人外になった者   作:rainバレルーk

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この作品はの吸血鬼は3つのタイプに分かれます

1、身体能力を主体としたタイプ

2、異能力を主体としたタイプ

3、1と2をバランス良く使えるタイプ

アキト「俺は3かな?」

―――――――――――――――――――――――――

増やしました


作戦前の基地にて

 

ある日、ドイツ陸軍『シュバルツ・ハーゼ』部隊隊長『ラウラ・ボーデヴィッヒ』は日本から帰って来た3日後に緊急召集され、その日の内にアメリカに発った

 

それから数日、米軍との連携や作戦の準備などの目まぐるしい事態に軍人であると言えどもラウラは溜め息を吐く日が続き、副官の『クラリッサ・ハルフォーフ』やバックアップの隊員達が心配していた

 

だが、今日は違う

 

 

「~♪」

 

米軍と独軍のIS部隊が駐在するニューヨーク軍事基地の食堂にて、ラウラにしては珍しく鼻唄混じりの上機嫌である資料を読んでいる

 

資料には今作戦に参加するISの名簿が書かれていたのだ。その名簿の中に・・・

 

 

――IS学園所属『朧』――

 

・・・と書かれていた

 

 

「まるで運命だな・・・フフッ///」

 

ラウラは薄紅色の頬でウットリと資料を見つめていると

 

バッ

 

「っ!?」

 

この資料を後ろから取られたのだ。ラウラは驚いて振り向くとそこには群青色の髪を肩まで伸ばしたパイロットスーツ着た若い女性がいた

 

 

「なにをするんだ?!『ベルサ・ガーベラ』!」

 

「アンタが珍しくニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべてたんでね。なんだいコレは?」

 

ラウラは激昂し、資料を奪い返そうとするがラウラよりも身長の高いベルサは届かないように腕をあげる

 

 

「何を見てたと思ったら名簿をみて・・・頭でも狂った?」

 

「そんな訳がないだろう!いいから返せ!」ピョン

 

ラウラはジャンプをして尚も取り返そうとする

 

 

「そう言えば聞いた?」

 

「な、に、を、だ!」ピョンピョン

 

「なんでも今日、学園から『男』の操縦士が来るみたいよ」

 

「そ、そうなのか!?」

 

ラウラは驚きつつもどこか嬉しそうに聞いていたが

 

 

「ッチ。下郎な男風情がISを使うんじゃないわよ」

 

「・・・何?」

 

ベルサの発言にラウラはカチンと反応する

 

 

「ISは私達が正しく使えるのよ。それを男なんぞに使わせるとは」

 

「・・・だがそれは」

 

「そう言えばボーデヴィッヒ?アンタ、学園の男と懇意にしてるらしいじゃない」

 

「あ、あぁそうだ!」

 

ラウラはベルサにアキトの事を話そうとしたが

 

 

「やめて置きなさい」

 

「え?」

 

「その男はその内『実験道具』にされるんだから。変な情を持つんじゃないわよ。それに」

 

「それに?」

 

「どうせロクな男じゃないわ。男ってのはね千差万別低俗な輩なんだから」

 

「!・・・き、貴様・・・ッ!」

 

ラウラは青筋をたてる

 

 

「何?まさかアンタ、その男にホのじなの?所詮は『アドヴァンス』の欠陥品ね。低俗な男がお似合いね」

 

ベルサはフンと鼻息をたててラウラを中傷する

 

 

「・・・私の事は何を言ってもいい・・・」

 

「ん?」

 

「だが、アキトの事を悪く言うのは・・・ッ!」グッ

 

ギロリとラウラはベルサの顔を睨む。そして、名一杯握りこんだ拳をその顔に叩きつけようとする

 

しかし

 

ピンッ

 

「ッ!?」

 

その腕はピクリとも動かない

何故だ!とラウラは戸惑っていると

 

 

「ヤレヤレ・・・来てはいいものの、あまり品性に欠ける輩がいるな」

 

