔を伺い伺い、生きてきたコイツを否定したくない。だから、俺は戸部に対し何かを言う事なんて出来かった。

 

 だが、雪ノ下は真っ直ぐに戸部に伝え、一緒に戦おうと言っているのだ。

 

 

 そして、雪ノ下は俺に目線を送る。その視線を、俺は自分の視線とぶつからせてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ため息を付く。

 わかったよ。確かに本来の依頼は戸部をこの試合で魅力的に見せる事だ。

 

 あいつらが戸部をどう思ってるかなんか知らない。大和も大岡も、会話すらまともにした事無いからあいつらの気持ちは解らない。

 ……だから、俺は事実だけ伝える。

 

 

「なあ、体育ん時のマラソンの練習、覚えてるか?」

 

 

 俺は、戸部が振り向くのを待って、そして続けた。

 

 

「……マラソン練習してる時、俺がお前に声をかけただろ? そん時、結構長話してたのに、大和や大岡はお前を待ってたな。あんな面倒で疲れるマラソンで、お前をわざわざスピード落として待って、お前といる時間を取ったんだ。それは確かだろ。そして、葉山にかんしては何も言う必要は無い。葉山が誰かを頼るのも、葉山を助けた事がある奴も、俺は戸部しか見ていない」

 

「……うん」

 

 

「これらも含めて、あいつらがどう反応するか考えろ。あいつらはお前が態度変えて空気を読むのを止めたら、離れていく奴か?」

 

 どう感じるのかはお前の勝手だからな。

 

 

 

「うん、そりゃ、隼人君も、大和も大岡も、俺は信じてるよ? けど皆がさ! 隼人君達の活躍期待してっし」

 

 

「そうか、ならギャラリーどもか心配なのか。だけどな。ハッキリ言うとお前が思うほど誰もお前の事を気になんてしてないし、お前もあいつらの事好きな訳じゃないだろ?」

 

 

「え、あ、いや、まあ……」

 

 

「だったらどっち優先するかなんて決まってるだろ? お前も一丁前に恋する男なら、好きな人の為に周りを切り捨ててみろよ。両方手にいれるなんて無視の良い話なんてない、海老名に振り向いてもらう事とあそこのモブ達、どっちが大事なんだ?」

 

 

 

「き、切り捨てっすか……」

 

 

 俺の言葉が強すぎたのか戸部が後ずさる。

 しかし、いつまでもウジウジする戸部にとうとう戸塚が両手を握り一括した。

 

 俺の言葉の意味を解りやすく解読しながら。

 

 

 

 

「戸部君は海老名さんと観客どっちが大事なの!」

 

 

 

 戸塚の言葉にハッとなり、俯かせた顔を上げ返答した。

 

 

 

 

「それは海老名さんっしょ!!」

 

 

 

 ハッキリと戸部は言いはなった。

 顔をあげ、会場中に聞かれるかもしれない声で。

 ヤバそうに会場を見渡すも、騒がしい会場内では誰もこちらに気付いてはいなかった。

 

 ほっと、戸部が胸を撫で下ろす。

 

 

 

 

 

「……あはっ」

 

「ハハハッ!」

 

 皆、戸部の見事な手のひら返しに、思わず笑いがこぼれ出た。

 

 

 

「ならそれで良いんじゃねえの?」

 

「大切な物を見失ってはダメよ。それ以外の物を排除してでも、ソレを守らなくては。」

 

 

 

「……あいつらより、海老名さんが好き、か」

 

 

 戸部は騒ぐ観客を見渡して一瞬何かを考え、そしてニカッと笑った。

 

 

「……ごめん!ちょっとネガッちゃったわ。マジ目が覚めたっしょ」

 

 

 相変わらず薄っぺらい態度に薄っぺらい返事。

 だが、ようやくいつもの戸部が帰ってきたような気がした。

 

「いや皆マジごめんだわ。でも、皆が励ましてくれたから、怖いモン、もう無いわ!」

 パチンッパチンッ

 

 

 

 そのウィンク止めろ。

 目障りだから。

 

 

「……いや、皆に相談、してよかったわ」

 

 そして戸部は後半も頑張ろうと騒ぎだす。

 

 

 

 悩みも葛藤も、すぐに切り替え騒ぎ出す。

 なんとも軽薄な態度だが、そこに俺には無い強さを感じた。

 

 

 

 

