人外になった者   作:rainバレルーk

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クリスマスに書いている~。

ドン「内容はシリアスであろー」

では、どうぞ・・・・・




Ziegen und Vampiren

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

その場にいた全員が怒り狂う猛牛のように暴れまわるISを纏った屍喰鬼(グール)をISコア諸共粉砕した『赤毛の彼女』に釘付けとなった。

その装いは、髪と同様に紅いコートを黒のボディアーマーに纏わせ、黒のホットパンツに身を包んでいる。

中でも特出すべき点は、彼女の両太腿に取り付けられた4本の『マジックハンド』である。そのマジックハンドの先には、鋭利な鎌が銀色に光っていた。

 

 

「・・・戻っておいで」

 

彼女がそう言うと屍喰鬼に突き刺さった刃が独りでに飛んで行き、元の位置へと装着された。

 

 

「な・・・なんだ? 誰だ?!」

 

「今度は一体なんだ?!」

 

「いや・・・この際、誰でもいい! 何だっていいッ!」

 

()()()だ!? ()()()なんだ?!!」

 

防人達は動揺した。

彼等は厄介極まりない化物を倒してくれた事には感謝するが、目の前のISをコア諸共破壊した彼女からは敵となっている吸血鬼兵共とはまた違った『危険なオーラ』を感じていたのだ。

こんな輩が自分達の敵となれば、一気に窮地に叩き込まれると容易く予想で出来る程に眼前の彼女は恐ろしかったのだ。

しかし・・・

 

 

「あ・・・アレは・・・・・!」

 

「はははッ、そりゃあそうだ! 」

 

「『アーカード』がいるなら。そりゃあ、アンタもいる訳だ!」

 

一方で彼女を知っている者は頬を引きつらせ、吸血鬼兵共は狂喜に打ち震えた。

自分達、出来損ないとは比べ物にならない怪物の中の怪物、化物の中の化物。人類種最大の天敵。正真正銘、本物の『吸血鬼』がすぐ目の前に立っていたのだから。

 

 

「・・・・・酷いもんよねぇ・・・ホント、聞いていた以上に酷いものじゃあないの。『ドン』?」

 

「・・・そうであろー。画面で見るよりも、ずぅうと酷いものであろー」

 

周りを拝見し、黄昏れて呟く彼女に背に背負われている山羊『ドン・ヴァレンティーノ』が言葉を返した。

 

 

『『『VAAAYYYYYYYYYYYYYYYYッ!!』』』

 

「なッ、来やがった!」

 

「危ないッ!!」

 

そんな黄昏る彼女目掛けて、吸血鬼兵達は牙を剥き出しにして襲い掛かる。

吸血鬼兵共の行動によって、彼女が味方であろうと感じ取った防人達は援護しようと銃口を吸血鬼兵に向ける。

 

 

「止せ! やめろぉ!」

 

『『『ッ!!?』』』

 

だが、それを駆け付けた藤堂が止めたのだ。

「何故ですか」と言い寄る部下に藤堂は「巻き込まれるぞ」と忠告し、身を低くするよう呼び掛ける。何が何だかわからない彼らはとりあえず、身を地面に伏せた。

次の瞬間ッ!!

 

 

臓物(ハラワタ)をブチ撒けろッ!!」

 

ズザシュッッ!

 

『『『・・・へ?』』』

 

4本あるマジックハンドのリーチが四方に伸び、襲い掛かる吸血鬼兵共の胴体を一瞬の内に斬り刻んだ。お歳暮のハムを切る様に。

それは面上に前方20mまで伸ばされており。もし、藤堂の言う通りに地面に伏せていなければ、防人達は吸血鬼兵達と同じ末路を辿っていたであろう。

 

斬り刻まれた吸血鬼兵の身体は肉塊のそれとなり、中に詰まっていた体液が地面を濡らし、赤い水溜まりを作った。

 

ジジ・・・ガガッ・・・

 

『やっとのご到着か。欧州裏組織連合が筆頭『ドン・ヴァレンティーノ』』

 

『『『!?』』』

 

突如として、黒煙を上げる飛行艦『デクス・ウクス・マキーネ』の艦外スピーカーからこの惨劇を引き起こした張本人の声が響いて来た。

 

 

『そして・・・ククク・・・あのアーカードが見初めた吸血姫(カーミラ)『シェルス・ヴィクトリア』よ。来たまえ、ゴールだ!』

 

ギギ・・・ガコン!

