東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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第246話 リョウの能力

「炭粒『カーボンパウダー』」

 しかし、すぐにリョウの周りに黒い粒が集まり出す。

「魔法『火の粉』」

 小さな火種をその中に飛ばし、大爆発が起こった。

「よっと」

 火がまだ、燃えているが目の前にリョウが現れる。

「響、大丈夫?」

「おう、何とかな」

 闇を使ってかなり、地力を消費してしまったが、まだ戦えないことはない。『コスプレ』もある。

「私を『憑依』して」

「……いや、お前はこっちだ!」

「え? きゃっ!?」

 雅の襟を掴んで抱き寄せて右に飛ぶ。その直後に俺たちがいた場所に火球が通り過ぎる。

「おっと、躱されたか」

 リョウの隣には上半身裸のドグがいた。

「アロハシャツはどうした?」

「博麗の巫女に吹き飛ばされちゃってね。命からがら逃げて来たってわけ」

 リョウの質問に肩を竦めながら答えるドグ。どうやら、霊夢も来ていたらしい。

「すまんが、お前はドグの相手を頼む」

「でも……」

「大丈夫。契約『霙』!」

「ご主人様! 呼ぶのが遅すぎます!」

 スペルから飛び出して来た霙が俺に抱き着きながら怒る。

「はいはい、ゴメンゴメン。それじゃ、二人はドグの相手を頼む」

「だから、一人でリョウの相手をしてボロボロにされそうになったんでしょうが!」

「そうですよ! ここは3対2で戦った方がいいです!」

「……お前らはバカか? あの二人がタッグを組んだらとんでもないことになる」

 ドグの能力である『関係を操る程度の能力』は正直言って防御に使われたら対処の仕様がない。触れた瞬間に関係を断たれて完全に無効化される。あいつに攻撃を当てるには別の人が攻撃している間にもう一人が叩く必要があるのだ。

 そして、リョウ。あいつの能力は“俺じゃないと対処できない”。

「それってどういうこと……わっと!?」

 話し合いをしているとドグがまた、火球を飛ばして来る。それを霙が水球で相殺。

「リョウの能力……それは――」

「チェックだ」

「「ッ!?」」

 雅と霙の陰から黒いツルのような物が生えた。

「だから、言ったろ?」

 そう呟きながら召喚を解除して外の世界に戻す。

「契約『音無 雅』。契約『霙』」

 そして、再召喚。

「な、何今の!? ああ、もう! 話してる途中なんだから、火球飛ばすなっての!」

「いや、戦闘中だし!」

 黒い翼で火球を弾き飛ばしながら文句を言う雅に対して、呆れたようにドグがツッコむ。

「リョウの能力、『影に干渉する程度の能力』。自分の影でも、相手の影でも操ることができる」

「ああ、知ってたのか?」

「こいしの話を聞いて『影を操る程度の能力』にしては強力過ぎるなって思ってパチュリーと話し合った結果、これかなって結論付けただけ」

「なるほど、ね!」

「またっ!?」

 再び、影が雅と霙に黒いツルが襲いかかる。

「雅! 翼を広げて自分に影を! 霙は狼モードになれ!」

「っ! えい!」「バゥ!」

 雅が翼を大きく広げると黒いツルに影が差し、ツルが消滅した。霙も狼になった瞬間にツルが消える。

「あいつの能力に対処するには自分の影を一気に変化させる必要がある。もしくは、影に影を差せば、影が一体化してなくなる」

「そこまで、わかってたのか」

「なら、私たちにも戦えるじゃん!」

「そうですよ! 一緒に!」

「まだ、わからないのか? 一人は絶対防御。もう一人は俺たちがどこにいても超至近距離から攻撃できるんだぞ? 雅は翼を広げたり、狭くしたり、霙は狼モードになったり、擬人モードになったり……そんなことを繰り返して戦えるとでも思ってるのかよ!」

