仮面ライダー Chronicle×World   作:曉天

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第三十節 重力

蒼い空に、雲が山のようにそびえていた。

 

 

じー、

じー、

 

 

と、セミが鳴いている。

 

ぎらぎらとした太陽が、城南大学のグラウンドに降り注いでいた。

 

アメフト部が、練習をしている。

 

ボールの取り合いをしている内に、加速の付いたボールに、伸ばされた指先が触れ、その僅かな接触で、くるくると飛んでゆく。

 

校門の方まで、だ。

そのボールを、黒い手袋がキャッチした。

 

城茂である。

茂は、上着を肩に引っ掛け、反対の方の手で、ボールを受け止めていた。

 

茂はボールを放り投げると、軽く、蹴り上げた。

学生たちがボールを受け取り、茂に礼を言った。

 

練習を再開する。

その姿を眺める茂の傍に、風見たちがいる。

 

風見志郎、結城丈二、神敬介、アマゾンである。

 

「お前も、やりたいか?」

 

風見が訊いた。

茂は、元アメフト部員である。

 

「ええ」

 

と、茂は頷いた。

 

「でも、これから人に会う約束があるんでね、汗臭くっちゃいけねぇや」

 

茂はそう言って笑う。

 

「この間は――」

 

敬介が言った。

 

「ひやっとしたぜ」

 

デッドコンドルとの、決着の事である。

 

あの時――

 

嘴を開いたデッドコンドルの口の中目掛けて、ストロンガーが突撃した時だ。

 

超電子ダイナモの活動時間の限界が迫る中、デッドコンドルに超電子ドリルキックを叩き込もうとした茂であったが、デッドコンドルも、デッド・ブレスの発射準備を終えていた。

 

良くて、相討ちだ。

仮にデッドコンドルを貫通しても、ダイナモのタイム・リミットが来て、自爆する。

 

そう思われたが、しかし、不思議な事が起こった。

 

デッドコンドルが放とうとしたデッド・ブレスが、僅かに逸れたのである。

 

ストロンガーは、その隙間を縫って、デッドコンドルに必殺キックを打ち込んだ。

そうして、デッドコンドルの本体を破壊したのである。

 

デッドコンドルを貫通したストロンガーは、タイム・リミットに何とか間に合い、通常形態に戻りながら、地面に叩き付けられた。

 

その背後で、デッドコンドルの肉体が爆発したのである。

 

「あの時、何をしたんだ?」

 

結城の、聡明な頭脳を持っても、理解出来ない現象が起こったのだ。

 

茂は、にぃ、と、笑ってみせるだけである。

だが、何があったのか、茂には分かっている。

 

タックルが、助けてくれたのだ。

岬ユリ子だ。

 

あの時、茂は、時間が停滞した感覚を覚えた。

その止まった時間の中で、ユリ子の幻を見た茂は、“電波投げ”を行なっていた。

 

電波投げ――

 

両手から特殊な電磁波を発生させ、対象に手を触れずに投げ飛ばす技だ。

岬ユリ子・タックルに備えられた機能であった。

 

それを、ストロンガーも使う事が出来たのだ。

 

何故ならば、タックルも、ストロンガーと同じく強化改造人間であり、改造が完成していたならば、ストロンガーと同等の力を持つ、真の意味でのパートナーとなる予定であったからだ。

 

であるから、タックルの使える技は、ストロンガーは使う事が出来るし、ストロンガーの使う技も、本来ならばタックルは使える筈だったのだ。

 

その事に、あの刹那、茂は気付いた。

 

そうして、言うなれば“超電子電波投げ”を敢行し、デッド・ブレスを反らしたのだ。

更に言うならば、茂は、あれは、ユリ子のお蔭であったと思っている。

 

ユリ子の魂――餓蟲、霊体が、同じく霊体であるデッドコンドルの技から、茂を守ってくれたのである。

 

そのように、思っていた。

 

この事は、茂の中に秘めて置きたかった。

 

尤も、アマゾンだけは、その事を感付いている気配があった。

風見や結城や敬介が、ちょくちょく茂に質問するのを、

 