「なんですって?」

 

「!。この声は!」

 

ラウラは驚愕し、振り返るとそこには黒のアンダーアーマーに黒のミリタリーパンツの全身黒づくめの男が鋼糸ワイヤーをラウラの腕に絡ませていたのだ

 

 

「『アキト』!」

 

「数週間ぶりだなラウラ?元気だったかい?」

 

その眼は微かに紅く光っていた

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

inside

 

 

バーガー屋のダイナーズダイナーの一件から翌日。俺達は少佐の案内で作戦の拠点となるニューヨーク近郊の基地に連れてかれた

 

基地には最新鋭の設備が充実していて、兵士達にも快適な空間となっている

そんな基地に着いた俺達はそこの司令室に通された

 

司令室はエアコン完備のこれまた快適な部屋で、壁にはこの部屋の持ち主の私物が掛けられているんだが・・・

 

 

「なんで武器・・・?」

 

壁には一昔前のライフルやナイフ、さらには暗器なんかもかけられてる

 

 

「ここの司令官の趣味じゃないの?」

 

俺の疑問にシェルスが答えてくれた

俺達はそんな部屋でここの司令官を待っている。実に暇だ。しかも立てって

てか、なんで俺がここに連れて来られなきゃならんのだ?早く部屋で『朧』の調整をしてぇのに・・・

 

そんな風にイライライラとしている中・・・

 

 

ガチャリ

 

「おん?」

 

俺達の立っている前の扉からある人物が入って来た

その人物は白を基調とした軍服の胸元を大きく開け、に蒼銀の髪を足まで伸ばした見た目峰麗しい女性であった

 

 

「げっ・・・ッ!?」

 

何故か隣にいるシェルスが顔を歪める

 

 

「・・・フン、」

 

その人物は俺達の顔を人通り見るとドカリと司令室の椅子に座り、足を組む。って

 

 

「シュトロハイム・・・まさか・・・」

 

俺は恐る恐る一つ隣に立つシュトロハイムに聞くと相変わらずのしたり顔で答える

 

 

「そうだ。俺達の前にいるこの女が今回の作戦総指揮にあたる『エスデス・サディラー』中将だ」

 

「貴様が『暁のアルカード』か・・・聞いているより随分と幼いな」

 

なんか雰囲気からして色々と癖が強い人だな・・・

 

 

「・・・え"ぇぇぇぇぇ~・・・」

 

又もや何故かシェルスが大きめの溜め息に似た声を出した。何?知り合い?

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

noside

 

 

 

そのままアキト達は椅子に座るエスデスを交えて今作戦の内容を話始めた・・・のだが

 

 

「なんで今回の作戦に投入されるISがたったの5機しかないんだよ?!おかしいだろッ!」バンッ

 

「それは政府の意向だ。理解しろ」

 

「まぁまぁ」

 

どうやら話は難色なようだ

 

最初は普通通りに作戦について話をしていたのだが、エスデスとアキトのレギオンに対する意見の食い違いや作戦内容や戦力で対立した

 

 

「大体コッチはなぁぁ~にも聞かされてなくて、作戦内容も教えて貰えないてどうゆうこった?!」

 

「貴様らは主力部隊のバックアップの為に呼ばれただけだからな」

 

「その主力部隊が俺を含めた5機のIS部隊て、アイツらを舐めてんのか!?」

 

「所詮は狂人の集まりだ。十分だろう」

 

「・・・オイオイオイオイオイ・・・!」

 

アキトは頭を抱えてシュトロハイムとアームストロングの肩に腕をかけ耳打ちする

 

 

「(おいおいシュトロハイムに少佐?俺が委員会のヤツらから聞いていたのとは違いすぎんだが?どうなってんの?」

 

「(仕方ないだろう。これは委員会とアメリカ政府のせめぎあい中の一個にしか過ぎない。それにしても情報が錯綜しすぎだ」

 

