後先考えずにまたクロス!
俺は一体なにを考えているんだろう・・・
8月初旬某日
その日、デイリー新聞社の二流新聞記者『ウィル・ウィトウィッキー』は場違いな高級ホテルに宿をとっていた
この人物、新人の頃は数々の賞を総なめにする程に期待されていた人物だった。しかし、『八年前』彼は人生を変える人物に出会った
『吸血鬼アーカード』
彼はその吸血鬼に魅了された人間の一人である
そして、彼は吸血鬼を追って世界中を回った。ついでに変人奇人の烙印も押された
そんな彼は今日も吸血鬼の情報に流され、こんなニューヨークの一等地の高級ホテルに宿をとり、聞き込みをする・・・はずだった
「うわぁァア―――!」ダッダッダッ
「「「Aaaaaaaaaaaaaa!」」」ドドド
今現在、彼はおどろおどろしい『屍喰鬼(グール)』達から逃げていた。何故こんな事になったのか?それは簡単な事である
「情報源のヤツの取材に最上階のスイートルームを訪ねたら部屋じゃあ人が『喰われてる』ってどうゆうこった?!」
『運が悪かった』のだ
「VAaaaaaaa!」
「ぎゃあぁあ!こっちに来んなアァ!」
ウィルは屍喰鬼から逃げながら、首にかけていた一眼レフで状況を撮っている
「あ、あれはエレベーター!」
ウィルは目の前のエレベーターを見つけると必死にボタンを連打する。だが、遅いながらも屍喰鬼は迫る
「早く早く早く早く早くゥ!このままじゃあ喰われちまうよ!早くしてくれぇええ!」カチカチカチカチ
チン!
彼の願いが通じたのか、エレベーターは最上階につき、開いた。ウィルは安堵するようにエレベーターに乗り込もうとしたが
「「「Vaaaaaaaaaaaaaa !」」」
「ぎゃあぁあッ!?」
扉の開いたエレベーターには屍喰鬼が溢れていた。屍喰鬼達はウィルを喰う為に捕まえようとするが寸での所でウィルは身を引き、非常階段へと走る。だが
「「「Aaaaaaaaaaaaaa!!」」」
非常階段の方向からも屍喰鬼達の群れが迫ってくる
「う、ウソ・・・だろ?」
ウィルはその場に膝をつき、項垂れた。しかし
「こうなったら・・・」
彼は諦めずに一眼レフを構え、自分に迫り来る屍喰鬼を撮りまくった
「吸血鬼には会えなかったが・・・屍喰鬼に会えて良かったぜ!記者冥利に尽きたぜぇえ!」
カメラのフィルムが切れると壁に背もたれ、少し笑った
「(このまま俺はコイツらに喰われて、屍喰鬼の仲間入りか・・・フッ、これが裏を追ったヤツの末路か・・・)」
「VAAAAAAAAAAAAAA!」
屍喰鬼の一体がウィルの体を掴もうとした・・・その瞬間!
グイッ
「へ?うわぁぁあッ!?」
背もたれていた壁の近くの扉が開き、引きずり込まれた。ウィルは何がなんだかわからず暴れた
「うわぁぁあ!やっぱり喰われたくねぇよぉ!助けてくれぇえ!」
「大丈夫ですよ。しっかりしてください」
「・・・え?」
屍喰鬼とは違う生者の声にウィルは恐る恐る目を開けるとそこには顔を包帯でまいた執事服の男がいた
「ぎゃあぁあ!屍喰鬼の次はミイラ男かよ!?助けてぇえ!」
「誰がミイラ男ですか。よく見てください」
「?・・・え、人間?」
「そうですよ。大丈夫ですか?」
執事服の男が人間とわかり、ウィルは今度こそ安堵した。男の後ろには育ちの良い赤毛の少年がウィルを心配そうに見ている
「助けてくれて恩にきる。あ、アンタ達は?」
「申し遅れました。私は『ギルベルト・F・アルトシュタイン』。こちらは私が支える坊っちゃまの『クラウス・V ・ラインヘルツ』でございます」
「あ、えと俺はデイリー新聞社勤務の『ウィル・ウィトウィッキー』です。・・・って『ラインヘルツ』!?」
「ッ!?」ビクッ
ウィルは少年の名前を聞いて驚き、まじまじと見た
「おや、ご存知で?」
「ご存知もなにも『ラインヘルツ家』と言やぁ、『牙狩り』の名門貴族じゃあないか!」
「・・・貴方は同業者か何かで?それにしても格好が・・・」
ギルベルトは怪訝な目でウィルを見る
「いや同業者じゃあないよ。さっきも言ったように俺はしがない新聞記者だよ」
「しかし、なぜ『牙狩り』をご存知で?」
