人外になった者   作:rainバレルーk

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どーもお久しぶりです。毎度ながら不定期更新のrainバレルーkです。
今回から焦点をずらして、『一方その頃~』みたいな話を書いていきます。
では、どうぞ・・・・・



兎は黒い森へと導かれる

 

 

 

―――『『篠ノ之 束』は天才である』―――

 

それはこの世界の誰もが知る一般常識である。

もしこれを知り得ないのならば・・・・・その人物は次元を飛び越えて来た異界の人物か、余程の無知ぐらいな者であろう。

しかし、何故に彼女が『天才』などともてはやされるのか?

それは彼女があるものの発明者であるからだ。

 

インフィニット・ストラトス』。通称『IS』。

10年前に束によって発表された宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツである。

開発当初は注目されなかったが、彼女と()()()()()()()()によって引き起こされた『白騎士事件』によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった。

 

されど、ここで一つの『問題』が発生した。

 

『既存の兵器を凌駕する』。

此れだけなら、まだ世界の均衡バランスのステータスが少し上がるだけだったろう。

だが、問題はその『斜め上』を征くものであった。

 

実はこの代物、原因は不明であるが()()()()()()()()()()()()()()()『欠陥品』であったのだ。

そのお陰で、何を勘違いしたのか解らない頭がお花畑で出来た連中によって、この世界はISを扱えない野郎共にとっては生きにくい『女尊男卑』の世の中になってしまった

 

しかし、その要因足る発明品を造り上げた彼女はそんな事など気にも留めず。『467機』のISを残して、さっさっと雲隠れしてしまった。

此れもただ雲隠れするだけなら良いのだが、そういう訳にもいかないのが彼女の特徴であろう。

 

『白式のデータ収集』、『紅椿のデータ収集』、『妹である『篠ノ之 箒』を華々しくデビューさせたい』、『友人である『織斑 千冬』を楽しませたい』などといった超私的理由を行使し、これまで『ゴーレム乱入事件』『福音事件』といった迷惑極まりない事件を起こしている。

もはや『天才』というより『天災』と言った方が良いレベルだ。

 

 

 

・・・・・だが、そんな自他共に認める天才科学者『篠ノ之 束』にも理解できない事が『二つ』あった。

 

 

WRYYYYYッ!!!

 

一つ目は、『世界で唯一ISを扱える男子』であると発見された『織斑 一夏』の次に発見された『()()()()()()I()S()()()()()()()』と新たに発見された二人目・・・『暁 アキト』である。

 

彼女にとって、身内も同然な一夏が自分の発明品を()()()()()()という事はとても良い事なのだろう。だから彼の専用機には、共犯者との思い出深い『白騎士のコア』が使われている。

 

しかし! 彼女自身全く予想だにしていなかった『二人目の男』であるアキトに対して、彼女は『疑問』と『嫌悪』をぶつけた。

 

『疑問』に関しては『なぜ男であるアキトがISを扱えるのか』に尽きるが、その他にもある。それはなぜかこの男、『過去がわからない』のだ。

天才科学者である自分に知り得ない情報など一つもないと豪語する彼女でさえも、その正体を捕まえる事が出来ない存在だ。顔でさえ、あの福音事件の時に初めて確認したのだから。

しかも、その正体に辿り着く三歩前には、いつもいつも山羊顔のコンピューターウイルスや何処からともなく飛んで来る隕石などといった訳の解らない災難が降りかかるお墨付きもある。

この捉えどころのない存在に彼女は『嫌悪』を抱いている。生まれて初めて出会う理解できない存在にイラついているのだ。

 

 

 

そして、彼女が理解できない『二つ目』の事柄は・・・・・

 

 

『『『UREEEYッ!!』』』

 

日本史上に今後最も最悪のテロ事件として語り継がれるであろう『飛行船事件』の首謀者達『吸血鬼の大隊(ヴァンパイア・バタリオン)』である。

 

彼等は銃火器で武装された飛行船で街にやってくると蹂躙を開始。

街を焦土にし、男を撃ち殺し、女を切り殺し、子供を殴り殺し、老人を焼き殺し、人間という人間を喰い殺した。

けれども()()()()が彼女の勘に障ったのではない。

 

あのテロリスト達は()()()()()I()S()()()()し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

それが不思議でならなかった、それが理解しようとも理解できるものではなかった。

 

ISはその攻撃力、防御力、機動力は非常に高い『究極の機動兵器』。特に防御機能は突出して優れており、シールドエネルギーによるバリヤーや『絶対防御』などによってあらゆる攻撃に対処でき、操縦者が生命の危機にさらされることはほとんどない・・・筈だった!

なのにあの化物共は生身の拳で装甲を粉々にし、手刀で操縦士の心臓を抉り出した。

有り得ない筈なのに、有り得る訳がないのにッ!!

 

 

『そういえば・・・中国の若造が言っていたな『有り得ないなんて、ありえない』・・・とな』

 

「ッ!?」

 

そんな悩んでいる彼女にPCモニターの向こう側から聞いた事のない男の声が聞こえた。

 

彼女は驚き、警戒した。

何故なら、彼女の造り上げたファイアーウォールはアメリカ国防省でも破る事が出来ない自信作であったからだ。

それをこの男は難なく突破し、こうして彼女に語り掛けている。

 

 

『そう警戒するな・・・『腐った世界の作成者』』

 

男は警戒する彼女に対して、無遠慮で太々しい態度で語り掛ける。彼女は男の態度にムッとしながらも言葉を返す、『お前は誰だ』と。

するとモニターに顔全体を包帯で覆った男の顔が浮かび上がり、酷く歪んだ表情でこう言った。

 

 

『私の名は『シュバルツ・バルト』。どうだ小娘? お前の知らない私の知っている『真実』を知りたくはないか?』

 

・・・『黒い森』は『兎』を誘う。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





サブタイで気づいたアナタにはNTの才がある?!

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