壱か月・・・壱か月以上も経ってしまった!
今年も残す所あと少し。
ノロノロ書いているこの作品を閲覧していて下さる皆様に多大なる感謝をしながら、投稿します!
そして、フラグ的なものを建設したいと思っています。
では、どうぞ・・・・・
―――
結合しました。
「『IS学園生徒の護衛』だぁあッ?」
「あぁ、どうやら学園側は二学期の始業式を早めるらしい。その為に今、秘密裏に国内の生徒を一か所に集めているらしい」
「どうして? あの事件から、ISへの非難は過激の一途を辿るばかりなんですよ。なのにどうして・・・?」
「どうせあれですよ。『面目を保つため』とか抜かしやがる汚い大人の考えですよ~。あ~ヤダヤダ」
「でもなんで俺達に依頼を? それに一か所に集めるんじゃなくて、バラバラに向かった方が・・・・・まさか・・・!」
「あぁ、洋の言うようにバラバラで向かう筈だったんだが・・・『内通者』の手引きで反IS主義の輩に警備の者が襲われた。不幸中の幸いにも生徒は無事だったがな」
「それで警備のしやすい団体行動ってか。・・・・・荻ぃ・・・まさか俺に内通者探しを頼むつもりじゃないよな?」
「そのつもりだと言ったら?」
「え~ッ!」
「・・・頼む、洋。お前しかいないんだ」
「え~! マジかよ~! しょうがねぇなぁッ!!」
「(因幡さん、マジちょろい。見えない尻尾振ってるぜ)」
「それに洋。お前にとってはこの仕事・・・『嬉しい事』があるぞ」
「?」
―――――――
「・・・あ~・・・あの時の荻さんの台詞って、こう言う事だったのか・・・」
「ヒャッハッ―――ッ!!」
あの依頼から数日後。
隣ではしゃぐ因幡さんを尻目に俺は荻さんの言葉を脳内で反芻している。
何故こんなに因幡さんが興奮しているのかというと・・・
ガヤガヤ・・・
目の前に集まった警護対象、IS学園生徒に興奮しているのだ。
『IS学園生徒に興奮している』と言ったが、別段因幡さんがJK好きの変態野郎な訳ではない。その生徒たちの『髪の色』に興奮しているのだ。
・・・・・訂正。やっぱり因幡さんは変態だ。なんか生徒たちが怪訝な目で俺達を見て来たし。
「見ろよ圭ッ! 青だとか、紺だとか、オレンジとかッ!! あれ全部『地毛』なんだぜ!! 信じらんねえ!!!」
聞いての通り、因幡さんは『毛フェチ』だ。
此れは因幡さんが
数十分前、荻さんからの依頼で指定されたホテルに来た俺達はロビーで身体検査をうけると三階の広間に通された。
広間の入口や通路は物々しい装備を担いだゴツイ特殊部隊の面々が警備に付き、室内はブラックスーツをビシッと決めたSPの人達がいる。
その中央に日本のIS学園生徒が集まっていた。
そこで因幡さんは彼女たちの髪質を見るなり、地毛と判断し、その色彩の豊かさに興奮している次第となったんだよなぁ。
因みに俺達は怪しまれないようにフォーマルスーツを着用している。優太くんはレディースだけど。
「なにを騒いでいる?」
「ん?」
ほら、因幡さんが大声で騒ぐから怒られ―――
「―――って、『織斑 千冬』!?・・・さん」
後ろから声をかけて来たのは、整った顔立ちにブラックスーツを纏った清鑑な女の人。
彼女こそ世界で知らぬ者はいないと言わしめる世界最強のIS操縦士。『ブリュンヒルデ』こと『織斑 千冬』が立っていた。
「君達は? ここには関係者以外入れない筈だが」
「あ・・・えっと、俺達は因幡探偵事務所の者です。決して怪しい者ではないです、はい」
「因幡探偵事務所・・・? あぁ、緒方警視の言っていた民間の・・・・・随分と若いな」
「はい?・・・あ! 違いますよ、俺じゃあなくて・・・ちょっと因幡さん!!」
「ン? なんだよ圭、今いいところなんだが」
この人はホントに・・・・・綺麗な髪の毛を目の前にするとダメダメだなぁ・・・ヤレヤレ。
「紹介します。こっちが我が探偵社所長の因幡 洋さんです」
「君が緒方警視の言っていた因幡探偵か」
「ああ。そういうアンタはブリュンヒルデ。アンタがここの責任者?」
「代理だがな」
「そうか。警備の状況と通行ルートを知りたい、今どうなっているんだ?」
「詳しい話はこっちで。緒方警視からの確認事項もある」
「わかった。圭、お前は優太と一緒に室内の見張りを頼む」
そう言って因幡さんと俺は別行動をとる事になった。
なったんだが・・・・・
「あれ~・・・優太くん、いつの間に何処いったんだ?」
いつの間にやら一緒に来ていた筈の優太くんの姿が消えていた。
優太くんは女装癖でSだけど、あれで人見知りだからな~。どこ行ったんだろう?