「まぁ、まぁ」

 

と、それとなく遮ってくれているのが、アマゾンなのである。

 

茂は、今回も、結城に対してそう言っているアマゾンを腕で引き寄せて、ごわごわの髪を、グローブでくしゃりと撫で上げた。

 

「っと、それはそうと――」

 

ここから先は、他のライダーたちと共有すべき話題だ。

 

「実は、先輩、若しかしたら超電子ダイナモを起動させている時間が、伸びているかもしれません」

「ほぅ?」

 

興味深そうに、風見。

 

茂は、そのように感じていた。

 

「ともすると、かなりの時間、超電子ダイナモを使っていられるかも……」

「――」

「若しかしたら、チャージ・アップをしなくとも……」

「あり得る事だ」

 

と、結城が言う。

 

「俺たちは、進化している」

「進化?」

「主に、脳や神経の事だが、そういう事もあるかもしれないな……」

「進化、ですか」

 

茂は、神妙に呟いた。

 

「人間には……いや、生物全てには、そのような働きがあるんだ」

「働き?」

「より良い方向へと、進んでゆこうとする働き、パワーさ」

「――」

「それは、改造人間だって変わらないよ」

「変わりませんか」

「改造人間とは言え、脳は人間のそれだからな……」

「――」

「まだ、俺たちは進化を続けてゆく事だろう」

「その果てに、俺たちはどうなる?」

 

風見が訊いた。

この中では、最も、強化改造人間としての進化――深化が進んでいる。

 

本郷猛などは、その風見を遥かに凌駕しているのだ。

 

「分からない……」

 

結城は言う。

 

「けれども、人ではなくなったとしても、きっとそれは、生命のありようなのだろう」

「――変わらない、思う」

 

アマゾンが口を挟んだ。

 

「変わらない?」

「人も、獣も、変わらない……」

「――」

「虫も、魚も、花も、樹も、風も、水も……」

 

アマゾンが、空を見上げた。

 

風が吹いている。

蝉の声が聞こえていた。

 

「例え、俺たち、人でなくとも――神、なっても……」

「――」

「変わらない。皆、同じ……」

「――曼陀羅か」

 

しみじみと、敬介が頷いた。

茂も、あの絵の事を思い出していた。

 

黄金と漆黒を絡めた人物が、天地の獣に跨っている絵――

全ては創造の世界樹より拡散され、同じ場所へと還ってゆく……

 

「そろそろゆくか、結城」

 

風見が、ぽん、と、結城の肩を叩いた。

 

「お、そうだな」

「アマゾン、ゆこうか」

「うん」

 

敬介とアマゾンも、踵を返す。

 

茂が会う約束をしていた相手――さくらが、風道館から走ってやって来た。

 

空手衣を着ている。

拳サポーターも付けたままだ。

薄らと汗を掻き、頬がピンク色に上気していた。

 

「済みません、少し、抜けられなくて……」

 

校門の傍で、さくらが、頭を下げた。

 

「構わないさ」

 

茂が言う。

 

さくらは、茂の顔をまじまじと見上げた。

 

「この間から、助けられてばっかりですね……」

「正義の味方冥利に尽きるってぇものでぃ」

「――」

 

からからと、陽気に笑う茂を見て、さくらが微笑んでいる。

さくらの笑顔からは、険が取れている。

 

「あいつらが、深雪や、他の人たちの命を奪っていたんですね」

「だろうな」

「――ありがとう御座いました」

 

もう一度、さくらが、頭を下げた。

 

さくらが、右手を差し出して来た。

茂が、その手を握った。

茂は絶縁体のグローブを付けている。

 

「あっ――」

 

さくらは、拳サポーターを付けっ放しであった事に、今頃、気付いたらしい。

一旦、握った手を放して、サポーターを取ろうとした。

 

しかし、茂は、そのまま、さくらの手を握っていた。

 

「サポーター、外さなきゃ……」

 

しおらしい声で、さくらが言う。

 

「そいつぁ困る」

 

茂が明るく言った。

 

「え?」

「君の握手は、俺には、熱過ぎるのさ。火傷しちまうよ」

 

