人外になった者   作:rainバレルーk

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山羊(ドン)「今回も活躍するであろー」

ギャグキャラなのにシリアスだぞ、ドン!

・・・では、どうぞ・・・



Capra contro Mostro:2

 

 

 

ゴオゴオと地面が燃ゆる。血を噴き出す鯨のように飛行船の残骸から炎が吹き荒れる。

火は辺りの草木に燃え移り、小さいながらも火柱を建てていた。

 

 

「残存兵員42名ッ」

 

「あの弾頭、ただの代物ではありませぬ・・・!」

 

その火柱を前にゾロリと並び立っているのは、墜落した飛行船から脱出した吸血鬼兵の面々である。

 

 

「半数以上と銃火器の大半を焼失してしまいました・・・」

 

吸血鬼兵共は同胞を殺された事への悲しみと武器を焼かれた事の悔しさで、顔を歪めている。

 

 

「されど我ら、良き結構!」

 

『『『ククク・・・』』』

 

しかし、段々とその悲悔の表情は狂気の笑みへと変貌していく。

彼らは朗らかに笑う。これからピクニックでも行くような、アトラクションを楽しみにしている子供達の様に朗らかな笑みを浮かべる。

 

 

「ご命令をッ、ゾーリン・ブリッツ中尉!」

 

兵士達の目線は、ヴァレンティーノファミリー本部を見据えるゾーリンに集まる。

 

『強行は避けたまえ。私の本隊の到着を待つように』

 

出撃前、大隊長から通達された命令が彼女の脳内に浮かぶ。

しかし・・・

 

 

「充分だ・・・ヤツらを皆殺しにするには充分だ」

 

ゾーリンには沸々と湧き出る闘志があった。今にも喰らい付いてきそうな獰猛な狂気が、彼女の心を支配した。

それでも、隊を指揮する頭目からの命令もある。それを破ればどうなる事くらいには、わかっている。

 

 

「殺す・・・!」

 

だが、もう心の内を止める事は出来なかった。

出鼻を挫かれた屈辱よりも、同胞を失った悲しみよりも、銃火器を破壊された悔しさよりも、なによりも吸血鬼としての闘争心が勝ってしまった。

 

 

「全員殺すッ!!」

 

『『『ウヲォォォオオ!』』』

 

ゾーリンの持っていた大鎌を掲げたと同時に吸血鬼兵の群れは、ヴァレンティーノ本部に向かって突っ込んで行く。

100mを10秒以下なんて目じゃない速度で進んで来る残像が、定規で引いた黒鉛みたいに道を作っていく。

 

 

 

「流石は吸血鬼・・・紛い物でも恐ろしいモノであろー・・・」

 

前線に出て来たドンは、2階からそんな光景を何処を見ているのかわからない山羊の眼で見据えた。隣には屋上から駆け付けた腹心の麻袋、ロレンツォが立っている。

 

 

「ロレンツォ」

 

「なんでしょう首領(ドン)?」

 

ドンはロレンツォに囁くように語る。その囁きは無線機を通して、他の者にも聞こえくる。

 

 

「思い出したのだが・・・吸血鬼という者は『アレ』であろう?」

 

「『アレ』とは?」

 

「人間離れした反射神経や運動能力。獣のように殺気を感じ、恐ろしい馬鹿力を持つ。人間の殺気を感じ、動きを読む。心を盗んで、鋭く動く。銃撃を剣撃を容易く避け、相手を襲って、血を貪る。まったく、恐ろしい生物であろー」

 

「ええ、そうです。アキトと()()()()()()時の事を思い出しますね」

 

「仕掛けは?」

 

「バッチリです」

 

 

 

カチッ

 

「?」

 

真っすぐ屋敷に突っ込んで来る吸血鬼兵の一人が、何かを踏んだ。

 

 

「あぁ!!?」

 

その音が何なのかを知っていた吸血鬼兵は、ドンッ! という爆発と共に木端微塵になった。

 

ドゴォン!

ドゴン!!