「あれ? 圭ッ、圭じゃないか?」
「ん?」
迷い子の優太くんを探していると遠くの方から人混みを掻き分けて、IS学園指定の白い制服にみを包んだ
俺はその顔に見覚えがあったし、制服を着ている男子生徒なんて、『あの人』以外一人しかいない。
「『一夏』くん!」
そう。世界最初の男性IS適合者の『織斑 一夏』くんだ。
彼とは飛行船事件前にモールのレゾナンスで『あの人』と一緒に出くわした時に知り合った一人でもある。
「どうして圭がこんな所に? それにその恰好は」
「いや・・・ちょっと仕事の手伝いに駆り出されてね」
「仕事? 俺とそんなに年は変わらない筈だろう? 学校はどうしたんだよ」
「え・・・あぁッ、あの事件以来休みになってね。それでバイトさ」
彼にはこう言ったが・・・俺は家庭の事情で高校には行っていない。
『あの人』からも高校に行くように言われた事もあるが、妹の為にこうして働いているし、給料の良い今の仕事にも満足しているから平気だ。
「ふ~ん、そっか。まぁそんな事よりこっち来いよ。皆を紹介するぜ」
「え、でも・・・」
「いいから来いって」
「え、ちょっと!?」
「お~い皆ぁ!!」
為すがままに一夏くんに手を引っ張られて、生徒の人混みに連れて行かれる俺。そのまま他の生徒たちに紹介されるのだが・・・・・如何せん、彼女たちの眼が怖かった。
一夏くんの目は誤魔化す事ができても、俺に対する『興味』や男に対する『嫌悪』、学園のアイドルと仲が良さげに見える事に対する『嫉妬』などが目に見えた。
はっきり言って・・・お世辞にも気持ちの良いものじゃない。気持ちが悪い。
「おい、一夏!」
「ん? なんだよ箒」
「なんだではない! いつの間に私から離れて・・・って、お前は・・・」
「あ、どうも。覚えているかな?」
一通りの生徒に面通し(半強制)が終わると俺達をポニーテイルの女の子が呼び止める。彼女も夏休みの一件で出会ったIS学園の生徒、『篠ノ之 箒』ちゃんだ。
珍しい名字の通り、彼女はあのIS発明者『篠ノ之 束』の近親者だそうだが・・・詳しい事はあんまり俺も知らない。何故かというと、あの時にその話題を出したら、彼女の眉間がよったのであまり言及しなかったからだ。
「どうしてお前がこんな所に? ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」
「あはは・・・さっきも一夏くんにも説明したんだけど、ここにはその・・・バイトでね」
「バイト?」
「そういえば圭、バイトって一体なんのバイトをしているんだ?」
「一夏・・・お前はそんな事も聞かずに連れ廻っていたのか? まったく・・・」
「いいじゃないか。圭はもう俺の友達なんだからさ。なぁ、圭?」
「え・・・あぁ、うん・・・」
彼のコミュ力に若干の違和感を抱きつつも、俺は二人に事の内容を当たり障りのないように説明する。
あんまりにも真をついた事を話すと彼はこの一件に首を突っ込みそうなので、やめておこう。
「しっかし警備のバイトか~。・・・圭って見た目によらず、腕っぷしがあるのか?」
「いやいや。俺はただの付き添いみたいなもんだよ」
「ふん・・・馬鹿馬鹿しい」
「え・・・?」
篠ノ之さんはそう言って腕を組む。なんだか大層ご立腹のようだ。
「デモか吸血鬼かなんだか知らないが、どうして私達がこんなこそこそしなくてはいけないんだ。あんな輩など、ISで叩きのめしてしまえばいいのに!」
「でも、ネットではあれがISを再起不能にしてたって・・・」
「そんなの、ISを良く思っていないヤツらの出鱈目に決まっているだろう。それにもし仮に本当だったとしても、私の紅椿で斬ってやる!」
「はぁ・・・」
まぁ、篠ノ之さんの言う通り・・・『絶対防御を持っているISが突然現れた訳の解らない異形に負ける筈がない』なんて声が多い。
実際、発信元となった動画は事件発生後に削除されている。・・・まぁ、拡散はされたが。
だが実の所、あの動画は嘘のような真実なんだろう。
・・・というか、俺にはあれが本当に『ただのテロ』であって欲しい。
それなら『ISならばモーマンタイ』なんて言う、訳解らん理論で片付けられれば此れ幸いなのだから。
『化物』や『怪物』・・・つまりは、『あの人』サイドの者が関わる一件は総じて・・・世界をひっくり返すような厄介事だ。
あ~・・・本当にヤレヤレってやつだ。
「・・・あッ!」
「どうしたんだよ、圭?」
「そういえば二人とも、優太くんを見なかった? ここに来る途中にはぐれちゃったんだけど」
