2000文字を目安に書いていきたいな~
アキト「以上?以下?」
もちろん以上だ!
「・・・・・なんだ?」
ここは防衛省、緊急特別会議室。
「なにが起こっているんだッ!?」
円卓の会議室に次々と舞い込んでくる書類の山、山、山。
時は数時間前に遡る。
その日、何時もより早く陽が落ち、土砂降りのゲリラ豪雨が関東平野を覆ったその日。
突然、関東全域の領空内観測機器全てがダウンした。
「各自衛隊基地並びに米軍基地にて、正体不明の敵と交戦中とのこと!!」
「ありえない!」
円卓の誰かが言った、だが事実だ。領空を監視するすべてのレーダーが安物のパソコンみたくフリーズしたのだから。それに首相官邸に連絡がつかないというオマケ付きで・・・・・
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外はゲリラ豪雨が止み、空には月が明々と海沿いの街を照らしている。
雨が止んだことで、人々はまた夏の夜へと足を向けた。
仕事終わりの一杯を求めて歩む中年、デートの待ち合わせ場所へと急ぐ青年、道を我が物顔でたむろする若者達。
大勢の老若男女が様々な思いを巡らし、雨上がりの街へと繰り出して行く。
そんな中で・・・・・ふと、浜辺で飲んでいる誰かが空を見上げて言った。
「おい・・・」
「なんだよどうした?」
「ありゃ・・・なんだ?」
その目線の先には大きな白い鯨のような飛行船が迫って来ていた・・・・・
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『『『最大船速ッ! とばせ!!』』』
飛行船内のガラス窓に張り付いた吸血鬼兵達が叫ぶ。
『『『もっとだ!! もっともっとッ!!!』』』
おもちゃをねだる子供のように喚き散らすように叫ぶ。
『『『エンジンが焼き付くまで回せ! もっともっと!!』』』
その叫びに呼応するように飛行船は半島を越え、街の中心部へとスピードを上げる。
『『『突っ走れ! 突っ走れッ! 微かに見える都市の灯へと向かって突っ走れ!!』』』
前へ前へと進み、明かりが煌々と光る都市が見えてくる。
『『『待ちに待ちわびた、あの幻想の場所へと向かって突っ走れぇッ!!』』』
ゴウンゴウンと飛行船はエンジン音を発てて街を進んで行く飛行船に街の人間達は興味津々でカメラを向け、スマホを向けて動画を取り、写真を撮る。
「―――来ましたね・・・・・」
そんな喧噪の中で夏だというのに季節違いな白いコートを着たアジア系イギリス人がニヤリと口を歪ませ、頭上を通り過ぎる飛行船を見ていた。
誰も彼もの目が空を悠然と泳ぐその飛行船に釘付けとなった。
ネット上では早くも飛行船の話題がSNSで拡散され、『映画の撮影か?!』『ISのイベントか何か』などと呟きが入り、過熱していく。
その時、どこかの誰かの呟きが全SNS利用者をポカーンとさせた。
『『
この呟きはすぐに他の呟きに埋もれていくが、なんとも的を射た呟きであった。
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飛行船内。大きなモニターが置かれた指令室では白い軍服を着た大隊長が整列した黒い軍服の兵士達の前に言葉を発した。
「大隊総員、注目!」
兵士達は足並みを揃えて大隊長の方を向く。大隊長の両隣には熱帯雨林用のコートを着た大尉と珍妙なメガネに白衣姿のドクトルをはじめた幹部クラスがたたずんでいる。
「諸君、夜が来た。無敵の敗残兵諸君、最古参の新兵諸君、満願成就の夜が来た」
大隊長は両手を広げ、薄ら笑いを浮かべながら言う。
「戦争の夜へようこそ・・・!」
『『『ワアァァァァァッッ!!!』』』
兵士達は装備している銃器と共に歓声を高らかに上げる。