「いや、それは―――ガンッ!―――な、なんだ!?」
ウィルが口ごもったその刹那、部屋の扉が大きく揺れた
「どうやら・・・それどころではないようですな」
「確かに」
『『『Vaaaaaaaaaaaaaa !』』』ガンッガンッ
外では屍喰鬼が扉を壊そうと暴れていた。ミシミシと扉が音をたてる
「ウィトウィッキー様、バリケードを作るために手伝ってくださいませんか?」
「ウィルで構いませんよギルベルトさん!俺も食べられたくはないんでね!クラウスくんも手伝ってくれる?」
「う、うん!」
そこからの3人の行動は速かった!ベットやら備え付けのタンスやらを扉の前に並べて揃えて開かないようにした。だが
「ふ、ふ~・・・こ、これなら大丈―――」
『Vaaa!』バギィ
「のわぁッ!?」
屍喰鬼達は扉を殴り、ぶち抜いた
「こ、この野郎!屍喰鬼ってのはここまで力が強いもんなのかよ?!」
「まあ一応、『吸血鬼』の出来損ないの『眷属』ですからね!」バギィ
『VooAaッ!?』
ギルベルトは落ち着いた口調で扉をぶち抜いた屍喰鬼の腕をへし折った。折れた腕は根本から引きちぎれ床に転がり、ピクピクと動く
「き、気持ち悪ぃ~!」
「だ、大丈夫・・・?」
「あ、ありがとうクラウスくん・・・オェ・・・」
吐き気を抑えるウィルの背中をクラウス少年が優しくさする
「そ、それにしても・・・よく平気だねクラウスくんは・・・」
「う、うん・・・だって『いつもの事』だから」
「ッ!?い、『いつもの事』ォオ?!!」
ウィルはクラウス少年の言葉に人間技ではない顔をして驚き、ギルベルトの方を見た。ギルベルトはさも当然のように
「えぇ。ま、今回は結構『特殊』なケースですけどね」
「え、えぇ~・・・」
ニッコリと肯定した
「そ、それで・・・ギルベルトさん?」
「はい。なんでしょうウィル様?」
「この後・・・どうするんですか?」
「ふむ、そうですね・・・おや?」
質問されたギルベルトはふと部屋の窓から下を見た。最上階から遥か下ではパトカーのサイレンやらの点滅が見える。生き残ったホテルの誰かが呼んだのだろう
しかし・・・
「もう『遅い』ですね・・・」
「なんだって・・・?!」
ポツリとギルベルトは残念そうに呟いた。それを聞き取ったウィルは尚も聞き直す
「『遅い』って・・・どういう事・・・ですか?」
「言葉の通りですよ。ですよね坊っちゃま?」
「うん。『屍喰鬼を一匹見れば、千匹いると思え』。だよねギルベルト?」
「さすがは坊っちゃま。復習がちゃんと出来ていますね」
「エヘヘ///」
ギルベルトはクラウス少年の頭を撫でる。実に微笑ましい
「『微笑ましい』じゃあねぇよッ!」
ウィルは二人にツッコミを入れた
「扉の外には屍喰鬼の群れ、窓の外は地上50階の高さ!まさに逃げ場がない!どうするんですか!いつまでもこのバリケードがもつ訳もないですし!」
ウィルは叫び、目からドバドバと涙を流し項垂れる
「アァ!もうダメだ!俺はアイツらに食われて屍喰鬼になっちまうんだぁああああ!こんな事ならここのホテルの高級ワイン飲んでおくんだったぁああああ!」
「もう、大の大人がみっともない。しっかりしてくださいウィル様」
「だ、大丈夫?」
ギルベルトとクラウス少年はそんな彼の肩を叩く。そんな時、クラウス少年が
「そ、そうだ!気分転換にテレビを見よう!ギルベルト、リモコンは?」
「はい坊っちゃま。ここに」
クラウス少年はギルベルトからテレビのリモコンをとるとバリケードに使ったテレビをつけた
ピチュン
『こんばんは、夕方のニュースをお伝えします』
テレビからは夕方のニュースを放送していた。ニュースからはありふれた日常が放送される
「あぁ・・・」
ウィルはそんなテレビを項垂れながらクラウス少年とともに見ていた。しかし、次のニュースをキャスターがテレビスタッフから紙を受けとるとそのキャスターは顔を驚愕にそめた
『つ、次のニュースです!』
「・・・なんだ?」
そのニュースは―――
『ニューヨークのグランドホテル『ニューリタナー』にテロリストが立て込もっているとの事です!』
―――戦を告げるモノだった
←続く
ショタウスさんの口調がわからん・・・