「優太・・・? あぁッ、あの女装の。それに似たような人なら、さっきのほほんさんと一緒にいるのを見たぞ」
「のほほん・・・さん?」
『
流石はIS学園か。随分と変わった名字の人もいるんだなぁ。
「その人はどっちに?」
「あっちだ。さっきすれ違ったものでな」
「わかった、ありがとう篠ノ之さん」
そうと解れば話は早い。
俺は二人と別れて、彼女の指差した方に向かっていった。
―――――――
箒に言われた方向に進んで行くと、見慣れた金髪頭が圭の目に入った。
「お~い、優太く~ん!」
「ん? やっとボクを見つけたのかい、圭くん」
「『やっと』じゃないよ、優太くん! 急に居なくなるから心配するじゃないか!」
「ごめんごめん」
『ペロ☆』っと舌を出しながら謝る探し人の優太。彼のいつも通りの反応に圭は溜息を吐いて軽く呆れた表情を浮かべた。
すると・・・
「あ~、ゆうゆう見つかった~?」
「こらッ本音、走らない!」
「彼がそうなの?」
二人に着ぐるみのような制服を着た茶髪と眼鏡をかけた茶髪、それに目立つ水色の髪をした女生徒が寄って来る。そのどれも男心をくすぐるような整った容姿を持ち合わせていた。
「えと・・・優太くん、この人達は?」
「迷子の迷子の圭くんを一緒に探してもらっていたIS学園の生徒さん達です」
「いやいや、迷子になってたの優太くんだから!」
「フフッ」
「あ・・・ッ///」
ボケとツッコミの漫才のような二人の掛け合いに水色髪の少女がほくそ笑む。
その表情に気づいた圭は、少し照れくさそうに頬を小指で引っ掻いた。
「あら、ごめんなさい。あんまりにも仲が良さそうに見えたから」
水色髪の少女は広げた扇子で口を覆い、笑みを返す。扇子には『良き哉』と墨筆で書かれていた。
「心外だなぁ『楯無』さん。圭くん如きなんかと仲が良いように見えるなんて」
「コラ、どういう意味だ。・・・って、『たてなし』?」
圭は優太の言った水色髪の少女のものであろう名前に疑問符を宛てた。
前もって荻から渡されていたIS学園の協力者リストの中に彼女と同じ名前の者が載っていたからだ。
「えッ・・・もしかして君が、『更識 楯無』・・・さん?」
恐る恐る聞く圭に対して、水色髪の彼女は再び扇子を広げる。そこには『ご名答』の三文字が書かれていた。
「ええ、待っていたわ。因幡探偵事務所の助手さん」
「え・・・え~・・・!?」
圭は表には出さないが、その事実に酷く驚いた。
何故なら、前もって渡されたリストには字面しか載っていなかった為に名前から男性だと彼はイメージしていたからだ。
「な~に~その如何にも『驚愕』って顔? まさか、協力者がこんな美少女だって思わなかったかしら?」
楯無は悪戯っぽく口角を緩ませて、圭の顔を覗き込む。
普通はこんなルックスの良い女性の顔が近づくとどんな男だろうと頬を薄紅色に染めて鼻を伸ばすか、照れて顔を背けるだろう。
「そうだね。俺の想像力が足りなかったよ」
「!」
だが、圭はしっかりと楯無の目を見て微笑み返す。
彼はこれまでに『あの男』との関係からか、様々な人物と会合している為にこういう事には耐性を持っていたのであった。
「へぇ~・・・面白い。お姉さん、君に興味が湧いてきちゃった」
「へ?」
『興味』と書かれた扇子を広げ、楯無は薄めで圭を見つめる。
圭はその彼女の表情に『あの男』との既視感を感じ、怪訝に顔を歪めた。
「・・・会長、そろそろ」
「そうね『虚』ちゃん。優太くんに圭くん、ついてらっしゃい。君達に頼みたい仕事があるから」
「はぁ~い。行こう、圭くん」
「え・・・あ、うん。行こうか」
『なんだか目を付けられたような気もするが・・・まぁ、いいか』と圭は深く考える事を止めた。
ここから先。彼等は彼等にしか出来ないような仕事を任せられるのであった。
―――――――
協力者であるIS学園生徒会長『更識 楯無』さん並びに生徒会の面々と会合を果たした俺達は、彼女たちの案内を受けてある部屋へと通されたのだが・・・
「・・・・・はッ?」
その部屋に用意されていたのは、IS学園指定の『制服』。
勿論、一夏くんやあの人が着ているような特注の男子用ではない。正真正銘本来の『女子制服』だ。
「君達には制服を着て、生徒の中に潜入してもらうわ」
「え~ッ!?」
「お~ッ!!」
前者の反応が俺で、後者の反応は優太くんだ。
IS学園の制服は時代の象徴とデザイン性もあってか。世間のみならず、
その本物が着れる訳なのだから、優太くんは女装家冥利に尽きるだろう。
だが!
