のんびりしている間に、麻帆良祭が始まろうとしている。
その間の出来事は……平和と言えば平和だし、予想外と言えば予想外だろう。少なくとも、麻帆良祭までの出来事は未知のものにならざるを得ない状況になっている。
記憶喪失の小太郎やヘルマン? ヘルマン襲撃は京都で終了済みだ。
宮崎や綾瀬の魔法練習? まだバレていない。
3Aの出し物としてメイド喫茶やお試しで乱痴気騒ぎ? 先生はネギじゃないし、そんな暴走を許さないだけの抑止力はある。
幽霊騒ぎ? さよは担任だが何か。
告白騒ぎの対策? そもそも発光時期をずらしてあるし、超も私の協力者となっているから盗聴だのといった騒動もない。
……うん、古本のところで漫画を読み直してみたが、8巻や9巻に相当する今の時期は原作が息をしていないな。
もちろん、関連付けしようと思えばできる程度の、ちょっとした出来事はある。
特に騒動があったわけではないが、小太郎が麻帆良に来たり。月詠やらも含めて祭りの間の追加人員枠に入れたらしく、祭りの間は忙しくてゆっくり見れないだろうから先に観光しとけという意味合いの、呪術協会の応援スタッフの事前研修という名目で。
3Aとしては、お化け屋敷をすることになったり。色気ではなく、本番になったら魔法も使って色々できるよう仕込んである方向の。
シューニャ……チャチャの設定の問題か、たまに会うネギの画像が比較的多く記録されていることが発覚したり。普段あまり会う機会のない男性の情報を集めようとした結果であり、羞恥心やら恋愛やらとは無関係かつ他の男性教員の画像もそこそこ多かったらしいが。
ネギとアスナが、買い物に行ったり。デートではなく、ナギやネカネも一緒に。
それよりも問題なのは、中途半端に情報を掴んだ、アウトローな連中の対処になっている。
情報公開直前という事もあり、傍から見れば怪しく見える動きはどうしても多い。そこを嗅ぎつけてくるわけだ。
もっとも、表と裏……現実と魔法の両方から外れている者だから、対処はある意味で簡単ではある。
全く動じなければ、力を見せれば、(い)なかったことにすれば。
表立って動けない国の黙認で、裏を担当する魔法関係組織が処理する……のはいいのだが。
「いくら何でも、馬鹿が湧きすぎだろう……」
その類の報告書の束が厚くて、見る気も失せる。
対処がどうのというモノではなく、完全な事後報告をまとめたようなものだけに。
「原因の一部は判明してマース!
というか、最後がそのお馬鹿さんの元凶を叩き潰した報告書デース!」
「ますます見る気が失せる情報を……
というか、あれだな。何日か前に、某元老院の老害共の屋敷に監査やらが踏み込んでいた件がこれか」
「Oh...」
「……そこまでテンションが落ちるのか。
まあ、あれだ。たまたま見かけてしまっただけであって、常に監視しているとか、全て知っているとかいう話ではないからな?」
退屈だった時にメガロの方を見ていたら妙に騒がしくなって、よく見たらそういう騒動だったというオチではあるが……何というか、ダイアナや眷属達の思考回路を考えると、神のような能力とか言われそうだな。
「麻帆良からほとんど出ないエヴァ様が魔法世界の出来事を見かけたという点が、既に異常事態デース……」
「ん? 最近の連中は知らないのか?
こういう蝙蝠型の遠隔端末のようなものがあるんだが」
ほれ、と言いながら指先にアーティファクトの蝙蝠を出し……そういえば、誰かにこれを見せるのは久しぶりか?
「コウモリ、です?
あんまり可愛くないデース」
「これはこれで便利なんだがな。色々と発達していなかった頃は、これを通信機代わりにしていたこともあったし。
こいつで魔法世界を散策していた時だな、たまたま見かけたのは。
とりあえず、捕まった腹黒い連中に、きれいな花畑の近くに住むなとでも言っておいてくれ。私だって騒動を見たかったわけじゃない」
老害の嫌がらせがウザいと言ってきたのは、ヴァンだったか。
特に怪しい数人を監視する意味で、たまに見ていたという裏事情もあるにはあるが……私が何か見付ける前に、監査が動いたんだ。
決して、私が何かやったから監査が動いたわけじゃないし、そもそも監査の連中は私が見ていたことも知らないはずだ。この蝙蝠を知っていて、そこにいた事に気付いていない限りは。
……監査に眷属が混じっていた気がするが、気付かれてない、よな?
