東方楽曲伝   作:ホッシー@VTuber

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申し訳ありません……テスト勉強してたら日付変わってました。
お詫びとして今日の正午にもう一本投稿しますね!


第189話 事件勃発

「……」

 魔理沙とタッグを組んだ変則的弾幕ごっこを終え、俺はフラフラになりながら幻想郷の空を飛んでいた。

「大丈夫?」

 俺の隣を飛んでいる青娥が心配そうに聞いて来る。

「大丈夫じゃねー……」

 先ほどからバランスを保てず、右に行ったり左に行ったりとかなり危なっかしい飛行を続けているのだ。

「あの子たちの弾は闇の力で自分の地力に変換したんでしょ?」

「そうなんだけど……『黒符』が異常なまでに闇の力も地力も消費する技だったんだよ」

 俺の中では闇の力で敵のエネルギーを吸収し、地力に変換。闇は10分間しか持たないが、その後の俺はほぼ戦う前と同じぐらいまで回復しているはずだったのだ。

「でも、闇の力は弾幕ごっこではチートよね? 使っていいの?」

「駄目だってさ」

 図書館を出た時にスキホに紫からメールから来ていた。内容はもちろん、『闇を弾幕ごっこでは使ってはいけない』と言う禁止令だ。

「まぁ、相手の弾幕を吸収したら意味ないものね」

「確かに……」

 でも、今日の戦いで闇について色々とわかった。

 まず、闇の戦闘は一気に決める必要がある。理由は10分間というタイムリミットがあるから。しかし、闇の力で敵のエネルギーを吸収することに成功すれば10分後、俺の体力や地力はほぼ全快になり、闇が使えなくなった後に繋げることができる。

 更に闇の力が増えると俺の体も成長し、複雑な技を放つことができる。あの『重力』がそうだ。普通なら黒い重力の弾は一つか二つしか出せないが、大人モードだったため、八つの重力の弾を出すことができたのだ。

 そして最後に闇の性質について。闇の能力は『引力を操る程度の能力』だ。引力とは物を引き寄せる力。それらを操れるということは逆に反発させることも可能ということになる。これを利用すれば敵の攻撃を弾いたり、わざと敵の攻撃に自分の攻撃を当て相殺させることもできる。

 あの戦いの後、パチュリーと話したが彼女も頷いてくれた。本当なら戦わずに知りたかったのだが。

「今、思ったけど闇……強いな」

「それは傍から見てても思ったわ」

 俺の呟きに珍しく呆れた様子で青娥が言った。

「しょ、しょうがないだろ? 闇を使ったの初めてだったんだから」

「え? あれで初めてだったの?」

 意外そうな青娥。

「ああ、いつ闇に引きずり込まれるかヒヤヒヤしてたぐらいだ」

「初めてであれだけできるなんて……やっぱり、響はすごいわね」

「はいはい」

 適当に頷きながら俺は博麗神社に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ? 闇の力を操れるようになったんだ」

 湯呑片手に霊夢。

「まぁ、な」

「それにスキホを使ってタイムリミットまで用意するとかよく思い付いたわね」

 因みに原理は博麗のリボンをスキホに登録しておいて、番号を入力し、リボンをスキホに収納する。スキホの機能の一つに『タイマー』があるのでそれを10分にセット。10分後に先ほど収納したリボンを元の位置に戻せば闇を封印することができるのだ。