そうして、両手で、さくらの右手を包み込んだ。

 

グローブの内側の、コイルを巻き付けた指の感触が、サポーターのお蔭で分かり難い。

さくらは、左手を、茂の右手の甲に重ねた。

 

「それじゃあ」

「はい」

 

二人は手を離した。

 

茂が、さくらに背中を向ける。

赤い薔薇の刺繍が、さくらの方を見ていた。

 

「――茂さん……」

 

彼の背中に呼び掛けると、さくらは、咽喉から声を滑り出させた。

 

歌を、歌った。

 

一人の男の生きざまを、歌っていた。

その音色は、あの時、倉庫に響き渡ったものであった。

哀切な口笛に、ギター、フルート、草笛が、重なってゆく。

風のように清涼で、稲妻のように力強い調べだ。

 

口笛と共に現れ、雷電のように戦って、雲のように去ってゆく――

 

そんな男の物語を、さくらは、歌い上げた。

 

さくらの歌を背にしながら、茂は、停めてあったオートバイ――カブトローに跨り、母校を離れて行った。

 

彼の後ろ姿を見送って、さくらは、歌を終えた。

さくらは、校門に背を向けて、風道館に戻ろうとした。

 

その彼女に、

 

「素敵な歌ね」

 

と、鼻に掛かった声が掛けられた。

 

「え?」

 

驚いたような顔をして、さくらが、そちらを振り向いた。

茂が去ってゆき、その代わりに、そこに、一人の女性が立っていた。

 

「み……深雪?」

 

さくらは、眼を見開いて、言った。

 

そこに立っていたのは、さくらが、この一件に関わる事となった、星河深雪であった。

 

ブラジルに留学していた事があり、さくらとは、正反対な性格ながらも、意気投合し、親友となった。

 

彼女の訃報が、さくらに、夜の町をうろつかせていたのである。

 

「ええ、久し振りね、さくら」

 

深雪は、ぽってりとした唇の端を、小さく上げてみせた。

呆気に取られるさくらに歩み寄る。

 

「深雪なの? 本当に?」

「ええ」

「幽霊とか、そっくりさんとか、双子の姉妹とかじゃないよね?」

「もう、さくらってば、何を言っているのよぅ」

 

変なの――と、深雪は、さくらの額を指で小突いた。

さくらは、深雪に触れられた所を手で押さえて、じわりと涙を浮かべた。

 

「あ、ご免、痛かった?」

「違うよぅ……」

 

さくらは、鼻を啜った。

女性にしては逞しい腕で眼元を拭う。

 

「深雪ぃ」

 

主人を恋しがる犬のような声を、さくらが出した。

 

「さくらったら」

 

深雪はそう言うと、すぅ、と、手を伸ばした。

左手をさくらの頬にやり、右手を顎の下に差し込んだ。

そして、唇を押し当てた。

 

「――⁉」

 

突然の行動に、さくらは、面食らったようであった。

 

深雪は、さくらの口の中に舌を入れ、小さく動かした。

さくらの眼から、光が消えて、虚ろになる。

その間に深雪は唇を離し、さくらに背中を見せた。

 

ぽぅ、と、していたさくらに、後ろから、

 

「せんぱぁい」

「さくらさん」

 

と、吉塚と相澤が駆け寄って来た。

さくらは、びくっと身体を震わせて反応し、振り返った。

 

「んー、どうしたの?」

「休憩時間、終わりです」

「あ、そっか」

 

さくらは、頭をぽりぽりと掻いて、風道館へ戻ろうとする。

 

「先輩、城さんと、どんな感じでした?」

「え? 普通にお礼言って、握手したよー」

 

吉塚の質問に、きょとんとした様子で、さくらが答えた。

 

「そうじゃなくてぇ」

「ね、神さんはいましたか? 神さん!」

 

相澤が詰め寄って来る。

 

残念ながら、敬介は、さくらと茂の邪魔をせぬよう、風見たちと一緒に帰ってしまっていた。

 

「でも、良かったですね」

 

吉塚の言葉に、さくらが首を傾げる。

 