「(我輩もまさかここまでとは・・・」

 

三人はコソコソと話してる最中

 

 

「そう言えば」

 

「はい?」

 

エスデスは話を聞いていたシェルスに言葉をかけた

 

 

「君は『シェルス・ヴィクトリア』だったな」

 

「・・・それが何か?」

 

エスデスはシェルスの顔を覗く

 

 

「『シェルス・ギッシュ』という人物を知っているか?」

 

「ッ!」

 

シェルスは一瞬顔を歪めるが悟られないように表情を立て直す

 

 

「さぁ、『はじめて聞く』名前だわ。それが?」

 

「・・・ならいいんだ」

 

エスデスは怪訝な表情でシェルスを見ていると

 

グイッ

 

「きゃッ!?」

 

アキトがシェルスの手を引いて抱き締めた

 

 

「ms.サディラー?This is mine.understand ?」

 

「ちょ、ちょっとアキト!?///」

 

アキトはシェルスを後ろから抱き締めながらエスデスを睨む。エスデスもアキトを睨み返す

 

 

「フっ・・・それはすまなかったなアルカード」

 

しかし、エスデスはニヤリと笑った

 

そしてそのまま今日の軍義は終息した

 

 

「軍義だったのか、アレ!?」ガン

 

「何叫んでんのアキト?」

 

アキトは廊下の真ん中で何故か叫び、他の隊員達の注目を集めた

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

inside

 

 

コツコツコツ・・・

 

俺はイライライラとしている。何故なら今回の作戦に穴がありすぎるからだ

 

まず第一に戦力の問題。『人工』とはいえ『吸血鬼』を相手にするんだ。たったの5機じゃあ戦力にもならん

 

 

「アキト?」

 

第二にヤツらの居場所がもう『断定』されているという事だ

 

 

「アキト・・・?」

 

そのいると断定された場所がニューヨークのど真中のホテルて・・・明らかに『罠』だろ!しかも市民には知らされてないと来た

 

『屍喰鬼(グール)』大発生フラグの条件が揃ってる

 

でも・・・でもなんでだ?

 

 

「アキトってば!」

 

なんでヤツらはまだ『仕掛けて』こない?それに軍のヤツらにも積極性がない。もしかして正確な作戦の内容が全体に『伝えられてない』?だから政府と委員会の作戦内容に食い違いがあったのか。でもそれだと・・・

 

 

「アキト!!!」バチン

「痛ッ!?」

 

考え込んでいるとシェルスのデコピンが俺の頬に炸裂した

 

 

「な、何すんだよシェルス?!痛ぇじゃあねぇか!」

 

「何度も呼んでいるんだから返事ぐらいしなさい!」

 

どうやら俺の反応がなくてシェルスはお冠なようだ

 

 

「いや悪い。考え込んじまってた」

 

「作戦の事?」

 

「あぁ、俺達が委員会に依頼された内容とあの将軍さんが言ってた内容が違いすぎる。『合同演習』って何だよ?『吸血鬼退治』と知ってるのがごく一部の俺達だけっておかしいだろ?しかも知ってるはずの指揮官まであまり知らないて・・・」

 

何か・・・何かがおかしい

 

 

「「裏切り者がいる」―――っておん?」

 

俺とシェルスの言葉がハモる

 

 

「やっぱりシェルスもそう思うかい?」

 

「えぇ、あまりにもズサンすぎるわ。情報操作をしてる輩がいる。確実性にかける『勘』だけどね」

 

「シェルスの勘は良く当たるからな~・・・」

 

そうなのだ。シェルスの勘は97.2%(朧が出した演算)の確率で当たる

 

 

「考えすぎかしら?」

 

「どうだろな」

 

一応、もしもの為に『あの子』に頼んどくか

 

 

「アキトはこの後どうするの?」

 

「おん、この後?」

 

俺達が歩く廊下の窓からは夕焼けの空が見える

 

 

