人外になった者   作:rainバレルーk

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今回は導入回なので、短いです。

ドン「ワシの出番は?」

さぁ? では、どうぞ・・・・・



溜息混じりに彼と彼女は来た

 

 

 

空を悠々自適に泳ぎ、街に災厄を振りまいた飛行船の群れは緑の防人達から浴びせられる火矢によって、次々と地上へ堕ちる。

これで漸く戦いは終わったと誰もが思い胸を撫でおろした。

 

しかし・・・

 

 

「RYYAAAAAAAAAAッ!」

 

「UYYYYYYYYYYYY!!」

 

ズガガガガガガガガガガガガッ

 

燃え盛る飛行船内部から腹をすかせた黒衣の吸血鬼兵共がウジャウジャと溢れ出て来たのだ。

吸血鬼兵達は一心不乱に銃火器の撃鉄を叩く。手持ちの銃弾が無くなれば、近接戦闘用のナイフを引き抜き、持ち前の怪力と牙で襲い掛かった。

 

 

「あったけぇ血ィイ!!」

 

「頸動脈を引きずり出して、ベロベロしてやるぜェエッ!」

 

「ひ、ヒいッ!?」

 

その勢いに防人達はたじろいでしまう。

脚を、腕を、肩を、胸を、腹を、頭を損傷しようとも化物共は止まる事を知らない。

 

 

「ヒャハハハ! お先に!!」カチッ

 

ボグォオンッ!

 

行動不能となった者から順に身体に巻き付けた爆弾を発火させ、周り諸共吹き飛んでいく。それも笑顔で、朗らかにだ。

今、彼等は死せる為に、死に花を咲かせる為だけに走っているのだ。

 

 

「敵戦闘員の抵抗激しく、押さえられません!」

 

「ヤツら死ぬのが怖くないのか?! 手榴弾を抱えて突っ込んで来るぞ!」

 

「このままだと形勢をひっくり返されるぞッ!」

 

常軌を逸脱した吸血鬼兵の行動に現場は混乱の坩堝へと流れ込んでいく。

人間の精神では到底理解できないイカレているともとれる吸血鬼兵達の反撃に緑の防人達は動揺させられていた。

 

 

「(忘れていたッ。ヤツら化物(フリークス)が追い込まれた時が最も危険だという事をッ!!)」

 

藤堂は目の前で繰り広げられる惨劇を目の当たりにしながらも武装錬金『サムライソードX』を振りかざし、襲い掛かる吸血鬼兵をバッタバッタと薙ぎ払う。

 

 

「(暁のあの『援軍』で、大方の形勢は此方に傾いた。しかし、手負いの獣となったヤツらを叩くには勢いが足らない・・・)」

 

吸血鬼兵は自分達の飛行船を囲む防御陣形を張るだけではなく。そこらに転がる骸に齧り付き、栄養補給と屍喰鬼(グール)の生産に着手した。

 

 

「ヴぁ・・・VAAAaaaaaaッ!!」

 

「こ・・・コイツは・・・!」

 

屍喰鬼となった骸は新鮮な肉を追い求めるように防人達に襲い掛かる。

すぐにでも倒さなければ鼠算式に数をズラズラと揃えてくるのだが、新たに屍喰鬼となった骸は先程まで共に戦っていた仲間であった。

 

 

「お・・・お前、俺がわからないのかッ!?」

 

同じ釜の飯を食った仲間が、自分の肉を喰らおうと襲い掛かって来る。殺さなければ、喰われる状況であっても彼等には躊躇いがあった。

 

 

「VAAAAAAAAッ!!」

 

「う、うわああああアアッ!!?」

 

「好きにはさせん!!」

 

ザンッ!

 

かつての仲間に襲い掛かった屍喰鬼に向けて、前線に出ていた眞田兄弟が兄、信雪が刀を振るう。振るわれた刃は頭を切断し、屍喰鬼は断末魔を上げる暇もなく散滅した。

 

 

「大丈夫か?! しっかりしろッ!」

 

「あ・・・ああ。畜生ッ、畜生が!!」

 

襲われた自衛官は放心状態となったが、すぐさまに気を取り直し小銃を握りしめた。

 

惨劇はここだけでは収まらず、他の場所でも死に場所を求めた吸血鬼兵が特攻を駆けまわっていた。

 

 

「『日の出』まで1時間を切っている! あと少し、あと少し耐えるんだ!!」

 

猛反撃を続けている吸血鬼兵だが、そんな彼等にも銀の武器の他に弱点はある。

それは『太陽のエネルギー』。人智を越えた存在になった吸血鬼といえども太陽光をモロに浴びれば一溜まりもなく灰になる。

―――――――そんな時。

 

 

「GURYYYYYYYYYY!!」

 

『『『な、何ィイイッ!!』』』

 

燃え上がる飛行船から吸血鬼兵達を押しのけ、一体の屍喰鬼が現れた。その屍喰鬼を見た者は思わず二度見をし、心臓が飛び出る程の悲鳴を上げる。

 

 

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

「オイオイオイオイオイ・・・冗談じゃあないぞ!!」

 

何故ならば、その屍喰鬼はISを纏っていたのだ。その屍喰鬼は指揮権を持った藤堂に逆らって、吐出したIS操縦士であった。

 

 

「馬鹿に冗談が過ぎるぞ!」

 

「悪夢だ・・・コイツはなんて悪夢だ!!」

 

ただでさえ厄介極まりない屍喰鬼が、『絶対防御』なんていう最強の盾をもった鎧を纏ったという事実ににその場にいた全員が目を疑った。

 

 

「VAAAaaaaaaaッ!!」

 

ドグオォオン!!

 

『『『ぐわァアアアアッ!!?』』』

 

だが目の前のどうしようもない現実は、彼らの反応などお構いなしに振り上げたハンマーを振り下ろす。打撃の衝撃は実に破壊的で、粉塵と相まって衝撃波を起こした。

 

 

「VAAAAAAAAAAAAAッ!」

 

『『『うおおおおおッ!!』』』

 

ズガガガガガガガガガガガガッ!

 

防人の各員はIS屍喰鬼に向けて、根限りの銀製弾を撃ち込む。だが、チート級の防護壁を備えるISにそれは鋼鉄に豆鉄砲を当てる様なものであった。

 

 

「GRYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

「止まらない! コイツ止まらないぞ!!」

 

「例えるなら『知恵の輪が出来なくて癇癪を起したヒステリー持ちの大男』って感じだ!」

 

ドカドカと新鮮な血肉を求めて、IS屍喰鬼は彼らに突進していく。そして、構えたハンマーを振り上げられた・・・・・刹那ッ!

 

 

「『武装錬金』!!!」

 

ズギュシュゥウウ!

 

「VGYAaaaaaaaaaaッ!!?」

 

怒号にも似た叫びと共にIS屍喰鬼の胸に白銀に光る一筋の刃が突き刺さる。刃は屍喰鬼となった操縦士の心臓とISコア諸共を貫いていた。

IS屍喰鬼は断末魔を一つ響かせると力なく地に倒れ伏す。

 

 

『『『ッ!?』』』

 

その場にいた全員がIS屍喰鬼を倒したであろう人物の方を振り向いて、驚愕した。

 

 

「・・・・・ヤレヤレってやつだわ」

 

「まあ、そう言うでなかろー」

 

そこには『処刑鎌』の武装錬金を構えた美しき女吸血鬼と彼女に背負われた白山羊が佇んでいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

←続く

 





新たなる『武装錬金』。わかる人にはわかります。

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