俺ガイルSS やはり俺の球技大会は間違っている。 作:紅のとんかつ
寒空の校庭、皆が重そうなコートを着て凍える風から耐え忍び、今日も学び舎へ足を運ぶ。
その一団の中、私も厚手のコートを着込んで、いつものカバンと沢山の漫画が入った紙袋をせっせと運んでいた。
周囲を見渡せば、雪が無いのにも関わらず”寒い”というのが一目で解るような何処か寂しげな景色の中、この寒さにも負けず綺麗な足を出して歩く我が友を発見した。
後ろから小走りで駆け寄り、彼女の前に顔を出して声をかける。
「おはよ、優美子。今日も寒いね」
「ん、おはよ」
私の挨拶に少し微笑みながら軽く返した後、優美子は歩みを緩める。そしてゆっくり二人の歩幅を合わせていった。優美子はその過程で私の手にある紙袋を指差して尋ねる。
「なにそれ、重そうじゃん」
「これ友達に頼まれたマンガの全巻なんだ~。一気に持ってきたから重くて重くて!」
持ってきてから考えるのもアレだけど、やっぱり相手が持ち帰る事を考えると半分位に別けた方が良かったかな? と今更反省する。
だけどオススメな物ほど一気に読んで欲しいという願いもあるから仕方ないよね♪
本当ジャン○は今も昔も良作も多くて多くて。特に男の子達の友情を主に書いてくれるってのが良い所だよね、少年誌は! 定期的に私たちのような者にも餌を投入して頂き誠にありがとうございます!
愚腐腐と笑う私を見かねたのか優美子は持ち物の話題から既に次の話題へと移行する。
「……今日、アレだね」
主語も題も不明瞭な話題。しかし、付き合いの長い私には優美子が何を言ってるかはわかる。
「アレだね~、提出日。やって来た?」
「やって来た。マジ大変だったんだけど。結衣は大丈夫かな?」
因みにアレとは社会の課題の提出の期限の事だ。
結構な量の課題だったので最近の皆の悩みだった。今の時期、下手な事して内申点下げたく無いしね。
絶え間無く続く学校イベントと課題のラッシュ。
学校の楽しい時間の終わりを感じ、イベントを終わるのを惜しむ気持ちと早く終わらせたい課題への気持ちで落ち着く暇がない。
そんな主語を必要としない会話をしていると、噂の主が横からパタパタ走ってくる姿が目に入り、二人で歩を止めて合流した。
「やっはろ~二人とも! いや~、今日も寒いね~!」
「おはよ」
「はろはろ~結衣。課題大丈夫だった~?」
由比ヶ浜結衣が息をきらして私たちの前に出て元気に挨拶を決める。
結衣の表情を見て、この質問が地雷では無い事を感じ取ってから尋ねてみた。すると結衣は、輝くような笑顔でVサインを決める。
「うん、ゆきのんが手伝ってくれてね。お陰で助かっちゃった♪ あ、手伝うって言っても、課題そのものは私がやったんだけど、一杯アドバイスしてくれたり紅茶入れてくれたりしたんだよ!」
結衣と最近仲良しの雪ノ下さん、半年前位から関係が急接近した一人。
課題が終わったのもあるだろうけど、彼女の話をする時の結衣はいつも輝いていた。
横の方で優美子が少し寂しそうに唇を尖らせているのに癒されながらも結衣の話を聞いていく。
「あ、それとね? ヒッキーも、なんだかんだで参考資料とか集めててくれたりとかさ、文句言いながらも最後までいてくれたりとか、してくれたんだよね。も、もうそれなら素直に手伝ってくれたら良いのにねっ! ”やり方がアホの子”とか色々言ってばかにするもんだから素直にお礼も言えなかったもん!」
相変わらず、もう一人の急接近した比企谷君とも仲が良好で良かった良かった。
あの時、あの修学旅行の時に関係が悪くなった彼女等を見て、私は少し罪悪感を覚えてしまっていたから、関係が元に戻って本当にそう思う。
……これで何もかも元通り。
奉仕部のお陰で、私の平穏が元に戻り心から安心する。
毎日気の許した友達の輪の中で、ゆるやかに幸せに過ごすこの毎日が私は大好きだ。この平和が守られて本当に彼らには感謝の言葉しかない。
そうして優美子と結衣が楽しそうにじゃれあっているのを見て、心から癒される。本当に、本当にこんな毎日が続けば良いのに。
しかし、それは叶わぬ夢だ。
後数ヵ月でクラスは変わるし、一年後にはそれぞれ違う道を歩んでいる。いずれ終わる関係、生活。
だから、今を大切にしていきたい、それが私の願いだ。その為に私は変化を拒む。
