ガンダムブレイカー2外伝 機動戦士ガンダムEX 異次元の救世主 作:ZEXT933
はたから見れば巨大な流星の落下。
その衝撃でPG機体は吹き飛ばされ、多数の敵機を巻き込みながら倒れこむ。
流星から溢れた光は次第におさまり、そこに立っていたのは蒼き巨人。
――エクスガンダム。
そう呼ばれた巨人は、かつてこの世界を救い、さらに数多の世界を救ってきた正真正銘の
この世界を去ったはずの彼は今、己が仲間を害そうとする木偶共を、閻魔が悪人にするがごとく睨みつけていた。
「っ……エクス!!」
大破したクアンタの中で満身創痍のレーアが叫ぶ。
「怪我はないかい?」
そんなわけがない。
大破状態のクアンタをスキャンしたところ、中にいるレーアは骨格内蔵共に大きなダメージを受けている。
――だが声をかけずにはいられない。意識を失えばもしものことがあるだろう。
「じっとしてて。大丈夫。」
だから――。
向き直る。敵機40~50体、どれも生体反応は無し。
「――すぐに、済ませる。」
エクスガンダムが敵機に振り向くのと、空中に出現した
――1、 ――2。
目標修正。
――3、 ――4。
――――5。
勢いのまま、1つ目のカートリッジを空にする。
収束したコズミウムの光は凶暴な光弾と化し、1発ごとに5体以上の敵機を物言わぬクズ鉄へと変えていく。
無論、敵機も黙ってはいない。
始末の悪いことに武装だけはしっかりとしているのだ。
存在するかわからないほどの希薄な意志でエクスガンダムを敵と認識すると、その銃口が火を噴く。
「――甘い!」
エクスガンダムはその強靭な脚で地面を踏み抜くと、足だけで器用に床板をひっぺがし、蹴り飛ばす。
敵機のビームが床板に炸裂した時には、既にエクスガンダムは側転しつつ飛翔。ライフルのカートリッジをリロードしていた。
―馬鹿な、と。
意志のない敵機の逡巡をかき消すように、コズモライフルが再び輝いた。
雑魚の殲滅ならばすぐにでも終わるだろう。
だが、ここには。
――うおおおおおん、と。
叫ぶような駆動音を上げて立ち上がる大巨人。
エクスガンダムの3倍以上はあるだろうそれは、突然己の前に現れた強敵を捻り潰さんと仁王のごとく掴みかかる――!
「――おっと!」
大巨人の振り上げたアームハンマーを躱せば、地面に穴が空き、壁は砕けた。
その膂力から繰り返される威力。速度が遅いぶん、当たりはしないだろうが周囲の被害は馬鹿にできない。
周囲の破壊を加味すれば、いつまでも避けられるものではないだろう。
しかもここには傷ついたレーアもいるのだ。
――ならば。
急停止。大巨人を睨みつける。
「どこを見ている、私はここだ。捻り潰したいなら全力で来い!」
大巨人の雰囲気が少しだけ変わる。
――怒り? 少なくとも挑発の効果はあったようだ。
――おおぉぉぉぉぉん!
激しい駆動音。充分に力を込めた大巨人の本気のタックル。大質量の塊がエクスガンダムに迫り、その場を蹂躙した。
巻き上げられた瓦礫。巻き込まれた敵機の破片。それらが合わさり大量の粉塵が舞う。
視界を遮るそれが晴れたとき、エクスガンダムの姿はなく、大質量による破壊の痕跡だけが姿を現した。
瓦礫の中から大巨人が立ち上がる。全開駆動とタックルの反動により、彼もまた無事ではなかった。
――おおぉぉぉん。
勝ち名乗りの代わりに駆動のチェックをする。――出力低下。――全開駆動は不可能。
その時。
「……おい」
破壊したはずのそれが、肩に乗っている事に気づいた。
――ウォォォォン!
己の肩に乗っている小人を振り払おうと手を挙げる大巨人。
――が。
動けない。
縛られたかごとく動けない。
――ギギ、ギギギ。
関節が軋む。歯車が回らない。
事実、縛られていた。
ロープ状に変化したコズモセーバーが体の自由を奪っている。
大巨人の全力のタックルは、エクスガンダムの華麗な月面宙返りで躱され。
その勢いを利用したエクスガンダムの捕縛術により、完全に拘束されていた。
――ガァァァァッ!
大巨人は拘束を振りほどこうと、その身をくねらせ、揺らし、暴れる。
その肩先にエクスガンダムはいない。コズモセーバーを伸ばしつつ、既に地上に降りていた。
「今度はこちらの番だ!」
各部関節、駆動パワー最大。コズモセーバー伸長停止。ならび、萎縮を開始。――その勢いで。
全力を以って、この大巨人を引き倒す――!
