金色の娘は影の中で   作:deckstick

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魔法先生重羽ま編第15話 旅立ち

「これでボクの勝ちです。

 おとなしく観念して、悪いことをやめてくださいね」

 

「……思ったよりやりますネー。

 でも、悪い事をした覚えはないデース!」

 

「ボクだけならともかく、エヴァさんの手も煩わせてる状態ですよ?

 少なくともボクの基準では悪いことです」

 

「くっ……」

 

「はいはい、くっころさんはそういう事をしそうな相手でやってください」

 

 意外にネギが強いというか、ダイアナが予想より弱いというか。

 まあ、なぜか2人がチェスで勝負することになり、私がその見届け人をすることになったわけだが……言い出しっぺらしいダイアナが大して強くない気がするのも謎だ。

 

「勝者、ネギ。

 それで、この勝負はどういう理由でやる事になったんだ?」

 

「ボクが負けたら、エヴァさんに近寄るな的な事を言われました。

 この勝負で久しぶりにエヴァさんに会えたので、本末転倒ですよね」

 

「そういえば、ここしばらくは会っていなかったな。

 少し前に色々な知識を集めているらしいと聞いた気がするが……」

 

「そうですね。魔法の改造方法とか、人と魔族の違いとか、精神関係に作用する魔法とか、手当たり次第に色々です。

 もちろん、違法な事はしていません。図書館島の魔法関係者用書庫とかまほネットとかで問題なく入手できる範囲です。そもそも違法なレベルの情報を理解する下地が不足してる自覚がありますから」

 

「……下地が出来たら、違法な情報にも手を出すような言い方だな?」

 

「そもそもの目的が合法的かという問題がありますし、可能性は否定できないかなー、とか思ってます。

 というか、ボクの研究結果って、公開できるものになるんでしょうか……?」

 

 ネギがやっている研究、か。

 究極的には、精神の入れ替え……一言で言えば肉体の乗っ取りみたいなものだったか。

 

「無理だろうな」

 

「ですよねー。というわけで、今はともかく、最終的には非合法な内容になり、情報収集も同じくらい真っ黒にならざるを得ないと思うんです。

 まあ、そもそも情報が無いというオチも覚悟してますけど。月の一族の情報だって無いと思いますし、更にエヴァさんは特殊なんですよね?」

 

「まあ……そうだな。特殊といえば特殊だろう。

 私自身が分かっていない事もあるし、情報が無いのは間違いないだろうな」

 

「ですよねー」

 

 あははーとか笑っているが……これは、私も笑っていい内容なのか?

 最終的に、私を研究したいという結論にしかならないのでは……

 

「まあ、それも今後どうなるか次第ですけどね。

 当面は基礎的な情報収集や実力を身に付けなきゃですし、その間に状況とかが変わったりするかもしれませんし」

 

「それはそれで不安があるが……どう状況が変わるか、予想できるか?」

 

「とりあえず、魔法が公開されるのは確定です。つまり、魔法で姿を変えるという手法が世間に知られる、という事ですよね。

 それがどう使われてどう受け入れられるかまでは分からないですけど、心と体が一致しない人たちと協力体制を作ることは出来るかもしれない、とは思っています」

 

「素人が集まっても、役には立たんぞ。

 せいぜい無知ゆえのネタ出しくらいか?」

 

「本来の目的を隠すという、重要な役目があるじゃないですか。

 それに、役に立つ思い付きもあるかもしれませんし」

 

「……意外と黒いな?」

 

「これくらい、普通ですよ?」

 

 いやまあ、内容的に真っ黒な領域に踏み込もうとしているなら、最低限の嗜みではあるか。

 原作のネギと比べるのもあれだが、やはり幼さは無いな。抜けている部分も無くなっているが、これは、いいこと……なんだろうか?

 

「そうか。

 ところで、そこで落ち込んだままのダイアナはどうすればいいと思う?」

 

「そのうち立ち直るんじゃないですか?

 急ぐようであれば、父を生贄にするという方法もありますけど」

 

「んー……とりあえず急ぎの用事も無いし、今回は……今回も? 自爆、だよな?」

 

「そうですね。父の時といい今回といい、自爆と言っていいと思いますよ」

 

「ところで、だ。

 今回の件だが、桜通りの話に対応するような気がするが、どう思う?」

 

 ネギ自身に自覚は無いだろうが、言い回しやらを考えると、その可能性は否定できないような気がする。ダイアナ……吸血鬼側から手を出して、最終的に情けない負け方をするとかも。

 

「えーと……言われてみればそんな気もしますけど、気にするほど大げさな話にはなっていませんし。

 それならそれで構わないですし、違っても問題はないですよね?」

 

「そうなんだが、これでフラグが消えてくれると気にしなくてよくなるから楽だ、と思ってな。

 まあ、少なくとも私が原因となる可能性は消えていたから、代役は決まっていたのだろうが……随分としょっぱい内容になったものだ、とは思うぞ」

 

「気にしすぎも、罠かもしれませんよ?」

 

「私が心配性なだけだ。まあ、これで次は修学旅行まで心配はないはずだ。

 ……その修学旅行が大問題なんだが」

 

「ボクは立場的に一緒に行けませんから、その、頑張ってください、ね?」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 月日が過ぎるのは早いもので。

 私……正確には私の分体(魔力が漏れたりしないよう超低出力で頑張ったバージョン)だが、意識的に私がいるのは、新幹線の駅だ。

 そして、見える範囲に、居る予定の無い面々、その1がある。

 

「……で、どうしてお前達がいる?」

 

「せっかくの機会ですからね。

 日本の古都を見てみるのも良い経験でしょう」

 

 トッシュ、ティーナ、ジャンヌ、モジタバ……要するに、最近私のところに来た上位眷属の4人が、揃って列に並んでいる。

 観光という理由自体は間違っていないのだろうが、組織やら立場やら、色々と問題がありまくるのだが……話は通してあるのか?