「星河さんでしたっけ。その方の、仇、討てて」

「――ん?」

 

さくらは、ますます、訳の分からないと言った顔になる。

 

「前田先輩?」

「さくらさん?」

「あのさ……星河さん――って、誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーキ色の――ナチス・ドイツの軍服を身に着けた暗黒大将軍は、椅子に深く腰掛け、正面の壁に飾られた絵を眺めていた。

 

デッドライオンに渡した戦闘員たちが、三崎美術館から押収して来たものだ。

 

中心に、金と黒で描かれた、多臂の人物。

その足元には、鳥と獣の交わった生物。

黒い空間に放射される金の光と、金の空間に描かれる黒い螺旋。

 

ハリ・ハラであり、世界樹であり、進化の系譜であり、曼陀羅であると言われていた、あの絵である。

 

それを、暗黒大将軍は、片方の瞳で、じぃと見つめていた。

 

そこに、足音が聞こえて来た。

 

暗黒大将軍が椅子から立ち上がると、顔を出したのは、マヤであった。

 

黒い髪を頭の上で結わえている。

涼しげな眼元、通った鼻梁、ぽってりとした唇――

 

豊満な身体を、鎧で包んでいた。

 

無骨さの少ない、肌の露出は多くはないのに、女性らしさを強調するような鎧であった。

 

左の帯から、剣をぶら下げている。

 

「どうだった、仮面ライダーたちの感想は」

 

マヤが訊いた。

 

「あれ程とは、思いませんでした」

 

暗黒大将軍が答える。

 

「しかし、デッドコンドルは未完成でありました。だから……」

「若し完成していれば、ね」

 

 

ふ、

ふ、

 

 

と、マヤは薄く笑う。

 

「あら、これは……」

 

そのマヤが、壁に掛けられた絵に注目した。

 

「懐かしいわね。メキシコにいた頃、描いた絵よ」

「そうなのですか」

「ええ」

「何やら、かなり古いものとか言われていましたが……」

「ふぅん……」

 

マヤは、いつ頃、それを描いたのかは言わなかった。

 

「しかし、見事な曼陀羅ですな」

 

暗黒大将軍が、マヤの隣に立ち、その絵を見上げた。

 

「曼陀羅?」

 

マヤが訊き返す。

 

「ええ」

 

暗黒大将軍は、美術館で、茂たちがしていた絵解きを、マヤに語った。

 

「――別に、そういう意図で描いたのではないのだけれど」

 

聴き終えて、少しむくれた様子の、マヤ。

 

「そうなのですか」

「ええ」

「では、これは、何を?」

「――愛しいものと、私の願いよ」

 

マヤは、手甲を填めた手で、前髪をそろりと撫で上げた。

 

「はぁ」

 

暗黒大将軍は、小さく顎を引いた。

 

「話を戻すけど――」

 

マヤが口を開いた。

 

「仮面ライダーの事よ。あれ、どうしたら良いと思う?」

「どのようにすれば、あれらを破壊出来るか、という事ですか?」

「ええ」

「そうですな、やはり、毒は、毒を持って制す他にはないかと」

「強化改造人間?」

「ええ」

「それは分かっているのよ」

「では――空を飛ぶ改造人間など如何でしょう」

 

暗黒大将軍が提案した。

 

「空を?」

「はい。デッドコンドルとの戦いで、彼らは、飛翔するデッドコンドルに対し、些か、手こずっていたように見えました」

 

過去のデータでも、仮面ライダーたちが、空飛ぶ改造人間たちに苦戦を強いられたという事はある。

 

しかし、その飛翔する改造人間たちを、ライダーは尽く破って来た。

マシンを用い、特訓を行ない、天空の敵を、大地から打ち落とし続けて来た。

 

又、ストロンガーなどは、ストロング・ゼクターの事もあり、イオン・クラフトなどを用いれば、飛行が出来ないという訳ではないだろう。

 

「そもそも、空を飛ぶ生物を真似る方が難しいのです」

 

暗黒大将軍が言った。

 