 

他の吸血鬼兵も次々と爆発に巻き込まれて、粉微塵の肉片に変貌してしまう。

 

 

「『地雷原』! 地雷原だ!!」

 

地面に埋まった恐ろしい兵器『地雷』で、吸血鬼兵の進行スピードは0となった。

 

 

「止まりましたね・・・今です」

 

「はい!」カチッ

 

畳み掛ける様にドンの通達が下る。

命令を受けた構成員は、手元のラジコンスイッチのボタンを押していく。

 

バシュッン!

 

押されたスイッチで草むらに隠れていたトラップ兵器が火を噴いた。

 

 

「ぐワぁあッ!!」

 

爆発と共にビー玉サイズの鉄球が弾け飛んで、吸血鬼兵の身体を抉った。

休む間もなく、他のトラップも弾ける。戦争映画の爆撃シーンを彷彿とさせる爆発が、どんどん起こっていく。

 

 

「ッチ!」

 

これには、ゾーリン並びに各吸血鬼兵は制止せざるを得ない状況に立たされる。

 

 

 

Grande(素晴らしい)! 流石はロレンツォであろー」

 

「いえいえ、これもアキトとの知恵や今までの吸血鬼達との戦闘で培ったノウハウのおかげです」

 

拍手しながら褒め称えるドンにロレンツォは麻袋を紅潮させながら照れる。

 

 

「殺気も、心も、動きもない発動装置。そして、転では避けられない面攻撃。ノア特製の硫化銀製ボールベアリングクレイモア地雷の60個同時点火・・・ホント、皆で仕掛けるの大変でした」

 

うんうんと周りにいた構成員達が、ロレンツォと一緒に頷く。

 

 

「ワシらはマフィアであろー。だから、相手の嫌がる攻撃方法は熟知しているのであろー、出来損ないの吸血鬼共よ」

 

「このまま彼らに頭を上げさせないでください! グレネード弾分隊、斉射ッ!」

 

ロレンツォの指揮で、進行が止まった吸血鬼兵の群れにグレネードランチャーの雨が降る。

ヒューヒューと打ち上げ花火特有の音と一緒に爆撃の音が鳴りやむ事はない。

 

 

「ライフル分隊は、分隊火力の全てを集中弾幕射撃です!」

 

グレネードランチャーの隙間、隙間にオートマチックライフルの銃撃音が小刻みに響く。

いつの間にか、屋敷内は硝煙のニオイでいっぱいとなった。

 

 

「失礼します、ロレンツォ隊長!」

 

そうしているとロレンツォの部下の偵察部員が、彼に駆け寄って来た。

 

 

「連中の進撃が止まりました。降下の斜面に伏して、ピクリとも動くません」

 

「ふぅむ、何か企んでいますね・・・ですが、今はそれで良いです。近づけさせなければ、我々の勝利です」

 

「連中、退きますかね?」

 

止むことのない銃撃と爆撃を聞きながら部下が、再度ロレンツォに問いかける。

 

 

「・・・()()ならね。でしょう、首領?」

 

「ああ。そうであろー」

 

ロレンツォの言葉にドンは、忌々しそうに眉間に皺を寄せて発言する。

 

 

「普通の人間なら退く。間違いなく、とっくに。だが、ヤツらは人間ではない・・・・・紛いなりにも()()()()であろー」

 

ドンの言葉にゴクリと部下は、固唾を飲んだ。

 

そんな言葉を裏付けるように降下斜面に逃れたゾーリンが、何かを始めた。

 

 

「■■■■■―――!」

 

文字刺青が、満遍なく彫られた右半身を前に突き出すと右掌に目玉が浮かび上がる。

それを呪文を口ずさみながら、地面に叩きつけた。するとどうだろう。右半身の刺青が、地面に流れ込んでいく。流れ込んでいくと共にボコボコと地面が盛り上がっていった。

 

 

「な・・・なんだ?」

 

突如として起こった異様な現象に引き金を握っていた構成員達の手が徐々に止まる。

盛り上がった土は形状を固めていき、大きな人の形へと変わっていく。

 

 

「なんなんだ・・・なんなんだアレは!!?」

 

泥の巨人は、遂に形を完成させる。

その姿は、おおよそ40mはあろうかというゾーリン本人であった。

 

 

「う、うわぁ・・・!」

 

「お・・・俺達は正気なのか・・・!?」

 

その突拍子もない光景に構成員達の手は完全に止まった。

 

 

「こ、これは・・・!」

 

「い、一体これは・・・なんの冗談であろー!!?」

 

驚愕を隠せないヴァレンティーノ一味にゾーリンは、ギョロリと大きな眼を覗かせると手にした大鎌を振り上げる。

 

 

「い、いかん! 退―――!」

 

ズガシャァアアン!!

