二人の鬼   作:子藤貝

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第四十五話 鬼神事変⑥

龍宮真名は知っている。誰であれ、弱い時期が存在していたことを。名うての剣豪も、始まりは素振りからだ。岩をも砕く鉄拳も、かつては傷ひとつない掌だったはずだ。力は研鑽ともに積み重ねられ、努力という水と鍛錬という土壌によって育まれていく。彼女はそう教わった。

 

何よりも、彼女自身がそうだったからだ。生まれた境遇は最悪で、人生は虚無に近かった。掴みかけた希望さえも踏みにじられ、無残に消え去った。彼女に残ったのは、ただひたすらの憎悪と憤怒。それらは彼女に執念を与えた。執念は鋼の芯と成り、彼女に力を与えるきっかけとなった。

 

(この女を、そして奴を殺すため……私は強くなったはずだ……)

 

弱々しく、銃の反動にも耐えられなかった少女はもういない。今ここにいるのは、復讐の鬼となる覚悟を持った戦士だ。

 

(それでもなお……届かない……!)

 

殺したいほど憎い相手がそこにいる。それだけで彼女の心は怒りと歓喜の入り混じったもので埋め尽くされ、しかし頭はひどく冷静に相手を殺す過程を模索している。それでもなお、目の前の女を殺すことができないのだ。

 

「……どうした、息が上がり始めているぞ」

 

「……気遣われる筋合いなどないな」

 

3発。連続でトリッガーを引き、ハンマーによって打ち出された弾丸が風切り音という唸り声を上げながら獲物へと襲いかかる。だが、それらは等しく一太刀で両断されてしまう。射出の際、僅かなタイムラグを用いて弾丸の到達時間をずらしたというのにだ。

 

(太刀筋が速すぎて、私にすら見切れていないというのか……!)

 

龍宮真名はその類まれなる動体視力によって、対象の動作やその機微などを容易く見抜く。本気を出せば弾丸を見切るのも難しくはなく、神速の斬撃さえその目に捉えられるはずだ。だが、彼女の目には鈴音の斬撃が一つにしか見えなかった。弾丸さえも見切るその視力を以ってしても。

 

(突破口が見つからん……)

 

強くなったはずだった。師に認められ、数多の戦場を渡ってきたはずだ。それでもなお、届かない領域。奥歯を噛み締め、自らが知らず驕っていたことに怒りを覚える。

 

(戯けが……そんな腑抜けた思考で、勝てるはずがないだろう……!)

 

強さは時に慢心を生む。それを本人が自覚していなくてもだ。彼女は自らの力に溺れる前に、それに気づくことができた。戦いの中で、一つ前進したと言ってもいいだろう。本来であれば、それはとても喜ばしいことだろう。だが。

 

「……うん、それでいい」

 

「……! 貴様、まさか私を……」

 

「……目的は全て果たした」

 

真名の疑問に答えることはなく、鈴音は一足飛びで彼女から距離を取ると。

 

「……次は、もう少し楽しませて欲しい……」

 

「待て! 逃げるき……」

 

霞のように、一瞬で姿を晦ました。

 

「……チッ」

 

舌打ちを一つし、真名はホルスターに銃をしまう。気配を探ってはみるが、先程まで感じていたあの巨大で強大な気配はどこにもなかった。隠形も相当のもののようだ。

 

「……奴め、私を試していたのか……」

 

真名は確かに強い。しかし、実力は確かに魔法世界でも上位に入れるものがあるが、自身と同格以上の強者と戦った経験が少ないのだ。だから、彼女は知らず慢心を抱いた。鈴音は彼女の慢心を払拭できるかを試していたのだ。

 

「……いいだろう、ならば次は存分に応えてやる……貴様の額に風穴を開けてな……」

 

更なる執念を燃やし、拳を固く握りしめて、彼女は一人そう呟いた。

 

 

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……これほどとは……」

 

「つまんない、久々に体動かせると思ってたのに、これじゃ不完全燃焼だわ」

 

膝をつき、息を切らせる詠春と、不満気な表情で欠伸を噛み殺すアスナ。どちらが不利なのかは、一目瞭然であった。片腕を折られ、左足もびっこを引いている状態。額から流れた血が顔半分を真っ赤に染めている。何より酷いのは、その折れた腕や足が、醜悪な臭いを放っていること。人の脂が、燃える臭いだった。晒された肌からは、火傷のケロイドが覗いている。

 

(鍛錬を怠ったつもりはない……強さを維持できていると実感していた……それでも、なおここまで差が開いているというのか……!)