そう心の中の決意を再び心に刻みながら、前から嬉しそうに手を振って走り寄って来る彼に手を振り返した。
「おっす~、今日もおっは~! 海老名さん、優美子、結衣!」
「あ、戸部じゃん。隼人は?」
いつも朝から異常にテンションが高い彼は、軽い敬礼のようなポーズで近寄ってきた。
いきなり本人を蔑ろにして意中の彼を探しながら髪型を整える我等が恋する女王。私達もその言葉で挨拶を返すタイミングを逃してしまった。
「いんや~? 朝練今日無かったから一緒じゃなかったんよ~。今の時間なら教室じゃね?」
「なんだ、じゃ戸部だけなの? なんだ」
容赦の無い言葉に、結衣は苦笑。
とべっちは”だよね~。って、オイ!”みたいにノリ突っ込みで返す。
そのまんま自然と私達のグループに混ざりながら昨日のテレビやら今日の授業やらの話を始めた。
彼が来た途端絶え間無く話題が出るものだから、ある意味凄いボキャブラリーだな~、と一歩下がった位置で微笑ましく優美子達とじゃれあう姿を見つめていた。
「今日もマジ寒いわ~。コレ外で寝たらやばいわ~」
「いや、寒くなくても外で寝ちゃダメだよね?」
ナチュラルに私と結衣の間に入ってくるとべっち。そのまま会話初めの鉄板”天気・気温”の話を持ち掛けてきた。
「優美子とかめっちゃ足出してるし。見ただけで寒くなるわ~! っべ~」
「すごいよね~。私スカートの下にスパッツとかジャージとかはかないと無理だもん」
「は? 別に、これくらい大丈夫じゃない?」
「あ~、なんか小学の時の体育で、言われてないのに短パン半袖を貫く奴いたよね~。優美子もそのタイ……
「あ?」
……なんでもありません」
戸部っち、女子のお洒落への意識の高さを、強がり元気少年と同列に扱うなんて本当ある意味勇敢だよね。私たちは生足出してたまに”寒い”って小声でつぶやいてる優美子に微笑ましく聞いてないフリしてるというのに。
どっかのファッション誌に書いてあった言葉”お洒落とは我慢”の一文を思い出す。女の子は本当は寒いのを我慢して綺麗な足を出しているんだ。美意識女子はそういう所にも気を使わなくてはいけないから大変だよね。
まあ自分の足とスタイルと顔に自信が無いと出来ない意識なんだけど。自分の足だと、ちょっと出せないかな~。そもそも出す理由が無いけど(笑)
「てか、その短パン小僧、寧ろ戸部っぽいイメージじゃん。バカっぽくて無駄に元気で。絶対冬でもボール持って校庭でドッチボールしてたタイプっしょ?」
「いんや~、俺は長袖着てたよ? ボール当たったら痛そうじゃん」
「理由がヘタレだ!?」
優美子にしては多い口数。結衣にしては遠慮の無い言葉。そんな気心の許された三人の様子に、思わずため息をつく。安らいだような気持でフッと口から空気をぬいていると、スッと私の荷物が軽くなった。
横を見ると戸部っちは私の手から漫画を入れた袋を取り、持ってくれていた。
「重っ! コレ超重いわ~。何コレ? お、これ面白いよね~」
「じ、自分で持てるから……」
そういって袋をしっかりと持ち直そうとする彼から、私は何か反射的に荷物を取り返す。その行動にとべっちはキョトンとした顔で私の顔を見た後、気まずそうに頬をかいた。
「……こ、これ、ちょっと先生に見つかったらやばい荷物なんだよね~! 没収とかされたら嫌だからさ、自分で持つよ♪ 戸部っち、平塚先生とかに目を付けられてそうだし」
「あ、そうなん? 了解了解~、先生来たら教えるわ~」
私からの咄嗟の言葉になんの戸惑いもなく、ヘラヘラと腕を振って笑った。
一瞬、気まずい空気が流れた気がしたが、彼はいつも通りに笑い、優美子達に女子の荷物を勝手に取るなんて逆にデリカシーが無い、と弄られていく。
「てかさ、戸部はさ~。人との間合いの詰め方が急なんだよね。他人とのテリトリーが近いってか」
「それ私も思うな~。なんてか、顔とかめっちゃ近いよね。ただでさえ声大きいのにさ~」
「え~、友達の間でそんなん関係無くない? 心同士はいつも寄り添ってるってか、俺たちはいつでも隣にいるってか? 俺の皆への心の距離を現してるってか?」
「キモい」
「キモい……」
「なんか今遠くなった気がするわ~、心の距離……」
何事もなかったように三人がいつものように笑いながら話をして歩む。だから私も一緒になって笑っていく。
内心では荷物を取り返した時の彼の表情に、胸が傷んでいた。
