私には、頭のネジが吹っ飛んでるテンプレがこの人です。
ドン「あまりにも極端ではなかろーか?」
では、どうぞ・・・・・
『撃てェエエ―――ッ!!』
ズドォオンンッ!
戦局を大きく傾かせる事となった『零号解放』から一時間。
元陸上自衛隊二等陸佐、現皇家特設親衛隊隊長『藤堂 鏡志朗』の指示の下。東部方面戦車連隊が巻き返しの砲撃を放つ。
ボグォオンッ
「やった! 当たったぞ!」
「ざまぁみやがれ、テロリスト共ッ!」
ISの配備によって、陽の目を見る事が少なくなった戦車・戦闘ヘリ部隊の士官達は訓練の倍以上に張り切っている。
「高射の方から支援攻撃が来る。普通科の方に連絡! あの訳わからん援軍にも伝えろ!」
「鎧を着た季節外れの仮装集団は味方だッ。当てるんじゃあないぞ!!」
「なんか騎馬が負傷者運んで来たんだが、治療しても構いませんねッ!」
彼等は零号解放によって出撃した騎兵や亡者共と連携を張り、吸血鬼兵への包囲網を完成させた。
『目標。敵、飛行巡洋艦。前方距離2000m、誤差修正・・・ってェエ!!』
ドゴォオッン!
雷管が叩かれ、重厚な砲身から放たれた砲弾は狙い通りに飛行艦のどてっぱらにぶち込まれる。
『空中巡洋艦3番艦『アルテラルタイセイ・ゲバルト』着底ッ! 往信途絶ッ、原状維持できません!!』
ボゴォオオンッ
雨霰と砲弾とミサイルの猛襲に晒された飛行艦は、次々と地に伏せて行く。
一斉砲火を浴び、空中分解するもの。形を保ったまま、着底と同時に爆発するものとあれ程、空を悠然と泳いでいた飛行艦隊は見るも無残と成り果てていった。
「2番艦『アルフレッド・ローゼンベルク』、炎上中!」
「上陸部隊との連絡取れませんッ!」
「第7小隊、往信途絶!」
「全滅したのでは!?」
「全滅だと!!?」
大隊の本営艦『デクス・ウクス・マキーネ』には次々と撃墜、通信途絶の連絡が雪崩れ込む。
あれ程までに猛撃を続けていた軍団が、たった一人の吸血鬼のせいで崩れ去った。その突然すぎる崩壊によって、動揺の色が全体に広がっていたのであった。
「出撃した
「どうなっている?! 下では一体何が起こっているんだッ?!!」
「だ、大隊長!」
「大隊長殿、ご指示を!!」
追い詰められる焦燥感から烏合の衆へとなり始めた兵士達は、指揮官席を陣取る頭目に指揮を仰いだ。
「ガブリ・・・ムグムグ・・・」
だがそこには、焦る彼等などお構いなしにホットドックを頬張る大隊長が悠長に構えていたのであった。
「大隊長殿!!」
「ムグムグ・・・ゴクッ、ぷはぁー・・・・・うるさいなぁ、静かにしろ」
『『『ッ!?』』』
圧倒的な温度差を兵士達はすぐさま感じ取った。
突然の大打撃に慌て、焦りを募らせる兵士達の一方。このデブ眼鏡の男は額に冷や汗一粒もかかず、クラシック音楽でも聞いているかのようにリラックスしていたのだ。
「出し物の佳境くらい静かに鑑賞したまえよ。たかが
『『『あ・・・あぁ・・・』』』
呆ける兵士達をよそに大隊長は立ち上がり、指揮台を降りる。
「艦長」
「はッ!!」
「全艦の残存全乗員に火器と弾薬を分配しろ、負傷兵で立てる者全てだ。立てない者には手榴弾を配れ」
「なッ!!?」
彼の指示に艦長は息を飲む。この男は、部下共々『特攻』をかける気でいる事は明白であった。
「し、しかし・・・しかし、全員分の銃も弾薬ももはやありません」
「じゃあ鉄パイプでも資材でもなんでもいい、兵隊は武装して集結だ。『アレ』が終わったら、皆一緒に突撃しよう。楽しいぞ、すごく。歌なんか歌いながら皆で遮に無に突ッ込むんだ、楽しいぞォ」