 

「ご心配なく、お姉様。

 私達は観光をしながら、ついでに周囲を警戒するだけって話をしてあるわ。

 もちろん、降りかかる火の粉は振り払うけどね」

 

「それは、積極的防衛というやつか?」

 

「ふふっ」

 

 ああ、これは間違いなく、自分を囮にしてでも狩りに行く気でいるな。特にティーナは、見た目だけなら強そうと思えないし。

 詠春や木乃江もその辺……狩りについては察していると思うし、プライドや立場と引き換えだが防衛に関しては連中の負担が小さくなる話ではあるか。後始末は面倒そうだが。

 

「ところで、究極的には私に護衛は不要だ、という点はどう思う?」

 

「関係ないわ。お姉様を傷付けようとする馬鹿が存在する事が腹立たしいだけだもの。

 それに、どこぞの老害が動いてるらしいじゃない?」

 

「こちらにも情報が来ていますから、ほぼ確定でしょう。

 むしろ、複数のルートで確認できている現状が、意図的に作られた罠でないか心配になるほどですね」

 

「ま、それはねーと思うぜ。

 動いた金も、連中にしちゃかなり思い切った額だからよ。これでブラフってんなら、逆に尊敬しねーとな」

 

「その辺の裏話は置いておきましょう。

 結論としてエヴァ様は、自由に観光を楽しんで頂いて問題ありません。もちろん、護衛がいる事を知った上で、という制約は付きます。

 我々だけであればさほど問題ありませんが、日本呪術協会の者もおりますので」

 

「まあ、当然だな。護衛する側にとって、突然の行動は対応が大変なのは分かっているつもりだ」

 

 呪術協会の若い連中では、私が普通に動くだけでも予測を失敗しそうだがな。

 その点、こいつらは……予測自体は外すかもしれんが、そこからのリカバリーは早いだろう。特にジャンヌは、だいぶ前の話ではあるが私と行動していた時期もあるしな。

 

「それで、だ。

 あいつらもいるのは、突発的な話ではないんだろうな?」

 

 私が視線を向けた先には。

 居る予定の無い面々、その2がある。

 

「もちろん。

 彼らが京都に行くという話自体は、半年以上前から打ち合わせを行っていたようですね。

 日程などが決まったのは、エヴァ様や我々の日程とほぼ同時だったようですが」

 

「幕田に来るのが確定した時点で話はあった、という事か。

 だが……私と合わせてきた以上、アリカはメガロを叩く気なのか?」

 

 メガロの襲撃があると予想されているところに、更に火種を追加するとは……。

 つまり、少し離れたところにいるのは、ナギ(王配)、ネギ(王子)、ネカネ(公爵家の分家だから血縁はあるだろう)のアリカ(女王)関係者3人と、タカミチ他数人の護衛達だ。

 そして、タカミチ達の警戒レベルを見る限り、襲撃について知らないとはとても思えない。

 

「呪術協会とウェスペルタティアは、護衛や有事の際の対処に関する情報交換や協議を、密接に行うという事で合意しているそうです。

 その為の人員も、期間内は呪術協会に常駐すると聞いています。それも連絡係ではなく、ある程度の事は即決可能な権限を持つ身分の者だそうですよ」

 

「……うん、アリカはメガロとやり合う気なんだな。

 まさか……実はアリカ本人が来ている、とかいうオチは無い、よな?」

 

「さあ? そのあたりは何とも」

 

「こっちを見て言え。

 アリカが来る口実は……あれか。ナギやネギにかこつけたとか、その辺か?」

 

「さあ? そのあたりは何とも」

 

「だから、こっちを見て言えと言っている。

 全く……餌を魅力的にしすぎて、阿呆共の暴走が悪化しなければよいが」

 

「その辺は問題ありません。

 動いた金額や組織は把握できていますから、そこから規模や内容を予測するのはさほど難しくありません」

 

「阿呆の暴走は想像を超えるぞ?

 あんな事をしでかす連中もいる事だしな」

 

 うん、できれば視界に入れたくなかったのだが……

 あの阿呆共は雪広が持つデパートやらと組んで、大々的にコラボイベントを始めたらしい。

 おかげで、リリカルなノアに登場する、私をモデルにしたエヴァという名のフェイトもどきが、あちこちに……

 

「……すごい表情になっていますよ?」

 

「せめて、私の視界に入らないようにしてほしかった……」

 

「…………心中、お察しします」




あちゅい……
艦これメンテ……
8年以上前のCPUでHTML5なゲームは動くのだろうか……
この話、こんなに書いてるのに、未だ原作の4巻辺りまでしか行ってないッ……!

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