 

アスナも詠春も、理由は違えど今は第一線では戦っていない身だ。ほんの十年前までは、ほぼ実力も拮抗していたはずなのである。それなのに、いつの間にか両者の差は歴然となっていた。詠春が弱くなったのではなく、以前よりもアスナが強くなっていたことによって。

 

「フフッ、まあこれでようやく鈴音と肩を並べられた、かな」

 

「何故、これほどまでに……行方を晦ましてから一体何があったというんだ……!?」

 

「あら、確かに私は表向きの活動はしてこなかったけど、だからといって自分を磨くことを怠ってたわけじゃないの」

 

意地の悪い笑みを浮かべるアスナ。詠春は、その笑みにぞっとした。その堂に入った様は、まさしく悪の大幹部に相応しい貫禄があったのだ。かつて、あれほどまでに感情を見せず、エヴァンジェリンに絡め取られた後も少女らしい表情をする娘であったはずだった。

 

だが、今の表情はどうだ。まるで、あのエヴァンジェリンの如き邪悪さと、鈴音の如き重さを持つ笑顔。笑っているのに、負の感情だけを煮詰めて顔に塗りたくったかのようであった。

 

「……ん? あー、もう終わりか」

 

ふと、彼女が唐突にそんなことを言って、見当違いの方向を見つめる。その表情は、酷く残念だという雰囲気であった。

 

「もう少し暴れたかったけど、まあ仕方ないか」

 

「どういう……ことだ……」

 

「私達の目的が、全て果たされたってことよ」

 

そう言うと、彼女はパチンと指を鳴らす。同時に、ガラスが割れるようなけたたましい音と共に、結界が全て破砕された。

 

「色々確認できてよかったわ。もう、かつての英雄には期待するだけ無駄だってのも分かったし」

 

「くっ……」

 

「じゃ、私は帰るから。あの娘達を助けたいならさっさと行きなさい」

 

そう言うと、アスナは夜空の向こうへと消えていった。あとに残ったのは、無残な姿となった詠春と、再びの静寂だけ。

 

(目的は果たされた……? 何を狙っていたのかはわからない……だが、痛みに呻いている暇もない、か……)

 

娘とその友人らを残してきた場所には、あの明山寺鈴音がいる。既に大分時間が経過しているが、自分一人でも多少の助けにはなるだろう。ならば、自分がすべき行動は自ずと分かってくる。詠春は折れた腕をかばいながら、関西呪術協会本部へと走りだした。

 

 

 

 

 

「あでで、ようやるわこの(わっぱ)らめ」

 

「あんだけいた仲間が殆ど送り返されてもうた」

 

妖怪たちが、口々に悪態や賞賛の言葉を口にする。ネギ達と別れてから、小太郎と楓は数で勝る妖怪たちを相手に大立ち回りを演じた。分身術を駆使した連携攻撃に、俊敏な動きで相手を翻弄しつつ確実に相手の数を減らしていったのだ。

 

「ま、さすがにもうさっき程暴れる気力は残ってへんやろ」

 

「ここまでやな」

 

「小太郎、まだゆけるか?」

 

「まだ余力はあるけど……ちょい厳しいわ」

 

しかし、残り数匹になったところでその快進撃も止まった。この残っていた数匹は、事態の趨勢を黙してみていただけの輩だったのだが、これが先ほどまでとは比べものにならないほど強く。雑魚を何十匹と相手にして疲労していた分、二人のほうが不利になってしまった。

 

「うちらもかつては頼光共と戦ったこともある。童子に舐められるわけにはいかんのじゃ」

 

「うちは愛宕の太郎坊殿と験比べで競いあった仲でな。ここでおいそれと負けたらあの方に合わせる顔がないんや」

 

「頼光って、まさか酒呑童子のか!?」

 

「大妖怪の配下に、愛宕権現の旧友でござったか。どうりで強いわけでござる」

 

手を焼いていた残り数匹が、よもやそんなネームバリューの高い妖怪であったとは思わず、しかしここまで強い理由にようやく二人は得心がいった様子だ。

 

酒呑童子といえば、格の高い妖怪である鬼の多くを従え、京都で暴れまわった大妖怪だ。知らぬものは少ない程のネームバリューを持っているといえる。そして愛宕太郎坊といえば、日本一の大天狗とまで言われる、翼持つ者達の頂点の一人だ。そんな大妖怪のかつての配下と、験比べで競いあった旧友となれば、弱いはずがなかった。

 

「若いもんを殺すんは気が引けるが……これも戦いの習いじゃ。悪く思うな」

 

「ここまで戦ってみせたんや、せめて一思いに楽にしてやる」

 

鬼どもは棍棒を、烏族は鉤爪を立てて構える。このまま真正面からやりあえば、間違いなく殺される。万が一を避けるため、楓が腰に吊るしていた煙玉に触れたその時。

 

タァン

 

「ぐおっ!? な、なんや!?」

 

一発の銃声が響くと同時に、鬼の額を何かが貫いた。しかし、さすがは格の高い鬼というべきか、頭を押さえて何事かと周囲を見渡している。しかし、いくら目を凝らしても、何かを放った存在を把握できない。

