『式神武装』――青龍の
もちろん、砲台というからには攻撃方法は砲撃。それも凝縮された炎を放つ驚異的な攻撃力を持つ変形である。
「すぅ……はぁ……」
響は深呼吸を繰り返しながら右腕の龍砲に意識を向け、準備が整うまでの時間を計算。やはりというべきか炎を限界まで凝縮させるため、準備に時間がかかってしまうのである。
(……よし、そろそろか)
青龍の
「ちっ」
そして、森の中を走り続けている東からも青龍の
「ッ――」
準備ができた響は薄紫色の星が浮かぶ目に地力を注ぎ、『暗闇の中でも光が視える程度の能力』と『穴を見つける程度の能力』の効果を底上げしてから一気に降下して森の中へ侵入。最高速度を維持した状態で森の中を駆け抜けるには2つの能力が通常時のままでは心許なかったのである。
能力の効果を向上させたおかげで木々の隙間をすいすいと潜り抜け、少しずつ東へと迫る響。東も響が接近していることに気づいているが今もなお、氷柱が己の行く手を阻むように飛んでくるため、どうすることもできずにそれを躱しながら走り続けていた。
「……」
いつしか響は東を追い抜かし、まるで東を先導するように森を滑り抜ける。その間も東も東で前から迫る氷柱を驚異的な身体能力を駆使してやり過ごしていた。だが、先ほどと違うのは彼の顔にはどこか諦めの色が見て取れる点である。
そう、彼は響に追い抜かされた時点で逃げ切ることを諦めた。この命を捨てた。足を止めても、このまま走り続けてもあの龍の口から放たれる砲撃の餌食になることぐらい、青龍の
だから、氷柱を躱しながらも前を滑る彼を観察し続ける。
「……はぁ」
そして、後ろを走る東が今の命を諦めたことに響も気づいていた。いや、東が諦めるようにすでにこの戦いの勝負は決まったも同然である。だからこそ、次に考えるのは東を殺した後の展開だ。
おそらく東は
だが、5つの『式神武装』の内、最も
その場でくるりと身を翻した響は両足の
「……飲み込め――」
すでに目を庇いたくなるほどの光をその口内から漏らしている青龍の
「――
――その瞬間、幻想郷中に響き渡るほどの爆音が轟き、彼らが戦っていた森の一部は焼失。焼失せずに済んだ部分も木々のほとんどが
「……」
もちろん、森を消し飛ばすほどの砲撃を放った響自身、無事ではなかった。青龍の
『ぐっ……うぅ……』
また、彼が身に纏う『着装―桔梗―』も赤熱し、周囲に焦げ臭い匂いが漂っている。響の耳に装着されているインカムから桔梗の呻き声が漏れた。
東の企みを止める方法として『新しい変形を生み出す』という悟の意見を聞いた桔梗はまず驚異的な身体能力を持つ東ですら耐え切れないほどの高威力を持つ変形を設計した。
その結果、桔梗の望み通り、最初に作り出した青龍の
そのあまりに高すぎる威力のせいでリーマの『式神武装』である
そのデメリットは桔梗の機能が一時的に停止してしまう『オーバーヒートを起こす』こと。
つまり、青龍の
「
響が叫ぶと『着装―桔梗―』の装甲から凄まじい量の白い水蒸気が噴出する。そして、赤熱していた装甲が元の白黒へと戻った。
青龍の
「桔梗、無事か?」
『はい、大丈夫です……ですが、やはり青龍の
「いや、気にしなくていい。むしろ、好都合だった」
桔梗がオーバーヒートを起こしてないことを確認した響はすっかり燃え尽きてしまった森を眺める。青龍の
そして、ネックレス本体も何重にも術式を重ね、いかなる攻撃を受けても傷つかない効果が付与されているため、
だが、ネックレス本体は傷つかずとも衝撃は受ける。
「行くぞ、桔梗。ここが正念場だ」
『はい、マスター』
東の残り蘇生回数は3回。それを雅の『式神武装』で削り切る。しかし、これから東は死ぬ気で抵抗するだろう。雅の『式神武装』がいくら殺傷能力が高いとはいえ一筋縄ではいかないだろう。
(頼むぞ、雅……そして――)
「……いや、まずは足止めか」
青龍の
狙うのはここからでは肉眼では見えないほど遠い場所で蘇生した東。それでもまるで
「――
――矢を放った。