 葉山の言うムードメーカーが元気になり、皆でワイワイ騒ぎだす。

 もう今の笑顔には影も無く、明るいお調子者のソレに戻っていた。

 

 

「それでは後半の動きを説明するから戸部君と戸塚君のオフェンス組からこっちに来て貰えるかしら?」

 

 

「うん!」「オス!」

 

 

 もう大分時間を食ったが、ようやく試合だけを考えて望める。

 俺はやれやれとベンチに座り込むと隣に城山が静かに座っていた。

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

 気まずい。

 しかし、考えるに今一番気まずいのはこの城山ではないだろうか。そう考えると何処かバツが悪かったのでつい謝罪をしてしまった。

 

 

「悪いな。関係無いのに巻き込んで」

 

 声をかけられると思ってなかったのか意外そうな顔をしたあと「いや・・・」と返事を返してくれた。

 

 

 

「……今回も部活の依頼か?」

 

「まぁな」

 

「……そうか」

 

 

 ……。

 真面目、もしくは無口なんだろう。こちらを見る事なく、城山は俺と語数の少ない会話を行った。

 こちらのコミュスキルと相まって会話が続かない。気まずいのと罪悪感で包まれていると城山から意外な提案が出された。

 

 

「俺も手伝う。勝てば良いのか?」

 

 

 

 風邪で休んだお陰で巻き込まれただけなのに、まさかの前向きに手伝うという提案だった。……なんのつもりかは知らないが、それは非常に助かる提案だ。

 

 

「最低でも良い勝負がしたい。いいのか?」

 

「お前達には俺も借りがある。部活を助けてくれただろう」

 

 まあ、確かにそうだが、お前にとって尊敬する先輩をこき下ろすようなやり方だ。

 寧ろ恨まれていても文句はないくらいだが、借りと思ってくれていたのか。

 

 

「……やり方はともかく、事実助かった。だから、感謝はしている」

 

「そうか。助かる」

 

 

 城山は力強く頷いて返してくれた。

 何がなんだか解らない中巻き込まれ、それでも文句を言わず付き合ってくれた。そして積極的に力を貸してくれる事を約束してくれた。

 コイツも大概良い男だな……。

 

 

 そうしていると戸部が作戦会議! と騒ぎ出した。

 

「よし! 後半の作戦はどうする? なんでもやるっしょ!」

 

「ん? 今なんでもやるって言ったな?」

 

 

「……へ?」

 

 

 サーッと顔を青くする戸部。

 しかし、俺はその軽々しく口にした言葉を待っていた。

 

「そういう事なら良い作戦がある。出来ることならやりたくなかったが、仕方ない。城山も手伝ってくれるらしいからな」

 

 

「な……に……?」

 

 

 

 手招きで全員を集める。皆びくびくしながら円になった。

 

 

 

 

 

 ……ボソボソッ。

 

 

 

「本気……か?」

 

 城山が脂汗を浮かべる。

 

「手伝うんだろ? ならやってくれ」

 

 

 

 

 戸部がひきつる。

 

「めちゃ恥ずいんだけど」

 

「なんでもやるんだろ? 男に二言は無い(でも虚言はある)」

 

 

 

 材木座が口を開く。

 

「我は……」

 

「お前はやれ。俺も嫌だがやる」

 

 

 

 

 

 戸塚が困った顔をしている。

 

「僕は……」

 

「戸塚は見てていいぞ!俺らが毒をかぶるから!」

 

「いや、やるよ!」

 

 

 

 

 

 俺の提案に雪ノ下は呆れている。

 

 

「……相変わらず小賢しい男ね。」

 

「小、はいらねぇよ。賢いでいいだろ。後、雪ノ下は試合中の指示頼むな」

 

「ええ。それについては考えがあるわ。一色さん、手伝って頂戴」

 

「え~(汗)」

 

 

 

 さて、色々あったが休憩時間が終わった。

 

 ここから、俺達の小賢しい策の始まりだ。

 

 

 

 




 もっとやりたい展開や台詞があり、全然まとまらず長くなってしまい大カットしてしまいました。
 心情とか書きたいと思うとつい長くなってしまうのが難しいです。
 あと戦闘描写を文字で表すのって難しいです。
 あと日常も難しい。全部だね。

 何回か修正すると思います。どうぞよろしくお願いします。
続きは今日、または明日迄に見直しをして投稿させて頂きます!

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