◇◆◇ ◇◆◇
そんな出来事も横に置いておき。
魔法関係組織の打ち合わせが、麻帆良で行われている。
魔法の公開を麻帆良祭で行うのだから、関係者が麻帆良入りしてくるのは当然で。
関係者が集まる麻帆良で打ち合わせやらが行われるのも自然な流れではある。
ある、のだが。
「よりによって、私のところでやらなくてもいいと思うが?」
「魔法関係組織の上層部にも、お姉様の事をよく知らないって人は多いもの。月の一族でも、古参や幹部じゃないとなかなか会う機会も無いし。
でも、魔法世界を丸ごと何とかしようなんてレベルの魔法使いが引き籠ったままだと、色々な意味で大丈夫か心配になるのが人間ってものでしょ?」
そして、進行役というか、とりあえず主に喋るのはクレメンティーナらしい。
立場的には月の一族ロシア方面総括ではあるが……組織の代表として顔を出しているわけではないようだし、主に私の相手をするという意味で適任という事か。
「つまり、ここにいるのは見極め役か。
だが、私の見た目はコレだし、かえって胡散臭いと思われるのがオチだろう。人格面はまあ、今更しゃしゃり出ない事は600年ほど引き籠っているニートっぷりが証明していると思うが」
「結構重要なお仕事をしてるじゃない」
「私が動かざるを得ない事態というのは、基本的に大事だぞ。
逆に言えば、私が働かなくてもいい世界が一番平和でいいという事なんだが……なぜか、気が付くと私の仕事が増えているんだ」
それも、とても面倒だったり、うっとうしい内容だったりするものが。
働きたくないでござる! とか、はらたいらは負けかなと思って……違う、働いたら負けかなと思っているとか、そこまで言うつもりはなくても、仕事の内容はある程度選びたい。
書類の山を増やしたり、部下を増やしたり、従者を増やしたり、眷属を増やしたりするのが、私の仕事じゃないよな?
「それだけ重要な立場にいるって事よ。
まあ、人格面というか、ここからしゃしゃり出て支配者面する性格じゃないのは、日本とか幕田とかの体制を見ればわかるんだけど、問題は実力面なのよ」
「ああ、こんな小娘が優秀なはずがない、とかいう話か」
「そうなんだけど、ぶっちゃけすぎじゃない?
それで、何か見せられるものは無いかなーという相談をしたいのよ」
「残念なお知らせだが、最近の私は超大規模魔法の制御に集中しているからな。
ダムの放流でコップに水を入れるなんて器用な芸を求められても困るし、そこに人がいれば死体すら見つかるか怪しいレベルで巻き込むことになる。かといって、そのレベルの魔法を使えば、秘匿なんてする気が無いだろうというレベルの影響が出るのは確実だぞ。
とりあえず、数人が割と必死で、魔力で威圧しようとしているが……そよ風ほどにも感じていない事実を受け入れさせるのが先だな」
「あー、一応優秀な魔法使いではあるんだけど」
「人間という枠の中で優秀、程度ではな。
ナギやラカンのようなバグ連中を鼻で笑うのが私達だが……それはお前でも可能だし、私の実力証明にはならんか」
「ナギに会ったことはあるけど、実際にやりあったわけじゃないから、ノーコメントで。
というか、お姉様もラカンと会ったことは?」
「無いな。
とりあえず方向性は違うがナギと互角程度の実力だと聞いているから、ナギの10倍の威力で10倍の数の攻撃をすれば、問題なく倒せるだろう?」
「なんというパワープレイでしょうか……」
「まあ、あの規模の魔法を行使しようとするなら、これくらいはな」
扱う魔力の量や制御の難易度という点では、ナギの10倍の10倍なんて軽いものだ。
相手が攻撃してこない──邪魔しようとする阿呆は護衛やらが対処する前提で──から、行使に集中できるからこそ、だが。
というか。
「いい加減、そよ風の方がマシになってきたんだが。
そろそろ押し返していいよな?」
「えーと……手加減は?」
「善処しよう」
「あかんやつ、と言われるものよね。
とりあえず貴方達は無駄な挑発を止めなさい。本当に死ぬわよ」
いや、散々言っておいてなんだが、殺さない程度にはできる、はずだぞ。
最近は大規模魔法しか練習してないのは本当だし、手加減が怪しいのは否定しないが……となると、どうやって納得させればいいんだろうな。
ここしばらく時間と精神的に余裕が無い状態が続いている昨今、年度末です(意味不明
ただでさえ最近短めになりつつあるのに、更に10%Offくらいでしょうか。
そして、仕事は年度末に向けて更に増量。たぶん、3月末の投稿は無理じゃないかと思います。
現実逃避で久しぶりに触ったC++、色々変わってるなぁ……何かやってみたいなぁ……(仕事と趣味のプログラムは別な人種