『人外になった者』よ! 私は帰って来たァアアッ!
約半年ぶりの投稿に待ってくれていた方も、そうじゃない方も、お待たせいたしました! 新話投稿ですッ!
今回は久々に登場するキャラもいれば、新キャラも出します。
では、どうぞ・・・・・
「・・・やってくれたな・・・」
豪華絢爛のシャンデリアが輝く洋室間。その中央の円卓席に腰かけた一人の男が眼前に吊り下げられているモニターを見て呟く。
そのモニターには、常人には耐え難い余りにも凄惨な映像が映し出されていた。
「やると思っていたが、まさかこれ程とは・・・」
「しかも、よりにもよって不可侵領域である『
男の隣にいる他の人物達も口々に呟く。
呟きは風の音に掻き消えてしまいそうな程に小さいものであったが、その一つ一つに焦燥や怒り等の感情が織り交ぜられていた。
映像が切りの良い所まで移されるとモニターは天井部へ収納されていき、同時に円卓の一人の金髪の男が立ち上がる。
男は何とも古めかしい中世ヨーロッパの軍服を身に纏い、水晶のような美しい『赤い眼』を持っていた。
「今の映像は数時間前に起こった『かの国』での惨状だ。我が手の者が先程、大方の情報と共に送付してくれた。『ヤツら』は半島から30マイル北へ武装飛行船で進撃し、その先で待ち構えていた自衛隊と交戦。三時間後、自衛隊に合流した『彼』と『彼の軍勢』によって『殲滅』された」
「被害程度は?」
「ヤツらは進撃時、大量破壊兵器の投下や地上部隊による破壊活動を行っている。しかも破壊行為によって出た犠牲者を喰らい『
情報を聞いて、円卓の面々は泥にでもなったかのようにドンヨリとした
だが!
「?。なにをそんなに落ち込んでいるの? 高々、『家畜』が幾らか死んだだけじゃあないの」
『『『ッ・・・』』』
あっけらかんした声が部屋に木霊し、円卓に坐した皆の視線が声の主に注がれる。
視線の先には、一本一本が純金で出来たような美しい髪に宝玉のような艶めかしい琥珀色の眼を有し、露出多めのドレスを身に纏う容姿端麗な『吸血鬼』がいた。
「『レイズナー卿』・・・・・あまりそういった発言は控えて頂きたい! 今はこの大事に対処する為の会合なのですぞッ」
「?」
金髪の男の言葉に彼女、『リディア・L・レイズナー』は『何言ってるんだコイツ?』みたいな表情を浮かべ、周りは『またかよ・・・』と呆れたように溜息を吐いた。
「レイズナー卿、いくら貴女が『あのお方』の末裔であっても、先のお言葉は看過できぬッ。状況を考えてもらわないと困るぞ!」
「いや、レイズナー嬢の言う事にも一理ある。何故に我々があのような下等生物に下賜づけなければならぬ?」
「何を言うか! 此度の一件で『
「どうした? 何をそんなにも熱くなっている『アルチェーリ』卿? そう熱くなるのは、自らの立場が危うくなるからか?」
『『アンヘル』・・・ッ! 貴様ァ・・・!!』
レイズナーの一言から、円卓は真ん中から陣営を分け隔てて騒ぎ始めた。
中には議論に熱くなって、偽装した人間の仮面から本性を溢す輩まで表す始末。
「・・・止さないか」
『『『!』』』
そんな中で円卓中央に坐す初老の人物が声を発した。
すると激しく繰り広げられていた議論がピシャリと止まり、皆の視線がその人物へと注がれる。
「今は内輪揉めをしている場合ではない、此度の一件はアメリカとかの国だけでは済まぬのだ。かの国での一件から、数時間と経たぬ間にアジアならびにヨーロッパでも組織的な武装蜂起が起こった。そして、そのどれもが『あの男』の息の罹った兵が先導している始末。・・・・・『
「しかし・・・それは難解ではないだろうか? ネットやその他メディアでは、もう既に大きく取り出されている」
「それをどうにかするのが貴殿の役目だ『シュマイザー』卿。今回の一件を
「・・・ふへッ!? ま、待て待て待て、待ってくれ『ウルフガング』卿ッ!! 」
初老の銀髪灼眼の人物『ジルベルト・R・ウルフガング』の言葉に『ゲルベルト・C・シュマイザー』は四白眼で迫る。其れもその筈、彼の今言った事はとんでもない無理難題であるからだ。
「今起こっている喧騒を情報操作で何とか収める事は出来よう。だがッ! ニューヨークの一件は『イカれジャーナリスト』が引っ搔き回し、かの国では『彼』が『軍勢』をだなァ!!」
