東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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実は12月22日はとあるボイスロイド&ボーカロイドのお誕生日でして……私、その子がものすごく好きで記念動画を作っていたりします。



……まだ出来ていません。ま、間に合うかな?


第215話 半吸血鬼響のファッションショー

「……」

「さてと、準備はいいか?」

「……ああ」

「ふっふっふ……やっと、響を合理的に女装させることができるぜ」

「待て。お前、前から俺に女の服を着せたかったのか?」

 俺の問いかけをスルーして悟はどこかへ行ってしまった。どうやら、会長としての準備があるようだ。

『……どうするの?』

 頭の中で吸血鬼の声が聞こえる。それを聞いて俺は項垂れた。

「本当にどうしよっかなぁ?」

 今日は満月の日。つまり今、俺の体は半吸血鬼化&女体化している。

「はぁ……」

 悟が言うには女物の服は2着。他の物は男物らしいが、2着だけでもマズイ。もし、露出の多い物だったら終わりだ。

『この際、見せてしまってはどうじゃ?』

(バカか。見せたらまた、俺が女だって言う噂が流れるだろ……)

 あんな思いはもう、嫌だ。

『そうね……狂気もまだ、部屋から出て来れないし。『狂眼』を使ってお客さんの目を欺く事もできないか』

(まず、そんな広範囲に『狂眼』は使えない。これは厳しいな)

 でも、今さらやめるとは言えない。それならば、10月21日にやると聞いた時に断ればよかったのだ。

「響! そろそろ、準備してくれ!」

 悟が早歩きで戻って来てそう言った。

「……わかった」

 仕方ない。土壇場でどうにかするしかないようだ。

「悟。女物の服ってどんなのだ?」

「それは見てからのお楽しみだ」

「いいから、教えろ」

「嫌だ」

「教えろッ!」

「嫌だッ!」

 俺たちは3秒ほど睨み合ったが、向こうが折れないことなど最初から知っていたのですぐに諦めた。

「……よし。時間だ。お前はこっちで着替えてくれ」

 そう言って、悟は歩き始める。俺もそれに続いた。

「えっと、着替えは一人でいいんだよな?」

「ああ、もちろん。お前の裸をメンバーに見せたら血の海になるから」

 悟の言った内容については無視するとして、着替えが一人でできるのは嬉しい。サラシを見られたら一発で終了だからだ。それに背中の翼も説明のしようがない。

「ここだ。この中で着替えてくれ」

 そこには簡易的に作られた更衣室があった。確かにこの中で着替えても外からは見えないだろう。

「ショーが始まるまで残り10分だ。案内の子が呼びに来るからそれまでに1着目を着ておいてくれ」

「1着目ってわかるのか?」

「ああ、その中に服は1着しかないからな。お前が行って戻って来る間に次の服を準備しておくよ」

 それなら混乱せずに済みそうだ。

「じゃあ、よろしく」

「あ、待って」

 気になることがあったので去ろうとした悟を呼び止める。

「どうした?」

「俺が着替えてる間、舞台はどうなってんだ?」

「ああ、それなら心配しなくていい。お前が裏にいる間、一般応募の出し物をやる予定なんだよ。だから、ゆっくり着替えていいからな?」

「なるほど、了解。でも、出し物が終わる1~2分前になったら教えてくれ。こっちも心の準備があるから」

「わかった。担当の人に伝えておく」

 悟は頷いた後、携帯電話を取り出しながら舞台の方へ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 4着目の服を脱いで俺はため息をつく。舞台の方では誰かが漫才をやっている。時々、大きな笑い声が聞こえて来るから面白いらしい。少しだけ、見たかった。

 俺に対して会場の反応はすごかった。一番、最初はシンプルなジーパンとパーカー。そして、明るめのTシャツを着て舞台に出たのだが、もうお客さんの叫び声で耳が痛くなった。写真もたくさん撮られたようで内心、緊張した。こういったことは今までなかったから。

 その後も俺が舞台に立つ度に拍手喝采。こんな俺のどこがいいのかわからないが、まぁ、やってよかったと思っている。

「えっと次は……うげっ」

 段ボールの中に入っていたのはメイド服だった。これが女物の服、その1だろう。

「ん?」

 メイド服をジト目で見ていると服の中から1枚の紙が落ちて来た。拾ってみると『大学メンバー推薦服』と書かれていた。

(まぁ、大学内じゃずっとシンプルな恰好だったから……こんな派手な服も見たかったのかな?)