「それって・・・絶対ですか?」
言っておくが、俺は極めて普遍的な『一般人』であると自負している。
これまでに『山羊のマフィア』だとか、『魔女の秘密結社』だとか、『最強の吸血鬼』だとか、奇妙奇天烈摩訶不思議で人外魔道魔境エトセトラの事件に巻き込まれて来てはいるが・・・俺は至ってノーマルだ。
だから、女の子の制服を着て嬉しがる性格ではない。決してだ!!
「優太くんは兎も角、俺にはこれ以外の他の事が出来る事があるんじゃないかな~・・・と思うんですけど・・・」
「そうね・・・」
楯無さんは俺の言葉に一瞬考えるそぶりを見せながら・・・
「でもダ~メ。君の仕事はこっち」
「いィッ?!」
ニッコリとした表情で俺の小さな願いを打ち砕いた。
「圭くん」
「え・・・?」
「頑張ろうね~~~?」
其の時の優太くんの顔と言ったら、本当にあくどい顔をしていた。
優太くんのこういう所、ホント嫌い。
―――――――
半ば強制的に女装させられた圭と嬉々と制服に袖を通した優太達は、すぐさま学生たちの集団の中へと放り込まれた。
勿論、ただ単純に指定の学生服に身を包んでは芸がない。というか、すぐにバレて変態野郎の烙印を押された挙句にISでタコ殴りの袋叩きにされてしまう。
そんな事にならない様に圭は全身のムダ毛を優太に処理され、彼自前のメイク道具一式で劇的ビフォーアフター。
おかげで見た目だけは、結構可愛い容姿に変身させられてしまった。
それから劇的変身(強制)を遂げた圭と優太が放り込まれた集団は、IS学園に向かうであろう大型バスへと組ごとに分かれて乗車した。
因みに。
彼等が乗車したバスの周りには、パトカーと物々しい装甲車が護衛に付いている。
「ハぁ~・・・」
バスは予定時刻通りに発車。
しかし、これがまた圭に更なる受難を与える事になったのだ。
「ね~それでね~」
「アハハ! なにそれ~」
『女子三人寄れば、姦しい』というだけに車内はなんとも華やかで楽しい雰囲気だ。
それぞれ各個人が夏休みで会えずにいた久しぶりのクラスメイト達と会話を弾ませる中で、圭はただ息を殺して溜息を吐く。
彼に与えられた任務は、『学生内に内通者がいるかどうか』。
本来は生徒会の役目であろう仕事だが、同世代で信用のある外部の
だが、バスの乗車振り分けの影響から、一組と二組が乗車している一号車には優太が。三組と四組が乗車している二号車には圭が乗る事に成ってしまったのだ。
そのせいで圭は肩身の狭い思いをしている。
「圭くん、じゃなかった『圭子』ちゃん・・・溜息しないの。あと・・・がに股だよ」
「あ・・・ごめん。『簪』ちゃん・・・」
幸いな事に彼の乗ったバスには、ショッピングモールの一件で知り合った日本代表候補性『更識 簪』がいた為に胃に穴が開く程のストレスはかけなくて済んだが。
「しかし・・・大丈夫かなぁ、優太くん・・・じゃなくて、『優』ちゃん。ああ見えて、人見知りだからなぁ~」
「大丈夫・・・
簪は圭との話を区切って、中腰で前方を見る。その視線の先には、彼女と同じような髪色をした生徒が。
「・・・なんで、『お姉ちゃん』がここに・・・ッ?」
「!」
そんな彼女の視線に気づいたのか、生徒会長『更識 楯無』は簪に手を振った。
「・・・フンッ」
「ッ!?」
だが、簪は傍から見ても解るようなつっけんどんな表情で顔を背けて座る。あからさまな其の態度に楯無の背後には『ガーン』の文字がそそり立った。
「・・・君もなんだか大変だね」
「・・・うん・・・」
圭は楯無に対する簪の態度が引っかかったが、いつものように深くは考えない様にする。というか、どこかで見た事のあるような光景だと思った。
