人外になった者   作:rainバレルーk

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原作というか、OVAのヘルシングでも音楽が多く使われている。

アキト「ロックが多い」



ナイトメアパーティ:下

 

闇夜に闇夜に明かりが灯る。

 

「わぁぁぁあああッ!?」

 

赤い紅い朱い炎が灯る。

 

「ぎゃあぁぁああ!!」

 

炎から逃げ惑う人々。爆発から逃げる人々。

その人々を後ろから追って行くのは黒い軍服に銃火器を装備した吸血鬼の兵団である。

 

シュッパァァッ―――ンと軽快な音と共にナイフが鞘から引き抜かれると「ぐあぁぁあぁッッ!!?」と断末魔の叫びを上げて首が宙を舞う。

 

 

「あ、あ・・・わぁぁあ!!」

「キャアァあああああ!」

 

恐怖の叫びを上げ逃げ惑う人々。

容赦なく降り注ぐミサイルの雨霰。

吸血鬼の兵団から放たれる鉛玉に安全ピンを抜かれた手榴弾。

 

懸命に逃げる人々は無残にも為すすべもなく貫かれ、焼かれ、斬られ、肉の塊へと変わっていく。

吸血鬼の兵団はそれでもなお進軍して行く。

彼らから逃げる者はすべて獲物であった。彼らの後ろには死屍累々の山が積もっていく。

 

 

「ぎゃあ―――ぁぁ!!」

 

爆音を轟かせ、ナイフで体を串刺し、斧で頭を割る。

 

 

「た、助け―――うぎいぁああっ!」

 

腹が空けば自慢の牙で喉元にかぶりつく。喉が渇けば屍の腹を裂き、流れる血を豪快に飲む。男だろうが女だろうが、若いだろうが年増だろうが関係なく肉を引きちぎり骨を砕いて腹の底へと沈める。

 

 

『『『グハハハ・・・ギャハハハッ!!!』』』

 

吸血鬼兵達は唸り声にも似た笑い声を上げると空になった弾倉に弾を込め、また進撃して行く。

 

 

 

「・・・・・・う・・・ヴヴヴァぁア・・・」

「・・・ヴァぁア・・・」

『ヴぁ・・・VAAAAA!!!』

 

兵士に殺されて肉を齧られ、喰われ、捨てられた人々が一人でに立ち上がっていく。そして、のそりのそりと生気のない動く死体『屍喰鬼(グール)』と化した彼らは生きた人間を、食料を求めてさまよいだす。

 

吸血鬼兵のある者は殺した人間の首を銃剣に突き刺して喜び、またある者は生きたまま人間の皮を剥ぎ取り、それを自分の顔に被って遊ぶ。

まさに阿鼻叫喚。一時間と経たぬ内に都市は化物達の巣窟と化してしまった。

 

 

 

 

 

「糞ッ糞ッ!!」

 

「畜生! 畜生!!」

 

ダン! ダン! と警察官達は逃げる民間人達を守るべく道にバリケードを作り、襲い来る屍喰鬼に向けて発砲する。しかし、屍喰鬼は頭か心臓を破壊されないかぎり死なず、腕や足を貫いても襲いかかってくる。

 

 

ダン! ダン! ガチッ、ガチッ!

 

「ッ! 糞! 弾だ、弾をよこせ!」

 

「もうこれで最後です!」

 

「なにィ!?」

 

携帯している弾薬は一人10発未満まで減ってしまった。その時、どこからともなく警官達を嘲笑うかのような声が聞こえてきた。

 

 

「弾はもうそれで最後か。そいつは最悪だ、この世の終わりだ。でも、これはまだ始まりに過ぎない・・・!」

 

「ヒィッ!!?」

 

声のする方向を見て、警官達は息を飲み驚愕した。黒い戦闘服に身を包んだ吸血鬼の兵士がバリケード近くにあるビルの壁を平坦な道を歩くように垂直方向に歩いて来たのだ。そうして兵士は驚く警官達の背後に回った。

 

 

「う、撃て! 撃て撃て!!」

 

「「「うおおぉぉぉっ!!!」」」

 

警官達は兵士に向けて一斉に射撃を開始した。銃口から発射された弾丸は兵士の腕や足、胴体に着弾する。だが、兵士は苦しんで悲鳴を上げるのではなく、ニタニタと嫌な笑みを浮かべた。そして、持っていた自動小銃を警官達に向け、引き金を引いた。

ダダダ、ダダダと銃口は火を噴き、発射された弾丸は体を貫くと警官達は「グギャぁあああっ!」という断末魔と共に倒れ伏していく。

 

 

「あ・・・あぁ・・・・み、皆・・・!」

 

運が良いのか悪いのか、致命傷を受けずに肩を負傷した刑事が起き上がり、周りに声をかける。返ってきた返答は言葉ではなく呻き声であった。

 

 

「ほう・・・まだ息があるのか」

 

吸血鬼兵は息がまだある事に気づくと近づいて、瀕死の体を踏んだ。

 

 

「や、やめろ・・・!」

 

「お前はそこで見てな。あとでお前もコイツらのようにしてやるよ!」

 

制止も聞かず、吸血鬼兵は銃を頭に突き付け、引き金を引こうとした・・・・・・その時!

 

ドギュウゥゥンッ!!!

 

「ガはぁああッ!?」

 

「!?」

 

一発の銃声が響き、吸血鬼兵の頭を貫いた。吸血鬼兵はすぐさま反撃体勢に移ろうとするが体がいう事を聞かない。

 

 

「な、なんで・・・!?」

 

疑問の声を上げたのは刑事だった。彼は銃声のした方向を見るとそこには黒いスーツに身を包んだ一人の『鉄人刑事』が拳銃を構えて立っていた。

 

 

「あの吸血鬼特性の『徹甲琉銀弾頭』だ。反応から見るに貴様らには調度いいモノのようだな・・・」

 

「ガ、グがぁぁああッ!」

 

鉄人刑事の声と共に吸血鬼兵を形成していた細胞が崩壊を起こし、塵にへと変わり消滅した。鉄人刑事は消滅を確認すると刑事のもとへと駆け寄る。

 

 

「大丈夫か」

 

「は、はい!・・・でも皆が・・・!」

 

「大丈夫だ。手当をすれば助かる」

 

「本当ですか?!」

 

「あぁ」

 

「よ・・・良かっ・・・た・・・」

 

鉄人の言葉に刑事は安心すると意識を沈め、気絶した。鉄人は彼と負傷した警官達を背負っていると鉄人の名前を呼ぶ声が後方から聞こえて来た。

 

 

「『荻野』警部! 大丈夫ですか―――って、その人達は!?」

 

「避難民を守り、ヤツらを足止めしてくれていた。至急、手当を頼む」

 

「わかりました!」

 

荻野は負傷者を後から来た部下たちに任せると応援の機動隊と共にバリケードを強化した。

 

 

「ここから先にヤツらを通してはならん! 発砲は任意に、されど確実に仕留めろ! 発砲には支給された『徹甲琉銀弾』を使え!」

 

「弱点は頭と心臓です。必ず近接戦闘はさけてください!」

 

「では、各自位置につけ! 死ぬなよ皆!」

 

『『『はいッ!』』』

 

こうして現場の者たちの長い奮闘の夜がはじまった。

 

 

「『剣持』、アレを持って来たか?」

 

「はい! 荻野警部専用の銀製の警棒です!」

 

「良し! 行くぞ剣持ィ!!」

 

「はい!」

 

『荻野警部無双伝説』もついでにはじまった。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




吸血鬼も恐れる警察官! その名はクニハル・ミソジ・オギノ!

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