 そう叫びながらスペルを構えた。

「神箱『ゴッドキューブ』!」

 俺たちを囲むように神力で創られた箱が出現し、火球と黒いツルを防いだ。

「響?」「ご主人様?」

「……頼むから、ドグの相手をしてくれ。お前らならあいつを倒せる。だから、あいつを倒して。こっちに来い」

「……わかった」「わかりました」

「雅は右へ。霙は左。俺がリョウを引き付けるからドグを連れて行け! 妖怪『威嚇の波動』!」

 『神箱』を消してリョウに向かって妖力の塊を飛ばす。それを片手だけで弾き飛ばした。

「炭綱『カーボンバインド』!」「狼圧『獣の眼光』!」

 霙が狼モードになって、ドグを睨む。

「おっ?」

 その瞬間、ドグの体が硬直した。本人には自覚はないだろうが、本能が恐怖しているのだ。

「せいっ!」

 雅が炭素で作った綱をドグの足に巻き付けた。

「何だこれ!?」

 関係を断つ為に足に手を伸ばすも、霙が氷球を飛ばしてドグの腕にヒットさせる。

「ぐっ」

「おおおおおおおおりゃああああああああああああ!!」

 怯んだ隙に雅が綱を引っ張ってドグを振り回し始めた。

「うおおおお!? ちょ、待て!!」

「やあああああああめえええええええええるううううううううううかあああああああああ!!」

 ブンブンと体ごと回転しながら絶叫する俺の式神。あの炭素は伸縮性が高いようで、最初よりもかなり、伸びている。

「うおおううおおおおううおおおおおお!?」

「……はぁ、あのバカ式は本当に」

 ため息を吐きながらリョウはドグを助けるために移動しようとするが、それを防ぐように俺がリョウの前に立ち塞がった。

「邪魔をするってのか?」

「いや、するでしょ? お互い、駄目な式神を持って」

「確かに、ドグもお前の式神も主人の言うことを聞かないもんな……」

「「……はぁ」」

 どうやら、こいつも大変らしい。

「飛んでけええええええ!!」

「うわああああああああああああああああ!!」

「雅さん! カッコいいです!!」

 綱を離してドグをぶっ飛ばした雅。それを見て霙が黄色い声援を送っていた。ドグはもうすでに見えなくなっている。

「おーい、お前ら、真剣にやれー」

「わかってる! 霙、乗せて!」

「了解であります!」

 俺が注意すると雅は狼になった霙に乗ってドグが飛んで行った方に向かった。

「……お前ら、楽しそうだな」

 それを見ていてリョウが呆れたように感想を漏らす。

「ああ、楽しいよ。だから、お前なんかにそんな毎日を壊させはしない」

「……そうこなくちゃな」

 リョウはニヤリと笑って、一気に距離を詰めて来た。

「おっと」

 咄嗟に上昇して、逃げる。

「逃げてるだけじゃ勝てないよ」

 そう言いながら黒いツルを伸ばす。それに続けて黒い槍も飛ばして来た。

(自由に操れるツルに遠距離攻撃か……)

 厄介な攻撃だ。ツルを対処すれば、槍に貫かれて、槍を何とかしたらツルにやられる。こう言った属性の違う攻撃を同時に仕掛けられるとやられた方はかなり、苦戦するのだ。

「だったら!! 拳弾『インパクトガトリング』!」

 妖力の拳を飛ばし、ツルと槍を破壊する。

(そろそろ、地力が……)

「まだまだぁ!!」

 リョウが叫びながら黒い刀で攻撃して来た。

「……しゃーないか!」

 スキホからPSPとヘッドフォンを取り出して、装着する。そのまま、PSPの画面をスライドし、曲を再生させた。

「廃獄ララバイ『火焔猫 燐』!」

 緑色のワンピースに猫車。俺はまだ、見たことのないコスプレだった。

「また、猫耳か!」

「贖罪『昔時の針と痛がる怨霊』!」

 俺の弾幕がリョウへ向かう。しかし、リョウは簡単に躱してしまった。

「もう、その弾幕は攻略済みだ」

「うわっ!?」

 刀が俺の持っていた猫車を両断する。慌てて、距離を取った。

「逃げてるだけじゃ勝てないぞ」

 その後もリョウの猛攻撃は続く。

(くそっ!!)

 どうやら、リョウはこのコスプレの持ち主と戦った事があるようで、俺がスペルを使ってもひらりと躱してしまう。

 冷や汗を流していると、曲が変わった。

「少女さとり ~ 3rd eye『古明地 さとり』!」

 俺が石化する前に話していたさとりの服に変化する。

(そう言えば、さとりの能力って……)

 相手の心が読める。ならば、リョウの心を読んで情報を引き出せるかもしれない。

「っ!? させるかっ!!」

 俺の姿を見てそのことがわかったのかリョウが影で自分の姿を隠した。

「え……」

 リョウの姿が完全に見える前に少しだけ心を読む事ができたが、俺は思わず、硬直してしまう。

 

 

 

 

 

 そこは、紅いお屋敷。夜遅く。窓からは綺麗な満月が見える。

「今日の月は綺麗ね」

 そんな声が傍から聞こえた。そちらを見るとピンクのワンピースを着た女の子がいた。

「ああ、そうだな」

 また、声が聞こえる。自分の中から。男の声だ。

「ねぇ、やっぱりなる気はないの?」

「……ああ、ない」

「そう……残念ね」

 女の子は本当に残念そうに呟いた。

 そして、二人同時に真っ暗な空に浮かんでいる満月を眺めた。

 

 

 

 

 

「何だよ……これ?」

 紅い屋敷。満月。ピンクのワンピースを着た女の子。

「レミ、リア?」

 服には少し違いはあったが、あれは絶対にレミリアだった。そして、もう一つ。

(男の声は自分の中から聞こえた?)

 でも、それではおかしい。だって、目の前にいるリョウは女の子。それならば、自分の中から聞こえる声は女の子のものではないと駄目だ。だって、俺が読んだのはリョウの心なのだから。

 呆然としていると、曲が終わった。

「何か、わかったみたいけど、もう終わりだ」

「っ!?」

 急いでスペルを掴んで宣言しようとするも、すでにリョウは俺の懐に潜り込んで来ていた。回避、不可能。

「じゃあ、な」

 リョウがそう言いながら両手に持っていた刀を振るった。

 


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