「軍義も終わったし、夕食でもご一緒にどうかしらドラキュラさん?」

 

「あらら、先に言われちゃったよ・・・でも勿論喜んでドラキュリーナ」

 

「それじゃあ部屋に戻って着替えたら食堂でね?」

 

「あぁ、それじゃあまた」

 

俺はシェルスと別れると用意された個室に行き、少佐から借りた軍服を脱ぎ、動きやすいアンダーアーマーの服に着替えて食堂に向かった

 

食堂に行くと人通りは少なく、まだシェルスも来てないようなので、入り口で待っていると中から聞き覚えのある声が聞こえて来た。気になって覗いてみると、独軍の軍服を着た銀髪の子がパイロットスーツを着たヤツから何かを奪い返そうとジャンプしていた

 

 

「何やってんだ・・・?」

 

疑問を持ちながら遠目から眺めていると「下郎」とか「男の分際」とか色々とムカツク単語が聞こえてくるじゃあありませんか。ま、俺はこんな事で殴りかかるような単細胞生物じゃないから蔑んだ目でパイロットスーツのアマを見ているとラウラが怒り腕を奮わせ、腕を振り抜こうとした

 

 

「おん、コイツはまずい。『朧』」

 

『御意に』

 

俺は左腕で待機中の朧に命じてワイヤーをラウラの腕に絡めた

 

「何故だ!?」なんてラウラはパニクってる。ヤレヤレ・・・出てみるか

 

 

「来てみてはいいものの・・・あまりにも品性にかける輩がいるな」

 

そして冒頭に戻る

 

 

 

―――

 

 

食堂には全身黒づくめのアキトと彼を睨むパイロットスーツのベルサ、そして固唾を飲む銀髪のラウラ

 

 

「取り合えず・・・ラウラ?」

 

「は、はい!?」

 

不意に名前を呼ばれ、ラウラはビクッと体を震わせる

 

 

「なぜ敬語?それより手を降ろせ、いいな?」

 

「あ、あぁ・・・っわッ!?」

 

ラウラは言う通りに拳を降ろすとアキトはワイヤーをラウラごと手繰り寄せ、顎を持ちながら顔を覗く

 

 

「わわわッ!?///」

 

「大丈夫か?なんだか疲れた顔してるぞ?それになんだか顔も赤い」

 

「そ、そ、それはお前がこんなに近いから!??!///」

 

「ちょっとアンタ達?」

 

「おん?」

 

アキトがラウラと話をしているとベルサが歪んだ睨みを向けた

 

 

「あららん?まだいたのかアンタ?」

 

「アンタ、軍の関係者じゃないわね?誰?」

 

「おん?コイツはご紹介が遅れた。俺は『暁アキト』。テメェがさっきから散々と言ってくれた『男』のIS操縦者よん」

 

「へぇ・・・アンタが・・・」

 

ベルサは睨みからアキトを見回るように物珍しい目で爪先から頭の毛先までなめ回すように見る

 

 

「へぇ~・・・」

 

「おぉん!?(なんか気持ち悪ッ!?)」ゾクリ

 

「アンタ、中々に良い男ね?」

 

「ソイツはどうも。素直に嬉しいよ・・・あんな事を聞いていなけりゃね」ニコリ

 

アキトは笑ってない眼でベルサに笑顔を向ける

 

 

「あ、アキト・・・?」

 

ただラウラだけは眼帯越しから『越境の眼』で見ていたのだ

 

 

「(また・・・またアキトが『紅い』・・・!)」

 

「聞いていたのならしかたないわね・・・アンタ、なんでISを動かせるの?男の分際で」

 

「オイオイオイオイオイ・・・その手の質問なら学園とかなんやらで、かれこれ10000回は聞かれたぜ?てかそれしか聞けれぇのかテメェらは?」

 

「ISは私達の物よ。それを卑しい男が・・・動かしてんじゃないよ!」

 

