東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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さぁ、お待たせしました!
とうとう最終決戦ですよ!


第303話 リョウとドグ

「……響」

 レミリアからリョウについて教えて貰ってから数日後、いつものように依頼を全て解決させて博麗神社に来ると霊夢が真剣な表情を浮かべていた。

「どうした?」

「これ」

 霊夢の手には1通の手紙。それを見て察した。

「早いな」

「準備はできてるの?」

「レミリアと作戦は立てた。勝てるかは……わからん」

 そう言いながら手紙を受け取って中身を見る。そこには日時と場所しか書いていなかった。だが、それだけでわかる。

「それ……呪いがかかってたわ。開けた瞬間、呪われるような仕掛けが施されてたの」

「解呪してくれたのか?」

「嫌な感じがしたから念のために。そしたらドンピシャよ」

 本当に抜け目がない。まぁ、俺たちも相当、えぐい作戦を立てているが。さて、こうなったらレミリアに会って最終調整しなくてはならない。紅魔館に行こう。

「気を付けてね」

「おう、行って来ます」

 後ろで手を振っている霊夢に手を振り返しながら紅魔館へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 ここは数年前、俺が奏楽と出会い、『断殺』を使ったことにより森が消し飛んだ場所。ここなら無関係な人を巻き込むことなく戦えるだろう。

「逃げなかったか」

 懐かしんでいるとリョウとドグが俺の目の前に降り立った。前、俺のスペルを受けて精神が壊れていたが、完治したようだ。

「お前の方こそ……こんな場所を選ぶなんて意外だった」

「何?」

「お前は俺を殺すためなら手段を選ばない。だから、人里で戦うのかと」

 そうすれば少なくとも俺は全力で戦えない。しかし、リョウはそれをしなかった。

「……止められたんだよ」

「は?」

「だから! 止められたんだ!」

 少しだけ顔を紅くするリョウ。何だか、前より表情が柔らかくなっていると言うか、なんか恥ずかしがっていた。

「何かあったのか?」

「あー、それは「ドグッ!」」

 説明しようとしたドグをリョウが止める。知られたくないことらしい。

「別に隠すようなことじゃねーじゃん、主人」

「これからあたしたちは戦うんだぞ? こんな雑談してる時点でおかしいんだ」

「それじゃ始めるか? “親父”」

「ッ……気付いたのか」

 俺の言葉を聞いてリョウは目を鋭くさせた。レミリアとの話し合いでわかったことは俺の親がリョウだと言うこと。そして、完全な吸血鬼は繁殖機能を持っていない。つまり、リョウが息子を持つためには完全な吸血鬼になる前に作る必要がある。リョウはレミリアの血を影響で吸血鬼化が進むと同時進行で女体化が進む。完全な吸血鬼になったら性別の完全な女になるのだ。これらのことからリョウは俺の父親以外あり得ない。

「レミリアから話を聞いたからな」

「ちっ……その名前を聞くとイライラする」

 レミリアの名前を聞いた途端、顔を歪ませるリョウ。やはり、憎んでいるようだ。

「なぁ、リョウ」

「あ?」

「……戦わずに話し合うって選択肢はないのか?」

 リョウがレミリアを憎むのはわかる。勝手に人外にされたのだ。

「無理だ」

「……そうか」

 即答する彼女を見てため息を吐いた。出来れば戦わずにレミリアと会話させたかったのだが、仕方ない。

「この戦いで俺が勝ったらレミリアと話し合え」

「……この戦いであたしが勝ったらお前は死ね。それとこっちはドグも戦う。殺し合いだからな」

「ああ、こっちも式神と一緒に戦うから」

「へぇ、いいのか? あたしの能力を忘れたわけじゃないだろ?」

 リョウの能力――『影に干渉する程度の能力』。影ならどんな影でも干渉し、操ることができる。これを使われたらゼロ距離から絶え間なく攻撃される。逃げようにも自分の影なのでどこに逃げても無意味。更にリョウ自身も攻撃して来るので対策を立てないとすぐにやられてしまう。