 

「お、おいお前体が……!」

 

「なんや? うおっ!?」

 

仲間の言葉に自分の体へと視線を移してみると、いつの間にか下半身が煙のように靄となって消えていた。向こうへと送り返されているのだ。

 

「破魔の矢か!?」

 

「んなわけあるか! 矢があんな小さいわけ無いやろ!」

 

鬼が消滅し、妖怪たちは周囲への警戒を強める。破魔の力は、妖怪にとっては天敵といえる。一発でも喰らえば即退場だ。しかし、いくら気配を探ってもそれらしき存在はいない。一方で、楓と小太郎もまた動けずにいる。先ほどの攻撃が、自分たちを襲わないとは限らないからだ。そうして、膠着状態になって数分が経過した頃。

 

「む……?」

 

「あかん、時間切れや」

 

何が起こったわけでもないのに、突然鬼たちの姿が朧気になり始めた。どうやら、呼び出されてから大分時間が経過したらしく、現界することができなくなったようだ。

 

「口惜しいのう、あれだけ仲間を消されたいうんに、もう終いか」

 

「ま、うちらもちと長く眠りすぎとったわけじゃのう。勘が鈍っとったわ」

 

「もう少し暴れたかったが、しゃあないな。うちらの負けや」

 

口々に愚痴を零すものの、どこか晴れやかなものを感じさせる。恐らく、長年眠り続けていた彼らにとって、久々に暴れられたのが嬉しかったのだろう。不完全な形で終わってしまったため、満足とはいかないが、それでも楽しそうに笑い合っている。

 

「グハハ! (わっぱ)、なかなか強かったで! 次に会ったときはまた戦ろうや!」

 

「おう! けど、次も俺が勝つで!」

 

「カカカ、生意気なやっちゃ!」

 

豪胆な笑い声を上げ、鬼たちが消えていく。こうして敵同士として戦わなければ、きっと気の合う相手だったであろうと小太郎は思った。

 

「姉ちゃんも面白かったで! 今度は酒でも酌み交わそうや」

 

「俺は術比べもしてみたいわ、もっと隠し球もありそうやし」

 

「拙者は未成年故酒は無理でござるが、腕比べであればいつでも受けて立つでござるよ」

 

烏族らは、特に自らを翻弄してみせた楓に興味をもったらしい。次こそは全力で戦いたいと言い残して、虚空へと溶けていった。

 

「ふぅ、ほんまにしんどい相手やったわ……」

 

「強敵ではござったが、しかし張り合いのある相手というのもいいものでござるよ」

 

「けど、さっきの銃声はなんやったんやろなぁ……」

 

「気にはなるが、今は先に行った皆が心配でござる。急ぐでござるよ」

 

こうしている間にも、事態は進んでいるのだ。疑問は残るが、今は考えている暇はない。そう判断して、二人はネギ達のいるであろう湖へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「やれやれ、あの程度に苦戦するようではまだまだだな……」

 

去っていく二人を、遠くの木々の上から眺める者がいた。その手には狙撃用の銃があり、浅黒い肌が服の袖から覗いていた。そう、龍宮真名である。危機的状況にあった彼女らに、助太刀の意味で銃弾を放っていたのだ。

 

(……ま、私の仕事はこれで終わりだ)

 

彼女が今回依頼されたのは、あくまで気づかれない距離からネギと千雨を護衛すること。二人が命の危機に陥らない限りは、自分から行動する必要はないと判断して、鈴音が本部を襲撃した時も、木乃香が攫われた時もスルーしていた。そもそも、彼女の護衛は刹那の仕事なため、完全に管轄外。他人の仕事に手を出さないのが彼女のポリシーだ。

 

鈴音と戦ったのも、あくまで鈴音をネギ達とこれ以上接触させるのを避けるため。襲撃時は木乃香をさらうことを優先していたためネギ達を殺そうとはしていなかったが、計画を妨害しようと追ってきた二人を、今度は殺さないとは限らなかったからだ。尤も、真名にとっては鈴音と戦うこと自体も大きな意味合いを持っていたわけだが。

 

(……それにしても)

 

今度は、楓たちが向かっている湖の方へと目を向ける。そこには、復活を果たしその威容を見せつけるリョウメンスクナノカミがいた。しかし、真名の目は誤魔化されない。既に、リョウメンスクナノカミは消滅する寸前だった。未だに気配が残っているのは、旧きカミの成れの果てであるリョウメンスクナノカミが死なないからである。しかし、彼女の目にはしっかりと、二つに分けられたリョウメンスクナノカミの姿があった。

 

(あの感じからして、恐らくは刹那の仕業か? だとすれば、随分と成長したな)

 