三人を見る。
そこには、恋も駆け引きもカーストも性別も関係なく、本当に楽しく友情だけで過ごせている三人。でもなんだか、私は少しだけ距離を感じるようになっている。その理由は明白だ。私があの一件以来、勝手に距離と壁を作ってしまっているからだ。
私が望んだ、変わらない”平和な日常”。自分で望んで、あの男の子に助けて貰って維持したこの時間。その流れる時間の中で、私は彼の良く言う”欺瞞”という言葉が脳裏にふと浮かんでしまった。
「あ、ちょっとわり。先行ってて!」
そんな時、戸部っちは急に私達から離れて校舎方面へ走っていく。
もしかして、気を使わせてしまったかな? と申し訳なく思っているとどうやら杞憂だった。
走る先には、校舎の中からよいしょよいしょと重そうに段ボールを運ぶ女子達がいたようで、とべっちはその二人の所に手伝いに向かったようだった。二人の前に走っていき、荷物をよいしょと担ぎ上げる。
「大丈夫? めちゃ重そう的な感じじゃん。てか、めっちゃ重っ!」
彼女等から荷物を受け取ると、一瞬フラっとしたもののそのまま持ち直して運ぶスタイルに落ち着く。
すると二人の女子生徒達は可愛く手を合わせながら大袈裟に喜んで見せた。
「あ、戸部じゃ~ん! 助かる~♪ マジ荷物重くて困ってたんだよね~!」
「だと思ったわ~! 朝練の片付け? 何処に持ってけばいい感じ?」
「校舎裏の第2倉庫までお願~い♪ はい、コレ鍵ね?」
「あい~。鍵も返しとくわ~」
可愛く小首を傾げながら戸部っちのブレザーのポケットに鍵を入れる女子に軽く返事をして彼は足はやに校舎裏に向かっていった。
戸部っちの背中が見えなくなる頃に女子たちはふぅ~、とため息を付いた。助かった~と胸をなで下ろす。
「いや、戸部来てくれて助かった~♪ なんかさ、いつも色々手を貸してくるんだよね~」
「そうなの? もしかして戸部ってさ、アンタの事好きなんじゃない? ひょっとしてさ!」
「え~、戸部が~? アハハッ、無いわ~! 戸部とか友達にしか見えないってか、絶対それ以上とか考えらんなくない?」
「だよね~! それほんと解る~。面白い奴だけど彼氏としてはちょっとね~!」
……私は彼女達の発する雑音を聞き流しながら、優美子達に着いて歩みを進める。二人の会話がやけに耳に残ってしまった。
とべっちは基本的に誰であろうと気安く、誰でも会話をして、誰にでも優しい。打算も無く、ただそう思ったからそうしているんだ。
私は”自意識過剰”と心の中で薄ら笑う。
二人の女子と、もうひとり、誰かに向かって。
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冬の教室。
暖房の空気と冷たい空気の雰囲気が合わさったこの場所で、今日も授業が進んでいく。午前中の授業が終わり、昼が過ぎ、休み時間があっと終わる。今日も一日の時間が長いようで短いようで進んでいく。
そして放課後になり、皆が部活やら遊びやら家に帰るやら、それぞれ動き出す前に集まり別れを惜しむように無駄話したり今後の集まりの約束をしたりとそれぞれが話しだす。
「それじゃ、今日は皆でラウンドワンって事で。隼人もそれで良いっしょ?」
「ああ。今日はサッカー部は顧問がいないから休みだし、軽いミーティングが終わったら戸部と二人で合流するよ」
「オッケーオッケー」
私と優美子と結衣、そして隼人君ととべっち、大和君に大岡君で急に決まった今日の放課後の過ごし方について話をしていた。なんだか気が付いたら行動が決まっていて私も一緒に参加する事になっている。
私としては今日は本屋に行って新刊を買って読む予定だったのだけど、それは明日に延期かな。友人の付き合いは必要だし、何より私たちがこのメンバーで過ごす時間は意外に少ないんだよね。
だから、多少は予定を変えてでも皆と過ごす時間を選ぶのもいいかな? そう私は決断していた。
「隼人君、今度はボーリング俺と組んでくれよな!」
「ふ、隼人が相手だって、負けるつもりはないからな」
「はは、大和はボーリング、結構うまいしな」
私としては今日は本屋に行って新刊を買って読む予定だったのだけど、それは明日に延期かな。男友人同士の付き合いは必要だし、何より私がこのメンバーの絡みを見ていられる時間は意外に少ないんだよね!
