人外になった者   作:rainバレルーk

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「」→地声。
『』→機械音声、通話、人外語。
『『『』』』→大勢
「()」→心中。
・・・と、しています。

では、どうぞ・・・・・



戦慄の変貌

 

 

 

「あ・・・アレは・・・・・!」

 

突如として現れた謎の襲撃者たち。

彼等の攻撃から脱する為に急バックを開始した一号車と二号車。

 

退避行動の最中。

二号車に乗っていた潜入者『野崎 圭』は、窓ガラス越しに襲撃者の正体を刹那に垣間見る。

その襲撃者の一人(?)である珍妙な着ぐるみに彼は見覚えがあった。

 

 

ボン太くんッ!? って、のわぁアアッ!!?」

 

「圭くん!」

 

『『『キャ―――ッ!!』』』

 

急発進の反動で座席から振り落とされる圭。

彼の他にもピクニック気分でシートベルトをしていなかった者が何人か振り落とされ、車内に悲鳴が響き渡る。

 

 

「大丈夫ッ、圭くん?!」

 

「あ、うん! ありがとう、簪ちゃん。・・・ッあ」

 

心配し、手を差し伸べる簪の小さな掌を掴む圭。

僅かだが、その手は微かに震えていた。

 

 

「皆、落ち着いて!!」

 

『『『!!』』』

 

「お嬢さ・・・・・会長!」

 

悲鳴轟く車内に一羽の鶴が甲高く鳴く。

皆、その猛獣でも説き伏せるかのような声に注目し、静まり返った。

 

 

「襲撃者が何者であれ、私達が混乱してはヤツらの思う壺。ここは冷静になって対処するのが先決よ!」

 

『『『・・・はい!』』』

 

口元を隠す様に開かれた扇子には『冷静沈着』の文字が書かれている。

そんな彼女の言葉に今まで阿鼻叫喚だった生徒達は静まり返り、急いでシートベルトを装着していった。

 

 

「お~、スゲェな・・・(ああいう事が出来るって事は、更識さんて結構なカリスマ性があるんだなぁ)」

 

「・・・・・」

 

圭は彼女の在り方に関心を示すが、妹である簪はなんだか何とも言えない物憂げな表情を晒した。

 

ニャァニャニャッにゃにゃ~!

 

「・・・ネコ?」

 

「あ、俺の携帯だ」

 

と、ここで不意に圭の携帯着信が鳴る。流石は自他共に認める猫馬鹿か。着信音は勿論の事、子猫の鳴き声。そして、電話相手に表示されたのは、先程の襲撃者に対応している彼の上司『因幡 洋』であった。

 

 

「はい、もしもし」

 

『無事かッ、圭?!!』

 

「五月蠅ッ!?」

 

電話越しからでも解る焦燥感に満ちた因幡の声。

圭はなんとかそれを諫める様に現在の状況を述べていくのだが・・・。

 

 

『圭ッ・・・なん・・・こと・・・おい・・・ッ・・・!』

 

「因幡さんッ? なんかザーザー言ってて聞こえないですけど?」

 

『ぼう・・・が・・・電・・・が・・・やばッ・・・気を・・・ろ!!』ブチッ

 

「えぇッ・・・ちょッ、因幡さん!!?・・・あぁッ・・・もう、最悪・・・!!」

 

「・・・どうしたの、圭くん?」

 

ノイズ混じりの因幡の声に何かを察した・・・いや、察してしまった圭はシートベルトを外して立ち上がると声高々に叫んだ。

 

 

「皆、何かに掴まれ!! ひっくり返されるぞ!!」

 

『『『・・・は?』』』

 

最初は何を言っているのか、皆解らなかったが五秒後にそれを理解する事となる。

何故ならば・・・。

 

 

「ほれ」カランッ

ドゴォオオオ―――ッン!!