「重力ですよ。重力の枷は、我々が思うよりも、ずっと高い壁なのです」

「確かに――プテラノドンとかケツァルコアトルスのような、巨大な飛翔動物も、体躯と比べて、その体重は軽かったと言われているわね。逆に言えば、その体重を持ち上げるのに、それだけの大掛かりな装置が必要だったという事……」

 

マヤは、松本克己の事を思い出した。

 

技術的な潮流で言う、強化改造人間第四号である彼は、飛行服をモチーフとした強化服を纏っている。

 

それは、彼が、スカイサイクロンというプロペラ機を、S.M.R.――仮面ライダーとしての愛機に用いているからである。

 

陸上を制さんとした第一号・第二号のサイクロン号、第三号・黒井響一郎のトライサイクロンに続くマシンは、次元を一つ上げて、空での戦闘を可能とした。

 

しかし、体重で九〇キロもゆかない克己に空を飛ばすのに、スカイサイクロンなどという兵器が必要な事からも、暗黒大将軍の言いたい事は分かる。

 

「ですから、抗すべきは重力なのです」

「重力低減装置――か」

 

マヤが呟いた。

 

「良いわね、それ。よぅし、じゃあ、次の強化改造人間は、重力低減装置を組み込んだ、空を飛ぶ改造人間という事にしましょう」

「お気に召して頂いたようで」

 

暗黒大将軍は、慇懃に頭を下げた。

 

「貴方には、その任務を与えましょうか。八人目の強化改造人間を完成させ、世界征服の為に尽力する――それで、どう?」

「謹んで」

「首領も、新しい組織作りに奔走しているわ」

「おぉ、首領が……」

 

暗黒大将軍は感慨深そうに呟いた。

この男も、ショッカー首領とは浅からぬ関係がある。

 

元々は、ナチス・ドイツの将校であったが、“人狼化現象”の実験に参加した。

脳下垂体ホルモンを調整する事で、人体の組織を変化させる現象だ。

それを起こしたナチスの兵士たちの殆どが、拒絶反応で死んだ。

生き残ったのは、ゾルと、暗黒大将軍の二人である。

ゾルの率いた“人狼部隊”の一人として、彼は戦った。

 

戦争が終わる直前、敗色濃厚なゾルの許に、一本の通信が入った。

 

日本へ来い――

 

優秀な将校や兵士たちを引き抜き、ゾルたちは、日本へやって来た。

そこで、ショッカーという組織の創設に、立ちあったのである。

 

それから二〇年後、暗黒大将軍は、野本健の肉体を自らのものとして、改造人間第一〇号・トカゲロンとして戦い、仮面ライダー第一号・本郷猛に敗れた。

 

それでも、人格のバック・アップを取って生き延びていた彼は、人狼化現象に対する免疫と、トカゲロンの肉体に順応した特異体質を買われ、首領直属のデルザー軍団の末席に加えられる事となった。

 

ジェットコンドルとして第一号・第二号と戦い、敗れたものの、彼は、こうしてここに立っている。そして、仮面ライダーたちの討伐の任を、与えられている。

 

「名前が必要ね」

 

マヤが言った。

 

「名前?」

「貴方の、新しい名前よ」

「――」

「そうね、貴方、今まで色々と変身して来たじゃない? 様々な怪物に」

「ええ」

「だったら、怪物将軍なんてどうかしら」

「怪物将軍――」

「ゼネラルモンスターよ」

「――良い名です」

 

と、暗黒大将軍改め、ゼネラルモンスターは、頷いた。

 

「では、このゼネラルモンスターが忠誠を誓うべき組織の名は?」

 

その問いを受けて、マヤは、口角を持ち上げた。

 

ぞろりと、剣を引き抜いた。

切っ先を、自分が描いたという絵に向けて、縦に、勢い良く振り下ろした。

 

絵は、真っ二つに切り裂かれた。

 

その奥から、レリーフが現れた。

何かの文字を崩して、辺を整えたその中に、一つの眼が光っている。

 

「ネオショッカー――それが、組織の名よ」




第四章はここまでとなります。
あとがきは、活動報告まで。

第五章の開始まで、今暫くお待ち下さい。

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