復活したてとはいえ、強大な力を有するリョウメンスクナノカミは真名でも手を焼く相手だろう。倒せなくはないだろうが、入念な下準備が必要なのは間違いない。それを、刃一つで打ち倒したのだとすれば相当なものだ。

 

(近衛木乃香の奪還も済み、ネギ先生は治療でなんとかなる。なら、もう私の出番はないな)

 

既に自分の手助けが不要だと判断し、真名はその場を後にした。

 

 

 

 

 

砂津波に飲み込まれ、生き埋めになったと思った千雨。しかし、一向に息苦しさや圧迫感を感じない。反射的に目を瞑ってしまったため周りの状況が分からなかったのだが、いくらなんでもおかしい。そう思い、恐る恐る目を開けてみると。

 

「こ、これは……」

 

砂が、周囲を覆っているのは確かだった。だが、それらが空中で静止しているのだ。いや、それは正確ではない。見えない何かによって、砂が覆いかぶさるのを防いでいたのだ。

 

そして、自分の目の前にいる人物を見て驚愕した。

 

「あ、あんたは……!」

 

それは、先ほどリョウメンスクナノカミの下で倒れていたはずの人物。胸元から血を流し、既に死んでいたと思っていた女性。

 

「天ヶ崎千草!?」

 

そう、敵であったはずの天ヶ崎千草がいたのだ。よく見れば、その手には何らかの文字が綴られた紙が握られている。恐らく、これは(まじな)いの札であり今の状況を生み出しているのは彼女によるものなのだろうとすぐに思い至った。

 

「あんた、なんで……」

 

「別、に……あんたらを、助けたわ、け……や、ない……あいつらに、吠え面、かかせ、たかっただけ、や……」

 

そう言い終わると共に、彼女は力なく崩れ落ちる。同時に、張られていた結界が解除されて砂が地面へと落ちていく。結局、千雨たちは砂によって押しつぶされることはなかった。慌てて千草の首筋に手を当ててみると、まだ微かだが脈があった。治療すれば助けられそうだ。

 

「……まさか、生きていたとはね……」

 

砂によって遮られていた向こう側の景色に、彼はいた。そう、フェイトである。砂津波によって押しつぶしたと思っていた相手が、まさか無傷で現れるとはさすがの彼も思っておらず、しかしそれを成したであろう千草を見つけて睨みつける。かなりの怒り具合だ。

 

「いいさ、だったら次こそ捻り潰してあげるよ。ヴィシュ・タル・リ・シュタル……」

 

始動キーを唱え、再度魔法を発動させようとする。ネギは相変わらず治療中、刹那も自分も満身創痍だ。今度こそ最後だと覚悟を決めようとする。

 

「待て」

 

しかし、そこに待ったをかける声。フェイトはその声に思わず振り返る。そこには仮面をつけた、フェイトほどの背丈の人物がいた。

 

「作戦は完了だ。このまま帰投するぞ」

 

「しかし……!」

 

「命令は絶対だ。それとも、まさかそこの英雄候補を害するつもりか?」

 

「……っ、了解、しました」

 

仮面の人物に強く言われ、納得はしていないもののフェイトは了承の言葉を発した。そして、再度千雨たちの方を向くと。

 

「……この屈辱は忘れないよ」

 

「ハッ、だったら次はせいぜい足元を掬われないようにな」

 

怒りを隠すこともなく、そう告げる。しかし千雨も挑発気味に返し、フェイトは千雨を鋭く睨みつつも水に包まれて消えていった。恐らくは転移系の魔法だろう。千雨は今度は仮面の人物の方へと向かって問いを投げかける。

 

「……てめぇ、何者だ」

 

仮面をかぶってはいるが、雰囲気からして明山寺鈴音ではない。そもそも、彼女は剣士なので腰に日本刀を佩いているはずだ。背格好は近いとはいえ、やはり別人だろう。だが、そうなれば一体何者だというのか。

 

「答える必要はない。何れは(まみ)えることもある」

 

千雨の問いに対し、相手は返答の必要などないとばかりに一蹴して、闇の中へと消えていった。千雨も、そして刹那も相手がいなくなると同時に握っていた拳を開く。掌は、汗でびっしょりと濡れていた。

 

(あいつと同じ……同格の気配だった……! まだあんなのがいやがったのか……!)