 しかし、これは困った。メイド服の着方がわからない。紅魔館でレミリアとフランに無理矢理、着せられたことは何度もあるが、その時は咲夜お手製のメイド服で俺が手に持っているメイド服と少しばかり構造が違うのだ。

 でも、誰かを呼んで着せて貰うわけにはいかない。すぐにサラシを付けていることがばれてしまう。

「……紫」

「何かしら?」

 俺のすぐ横でスキマが開き、紫が顔を出して来た。

「いつも思うけど、何でいるの?」

「だって、こんな面白そうなイベント、見逃すはずがないじゃない」

「そりゃ、そうだけど……とにかく、コレの着方を教えてくれ」

「それぐらい着させてあげるわよ」

「……頼むわ」

 自分でメイド服を着るのが面倒だったのと話したいことがあったので甘えることにした。

「それにしても、すごいフリルの量ね。喫茶店でも働けそうな服」

 俺が渡したメイド服を見て紫が呟いた。

「喫茶店?」

「独り言よ。さてと……とりあえず、それを外してくれないかしら?」

 サラシを指さしながら紫。

「え? どうして?」

「段ボールの中にパッドが入ってるでしょ? それを付けてからこの服を着ろってことなのよ。でも、今の響は女の子でしょ? だから、パッドを付けられないの。それに付けなくてもあるし」

 俺の胸、意外に大きいから、パッドを付けずに女物の下着を付ければ大丈夫そうだ。

「わかった……翼はどうする?」

「そうね。翼を腰あたりに移動させてサラシで巻けばいいんじゃない? 響の腰ってくびれてるからそうやればそれを隠せるでしょうし」

「え? 何で、くびれを隠す必要があるんだ?」

「“貴女”って男なのよ? 男はくびれてないでしょ? このメイド服、体のラインが出やすいデザインだからばれるのよ」

 話を聞いてわかった事は『よくわからないから紫の言う通りにしておこう』だった。

「……よし。これで翼は隠せるわね」

「……なぁ?」

「何かしら?」

「狂気のこと、どう思う?」

 ガドラの炎から身を挺して守ってくれた狂気。2か月経ったがまだ、部屋から出て来られていないのだ。

「……吸血鬼たちはなんて?」

「部屋の前まで行けば会話はできるようだ。狂気は『大丈夫だけど、もう少し休んでいる』って言ったみたいだぞ?」

「完全に回復はしていないのね……まぁ、本人がそう言うから大丈夫なんじゃない? まぁ、その間は妖力を使えないから貴女としては不便だろうけど」

「いや、それほどじゃないよ。魔眼が両目で開眼できるようになってから力のコントロールが簡単になったし……でも、あいつの声が聞けないのは寂しいな」

「貴女も部屋の前に行けばいいじゃない」

 紫の言葉に俺は首を横に振った。

「狂気は俺と会話したくないって……多分、自分に負い目を感じてるんだと思う」

「負い目?」

「俺が怒りで暴走するようになったのは狂気と魂同調してからなんだ」

 トールが言うには俺の魂に負の感情が刻まれたことによって【魂の残骸】と少しだけ繋がってしまったらしい。そして、俺が負の感情を抱くと勝手に残骸に力が供給されて俺の魂バランスが崩れ、暴走する。同じ負の力である闇の力も乗っ取ることが可能で、2か月前のような現象が起きるとの事。

「それを自分のせいだって狂気は思ってるのね……」

「ああ……狂気との魂同調したのは俺の意志だ。お前のせいじゃないって狂気に吸血鬼が伝えたはずなんだけど『それでも私のせいだから』の一点張り」

「……彼女の気持ちが落ち着くまで待つしか出来ないわね」

「そうだよなぁ」

 紫の答えを聞いてため息を吐いた。それと紫が俺の頭に何かを付ける。

「これは?」

「メイドカチューシャに決まってるじゃない」

「……はぁ」

「こっちを向いて」

 紫の指示で振り返った。そこにはニコニコ笑っている紫が立っている。

「うん、バッチリね。これでいつでも行けるわ」

「サンキュ……あ、今思ったけど喋っててよかったのか? 誰かに聞かれたり?」

「大丈夫よ。消音の結界を貼ってるから」

「そっか。じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 紫に別れを告げて俺は更衣室から出た。

 


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