誰もが笑っている。無表情な大尉でさえも顔には出さないが眼は輝いていた。
「それでは皆さま。お手元の栞をご覧ください」
ドクトルの声と共に歓声は止み、兵士達は『しおり』と書かれた本を開く。
「大隊上陸戦『アシカ作戦』。三ページ目『都市大爆発! ぶっちぎり
パラパラとページをめくり、兵士達は作戦内容を確認する。
「ゾーリン・・・『ゾーリン・ブリッツ』中尉」
そんな中、大隊長がニヤツいた顔で幹部兵士の名前を呼ぶ。
「御前に」
大隊長の前に現れたのは右半身にルーン文字の入れ墨を入れ、大鎌を担いだ女性士官『ゾーリン・ブリッツ』である。大隊長は後ろのモニターに地図を出す。そこには・・・
「我々の目標は『ヴァレンティーノ』。そして、『アーカード』の打倒だ」
都市郊外にあるヴァレンティーノファミリーアジトの住所が映っていた。
「ブリッツ中隊を先遣隊とする。チェッペリンツーリで急行せよ」
「了解」
「・・・だが」
「?」
「強行は避けたまえ。私の本隊の到着を待つように」
「お手を煩わせる事はありません。アーカードなしのヴァレンティーノなど赤子同然」
「・・・・・クックック」
古びた眼鏡のレンズを光らせながら言った大隊長の言葉にゾーリンは口角を上げ答えるが、大隊長はクツクツと笑って首を横に振る。その動作にゾーリン並びに前に整列した兵士達もが呆けたように疑問符を浮かべる。
「あのヤギを甘く見るな・・・『ドン・ヴァレンティーノ』とその一味を甘く見るな・・・!」
大隊長は二ヤツいたまま喋り、母親が子供に言いつけるように喋る。
「『ドン・ヴァレンティーノ』・・・彼は欧州随一のマフィアだぞ。欧州諸国から疎まれ恐れられたならず者達をまとめ上げたファミリーの当主だ。あのアーカードが認めた、あのアーカードの『主』だ。恐ろしく滑稽で、ふざけていて・・・・・だがそれ故に私は彼を・・・『彼ら』をアーカードと同様の『宿敵』と結論している。だからゾーリン・・・もう一度言う、強行するな。私の到着を待て」
「・・・了解しました。大隊指揮官殿」
それにゾーリンは眉間を寄せて答える。
「よろしい・・・! ならば関を切れ! 戦争の濁流の関を切れ! 目標は都市全域。目に入る者、物すべて燃やせ」
大隊長は椅子に体重をかけ、手を組みながら命令する。
「大隊長・・・IS博物館は?」
「爆破しろ。当然だ、元々そうするつもりだったからな。かけらも残すな」
「女権至上団体の各所はどうしますか大隊長?」
「燃やせ。不愉快だ、消し炭も残すな」
「女尊男卑主義者のリストがここに」
「殺せ。断末魔を上げさせろ」
その命令に付け加えるように次々と兵士達が意見する。
「目についたモノは金橋から壊せ。目についたモノは金橋から喰らえ。存分に食い、存分に飲め。今日、この都市の者達は諸君らの晩飯と成り果てるのだ」
まるで子供のようにはしゃぐ大隊長に一人の兵士が近づいて行く。その手にはカクテルグラスを持っている。
「さて・・・諸君、殺したり、殺されたりしよう。死んだり、死なせたりしよう。」
そう言いながら大隊長はカクテルグラスを受け取る。前の兵士達にもシャンペンの入ったグラスが回っていく。
「さあ、乾杯をしよう。宴はついに・・・今宵、この時より開かれるのだ」
セリフと共に飛行船のハッチが次々と開かれていく。ハッチの中にはミサイルや爆弾頭がズラリと並べられおり、点火装置に青白い光が灯っていく。
大隊長は嫌に笑う顔までグラスを持っていき、高々と叫ぶ。
「乾杯っ!」
つられて兵士達も叫ぶ。
『『『乾杯!!!』』』
そして、一気にシャンペンを飲み干すと床にグラスを叩きつける。
ガシャ———ン!
その砕け散る音と同時に飛行船から幾千発ものミサイルが放たれた。
ついに狂気の宴が火蓋を切ったのだ。
←続く
ついにここまで来た。ヘルシングのオリジナルは何時見ても魅了される。