ヘラヘラと笑うアキトにベルサは激昂し、睨み合う

その後、ベルサが口を開く

 

 

「アンタ・・・そこのアドヴァンスと良い仲らしいじゃない?」

 

「『アドヴァンス(強化人間)』?・・・ラウラの事か?」

 

「どうせ下劣な男の事だ。その出来損ないを毎晩毎晩、喰い物にしてるんでしょ?汚ならしい男」

 

「貴様っ!」

 

ベルサの言葉がカンに触り、ラウラは獲物に飛びかかろうとする猫の体勢になるがアキトはそれを許さず、引き止める

 

 

「なんだいなんだい?モテないからってラウラに嫉妬かい?」

 

「なんですって?」

 

「そりゃあテメェみたいな品性のかけたアバズレより、純真無垢に近いラウラの方が断然良いさ。僻みにしか見えないぜ?醜いね~?」

 

「あ、アンタ・・・」ヒクヒク

 

アキトのまくし立てにベルサは青筋をたてる。もし彼女の腰にホルスターがかけられていたなら迷わず銃を引き抜き撃っていただろう

 

しかし、この後ベルサは間違いを起こす

 

 

「フン。そう言えばアンタ、学園の外に女がいるそうじゃない?」

 

「おん?なんで知っての?」

 

「そこの銀髪が愚痴るのをたまたま聞いてね」

 

「・・・ラウラ?」ギロリ

 

「す、すまん(ってなんで私は謝ってるのだ?!)」

 

アキトは少し紅い眼で睨む

 

 

 

ところで皆さん、『逆鱗』という言葉をご存じだろうか?

 

 

「どうせアンタみたいな野郎を好きになる輩なんだもの―――」

 

元々は竜の顎辺りにある逆さになっている鱗を指すのだが・・・これを触ると竜は激情し、怒り狂う

 

そのアキトにとっての逆鱗をベルサは・・・

 

 

「余程頭の悪い、低俗なアバズレみたいね?ククク♪」

 

金属鑢で激しく擦った

 

シュンッ

 

「・・・へッ?」

 

刹那、掠れる音が聞こえるとベルサは自分の頬を触った

 

 

「な、何よコレッ!?」

 

頬を触った手にはベットリと血がついており、頬はぱっくりと裂けている

 

 

「きゃ、キャアァァ―――ッ!?」

 

「おい・・・テメェ・・・『今、なんつった?』」ビキリ

 

驚き叫ぶベルサにアキトは『真っ赤な眼』で質問する

 

 

「アキトッ!?(な、なんなのだこの『紅』は!?)」

 

アキトはラウラを自分から遠ざけると腰を抜かすベルサにゆっくりゆっくりと近づく

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・

 

 

「『貴様、俺の『半身』が何だって?』」

 

眼は先程より真っ紅に色づき、耳まで裂けた口からは2本の長い『牙』が見え隠れする

 

 

「ヒぃッ!?」

 

アキトから発せられる『プレッシャー』にベルサは顔を強張らせ、怯えた。そこをアキトはお構い無しにベルサ近づくと腰を降ろし目線を合わせた

 

 

「『私はな、自分を貶されて怒ることは少ない・・・でもなぁ・・・』」

 

アキトはおもむろに自分の掌を手刀の形にすると大きく手を挙げると

 

 

「『あの子を貶されるのは霧消にムカッ腹が立つ。だからあの子を貶す輩はこうして―――』」

 

「イ、イヤっ――――――ッ!?」

 

「『真っ二つに裂いてやらんとなぁッ!!!』」

 

何の躊躇いもなくアキトは手刀をベルサに降り下ろした

 

 

「アキトォオ!」

 

ラウラは強張る体でただ叫ぶ事しか出来ず、アキトの手刀を止められない。このままベルサの頭はスイカのように弾ける・・・筈だった

 

 

ガシッ

 

「WRYッ!?」「ッ!?」

 