だから、予定を変えてでも彼らが共に過ごす時間を選ぶのもいいかな! 二次元のホモもいいけど、三次元もね!
漫画があれば、男が二人いれば常に楽しいどうも腐女子です。
「私も部活終わったらすぐに合流するからっ! 遅れるけどゴメンね~」
申し訳なさそうに謝る結衣に優美子は目を向ける事なく手でいいよ、と伝える。
「ああ、良いって良いって。急な話だったし無理しなくて。もし来れなくてもライン入れてくれればそれでもいいから」
その返事を受けて結衣はぶんぶん腕を振りながら部活へと足早に向かっていった。少しウキウキとした表情で。
こうして見ると、結衣も大きく変わったな、と思う。
前なら、優美子の話を断るなんて出来ずに、本当に無理な用事でも無い限りは合わせていた事だろう。なのに、今は自分の大切な時間を考え、自分と他人を両立する事が出来るようになっている。優美子もなんだか少し丸くなったように見えるし、隼人君もマラソンの後からどこか吹っ切れたように感じた。
少しづつ、少しづつだけど変わっていく景色。いつか、私も変わる事があるのだろうか。
そんな時、彼が変わらぬ大きな声で皆に喋りかけた。
「てかさ、今度の球技大会の話なんだけど、俺、昨日休んだから内容なんも聞いて無いんだけどどうなったん? チーム分けとかさ」
彼が持ちかけた話題、それは今度行われる学校行事、球技大会の話だった。
「あ、それな。あれさー、やる事とかチームとかもう決まったんだよね。体育の時間に」
「うえ!? なにそれ俺なんも知らないんだけど!」
学校行事の話には五月蝿い彼が目を見開いてリアクションする。
その彼の言葉に隼人くんがギクリ、としたように体を反応させ、申し訳無さそうに頬をかいた。
大岡君と大和君が笑いながら戸部っちに言い訳を始める。
「いや言おう言おうとは思ってたんだけどさ。お前会う度すげえ喋るじゃん? だからタイミング逃してたってか……」
「それな。お前、話題が途切れる前に次の話題始めるし」
全くその通り。戸部っちは話が止まる事は駄目な事とでも思っているのか喋りたい事が山積みなのか、間が空くとどんどん新しい話題をぶっこんでくる。ある意味そのボキャブラリーには驚かされるけど。
昨日の動物ドキュメンタリーで肉食動物に襲われるバイソンが可哀想だったと話した後すぐ、舌の乾かぬうちにびっくりド○キーのハンバーグが美味かった言い始めたり。
少し真面目な話をしていたら急に最近出始めたお笑い芸人のギャグを始めたり。
昨日化粧の特集をやっていてその変身ぶりにひいた、と話したノリで優美子に化粧の上手なやり方とか聞き出したり。
なんていうか戸部っちは、何か口に出す前にひと呼吸置いた方がいいと思うよ割とマジで。特に最後のなんて優美子にグーで殴られてたし。
一回女の魅力について結衣が皆に相談して来た時なんて、散々下手くそに励まそうと安い言葉を並べた最後に、「結衣胸はおっきいし!」と言い放った時はどうした物かと思った。悪気も下心も無いのが逆にタチが悪い。
「まあ隼人君と一緒ならなんでもいいけどさ~。話し合い参加したかったわ~。俺隼人君大岡大和で4人しょ? あと一人誰なん? ヒキタニ君?」
隼人君と一緒ならいいとかちょっとそういうフレーズ気を付けた方がいいよ。デリカシー無いなあ。興奮すんだろ。しかもヒキタニ君をカプに入れる辺り解ってるね戸部っち!