 

待ち伏せていた別動隊襲撃者の手投弾によって、文字通りバスがひっくり返されたのだから。

 

 

「ちょッ、えぇええー!!?」

 

「ちょっと、一夏くん。大人しく座っててよ。あ、ポテチ食べる?」

 

「んな事言ってる場合か、佐々木ィ!!」

 

もしもの為の避難ルートを走っていた二号車がひっくり返された事に驚嘆する一夏をはじめとした一号車生徒一同。

だが、圭と同じ潜入者である『佐々木 優太』は呑気にスナック菓子をつまんでいる。

 

 

「佐々木ッ、二号車には野崎が乗っているのではないのか?! 何をそんなに呑気に!!」

 

「そうだぞ、優太! 早く二号車を助けに行かないと!!」

 

「え~、圭くんなら大丈夫だよ。それに・・・」

 

「それになんだ?!!」

 

「向こうの心配している場合じゃないと思うよ、ほら」

 

「え?」

 

おもむろに優太がバスの窓を指差すと、其処には得も言われぬ人外魔境の何かが張り付いていた。

 

 

『キシャァアアアアアッ!!』

 

『『『キャ―――――ッッ!!?』』』

 

黒光りする超大型Gに再び阿鼻叫喚の悲鳴が車内に轟く。

そして・・・あろうことかこのG、窓ガラスに頭を打ち付けて中に入ろうとしているのだった。

 

 

「もう我慢ならん!! チェストぉおオ!!」

 

ザバリィイッン!

『ギシャッぶッ!?』

 

これには勘弁ならなかったのか。

遂にキレた箒がISを部分展開。内蔵武装である日本刀で突き刺し、道路に放り投げた。

 

 

「ナイスだ、箒!」

 

「ふふんッ。これくらい造作もない事だ!」

 

「・・・篠ノ之、弁償するんだぞ」

 

「織斑先生、そんな!?」

 

だが、知らなかった。

この攻撃によって絶命した同族の血肉を喰らったゴキブリ兵がさらに興奮している事に。

 

 

「(まったく・・・・・圭くん、ガンバ!)」

 

加えて、その開けた僅かな穴を目掛けて、さらにゴキブリ兵共が集まり、自らの体液を吹きかける事になろうとは。

 

 

 

「イタタタ・・・大丈夫かい、簪ちゃん?」

 

「う・・・うん・・・」

 

「皆、大丈夫ッ?!!」

 

『『『はぁーい』』』

 

一方、ひっくり返った二号車では生徒全員の安全確認が行われていた。

どうやら、直前に行われた圭の声掛けのおかげで生徒たちは全員無事だった。

そう、生徒は。

 

 

「ッ!? 圭くん・・・血がッ・・・!」

 

「え?」

 

彼は生徒達に声をかけようとシートベルトを外した為、バス転倒の衝撃で左前頭部を何かで切ってしまっていた。

傷は深くはなかったが、タラリと血が顔の曲線をなぞる。

 

 

「あ・・・ホントだ」

 

「これ、使って」

 

「え・・・いいよ、これくらい。慣れてるからさ」

 

「でも・・・」

 

「いや・・・」

 

どこかの人外魔境との事件に仕事上巻き込まれがちである為、向う傷や怪我の一つや二つが日常茶飯事な圭にはこれくらい軽いものなのだが、優しい簪は自らのハンカチで止血をしようとする。

それを遠慮する圭と簪の間で、何度かのやり取りが行われていると・・・。

 

 

「そこぉッ、こんな非常時にイチャイチャするなぁあ!!」

 

「・・・会長」

 

血の涙でも流してそうな程に更識会長ががなり立てた。

・・・というか、それどころではない。

 

 

『キシャァ』

 

『キチャシアアアッ!』

 

転倒したバスの周りを別動隊のゴキブリ兵がゾロゾロと取り囲む。

バスに付いていた別動隊の護衛車はとうに襲われ、大破。

状況は最悪と言って差し支えない。

 

 

「更識、化物共は私達教師部隊がISで引きつけるから、貴女は他の生徒達の避難をお願い!」

 

「そんな! 先生、ゴキブリ苦手なのに・・・! 私も戦います!!」

 

「ふッ、生徒たちの為ならこれくらい・・・頼んだわよ、生徒会長」

 

「ッ・・・はい、わかりました。ご武運を横島先生」

 

新鮮な肉を求めて着実に迫りくるゴキブリ兵を前に武装を準備する二号車教師部隊。

まさに一触即発の事態が刻一刻と迫っていた。

 

カランッカランッ!