もちろん常識的には不可能である。PG規格の機体とエクスガンダムでは、
――質量が違う。
――膂力が違う。
――巨きさが違う。
コズミウムの力を以ってしても、両者の間には埋められない差が存在する。
――だが今。
大巨人は、拘束されている。
拘束を振りほどくほどの出力も出せない。
できることは、体をくねらせ藻掻くことだけ。
――つまり。
「……バランスが、悪い!」
倒れる。
エクスガンダムの3倍もの大きさを誇る大巨人が倒れる。
地響きをあげ、巨大な質量が仰向けになった。
「まだだ……!」
倒れたそれを引きずる。
己を中心にして、全力で引きずる。
――否、引きずってはいない。
己を中心に、ハンマー投げの如く振り回そうとしているのだ。
エクスガンダムの各部関節が唸りをあげる。
明らかに質量が違うものを振り回そうとしてるのだ。悲鳴を上げて当然である。
不可能である。
無駄である。
無謀な試みである。
コズミウムの力を以ってしても、両者の間には埋められない差が存在する。
「ハアアアアアアァ!」
エクスガンダムが雄叫びをあげる。回転の速度が増す。ただ――それだけ。
――否。
――訂正しよう。
埋められない差を、埋める者こそが。
――エクスガンダムなのだ!
「オオオオオオオオ!!」
わずかに。
わずかに大巨人の体が浮く。
回転は増している。大巨人の体はさらに浮く。
――回転を、増す。
浮く。
――回転を、増す!
重力が方向を変える。
――回転を
「――まわれぇぇぇぇぇぇ!!!」
――ドック内に、大竜巻が出現した。
周囲の木偶共をまとめてなぎ払いながら回転する、破壊の大竜巻。
開放すれば、質量爆弾そのものと化すだろうそれを。
渾身の力を以って充分に回転させたそれを。
「っだあああああぁぁぁぁっ!!」
――破壊の槌として、天へと解き放った!
壁が裂ける。
屋根を突き破る。
それでも威力を落とさず、天に向かって飛翔する破壊槌。
――まだ終わってはいない。
ライフルを手に取り、カートリッジをロードする。
――その数3つ。
3発分のエネルギーカートリッジが1発ずつ連続して充填、排莢される。
構えたライフルには3発分…いや、それ以上のエネルギーの奔流が出口を求めて渦巻いている。
――コズミューム……!
天に昇る大巨人を見やる。――照準よし。 ――そして。
「ッブラスタァーーー!!!!」
強大なコズミウムエネルギーの解放、その反動にエクスガンダムの体が後ずさる。
――昇竜と化したコズミウムの光。
その光は、不様にも空を翔るものをよしとせず。
――ッグオオオォォォン!
分子の塵に還すべく、その身に激しく喰らいついたのだった。
<登場人物紹介>
・エクスガンダム
【挿絵表示】
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次元を超えて別の世界へ移動する能力を持つ、意志を持った機械生命体。
どのようにして誕生したのか、なぜ様々な世界を旅しているのか、その出自には謎が多い。
動力源は空間中に存在するコズミウムを吸収し、血液のように循環させる無限動力、
【Hyper-Dimension-Convertible-Annihilation-Reactor Type:EXTRA】
コズミウムエネルギーによって次元移動の他に、瞬時に装備の召喚・換装ができ、人間への擬態も可能。
コズミウムはどの世界にも存在している超自然的なエネルギーだが、世界によって個別の特徴があり、それが体質に合わないと機体の機能不全など様々な影響が出る。
以前、ガンダムブレイカー2の世界を訪れた際はコズミウムが機体に合わず、自己修復能力や機体表面を覆い防御力を高めるコズミウムコーティングを始めとした機体性能の大幅な低下、能力による換装機能の使用不能など大きな制限を受けた。
全身に装備されたスラスターで有人機では不可能な圧倒的な機動が可能。
無人機だがコクピット自体は残されており、緊急時にはシェルター代わりに要救助者を載せ、その場合はエクスガンダム自身で搭乗者へ配慮した動きをする。
機体全体はナノマシンによって構成されており、自己修復能力と長期的なメンテフリー、環境に合わせた機体のアップデートを担っており、同じ外見でも時期によって機体性能が大きく変わる。
・武装
コズモマグナム
【挿絵表示】
コズミューム光弾を撃ちだすライフル。
ユニコーンガンダムのビームマグナムに似ているが様々な世界の技術で改良が施され、出力調整が可能になり取り回しが良くなっている。Eパックには圧縮されたコズミウムが充填されており、元のビームマグナムには無かった機能として1度にEパックを複数消費することにより爆発的な破壊力を持つ光線、コズミュームブラスターを放つことが出来る。
コズモセーバー
【挿絵表示】
コズミウムエネルギーの刃。
ビームサーベルのようなの機能の他に敵に巻きつける事も出来る。