「いやいやなんでそこでヒキタニだよwwwてか、まずお前俺らとチーム違うしwww」
「は?」
大岡君から伝えられた事実に、流石の戸部っちも真顔になって一時停止する。葉山君がバツが悪そうに苦笑いを浮かべるのを確認すると、彼はギギギと首を大岡君に向けた。
「いやいや、チーム五人なんしょ? 隼人君と、大和と大岡でまだ二人位入れんじゃん! 俺ハブとか意味わかんないんだけど!」
「それがさ……」
この世の終わりみたいな顔で手を広げて訴える姿に葉山君からその理由が告げられた。交流を理由に二つクラス合同でチームを組む事が決まっていた事、一クラスにつき最大三人までしか組めない事。それを知った頃にはもう三人で”一緒になろう(意味深)”と言い合ってしまっていたことが告げられた。
「うええええ!? じゃあ俺誰とチームメイトなん? チームメイトの誰もそんな話してくれないんだけど!」
「チームは最後まで余ってた奴等だよ」
「ヒキタニ君かぁ~!」
大和君から余ってたと聞いてまず彼の名前を容赦無く出すあたり流石とべっちだよね。
「いや何が嫌って、隼人君と一緒じゃないとか寂しすぎるっしょ~! 皆一緒なのに俺だけ一人とか、いやマジないわ~! 組み直してよ~!」
「嫌だよ。隼人君は俺らとやるんだ」
「そうだな」
んもう餌を無暗に、無暗に与えないでください! ただでさえ決まって腐女子の好物バスケ物をやる事が決まって余裕ないんだからさ! 黒○のバスケ、名作ですよね! スラ○ンの流川花道も可!
「うわ~、球技大会、もう終わったわ~」
「まあそういうなよ。違うチームでも案外楽しいかも知れないだろ? 俺達で戦うのも面白そうだし」
チームが分かたれた友達同士の戦いっていいよね~。私は断然黄色が好きだけど、なんだかんだ紫受けも好きっていうか? たぎってきましたわ~!
「そんなん言ったって、隼人くんとやりあっても勝てる訳ないし。ボコボコに負ける姿晒されても、はずいだけっしょ~」
「そうでも無いだろ? 勝負は決まってないし、それに頑張って一生懸命やってれば格好良いに決まってる」
本当青春を描くスポーツ物って本当最高の素材! ストーリーを楽しめて、キャラのドラマを楽しめて、そしてキャラ同士の絡み(意味深)で愉しめて、本当頑張ってる男の子って素敵っていうか?
「戸部だって運動神経いいんだし、一生懸命頑張って、それで活躍なんかしたりしてさ。そんな戸部は絶対かっこいいから不安がるなよ。なあ姫菜?」
「うん!!! 何事にも全力で頑張ってプレイするスポーツマンって最高だよね!」
思わず元気良く答えてしまった。鼻血を噴出させてしまい隣で優美子が”うわっ”と引かせてしまう。ティッシュをすぐに差し出されたのを受け取った。
……で、なんの話だっけ?
皆に顔を戻すと、意外そうな顔をした優美子と隼人君がこちらを見やっていて、戸部っちはポカーンと口を開けている。
「姫菜って、スポーツマンが好きだったんだ。意外」
え? いや、まあスポーツ物は100種類ある大好物の一つではありますが、それが何か? 私の腐の趣味が何に関係があるのかは解らないままでいると、戸部っちが急に元気になりだした。
「お、俺、球技大会、頑張るわ!!!」
そういって彼は拳を振り上げて元気に机の上に飛び乗った。行儀が悪いよ? それにどうしてそんな急に……。
そのまま彼は机の上でやたら気合一杯に吠えまくると、勢いよく飛び降り、教室から元気よく出て行った。鞄やら何やらを全て放置したまんま。
「……んで、ラウンドワン、どうすんのって話なんだけど……」
普段は中心の優美子を含め、私たちは彼の勢いに圧倒されたまま教室の出口を黙って見つめていた。
そのあと彼は校庭を何週もランニングしたり、バスケ部にこっそり紛れ込んで練習に参加し教師につまみ出されたりしている姿が散見されたらしい。
そして彼が再びあの扉を叩いていた事を私は知らない。
続く