 俺は干渉系の能力が効かないのでリョウの能力で俺の影を操られることはない。リョウと満足に戦えるのは俺だけだ。

「俺の心配をしてる暇はあるかな? 契約『音無 弥生』!」

 スペルを宣言しながら地面に叩き付ける。リョウたちは一度、俺から距離を取った。

「響!」

 召喚された弥生はすぐに俺の隣に立つ。そして、手を繋いだ。

「見たことない式神……でも、関係ない!」

 俺たちが何かする前に弥生を潰すつもりなのかリョウが能力を発動させ、弥生の影を操る。弥生の影は黒い棘となり、まっすぐ彼女の首筋へ向かって伸びた。

「「四神憑依!」」

 しかし、黒い棘が弥生に刺さる前に俺たちは全ての準備を済ませ、叫んだ。

『本気で行くぞ、響! 弥生!』

 魂の中で青竜が咆哮する。それと同時に弥生の体が粒子状になり、俺の中へ入り込んだ。

「ぐっ……お、おぉ」

 内側から溢れる霊力と神力に体が軋む。何度やってもこの感覚には慣れない。自然と声が漏れてしまう。

 俺の背中に2枚の翼が出現する。体全体が龍の鱗に覆われ、目が恐竜のような目になり、牙も鋭くなった。最後に大きな尻尾が生え、鱗が白銀から緑へと変化する。

「四神憑依『弥生―青竜―』」

 確かにリョウの能力は強いが俺には効かない。だから憑依してしまえばいい。

「……なるほど。前より強くなってるってことか」

 俺の姿を見たリョウはニヤリと笑いながら呟く。

『響、準備はいい?』

 頭の中で弥生の声が響く。両手を何度か握って具合を確かめて頷いた。『四神憑依』は弥生と憑依することによって半分に分かれていた青竜の力を一時的に一つに戻す技だ。半分でも強力な力なのにそれを一つに戻すとなるとかなりコントロールが難しい。だが、その分、破壊力は凄まじい。

「竜炎『神龍の伊吹』」

 尻尾を地面に突き刺し、両手を地面に付いて口を開く。そして――ブレス。目の前が真っ白になった。俺の口から凄まじい爆炎が射出されたのである。

「くそっ!」

 爆炎の向こうからドグの声が聞こえた。すぐに爆炎がかき消される。

「はぁ……はぁ……」

 爆炎によって地面が赤熱している中、ドグの後ろは何事もなかったかのように平気だった。もちろん、リョウも。

「この姿のブレスなら防げないと思ったんだが」

「通常時だったら危なかったぞ……リョウが召喚してくれなかったら消滅してた」

 あの一瞬でリョウはドグを召喚し、式神としての力を与えたらしい。あの爆炎を防いだドグもドグだが、それを熟してしまうリョウもリョウだ。

「ドグ、繋げ」

「ああ」

 リョウとドグは手を繋いだ。すると、リョウの体が淡く光り輝いた。何をしたのだろうか。

「音無響。お前が式神を纏うなら……あたしたちは『共有』する」

「共有?」

 俺が首を傾げるが、その答えは行動で返って来た。リョウではなくドグが突っ込んで来たのである。ドグの能力である『関係を操る程度の能力』は触れた物と関係を築いたり、断つことができるのだが、キャパシティーがあって強い絆を断つことは不可能だ。しかし、防御面では強力な能力。つまり、突っ込んで来るメリットがないのだ。ましてや、今はドグよりも攻撃力の高いリョウがいる。

「竜撃『竜の拳』」

 ドグの狙いはわからないが突っ込んで来るからには迎え撃たなくてはならない。右拳を巨大化させてドグに向かって振るった。

「はぁっ!」

 しかし、俺の拳は広がったドグの影に包まれ、右へ引っ張られた。わずかに右へずれた拳を掻い潜るように避けたドグが俺の懐へ潜り込む。

「竜炎『神龍の伊吹』」

 口に炎を蓄えて一気に放出。この距離ならば防いだとしても少しの間、硬直するはずだ。その隙に攻撃を――。

「させない」

 ――そう言いながらドグの前に躍り出たリョウが炎を消した。ドグがやったように。

(なっ!?)

 その光景を見て目を丸くしているとリョウの背後からドグの影が伸びて来る。その矛先は俺の眼球。急いで左翼で顔をガードし、思いっきり翼を広げて風を起こした。風圧でリョウたちを数メートル後退させる。

「……共有ってそういうことか」

 リョウの能力――『影に干渉する程度の能力』。

 ドグの能力――『関係を操る程度の能力』。

 それをドグの能力で共有し、リョウの能力をドグが、ドグの能力をリョウが使えるようにしたのだ。

「気付いたか。そうだ。最強の近接能力と最強の防御能力をあたしたちは共有できる。つまり、疑似的に2つの能力を使えるんだよ」

 リョウはそう言って笑った。

(これは……)

 かなり厳しい戦いになるかもしれない。

 




式神共有。


最強の近接能力を持つリョウと最強の防御能力を持つドグが編み出した技。
はたして響さんは彼らに勝つことはできるのか!?

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