 

『キシャ?』

 

先に仕掛けたのは、転倒したバス内にいる教師部隊。周りを囲むゴキブリ兵目掛けて、ありたっけのスモークグレネードを投げつける。

 

ボシュウゥウウッ―――ッ

 

大量の煙幕が転倒したバス全体を覆い隠し、ゴキブリ兵の視界を遮った。

 

 

「チェストォオオッ!!」

 

ブシャァアッ!!

『ギキャァアッ!!?』

 

その煙幕の中から教師部隊隊員が電光石火の勢いで飛び出し、ゴキブリ兵の身体を斬り抉る。

刀で抉られた箇所からは何とも言えない青紫色の鮮血は噴き出し、隊員の装備している量産型IS・打鉄の装甲版を染め上げた。

 

 

「ッ!? うェッお! クッさ!!」

 

噴き出した青紫の血液は色もさることながら、この世のモノとは思えぬほどの悪臭を放ち、横島教諭の鼻をつんざき嗚咽を導いた。

 

 

『キシャァア!!』

 

「ッ!」

 

ズシャァアッン!

『ギャベッツ!!』

 

酷い臭いにたじろいだ横島教諭を仕留めんと他のゴキブリ兵が襲い掛かる。

彼女はそれを草でも刈り取るように撫で切って行くが、流石に一人でまかなえる量ではないようで、徐々にSE(シールドゲージ)と体力を削られていく。

 

ズガガガガガガガッ!!

『グキャッ!!?』

 

『キシャァア!?』

 

「横島先生!!」

 

そんな彼女を援護すべく、バス内からの連続射撃が放たれる。

流石はIS専用の突撃銃(アサルトライフル)と言ったところか。その威力たるや、一発でゴキブリ兵の身体を臓物諸共吹き飛ばすには十二分である。

 

 

『ギキキ・・・ッ!』

 

『ギチチチ!』

 

攻守共に連携がとれた攻撃に僅かばかりか、ゴキブリ兵共の勢いが弱まる。

彼等は蟲特有の威嚇音を響かせながら、バスとの距離を置いた。

 

 

「(動きが止まった? 私達としてはこのまま退いてくれた方がいいのだけれど・・・。っていうか、なんなの?! 一つ一つの攻撃がISのゲージを確実に削っている。有り得ない! 本物の化物じゃない!!)」

 

戦闘態勢を崩さないままに百面相する横島教諭。

『現存する全ての兵器類を凌駕する性能』と銘打っているISが、突如として現れた得体の知れない人間サイズの蟲に微々ながら苦戦しているのだから。

 

 

『・・・ギシャァア!』

 

『グギギキッ!!』

 

そうしているとゴキブリ兵共が動きを見せた。

彼等は攻撃を受けて倒れ伏した同胞の身体を寄せ集め・・・・・。

 

グシャ・・・バリィ・・・ムシャッ・・・!

 

「な・・・ッ!?」

 

「た・・・・・『食べてる』?!」

 

散らばった臓物を、転がった肉を貪るゴキブリ兵。

其れは自然界に潜んでいるゴキブリ達がする一種の『共食い』とは少し違った。

 

ボゴンッ

ドクンッ

 

倒れ伏した同胞の肉を喰らえば喰らう程にその体躯は膨れ上がり、異形はさらに異形へと強靭に変貌していったのだ。

 

 

「・・・ちょっと、ちょっと・・・!」

 

「うそ・・・でしょ・・・ッ!」

 

『『『グギシャァアアッッ!!』』』

 

そして、再びゴキブリ兵が戦闘態勢をとる。

身の丈2m弱はあろうかという大柄な体躯のゴキブリの群れがファランクスの陣形に得物を構える。

 

 

「最悪じゃないの・・・!(なんとか持たせるしかないようね・・・・・頼んだわよ、楯無ッ!)」

 

横島教諭は戦々兢々しながらもこの場を脱した生徒達を思う。

ISで地下下水道へと逃れた生徒達の事を。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





はてさて、どうなる事やら。

話は変わりますが、『ダリフラ』良かったですね。傑作でしたね。
特にミツココがいい。
終始ヒロゼロかと思いきや、まさか中盤でぶち込んで来るとは・・・!
なんか気に喰わないキャラだと最初は思っていたけれど、なんと男らしいキャラか!
ミツル、お前イイ男!!

是非に映画化期待!

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