 

(姉さんと互角、いやもしかしたらそれ以上の実力者……恐ろしい相手だった)

 

自分たちを赤子の手を捻るが如く蹴散らした鈴音。そんな彼女に匹敵するほどのものを、二人は感じ取っていた。恐らく、もし戦っていれば一瞬で命を刈り取られていたであろうと。

 

「戦う覚悟をしたはいいが、まさかまだあんなのがいるとはなぁ……」

 

「それだけ、姉さんたちの組織は実力者揃いということでしょう。気を引き締めていかなければ」

 

改めて、自らの未熟を感じた二人。しかし、そこにはもう逃げ出すような弱さは微塵もない。この戦いを通して、彼女たちは着実に強くなっていた。ただ力が強いのではなく、心が。

 

 

 

 

 

「ん、この気配は……」

 

数時間後。何者かが近づいてきているのを感じ取り、刹那は湖の反対側に目を凝らす。すると、その数秒後に何者かが全力疾走でやってきた。ものの数秒もせずに湖を渡りきったそれは、刹那たちの前で足を止める。

 

「刹那君、無事か!?」

 

(おさ)っ!」

 

近衛詠春であった。転移魔法符によって何処かへと飛ばされていたはずだが、どうやら京都府内であったためこうして駆けつけることができたらしい。しかし、その姿は無残なものだった。服はボロボロで、所々が焦げ付いており、左腕が完全に折れている。足も左側をやや浮かせていることから、恐らくは足にも異常があるのだろう。そんな状態でよく走れたものだと千雨は呆れながらも感心する。

 

「皆無事、とまではいかないが生きててくれて何よりだ。こちらへ向かう途中、京都の境界線付近で警戒にあたっていた術師たちに呼びかけたから、すぐに応援が駆けつけるはずだ」

 

「なるべくなら早くきて欲しいな、こいつを治療してやりたいし」

 

「ん、天ヶ崎千草か? ひどい傷だな……しかし、彼女は敵だった人間だ、助けるのかい?」

 

ネギの治療が終わった後、千雨は千草を治療してほしいと木乃香に頼んだ。彼女を攫った人間を治療してやれというのは、さすがに酷なものだと思ったが、木乃香は思いの外すんなりと了承してくれた。死にそうになっている人間を放っておくようなことはしたくないとのことで、覚束ないながらも治癒魔法を施し、応急手当ぐらいにはなっていた。

 

「こいつも利用されてただけだったんだよ、最後のほうで助けてもくれたし。それと、目の前で死なれると後味が悪いしな」

 

そう言いつつも、彼女が死なないか不安げな顔を見せる千雨。境遇としてはある意味、千雨と似たようなものを感じるだけに死なせたくないと無意識的に思っているのだ。

 

「それにしても……」

 

詠春は、自分が渡ってきた湖を見やる。そこには、すでにその威圧感を欠片も残していないリョウメンスクナノカミの残骸が転がっていた。残骸とはいっても、リョウメンスクナノカミは死ぬことが無いためあくまで依代となった巨岩がスクナの形をとっているだけだ。それが、スクナの巨体であったであろう大きな塊が縦一文字に真っ二つに裂けている。

 

「凄まじいな、ここまで見事にリョウメンスクナノカミを両断するなんて」

 

「桜咲も、よくは分からないっつってたぜ。なんか、呼吸が合ったとかなんとか」

 

「……何にせよ、これでもう終わりだろう。既に、奴らは全員撤退したようだ」

 

「あの、長さん……お願いがあるんです」

 

不意に、後ろのほうから声がした。振り返ってみると、先程まで眠っていたはずのネギが立ち上がってこちらへとやってきていた。ふらふらとした足取りで危なっかしく、慌てて千雨がネギの方へ向かい支えてやる。

 

「僕は、これから小太郎くんと合流して、行かなければいけない場所があるんです」

 

「ネギ君、君はまだ石化を解除したばかりでボロボロだ。ゆっくり休んだほうがいい」

 

長に頼み事があるというネギ。しかし、彼は詠春の言う通り石化からようやく解放されたばかりで、傷はまだまだ癒えていない。とりあえず命の危機が去ったネギは、自分の治療は後でいいと言い、木乃香は千草の治療にあたっていたためだ。

 

「僕を、待っていてくれている人がいるんです」

 

少しの間、二人は互いを見たまま動かない。しかし、意地でも引かないといった様子のネギに詠春は根負けしたようで。

 

「……分かった。一応、応援の何人かを護衛としてつけさせよう」

 

応援が来た後であれば許可するとし、ネギは詠春にお礼を言ってから再び眠りについた。

 

(……ふ、やはり親子だな。アイツにそっくりだ)

 

ネギの強い決意の篭った目を見て、詠春はどこか懐かしいものを感じていた。長年、腐れ縁ながらも親友として、そして戦友として共に戦った男を思い出しながら。

 

十数分後。詠春の呼びかけに参上した術師によって千雨達一行は回収され、関西呪術協会本部の屋敷にて治療を受けた。ネギは合流した小太郎に肩を貸してもらいながらも森の奥へと進んでゆき、目的の人物を発見すると駆け寄り、そっとその冷たい頬へと手を差し伸べた。

 

「迎えに来ましたよ、のどかさん」

 