 

逃げる間もなく巨大化した大鎌が屋敷に振り降ろされた。

 

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「ギャあぁぁッ!」

 

振り下ろされた衝撃で屋敷は崩壊し、その滑落に構成員の多数が巻き込まれる。

 

 

「こ、こんな・・・馬鹿な事があるかー!!」

 

巨大ゾーリンは、自分の攻撃で大混乱となった様子を確認するとまた大きく大鎌を振るう。

 

ズガアァアアン!!

 

『『『グわあぁあぁぁああ!!』』』

 

「ば、化物だぁ!」

「足が、足がぁあ!」

「腕が! 俺の、俺の腕がぁ!!」

 

攻撃を受けた彼らは次々に致命傷を負った。

さっきまであんなにも優勢だったヴァレンティーノ勢は、一気に追い詰められた。

 

 

 

「糞ッ! なんなんだ一体!!?」

 

補給を終えたガブリエラは、この惨状に驚きつつも気を取り直して、ドン達の方に向かう。

そして、ドンの所に着くとそこには信じられない光景が広がっていた。

 

 

「う、うう・・・!」

 

「首領! しっかりしてください首領ッ!!」

 

なんと頭から多量の血を噴き出しながら、ドンがロレンツォに抱えられていたのだ。

 

 

「ロレンツォ! 一体これは?!」

 

「壁が崩れる際、ドンが私の身代わりに!」

 

ドンは崩壊する壁からロレンツォを庇って、頭を瓦礫で強く打ち付けたのであった。

 

 

「首領、首領! しっかりしてください!!」

 

「おい、誰かノアを呼んで来い!」

 

「ふ、二人とも・・・!」

 

ボロボロと涙を流すロレンツォと慌てるガブリエラにドンが、満身創痍で語り掛ける。

 

 

「首領ッ、大丈夫です! すぐにノアが来ますので、お気を確かに!!」

 

「いや・・・その必要は・・・ないであろー・・・」

 

「なに言ってんだよ、ドン?!」

 

「いいから・・・よく聞くであろー!」

 

「「ッ!」」

 

最早これまでと悟ったドンは、二人にこれからの事を話しはじめた。

 

 

「生き残った者で部隊を再編し、事にあたるであろー・・・ワシは、ここまでだ・・・あとの指揮は・・・ろ、ロレンツォに任せるで・・・あろー・・・」

 

「首領! そんな・・・そんな事を言わないでください!」

 

ロレンツォは息も絶え絶えになるドンを必死に励ますが、段々と握っているドンの握力が弱まっていく。

 

 

「ロレンツォ・・・ここで散っていくワシを許してくれ・・・」

 

「ダメです! 首領!! 行かないでッ!!」

 

「・・・ファミリーを・・・頼んだ・・・・・ぞ・・・」

 

ガクッ

 

等々、ドン・ヴァレンティーノはゆっくりと眼を閉じたのであった。

 

 

首ォオオオオオオオオオオオオオオオ領(ドォオオオオオオオオオオオオオオオン)!!」

 

「糞! 糞ォォオオッ!!!」

 

ロレンツォの悲しみの絶叫が屋敷内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何を勝手に死んどんのや、ドン!!』

 

『『『ッ!!?』』』

 

悲痛な叫びの中、無線機から大音量でノアの声が響き渡る。

 

 

「だ、だって首領が!」

 

『よく見てみぃや、ロレンツォ!!』

 

「へ?」

 

「・・・・・あろ?」

 

よくよく見てみると頭から噴き出す血など微塵もなく、ドンは怪我なんてしていなかったのだ。

 