「ッ・・・!」
「Zum letzten Mal Wird Sturmalarm geblasen! Zum Kampfe steh’n Wir alle schon bereit!♪・・・・・どうした、なぜ歌わない?」
隣で歌うどころか、苦虫を噛み潰したように顔を歪める艦長に大隊長は不思議そうに語り掛ける。
「も・・・もうウンザリだ! ISに対する意地で我々は貴方に、レギオンについて来た。だが、もうウンザリだ!!」
艦長は吸血鬼化されていない人間であった。彼の他にも焦燥感にかられる兵士達も人間であった。
彼等はISという発明品に人生を狂わされ、その底を味わった。そんな時に彼等は反ISを掲げるレギオンに入った。しかし・・・
「これはもう戦いじゃない! 部下をこれ以上殺させるわけにはいかない!!」
人間の器ではもう堪えられなくなった。これが出来損ないでも吸血鬼ならば、まだ堪えられただろう。でも、所詮は人間の心。今、起きている現状と場景に潰れたのだ。
「オイオイ・・・ここまできてまだ闘争の本質がわかってないのか。なんとも物わかりの悪い。『彼]』と800年間、狭い島国で殺し合って来た戦士の末裔を相手にする時点でわかる事だろう」
『ヤレヤレだ』と大隊長はため息を漏らし、呆れ果てる。
「・・・だが・・・まぁいい。抗命は戦いの華だ。ドクトル」
「はい、大隊長」
呆れた表情のまま、彼は隣に立っていたドクトルを呼ぶと彼は大隊長に輝くほどに磨かれた拳銃を渡す。
「クふッ」
「ひッ・・・!?」
ダンッ ダンッ ダンッ ダンッ!
大隊長は拳銃を受け取ると同時に艦長に向けて発砲した。だが、放たれた弾丸は右にそれ、左にそれて全く当たらずじまいである。
「ダメだ、ドクトル。当たらん」
「ハァ~・・・相変わらず射撃が下手すぎます。それでも元牙狩りなんでしょう? どうやって戦っていたんですか?」
至近距離である意味スゴ技と言える所業に笑う彼にドクトルは困り顔で呆れ笑う。
ザッザッザッザッザッザッザ
「ッ!?」
大隊長が笑う中、難を逃れたへたり込む艦長の周りを黒い戦闘服に身を包んだ兵士、吸血鬼兵が囲む。
「大隊長殿ッ」
「ん? ああ、射殺しろ。敗北主義者だ」パチンッ
ズダダダダダダダダダダッ!
音と同時に艦長へ構えられたアサルトライフルが火を噴く。艦長は最期の断末魔も上げられぬままに細切れの見せしめの肉塊と化した。
「憲兵少尉」
「はッ!!」
「残存兵員に武装させろ。命令に従わない者は君の判断にまかす」
「了解致しました、大隊長殿ッ。総員注目! これより武装を装着する。戦えるものは立っても伏しても戦え! 大隊長命令だ!! 従えぬ者は粛清とするッ!」
大隊長から少尉へ、少尉から全総員に伝えられた最終決戦の通達。喜々とし、嬉々としていたのは化物とイカれのみである。
「物事にはハレもケもある。闘争の根幹を教育してやれ。何者かを打ち倒しに来た者は、何者かに打ち倒されなければならぬ。それに作戦は全て計画通りじゃないか。この戦争は、この私の小さな手の平から出た事など一度たりともないのだ」
彼はニタニタと相も変らぬ薄ら笑みを浮かべて、指揮台へと着席する。楽しい楽しい夢の続きを見ている子供の様に大隊長は朗らかに、狂ったように笑い続ける。
そうして、飛行戦艦『デクス・ウクス・マキーネ号』は自衛隊の指揮する戦車部隊の砲撃によって、地面へと緩やかに不時着した。
←続く
今後の展開に頭がフル回転するゼェ。