こうして、長い長い夜の戦いは、ようやく終わりを告げたのであった。

 

 

 

 

 

翌日。石像にされていた者たちも治療され、のどかや夕映達も無事に元の姿に戻ることができた。幸い、夕映やハルナは石化していた時のことを覚えておらず、魔法がバレるということもなかった。

 

「うっかりしてたわ~、まさか寝落ちしちゃうとは」

 

「まったく、私も疲れていたとはいえ布団も敷かずに寝てしまうなんて……」

 

昨夜のことは、疲れでそのまま眠っていただけだと夕映とハルナは判断したらしい。結局、二人はまだ用事があるネギ達と別れて先にホテルへと戻った。

 

「にしし、それにしてものどかも積極的になったわね~」

 

「……少々意外だったです」

 

帰りの途で、そんなことを言う二人。と、いうのも。

 

「あの、のどかさん……」

 

「…………」

 

「もうそろそろ、離れたほうが……」

 

「あ、の……もう少し、だけ……」

 

復活したのどかは、何故か朝からネギにべったりとなっていたのである。昨夜、ネギは確かに客間の布団に一人で入っていたはずなのに、翌朝になっていつの間にかネギの布団へとのどかが潜り込んでいるという、起きて早々に心臓が飛び出すかのような自体に遭遇した。そのまま、のどかはネギから離れようとせず、起きてからもずっと手を握ったままなのだ。

 

(先生が無事でよかった……)

 

石化していた間のことは覚えていないが、その間ネギが危険な目にあっていたことは何となく復活した後に分かった。だからこそ、またネギがひどい目に合わないか不安でしょうがないのだ。そのため、のどかはネギから離れられないのである。

 

「ほぅ、先生もいよいよ春到来でござるか」

 

「ええ話やな~」

 

「いや、さすがに先生と生徒という立場上、ああいうのはまずいだろ」

 

温かい目で見守る一同にツッコミを入れる千雨。自分は一般人ではないと認識を改めてなお、相変わらず一番常識的なのも自分なのかと嘆息した。

 

「ははは、若いってのはいいね。僕も昔は妻と……」

 

「父様、のろけはええて。用事があるんやろ?」

 

「ははは、木乃香は手厳しいなぁ」

 

ノロケに突入しそうだった詠春を木乃香が阻み、用事は何なのかと聞く。

 

「ナギが昔使っていた別荘が、この近くにあるんだ。あまり長居もできないだろうし、これからどうかと思ってね」

 

「本当ですか!」

 

「ああ、ネギ君になら是非にと思っていたところだ」

 

こうして、一行はナギの使用していたという別荘へと向かった。なお、いつの間にかいなかったアスナだが、詠春の転移魔法符に巻き込まれて遠くに飛ばされていたらしく、朝方に疲労しながらも戻ってきていた。疲労がまだ消えていないらしく、彼女は眠らせたままにしておこうということになった。

 

「うわぁ……!」

 

ナギのかつての仮の住処。そこには、様々な魔法書や魔法具が収蔵されており、珍しい魔法薬まであった。父が過ごしていた場所ともあって、ネギは大はしゃぎだ。そんな状態でも、のどかはネギから離れなかったが。

 

「すげぇな、意外と近代的な家だ」

 

「魔法使いというのは、基本世間に魔法がばれないように行動しないといけないからね。怪しい家なんかには住めないから、こういうちゃんとした建物に住んでいるんだよ」

 

「なるほど、忍が状況に合わせて服装を変えるのと同じでござるな」

 

楓の例えに頷きつつも、やっぱこいつ忍者だろと心のなかでツッコミを入れる千雨であった。

 

「っと、そういえばもうひとつ用事があったんだった」

 

ネギに声をかけようとするが、彼は夢中になってナギの残した魔法書や書き留めなどを読んでいる。邪魔するのも無粋だと思い、代わりに千雨に少しの間出てくると言い残して、刹那の方へと向かった。

 

「刹那君、少しいいかな?」

 

「は、はぁ……ですがお嬢様は……」

 

「うちは大丈夫や。それにせっちゃんも少しはうちのこと忘れて羽根を伸ばさんと」

 

そう言って、木乃香はぐいぐいと刹那の背を押して詠春へ刹那を押し付ける。

 

「はは、木乃香の許可も貰ったことだし、行こうか?」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

ナギの別荘から更に少し歩いたところ。森の一角に奇妙な社があった。神社のようであるが、しかしまるで丈夫な倉庫かと見まごうばかりの大きさに、頑丈そうな鉄の扉が備え付けられている。

 

「長、ここは……?」

 

「……ここには、僕がある人物から譲り受けた貴重な資料が収蔵してある」

 

「それは一体……」

 