 

「痛ぇよぉ! いてぇよぉ!」

 

「腕が、腕がぁ!」

 

他にも崩落に巻き込まれた構成員達は致命傷どころか、かすり傷もついていなかった。しかし、本当に痛いように患部を押さえていたのだ。

 

 

「こ、これは・・・一体どういう事であろー?」

 

「それよりも! ドンがご無事で何よりです!!」

 

「ベえッ!? く、苦しいであろー、ロレンツォ!」

 

無事であったドンをロレンツォは力一杯抱きしめる。

ドンは苦しいのか彼の腕をタップするが、その表情はどこか嬉しそうであった。

 

 

「気持ち悪い事、やってるんじゃあない! ノア、これは一体?!!」

 

『幻覚や』

 

「げ、幻覚ぅ?」

 

通信機から伝わるノアの言葉をガブリエラは信じられなかった。目の前にそびえ立つ巨人が虚像の塊である事に驚きを禁じ得なかった。

 

 

『姐さん! 試しにそのデカブツを狙い撃ってぇな!』

 

「わ、わかった!」

 

ガブリエラは彼女の指示通りに銃口を向け、撃った。すると発射された弾丸は、巨大ゾーリンの体をすり抜けていくではないか。

 

 

「こ・・・これは!」

 

『本体はデカブツの後ろにおる。指示通りに射撃よろしゅう!』

 

ノアには見えていた、虚像を創り出すゾーリン本体が。

何故、ノアには幻覚が見えていないのかというとカメラを通して現場を見ている彼女には、ゾーリンの眼組織に訴えかける幻覚は効いてはいなかったのだ。

 

 

『11時の方向、距離500m!』

 

「11時の方向、距離500m」

 

『撃ちまくれッ、姐さん!!』

 

「うおおぉ!」

 

ズドォッン!

 

ガブリエラは撃ちまくった。

弾倉が空になるまで撃ち尽くす。発射先は弾丸口径の威力で、幾つもの小さなクレーターを作っていった。

 

ッビシュゥッ

 

「っうウ!!?」

 

その内、一発の弾丸がノアに指示された場所に術式を展開するゾーリンの右頬を切り裂く。それと同時に虚像の右頬も切り裂かれ、砂の城のように虚像は崩れていった。

 

 

「な・・・なんだ・・・?」

 

「う、う・・・腕が・・・ある・・・!」

 

「なんだ・・・どうなってるんだ?」

 

「なんなんだ、今のは?」

 

虚像の崩壊により、構成員達にかかっていた幻覚作用は解ける。今までの出来事が何だったのか、構成員達は終止唖然となった。

 

 

「しっかりしろ、皆!」

 

「さっきの幻であろー!」

 

「ま、幻?!」

 

「幻術だってのか?!!」

 

あの巨体も攻撃による致命傷もが、幻覚である事に皆が驚愕した。その反応がわかるのか、先程の攻撃で頬に傷を負ったゾーリンがクツクツと笑う。

 

 

「その通り、幻だ。流石はヴァレンティーノファミリーの頭脳であるノアか・・・・・だが、もう遅い!!」

 

ガシャーンッ!

 

『『『ッ!?』』』

 

虚像に気を取られ、銃撃を止めてしまったのを好機到来とばかりに生き残った吸血鬼兵が屋敷の扉や窓を破壊し、侵入してきた。

 

 

「GAaaッ!」

 

「ギャああ!?」

 

吸血鬼兵は飛び込んだと同時に周りの構成員達の喉元へと齧り付いた。他にも吸血鬼特有の馬鹿力で胴体を真横に切り裂き、手刀で首を落す。

 

 

「こっのぉお!」

 

「ガブリエラッ!」

 

ガブリエラはハルコンネンを構えて走る。そのまま引き金を引き、吸血鬼兵の体をぶち抜く。

 

 

「GRyyy!!」

 

「う、うわぁアァァ!!」

 

一体の吸血鬼兵が、構成員に襲い掛かる。

仲間を守ろうと他の構成員がライフルをぶっ放すが、飛んでくる鉛玉をものともせずに吸血鬼兵は大口を開けて、襲い掛かって来た。

 

