人外になった者   作:rainバレルーk

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題名は洒落た感じにイタリア語です。訳すと『山羊対化物』。
あと、特殊タグを使ってみました。
てな訳で・・・・・今回もどうぞ・・・



Capra contro Mostro:1

 

 

 

ガシャンッ!とガブリエラは、重々しい二つのハルコンネンの銃身を持ち上げる。それと同時に弾丸が装填されているマガジンボックスが屋上に固定された。

 

 

『目標ッ! 敵、弩級飛行戦艦!! 砲打撃戦用意ぃ!!』

 

指令室からのドンの声が無線機から全ヴァレンティーノファミリー構成員に伝わる。指令に呼応するように構成員達も携帯砲弾を構えて、目標を狙った。

 

 

『ッテぇえ―――――ッ!!』

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ!

 

攻撃命令と共にハルコンネンをはじめとした砲弾兵器が一斉に火を噴いた。発射された弾丸達は真っすぐに、項を描く様に射線上の飛行戦艦に向かって飛んで行く。

 

ドォオーン!!!

 

『『『うわぁぁあッ!!?』』』

 

「くぅッ!」

 

対迎撃兵器を乗せていない飛行船チェッペリン・ツーリは為す術もなく、攻撃を全面に受ける。船体は大きく揺れ、船内は大混乱に陥った。

 

 

「やっちまおう・・・ヤツ等をやっちまうであろー!」

 

火蓋が切って落とされた瞬間をモニターで見ながら、ドン・ヴァレンティーノは再度呟いたのであった。

 

 

 

『『『うぉおおおお!!』』』

 

ガブリエラや構成員達は躊躇いもなく撃ち続けた。

ガブリエラに至っては、射撃の反動で後ろへと退っていく。それでも尚、撃ち続ける。ヤツラを仕留める為に。

 

ドオン!

ドォオン!!

 

サーチライトは破壊され、船体内には休む間もなく弾が突っ込んでくる。着々と内部は火に包まれていき、外部に黒煙を噴いていた。

 

 

「第1、第3、第4ブロック被弾!」

 

「第2歩兵準備室で爆発ッ!」

 

「第4、第5エンジン部崩落!!」

 

「・・・っチぃ!」

 

チェッペリン・ツーリの艦長であるゾーリンは眉間に皺を括り付けて、大きく舌打ちをした。

ヴァレンティーノを強襲し、追い詰める筈が逆に自分達が追い込まれている。ゾーリンとしては、完全に出鼻をくじかれた苛立たしい事である。

 

 

「飛行能力、32%低下!」

 

「中尉! 艦を、艦を後退させなければ!」

 

「もう遅い!! あの火砲の前では、こんな艦の軽金装甲など紙風船だ。このデカブツは逃げられん・・・!」

 

ゾーリンの言う通り、今やチェッペリン・ツーリは完全なハリボテの的となってしまっていた。今更後退したところで、撃墜されることは必至である。だから・・・

 

 

「下降だぁ、着陸させろッ! 強行着陸だ!!」

 

これ以上の被害を出さない為にも着陸せざるを得なかった。しかし、ただの単純に着陸させるのでは芸がない。

そこでゾーリンは、残っているエンジンをフルスロットにするよう命令を出す。そのままチェッペリン・ツーリは、下降しながら最大船速で進んで行く。

 

 

「ヴァレンティーノファミリー本部に・・・いや、『ヤツ』にぶつけろ! ヴァレンティーノファミリー幹部、『ガブリエラ』にッ!!」

 

最早、風前の灯火となったチェッペリン・ツーリは、黒煙をあげながらガブリエラに突っ込んでいく。

 

 

「ヤベェ! 野郎、突っ込んで来るぞ!」

 

「ガブリエラ様を守れぇえ―――ッ!!」

 

構成員達はガブリエラを守ろうと砲弾や迫撃弾を打ち込むが、一発の弾丸と成り果てたチェッペリン・ツーリの進行は止められない。

 

「ッチ!」

 

『いかん! 逃げろガブリエラ!!』

 

ドンがガブリエラに逃げるよう叫ぶが、もう遅い。

ガブリエラは止まらない、止められないチェッペリン・ツーリにこのまま押しつぶされるのかと誰もが思った・・・

その時!

 

 

『姐さん!』

 

「わかっている!!」

 

ノアからの無線を合図にマガジンパックからドラム缶の様な弾頭が銃口にセットされる。

 

 

『『広域制圧用爆裂焼夷擲弾弾頭・ヴラディーミル』! ぶちかませ、姐さん!!』

 

「ウおおぉぉぉぉぉ―――――ッ!!」

 

雄叫びを高らかに上げながらガブリエラは、引き金を引いた。

 

 

ドヒュゥウ―――ッ!!!