詠春は扉の方へと向かうと、袖口から鉄製の鍵を取り出して巨大な南京錠に手をかける。鍵穴にそれをはめ込むと、カチリという音と共にロックが外れた。南京錠を取り外すと、今度は呪いの言葉を唱える。すると、鉄扉の向こうから重い金属音がすると、扉がひとりでに開いた。

 

「この蔵は重要な資料や、貴重な書物を保管するための場所なんだ。だから、蔵全体に破魔の力が働いているから魔法も呪術も通用しない。一流の剣士でさえ、この壁を斬り裂くことはできないだろう」

 

更に、南京錠と呪文によって封をしており、この手順を踏まなければ決して開かず、強化の咒が重ねてかけられているためどんな攻撃も通用しないらしい。

 

「ここに、君に見せたいものがある」

 

「私に、見せたいもの……」

 

刹那を連れて、奥へと入っていく。中は思いのほか広く、様々な書物や呪具が見受けられる。中には、相当に危険なものもあるようだ。やがて、古びた本棚の一つの前で止まると、一冊の書物を抜き出した。

 

「えっ……長、これはっ!?」

 

刹那は驚愕した、その書物の題名に。何故なら、こう書いてあったためだ。

 

『村雨流 疾風之書』

 

「そう、これこそが僕のかつての友人……村雨流継承者、明山寺鐘嗣が亡くなる少し前に譲り受けた、村雨流の秘術書だ」

 

 

 

 

 

「村雨流の、秘術書……」

 

「これは村雨流における奥義や数々の技を収めた書、そのなかでも『風』と呼ばれる技術に属しているものが載った書だ。この他に『雷霆』、『雲霧』というのが存在する……が、どうやらこの騒動の間に奪われたようだ」

 

「奪われた?」

 

「今回の騒動、どうやら奴らにとっては二正面の作戦になっていたらしい。君たちが当たったリョウメンスクナノカミを復活させて暴走させる作戦と、もう一つ。この蔵に収められた村雨流の書を奪うことだったらしい」

 

聞けば、詠春は月詠とともに飛ばされた後は暫く月詠と戦っていたが、交代で現れたもう一人の人物と戦ったらしい。そして、それは刹那たちが湖で出会ったあの仮面の人物であるという。

 

「彼女は『黄昏の姫御子』と呼ばれ、かつて魔法世界で僕達が救出した少女だった。名をアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。エヴァンジェリンらによって奪われ、悪の道へ落ちた娘だ。今は、組織の幹部格になっているらしい」

 

「そんなことが……」

 

「彼女は魔法無効化の能力を有している。恐らく、僕の相手をする前にこの蔵へとやってきて、秘術書を奪っていったのだろう」

 

幸い、蔵ごと焼かれるということはなかった。あくまで書を奪うことが目的であったらしい。また魔法無効化系の能力者は、魔法が使えない。だから蔵を燃やすということもできなかったのだろう。とはいえ、刹那に手渡そうと思っていた書が敵の手に渡ったのはマズい。

 

「月詠という少女も村雨流を用いていた。恐らくは、彼女に村雨流をより深く教えるために奪っていったのだろう。消去するだけなら、蔵を燃やせばいい話だからね」

 

長の言葉に、刹那はやや顔を暗くする。決別したとはいえ、月詠のために村雨流の書を奪っていった姉。最早、自分は完全に身内として扱われることはないのだろう。

 

「だが二つだけ、奴らには誤算があっただろう」

 

「誤算、ですか?」

 

「ああ、一つはこの疾風の書。こいつは他の二冊と違って全く別の場所に保管してあった。ここの書物の数は膨大だ、探していれば時間がかかる」

 

そうなれば、月詠の加勢に行くのにタイムロスが生じる。だから、二冊だけを抜き取って去っていったのだ。

 

「そしてもう一つ。これは僕が鐘嗣に言われていたことを実践していたおかげだった」

 

曰く、譲り渡された時にこの書だけは絶対に肌身離すことなく持っていて欲しいと。詠春はその書物の内容を聞いており、書物が他者へ渡ることを絶対に避けるために約束を実行した。

 

「それが、このもう一つの秘術書だ」

 

「もう一つの、書……」

 

懐から取り出したそれは、呪法がかけられていることが一目で理解した。また、呪符が

巻きつけられており、厳重な封印が施されていることが分かる。

 

「『村雨流 雨之書』。これこそが、村雨流でさえ闇に葬ってきた禁忌の技術が綴られた、存在しないはずの四冊目だ」

 

 

 

 

 

『ごめん鈴音、言われてたもう一冊は場所が分からなくて確保できなかったわ』

 

「……気にしていない」

 

作戦からの帰りの途、アスナからの連絡を鈴音は受けていた。どうやら、三冊のうち一冊は発見できなかったらしい。しかし、それでも二冊を奪い取れたのは大きい。これで、月詠への稽古もより本格的に行える。アスナからの電話を切ると、一人物思いに耽る。

 

(……月詠は負けはしたが、着実に強くなっている……そろそろ次の段階に進ませるべきか……)

 

彼女がまだ幼い少女であった頃。影鳴によって様々な技術を仕込まれた。しかし幼かったことに加え、厳しい修行であったため意識が朦朧としていた時もあったため、それらの鍛錬法をあまり覚えておらず、結果として自らのやり方で村雨流の技術を月詠に伝授したが、しかし不安が残る。だからこそ、彼女は書を求めた。

 

(……さすがに、四冊目はなかった……?)