 

「オラァッ!」

 

「グべぇえ!!?」

 

ガブリエラはそんな吸血鬼兵の大口に銃口をブッ込むと天井に突き上げる。

 

 

「私の部下(げぼく)共に手を出すな!!」カチッ

 

ズドンッ

 

そのまま容赦なく引き金に手をかけて、頭を粉砕した。

 

 

「おお!」

 

「ガブリエラ様に続けぇえ!」

 

『『『オオォォォッ!!』』』

 

ズダダダダダダダダダッ

 

「Gaaああッ!!?」

 

ガブリエラの活躍に気を取り直した構成員達は陣形を再編し、侵入してきた吸血鬼兵に鉛玉を喰らわせる。心臓と頭を破壊するように確実に掃射した。

結果としては、1階を飛び越えて侵入してきた吸血鬼兵の掃討に成功する。

だが・・・

 

 

ドグゥオオオンンッ!

 

「これはいけません、正面が破られました!」

 

外にいた別動隊の吸血鬼兵が携行ナイフを地面に突き刺して、地雷をかいくぐって来たのだ。

 

 

『こちら正面玄関ッ、玄関前に敵兵殺到! 侵入されます!』

 

以前の様な弾幕射撃が出来ない事を良い事に吸血鬼兵達は、残った爆弾やロケット弾で強固に固めた玄関を突破した。

 

 

「・・・残った者を集めるであろー」

 

こんな時でもドンは冷静であった。

幻覚攻撃では大きく動揺させられたが、流石は一家の頭目。すぐに冷静さを取り戻して、各員に無線通達をはじめた。

 

 

「分散した者は地帯戦闘をしながら退却させ、残った者はここに全て集めるであろー」

 

『『『はい!』』』

 

「弾薬と手榴弾をありったけ持つであろー」

 

ゴクリと緊張が各々に走る。ここから先は本当の決戦になるだろう。

 

 

「ガブリエラ」

 

「・・・なんだドン?」

 

「ワシらは立てこもる、ワシらが守備(ディフェンス)でガブリエラは攻撃(オフェンス)であろー。ワシらがここを守る。その間にガブリエラはヤツらをやっつけろ」

 

「ああ、わかった」

 

「ワシらが細切れになる前にやっつけろ」

 

「ああ・・・!」

 

ガシャンと新しい弾倉を装填し、部下たちを率いて行く。

 

 

「あ・・・忘れていたであろー」

 

「ん? なんだよ、ドン?」

 

「各員に伝達であろー!」

 

ドンは再び、通信機を掴んで叫ぶ。難題だとしても、願うように叫んだ。

 

 

「皆・・・死ぬではなかろー・・・ッ!」

 

「・・・ククク・・・」

 

ドンの言葉にガブリエラをはじめとする全員が静かに笑った。

 

 

「別に逃げたいヤツは逃げても構わん。逃げても良いから、死ぬではなかろー」

 

「馬鹿言わないでくださいよ、首領」

 

「俺達はとっくの昔に首領に命、預けているんですから」

 

「お主ら・・・」

 

構成員達は皆、良い笑顔をしていた。

本当は怖い。逃げ出したい気持ちで一杯だ。でも・・・

 

 

「ご命令を首領(ファーザー)・・・」

 

ろくでもない自分達を拾ってくれたこの摩訶不思議な山羊を捨てて逃げ出す方が、それ以上に恐ろしかった。

例え、この命が喰われようと守ってみせる。恩人を、家族を、家を。

 

 

「ならば見せるであろー。魂もない薄汚れた出来損ない共に見せるであろー・・・我らヴァレンティーノファミリーの誇り高き魂を!!」

 

『『『応ッ!!!』』』

 

掛け声とともに彼らは行った。

弾倉を装填し、銃剣を装着させ配置場所へと駆けて行った。

 

 

『『『ハッハッハッハッハッハ♪』』』

 

朗らかで陽気に高笑いしながら。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




BGMは、しっとりとしたバラードで・・・

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