手刀がベルサの額に当たる寸前でアキトの腕を掴む者が一人

 

 

「き、貴様は!」

 

「・・・何だよ『シェルス』?」

 

彼の腕を掴むのは動きやすい服装をし、眼を紅くするシェルスであった

 

 

「(い、何時の間に!?)」

 

「・・・何時来たんだよシェルス?」

 

「貴方ならわかるでしょ?それより何やってるの?」

 

「何って・・・見ての通りだけど?」

 

客観的に見てみると、ほぼ吸血鬼化したアキトが涙を流し白目を剥ける女性兵士にチョップをきめているように見える

 

 

「はぁ~・・・ヤレヤレってヤツよ」

 

シェルスはこめかみに指をあてながら溜め息を吐く。そんな光景を見てラウラが口を開く

 

 

「シェ、『シェルス・ヴィクトリア』・・・」

 

「あら?ラウラちゃんじゃない?夏祭りの時以来ね。元気だった?」

 

シェルスは困惑するラウラに満面の笑みを向ける

 

 

「で?アキトさん?何、夕飯の約束をないがしろにして、ナンパしてるの?ちょっと頭にくるわ」

 

「オイオイ、勘違いしないでくれよ?これはちと・・・口喧嘩が少しヒートアップしただけだよ。だよなラウラ?」

 

「え・・・あ、あぁ・・・そうだ・・・?」

 

紅い眼に見つめられ、ラウラは肯定するしかなかった

 

 

「そんな事より・・・どうするのよコレ?」クイクイ

 

シェルスは白目を剥くベルサを指差す

 

 

「おん・・・そうだなぁ~・・・カカッ♪」

 

アキトは少し考え込むとニヤリと牙を覗かせながら嫌な顔で笑い

 

 

「シェルス、ラウラを」

 

「?・・・あぁ、はいはい。わかったわよ。ラウラちゃん?」コツコツコツ

 

「え?わぷッ!?」

 

シェルスに何かを頼んだ。頼まれたシェルスはラウラに近づくとその眼と耳を手で塞いだ。ラウラは何がなにやらわからず暴れるが

 

 

「『落ち着いて、大丈夫だから』」

 

「ッ!?あ、あぁ・・・」

 

シェルスの能力を使った甘い声ですぐに大人しくなる

 

 

「ふぅ、そのまま頼むぜシェルス・・・」シャキィッ

 

アキトは指を異形に変形させベルサのこめかみへブスリと突き刺し

 

 

「何だよ。やっぱしコイツ、『女尊派』の連中と関わりが深いな・・・」

 

「アキト、『記憶を覗いて』ないで」

 

「わーってるよ。さっさと記憶を『消す』よと!」

グヂャリ

「あが・・・ッ!?」

 

頭から血の塊を取り出すと口の中に含み咀嚼する

 

クチャクチャ・・・ゴクリ

「ぅん~・・・微妙~」

 

「『味』の感想なんていいから、この後どうするの?」

 

「ふむ・・・」ガシッ

 

アキトは気絶したベルサの首根っこを掴み長椅子まで引きずり横にした

 

 

「さて・・・一段落ついたし」

 

「ついてないわよ。さっきのアレ、どうゆう事か説明してもらうわよ?」

 

「えぇぇ~・・・」

 

シェルスの睨みにアキトは愚痴る

 

 

「と言うか・・・いつまで私は目と耳を塞がれるのだ?」

 

一方でラウラは腕組みをして二人に疑問を投げかけていた

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

inside

 

 

 

面倒事によりさっさと食堂から退散した俺達は施設内にあるBarに逃げ込んだ

 

食堂にあんまり人いなかったから目撃者もいないし、食堂にあった監視カメラも朧でどうにかなったし、よかった

 

 

「よくないわよ!」

 

「はい、すんません・・・」

 

今、俺はバーカウンターに正座をしてシェルスの説教を大人しく受けている

 

 

「ブワーハッハッハ♪ざまがないな!暁のォオ!」

 

「暁殿・・・」

 

あとなんでシュトロハイムと少佐がいるんだよ?!