 

「くうぅう―――! のわッ!?」

 

発射されたヴラディーミルの風圧に耐えられなかったガブリエラは、そのまま後ろに吹き飛ばされる。

 

ガシィッ

 

「大丈夫ですか、ガブリエラ!?」

 

そんな彼女を受け止めたは、麻袋を被った和装の男『ロレンツォ』であった。

 

 

「って重!!?」

 

「バカ! 何してんだ!!」

 

受け止めたのはいいが、身に着けていたハルコンネンのマガジンパックの重さに耐えられずに崩れおちた。ちょっとカッコ悪い。

 

 

「それよりも飛行船は?!」

 

崩れおちたもののロレンツォの目線は、すぐさまヴラディーミルが飛んで行った方向を見据えた。

 

ドォオン!

 

ヴラディーミルはウロウロしながらもチェッペリン・ツーリの頭にぶち当たり、火花を咲かせた。

 

 

『『『うわぁアァァ―――!?』』』

 

「せ、制御不能! 制御不能!!」

 

「お、墜ちまぁ―――す!!」

 

ヴラディーミルの爆発衝撃によってチェッペリン・ツーリは大幅に失速してしまい、後少しのところで空中分解して墜落した。

 

ドグオオォン!!

 

墜落による爆風が屋敷に吹き付ける。なんとも焦げ臭い風が吹き付ける。

 

 

「・・・や、やった」

 

「よっしゃあ、やったぞぉ!」

 

『『『オオオォォ―――ッ!』』』

 

飛行船の撃墜に屋敷内で待機していた構成員達は大きく声を張り上げた。

 

 

「まだだ!!」

 

だが、起き上がったガブリエラが叫んだ。

 

 

『そうだ、まだであろーbambini(子供達)。目を開けろ・・・来るであろー!』

 

ドンの無線に全員が目を見張る。

そこには・・・・・

 

 

「あ、あれは・・・!」

 

「ホント、弟分の言う通りだ。ゴキブリみたいなしぶとさの連中だ!」

 

チェッペリン・ツーリが墜落した地点からは、黒い戦闘服に身を包んだ兵士共がムクリと起き上がって来たのだ。

 

 

「落ちる寸前に脱出したんだ!」

 

「そんなバカな!? あの高さから何も着けずにか?!」

 

双眼鏡で墜落地点の現状を覗きながら構成員達は目をむく。普通なら肉塊と成り果てている筈なのにヤツ等はピンピンしていたのだ。

 

 

『そうだ。アヤツ等は人間じゃあない。化物であろー』

 

「化物・・・!」

 

目の前で起きている事に構成員達の顔は青ざめていく。

 

 

「クク・・・ハハハ」

 

だが静寂と動揺が周囲を包む中、一人の構成員がケラケラと笑いだした。それにつられて他の少数の構成員も笑い出す。

「どうしたんだ?」と気でも違ったと心配した構成員が、笑う彼らに問いかけると彼らは答える。

 

 

「どうした皆、なにをビビッていやがるんだ」

 

「化物? それがどうした。あんなのが化物なら、ウチの『若頭』と『お嬢』は一体なんなんだよ?」

 

彼らの応答に次々と彼らの表情が晴れていった。

 

 

「フッ・・・違いねぇな」

 

「ああ、間違いねぇ」

 

「あんな紛い物より、俺達の『若頭』と『お嬢』の方が何十・・・いや、何千倍も化物だ!」

 

『『『ああ、違いねぇ違いねぇ!』』』

 

彼らは知っていた。

前から向かって来る化物達よりも恐ろしく強い『バケモノ』を知っていた。

 

 

「そうと分かれば・・・・・やろうぜ皆、やっちまおう!」

 

「こっからが正念場だ! 全員配置つけぇ!」

 

『応ッ!!』

 

現場には先程までの動揺はなく、それどころか士気が先程よりも上がりはじめていた。

そんな声を聞きながら、ドンは次の一手の指示を出した。

 

 

『ガブリエラは退って補給。ロレンツォはワシと共に前線に向かうであろー』

 

「「Acque territoriali(了解)ッ!」」

 

ガブリエラは重いマガジンパックを銃身から外すとロレンツォ共々、屋上から屋敷内へと進んで行く。

一方、二人に無線で伝えた後のドンは無線機を仕舞って椅子から立ち上がった。

 

 

「ノア」

 

「なんやドン?」

 

「これから先はカチコミをしてくるヤツ等との決戦であろー」

 

「まさか・・・子供は引っ込んどけとも言う気かいな?」

 

「いや、負傷者の手当てを頼むであろー」

 

「フッ・・・任せといてな!」

 

ノアの返答に満足すると部屋を後にする。

部屋の外には物々しい装備に身を包んだヴァレンティーノの兵隊共が待ち構えていた。

 

 

「見せてやるであろう。我らヴァレンティーノファミリーの戦を・・・・・さぁ、前戯は終わりであろー。行くぞ者共、仕事の時間であろー! Rock 'n' roll!!」

 

『『『consenso(承知)!!!』』』

 

遂に戦場は、遠距離戦からの近距離戦闘へと移行した。

 

ヴァレンティーノファミリーの彼らが士気を結託し、迎撃態勢を整える中・・・・・飛行船の墜落地点では、赤い眼を輝かせる兵士達を率いる大鎌を持った吸血鬼兵が、静かに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





イタリア語って不思議である。

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