・・・・・それと同時に護衛車に乗った人狼探偵がクシャミをするのだった。
「・・・そんな事より、圭子ちゃん・・・」
「ん? なんだい簪ちゃん?」
「・・・『アキト』・・・今、どこにいるの?」
「ッ!」
その言葉とまるで見透かしたような視線に圭は固まった。
彼女の言うように二号車を含め、一号車にも『二人目』である男、『暁 アキト』はいない。
『あの事件』以来、世間に広まる反IS思想を理由に学園を離れる生徒は少なからずいたが、『男のIS適合者』を逃す程に新IS委員会は馬鹿ではない。
教師達の話だと、彼は夏休み後半に帰省先で『事故』に遭遇し、始業式まで外部で養生しているとの事らしいが・・・
「どこにいるの・・・?」ゴゴゴゴゴ・・・
あの男の『本当の素性』を知っている簪は、彼があの『飛行船事件』に関わっているのではないかと疑っているのだ。
「あ~・・・それは・・・その・・・」
「それに・・・あの『魔王』の正体・・・アキトじゃあないの?」
『魔王』
それは、あの飛行船事件において目撃された正体不明の人物である。
彼はISを簡単に打ちのめす謎の兵団をステーキ肉を切るように斬り裂き、文字通り・・・『喰らった』。
そして何よりも恐ろしいのは、この者が戦局をひっくり返す程の兵力を持っていた点である。
一体でも複数のISに勝る化物を軍団単位で使役するこの者を日本を含めた世界が指名手配しているのだ。
因みに名前の由来は、現場にいた目撃者の証言からである。
「・・・それはわからないよ」
「・・・・・」
「うぅ・・・ッ(視線が痛い・・・!)」
圭は息を飲み、一呼吸おいて口を開く。
そんな彼を簪は、無言の圧力とジト目で針のむしろにする。
「・・・わかった」
「え?」
しかしすぐに簪は彼に対する圧力を止め、ホッと一息落ち着いた。
なんともあっけない彼女の変わりぶりに圭は拍子抜けしてしまう。
「ごめんね、圭・・・子ちゃん。意地悪な質問しちゃって。圭・・・子ちゃんなら・・・アキトの事知っているじゃあないかと思って・・・」
「い・・・いや良いよ、そんな。・・・やっぱり、アキトさんのこと心配?」
「心配してない・・・って言えばウソになる。でも・・・あの人なら、心配ないって思える自分がいる」
「・・・」
彼女にとって彼は、自分を救い上げてくれた恩人以上に特別だ。
だからこそ、簪は心は計り知れない。
「・・・君は強いね」
「え? ッ!///」
圭はそんな彼女の頭に手をあてがい、そっと撫でる。
「そんなに複雑な気持ちにならなくても大丈夫だよ。今までなんだかんだ言ってあの人、大丈夫だったし」
「う・・・うん///」
「まったく・・・あの人は周りに心配ばっかかけるなぁ~。ヤレヤレ・・・」
呆れたようにほくそ笑む圭。
だが、圭少年よ・・・お前いいのか?
「ギギギ・・・ッ!!」
「・・・会長。乙女が出してはいけない声を出しています」
「だって虚ちゃん! あんなに簪ちゃんの頭をなでなで・・・なでなでしているのよ!! 私だって、長い事やってないのにィイ!!」
「はぁ、ヤレヤレ・・・(また出ましたか・・・お嬢様の
「虚ちゃん! すぐに彼、『野崎 圭』の情報を集めて!!」
隠しカメラで一部始終を覗いていた楯無に圭は本格的に目を付けられてしまうのであった。
―――――――
「・・・そうか、わかった。生徒を乗せたバスは予定通りにB地点を通過・・・・・出番だぞ」
「・・・ゲロゲロリ♪」
・・・どうやら、暗雲は知らない所で確実に迫って来ているようだ。
←続く
これが今年最後の投稿かどうかは、今の所不明です。
全ては『HANNIBAL』のレクター博士が魅力的なせい。
あと、ウィルは純真すぐる。