「それにしても弾幕を地力に変換するとかどんだけ人間離れしてるのよ……」

「俺に言われても……」

 俺自身、人間じゃなくなってきた、と落ち込んでいる。

「あの時の響、すごかったわ。まるで、宇宙だったもの」

 俺の隣(霊夢とは反対側)に座っている青娥が感想を述べた。

「宇宙?」

「魔理沙の星弾を重力の弾で曲げて軌道を作ったんだよ」

「図書館内を星たちが流れているようだったわ」

「そんなに闇の力を使って大丈夫なの?」

 宇宙よりも俺の体が心配になったのか霊夢がそんなことを聞いて来る。

「大丈夫だと思うぞ? 闇にも聞いたけど異変は起きなかったって言ってたし」

「……まぁ、それならいいわ」

「それに弾幕ごっこじゃ使ったら駄目だって紫に言われたし」

「「それは当り前よ」」

 霊夢と青娥が同時に頷いた。

「まぁ、異変が起きた時にでも役に立って貰うよ」

「その前に異変なんか起きて欲しくないわ」

「確かに」

 今までの異変で俺は必ず、死にそうになっているのだ。あんな目にはもう遭いたくない。

「氷河異変の時は法界に逃げてたから響の活躍が見れなかったのよね。早く、起きて欲しいわ」

「お前は黙ってろ」「貴女は黙ってなさい」

 俺たちに言われたので青娥は少しだけ落ち込んでしまった。構っても面倒くさいだけなのでスルーさせていただく。

「でも、よかったわ。闇の力も安定してるみたいだし」

「ああ、魂の中で吸血鬼たちに『遊んで!』って我儘言ってるけど暴走したりしないと思う」

 うるさいけど。

「そう」

 霊夢はそれだけ言うと湯呑を傾けた。俺もそれに倣う。

「あ、そうそう。響が幻想郷に来てもう1年よね?」

「え? ああ、そうだな」

 不意に霊夢に話しかけられ戸惑ってしまった。

「それで宴会を開きたいんだけど来られる?」

「いつ?」

「確か7月の中旬だったわよね? そのあたりになるわ」

「あー、試験だなぁ……その後だったら大丈夫だと思う」

「わかった。皆にも言わなきゃならないから予定が開いたら言って」

「了解した」

 どうせ、お酒は飲まないけど料理は美味しいから今からでも楽しみだ。

「あ、そうだ! その時、望たちも連れて来ていいか?」

「望も?」

「ああ、他にも3人かな? ほら、仮式と式神と奏楽だよ」

「奏楽……その名前を聞くの久しぶりね。どう? 元気にしてる?」

「最近、友達ができて遅くまで外で遊んでるよ」

 霙に探しに行かせる時もあるほどだ。

「外の世界で上手くやってるようね」

「みたいだな。あ、霊奈も連れて来る?」

「……そうね。お願いするわ」

 少しだけ微笑んで霊夢が頷いた。

「そろそろ、話してもいいかしら?」

 こちらの話がひと段落したのを見極めた青娥が問いかけて来る。

「「……どうぞ」」

 どうせ、駄目と言っても無駄なので許可することにした。

「確か響には仮式と式神が二人ずついるのよね?」

「ああ、いるな」

「見てみたいわね」

「……何が言いたい?」

「今日、貴方について行って外の世界に遊びに行くわ」

 青娥は微笑みながらとんでもないことを言ってのけた。

「……は?」

「いいでしょ? スキマを通れば私もいけるはずだし」

「いやいや、駄目でしょ?」

「帰る時は結界を通り抜ければいいわけだし」

 駄目だ。こいつ、俺に付いて来る気まんまんだ。

「駄目だ! もし、博麗大結界に何かあったらどうするんだよ!」

「霊夢、どうなの?」

「さぁ? 知らないわよ。でも、いいんじゃない?」

「え?」

 まさか、霊夢が許すとは思わなかったので俺は戸惑ってしまった。

「ほら、管理してる本人がこう言ってるわけだし」

「……ああ! もう、わかったよ」

 直接、俺の部屋に移動すれば大丈夫だろう。

「そろそろ、帰った方がいいんじゃない?」

 霊夢にそう言われ、携帯で時刻を確認する。午後5時半だった。

「そうだな……帰るか」

「早く行きましょ?」

 青娥はすで立ち上がっている。それほど楽しみらしい。

「はいはい……」

 スキホからPSPとヘッドフォンを取り出し、装着。すぐにスペルを宣言した。

「移動『ネクロファンタジア』!」

 紫の衣装を身に纏い、スキマを開ける。

「どうぞ、お嬢様」

「あら、きちんとエスコートできるのね?」

「レディファーストですから」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 そう言って、青娥はスキマを潜った。

「じゃあ、また明日な」

「……ええ。またね」

 何故か、歯切れの悪い霊夢。だが、その理由はわからなかった。

「?」

 首を傾げながら俺も青娥を追ってスキマを通り抜ける。

「遅かったわね」

「霊夢に挨拶してたんだよ。ほら、行くぞ。あ、まずは靴を脱げ」

 青娥は思い切り、土足で床を踏んでいた。

「あら、ごめんなさい」

「……はぁ。とりあえず、皆を紹介するから来い」

 そう言って俺は部屋を出る。青娥もそれに続いた。

 それから突然、訪問して来た青娥を見て驚く望たちを何とか宥め、青娥も一緒に晩御飯を食べた。俺の料理の腕に相当、驚いていたのが印象的だ。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、帰るわね?」

「おう」

 玄関で靴を履いた青娥がこちらに振り返りながら言う。

「いいのか? スキマ、開けるか?」

「いいのよ。そう言う約束だったし。それに博麗大結界を通り抜けられるか興味もあるの」

「そうかい」

 なら、俺に止める手段はない。青娥は笑顔のまま、玄関のドアを通り抜けて行った。

「青娥さん、帰ったの?」

 居間に繋がっているドアが開き、望が顔を覗かせる。

「ああ、たった今な」

「そっか……芳香のことも聞きたかったのに」

「芳香?」

 聞き覚えのない単語があったので聞き返した。

「あれ? あったことないの?」

「うん」

「そうなの? てっきり、傍にいるのかと」

「いや、会ったことないな。いつも、向こうから来るし」

「ふーん」

 望は興味がなくなったのかそのまま、居間に引っ込んだ。

「……寝るか」

 呟きながら歯を磨くために洗面所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 青娥が家に遊びに来た翌日の朝。布団に違和感を覚えた。どうやら、誰かが潜り込んだらしい。

(奏楽、か?)

 奏楽はたまに人の布団に潜り込むのだ。比率は霙4割。俺3割。望2割。雅1割だ。やっぱり、いつも遊んでくれる霙に懐いている。

「奏楽?」

 今日は俺のベッドに潜り込んだらしい奏楽に声をかけた。

「……え?」

 目の前に綺麗な結晶がいくつもあった。それには見覚えがある。

(待て……そんなはずは)

 冷や汗を掻きながらも俺はそっと布団を捲った。

「なっ!?」

 布団の中で俺に抱き着きながら寝ている少女を見て思わず、驚愕してしまう。何故なら――

「お兄様ー……むにゃむにゃ」

 

 

 

 

 ――幻想郷にいるはずのフランが幸せそうに寝ていたからだ。

 


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