 

大隊長の言葉と共に吸血鬼兵達が出撃してから閉ざされていた入場ハッチが開いた。

 

・・・コツ・・・コツ・・・コツ・・・

 

「「・・・・・」」

 

Hey, du Ninin ist. Willkommen in meinem Schiff(やあ、お二人さん。ようこそわが艦へ)♪」

 

ドンとシェルスがハッチへと歩み寄って行くと入場口には小柄で少女のような少年『シュレディンガー』が礼儀正しく佇んでおり、二人へ丁寧に歓迎の挨拶を述べる。

 

 

「・・・・・」

 

ザンッ

 

「うゲ♪」

 

無言のまま眉をひそめるシェルスは、そんなシュレディンガーの首を自らの武装錬金『バルキリー・スカート』で斬り落とす。

 

 

「全てを・・・全て終わらせるであろー・・・!」シュタッ

 

背負われていたドンは彼女の背中から降りるとシェルスと共に飛行戦艦内部へと進撃していった。

 

 

「・・・な、なぁ?」

 

「なんだよ?」

 

「これ・・・『開いてる』よな?」

 

「あ、ホントだ・・・『開いてる』」

 

防人達は二人の行動に呆けていたが、すぐに気を取り戻す。そして、敵本営の入口が開けっ放しな事に気づいた。

 

 

「今、行けば・・・なあ?」

 

「ああ・・・今、行けば・・・!」

 

『『『殺せるッ!』』』

 

千載一遇、絶好のチャンスである。

このまま残存兵員全員で突撃する事が出来れば敵の本営を落す事ができ、この狂った戦いに終止符を打つ事が出来るのだ。

 

 

『あ。そうそう・・・憲兵少尉?』

 

「や・・・・・ヤー・・・!」

 

だが、そうは問屋が卸さなかった。

伝える事を忘れたかのように大隊長が語り掛けると先程、シェルスが作り上げた血溜まりから一人の吸血鬼兵が上体を起こす。

 

 

「オイ・・・オイオイオイ?!」

 

「な、なんてヤツだ・・・ッ!?」

 

起き上がった憲兵少尉は、文字通り()()しかなく。ズルズルと這いつくばって、血溜まりから脱した。

 

 

『わかっていると思うが・・・今し方、招待客を我が艦内に招き入れた。どうやらその招待客に紛れて、そこの礼儀を弁えない連中が無礼を働こうとしている。そこでだ少尉・・・君の最後の仕事は、そこな無礼者を艦に近づけさせないでくれ。いいな?』

 

「は・・・い・・・了解・・・いたしました・・・!」

 

『それでは少尉、ヴァルハラで会おう』

 

スピーカーがこと切れると少尉は懐に手を伸ばし、目的の物を取り出した。

 

 

「あ、アレはッ!!? マズい! アレは絶対的にマズイ!!」

 

藤堂は少尉が取り出した『ソレ』を目視で確認し、悲鳴にも似た叫びを上げる。

 

 

「止めろッ! ヤツを止めるんだ! 『アレ』を()()()()()()()()()!!」

 

少尉の取り出した『ソレ』は石で出来ていた。

石で出来ていた『ソレ』の右表面には古代的な幾何学模様が入っており、人の顔の様な仮面の作りをしていた。

 

 

「撃てッ、撃つんだ! 『アレ』を破壊しろォ!!」

 

「もう・・・遅いッ・・・!」

 

ただ違っていたのは、仮面の口の部分から二本の『』が突き出していた点である。

 

 

「大隊長・・・ヴァルハラで会いましょう・・・!」

 

バンッ

 

そうして少尉は、出来損ないから魂のない薄汚れた本当の怪物になる為にべっとりと血に濡れた『石仮面』を被った。

 

ザクザクザクザクザクッ

 

「あ・・・あア・・・アァアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!?」

 

仮面の側面から飛び出した『骨針』が少尉の頭に突き刺さり、脳内を()()

 

 

「URY・・・URYYYYYYYYYYッ!!」

 

石仮面の力によって『吸血鬼』になった少尉は損傷した身体を修復し、辺りに溜まっていた血液をすべて吸収した。

 

 

「まったく・・・これは骨が折れるな! 行くぞ、眞田ッ!!」

 

「「御意ッ!!」」

 

藤堂は他の防人達に援護を任せると自分の武装錬金を構え、化物殺しの術を持つ眞田兄弟と共に本物の吸血鬼となった憲兵少尉に向かって飛び出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





次回はドンの天敵、無口な狼が登場します。

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