 

仕込まれたものの中には、村雨流でさえ忌避した技術もあった。しかし、それが記された書の情報がどこにもなかったのだ。もしかしたら、存在しないはずの四冊目があったのかもしれないが、今となってはもうわからない。

 

(……まあいい、作戦は全て完了した……)

 

今回の作戦で、肝となっていたのは三つ。一つは、リョウメンスクナノカミの暴走。これによって関西呪術協会に多大なダメージを与え、その隙を突いて関東魔法協会に圧力をかけ、組織の影響力を西にまで広げようと画策していた。が、これはあくまでおまけ程度。本命は残りの二つだった。

 

二つ目は、村雨流の書物の奪取。既に使い手が三人しかいない村雨流だが、その秘術書ともなればかなり有用な技術や技能、戦術などが記されている。それを神鳴流などの他流派の手に渡ってはマズいと判断し、月詠の指導のためという意味も含めて手に入れることを目論んだ。これはアスナの手によって成功している。

 

(……英雄候補……今回でかなり前進した……)

 

そして三つ目は、英雄候補に試練を課すこと。これは元々は、大川美姫によって実行されるはずだったものだ。しかし、彼女が失敗したために今回の作戦に組み込んだ。その内容は、一度英雄候補の心を折り、再起できるかを試すというもの。

 

大川美姫による生徒の裏切り、朝倉友美を教唆しての疑心暗鬼。そしてトドメが、鈴音による濃密な殺気。これらによって、ネギ達は完全に心が折れてしまったが、彼らは再び立ち上がることができた。

 

(一度折れた心は、中々治らない……けど、もう一度再起できれば……より強靭な心を手に入れて、立ち向かえる……)

 

エヴァンジェリンや鈴音という、極大の邪悪相手に決して折れないこと。それが英雄の必要最低限の条件だ。これがなければ、彼女らの求める英雄の資格はない。そのためなら、心が折れてそのまま廃人になろうが自殺をしようが、彼女らにとっては瑣末なことだ。

 

(……刹那)

 

決別した妹のことを考える。既に、彼女にとって刹那は身内ではなく敵。それも、高い将来性を持つ英雄候補だ。リョウメンスクナノカミを一太刀で斬り捨てたことから考えても、十分すぎる素質がある。

 

(……いずれ、私の領域までくる……その時が、楽しみ……)

 

暗い愉悦の笑みを浮かべ、来るべき時を待ち焦がれる。最早、そこに姉妹としての情はなかった。

 

 

 

 

 

短くも濃密な修学旅行が終わり、3-Aメンバーは帰りの新幹線の中にあった。さすがに疲れたのか、初日とは対照的に、とても静かな車内。引率であるネギも、他の先生から休むように言われ、眠りについている。

 

そんな中、ただ一人目を覚ましている者がいた。刹那である。普段から夜の警備などで起きていることが多いためか、睡眠が少なくても疲労が残りにくく、結果として少し眠っただけで目が覚めてしまったのだ。

 

(……色々なことがあったな……)

 

姉との再会と、決別。そして戦い。自らの秘密を話し、受け入れてもらえた喜び。人生で初めて、自分の翼で空を飛んだりもした。

 

(本当に、色々あった……)

 

物思いに耽っていると、不意に隣の席から手が伸びてきた。それは刹那の腕にふわりと乗ると、そのまま動かなくなる。横を見れば、自分に寄りかかったまま寝ている木乃香の姿が。

 

「ふふ、せっちゃ~ん……」

 

眠ったまま、刹那のことを口にする。そんな彼女が愛おしく、刹那は木乃香の髪をそっと掬いあげた。

 

(……奪わてしまったけど、取り戻すことができてよかった……)

 

心の底から、彼女はそう思う。守り続けることはできなかったけれど、それでも今こうして彼女はここにいる。それが、当たり前のことであって、それがとても嬉しくて。

 

(うちが、今度こそ守るえ……このちゃん)

 

優しい暖かさに包まれながら、刹那は再び眠りにつく。

 

『あっちむいてホイ! せっちゃんのまけ~!』

 

『つ、つぎは負けへん! このちゃん、もういっかいや!』

 

宝物のような思い出を、夢に見ながら。


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