少佐ぁあ!「ご愁傷さま」みたいな目でみるんじゃあない!それにシュトロハイムはうるせぇッ!

 

 

「それはすまない。我輩とシュトロハイム大佐がここにいるのは・・・その・・・」

 

少佐はバツが悪そうな表情をする

 

どうせアレだろ?そこにいる人間スピーカーがヘマなんかして食堂を出禁になったんでしょう?

 

 

「次に少佐は「何故それを?!」と驚くわ」

 

「何故それを?!―――ッハ!?」

 

俺の得意技をシェルスが使い、少佐が驚く。てか予想通り過ぎて逆に引くわ~

 

 

「あぁ。それでクラリッサが困った顔をしていたのだな」ウンウン

 

ラウラが納得した顔で頷いている

 

 

「フンッ!バカ騒ぎでもしないと軍人など務まらんわ!」

 

とシュトロハイムはジョッキのビールを煽る

 

 

「うむ!不味い!やはりアメリカのビールは薄味だな!」

 

なら飲むなよ。てかそんな事言うなよ!店のマスターがすんごい目で見てるぞ!

 

 

「そんな事より暁の!貴様、『黒兎』のチビと懇意にしていたとはな!」バンッ

 

「痛"ッ!?背中を叩くな!このサイボーグ!」

 

普通の人間なら背骨が砕けてるぞ!

 

 

「それに『嫁』とはな!ついに我がドイツ軍に来る事を決めたんだな!!」

 

「どぅうかぁぁあらぁ!俺は嫁じゃあねぇええッ!」

 

何百回言えばわかるんだコイツは!てかこの話題の度にシェルスよ、絶対零度の眼で見るな。体が凍りつきそうになる・・・

 

 

「・・・」

 

・・・ん?

 

 

「どうしたボーデヴィッヒ?今日は何だか静かだな?」

 

何時もなら得意顔で「アキトは私の嫁だ!」みたいな事言うのに・・・何だか大人しいな。まるで借りてきた猫だ

 

 

「そう言えば暁殿は飲まないのであるか?」

 

「おん?飲むに決まってんじゃん!その為に来たんだから!」

 

「いやいや、違うからね。アキトのせいで夕飯を食べ損ねたし・・・」

 

「ならヴィクトリア孃は飲まないのか?」

 

「飲まないなんて言ってないわよ」

 

やっぱし飲むのかよ。って

 

 

「おん?どうしたよラウラ?そんなキョトン顔して?」

 

ラウラが何故か怪訝な顔で俺とシェルスを見ていた

 

 

「いや・・・シェルスはともかく、アキトは『未成年』ではないのか?」

 

あ・・・

 

 

「ブッ!何だと貴様?!」

 

「暁殿が未成年?プフフ♪」

 

おいコラ、シュトロハイムに少佐!笑うんじゃあない!そういう『設定』なのを忘れてたんだよ!

 

 

「な~ら、アキトは飲めないわね♪残念ね~?♪」

 

なんだろシェルスのシタリ顔がムカツク!

 

 

「い、良いんだよ!ドイツじゃあ14からビールが飲めるんだから!」

 

「しかしアキト、ここはアメリカであって、ドイツではないぞ?」

 

「フッ・・・苦しい言い訳ね・・・」

 

ちょいちょいラウラさんや!当然みたいな疑問を真顔で投げ掛けんな!それにシェルスは乗っかるな!素晴らしい連携だな、おい!何時の間にそんな仲が良くなったんだ?

 

 

「良いんだよ、細けぇ事はよ!マスター!取り合えず俺にはウィスキー。赤髪の彼女にはビール。銀髪の彼女にはノンアルコールのカクテルを頼む!」

 

我ながら苦しい言い訳を盾に酒盛りがはじまった

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 




アンチって難しい・・・

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