「では頼むぞシュマイザー子爵。貴官の尽力が必要だ」
「ッ・・・はァ・・・・・任を承った。これより事にあたる、失礼」ガタリ
突然出された無理難題に表情を重々しく歪めながらもシュマイザーは席をあとにするとその身体を霧状へと変身させ、姿を消した。
「それでは各自、任地での収集と終結に努めろ。解散!!」
会議が終了すると『貴族』達は人型ではないものへと姿を変え、各々の持ち場へと向かっていった。
そんな皆に対してウルフガングは席から動こうとはせずに壁際に飾って絵画へと目線を向ける。それは純金の額縁が施された風景画であった。
「・・・さて・・・これでよろしいかな? 『ウィッチー』卿」
『・・・はい。お手数をお掛け致しました、ウルフガング殿下』
彼の話しかけた風景画は偽装されたモニターであり、それに映し出されたのは、金髪碧眼を有する艶やかな女性。
彼女こそ、秘密結社『
「殿下は止せ、ヴァイオレット。今は私一人だ、いつもの様で構わぬさ」
『では、ジルおじさま。よかったの? ボクがその場に召喚されなくて。一応、ボクは彼の監視担当なのだけれども』
「構わん。というより、君は来なくて正解だった」
『・・・どういう事かな?』
彼の言葉にウィッチーは少々眉間に皺を寄せる。彼女とて、若いながらも一つの結社を治める長。先のウルフガングの物言いは勘に障った。
「そう気分を害すな。君を蚊帳の外に出したのは警戒の為。そして、それが功を奏した」
『?』
「・・・レイズナーの小娘が円卓に現れた」
『ッ!・・・そう・・・やっぱり・・・ッ』
ウィッチーは彼の口から発せられた名前を聞いて、何とも言えない暗い顔を浮かべた。
どうやら、ウィッチーとレイズナーには浅はからぬ因縁があるようだ。
「アヤツ、今までの招集には耳も貸さなかった癖に・・・小童の事となると直ぐに飛び付きおった。しかも、大人しくしているかと思いきや、散々場を引っ搔き回しおってからに・・・ッ!」
『ハハハッ、それはご愁傷様。でも彼女が円卓に来たって事は・・・彼の活躍を見る為だけではないだろう?』
「あぁ・・・『支配派』の連中がまた動き出すだろう・・・・・ああッまったく! ここ十年の悩みの種が再びか・・・再びかァアッ!!」
ウルフガングは牙をギリギリ擦りながら片方の手で腹部を抑え、もう片方の手でガリガリと額をかぐる。かぐった額は皮膚ごと肉が抉れ、筋肉が見え隠れするが、不思議と血は出なかった。
「まぁいい・・・それよりも小童の方はどうだ? 映像を見たんだが、エラくべらぼうに力を使い過ぎたんじゃあないか?・・・
『う~ん・・・それが彼どころか、ドンのおじさま達とも連絡がとれないんだよ・・・だから・・・・・』
「心配するな。小童もだが、あの白山羊は殺しても死なないだろう。生きているさ」
『うん・・・だといいんだけどね・・・』
「ったく・・・あと、情報操作の手筈はしておいた。だが、ニューヨークでの一件と小童の『河』は、あの『シュバルツバルト』が裏で引っ搔き回して此方ではどうにもならん。皮肉な事を言うようだが・・・・・あの男も少しは情報操作の出来る女権主義連中を残して置けばいいものの・・・そういう者共ばかり優先的にやりおってからに・・・・・。他にも、かの国への支援の手筈は整えてある。出入国の規制が出ているが・・・シャルロットと言ったか? 彼女を連れて帰れ、私のプライベートジェットなら問題なかろう」
『ありがとう、ジルおじさま』
「構わぬさ『金の魔女』。ではな」
カチリッとモニター画面を切り、また元の風景画へと戻るキャンバス。そのキャンバスを眺めながら、ウルフガングは一つため息を漏らして伸びをする。
「KUAaa~・・・(あのインフィニット・ストラトスという代物が出て来てからというものの・・・勘違い思考を持った女権主義者共の影響で行き場をなくした男共が増え、不満のある輩を利用して支配派連中が勢力を増強する。ったく、負のスパイラルだな。これだから人間も我々もどうしようもない。人間の最初と二度目の大戦でも危なかったのに・・・・・また『700年前』のように人魔入り乱れての大戦でもしようというのか)・・・ったく、ヤレヤレだな・・・・・」
混沌散漫たる現状にウルフガングは物思いに耽るように再び大きく息を吐いたのであった。
←続く
スランプを乗り越えろッ!