あれから俺を含めた攻略組は一気に50層まで登りつめた。特に大きな被害や損害もなく、着々とクリアして行きますます勢い付く。2週間という短いスパンで約20層を突破できたかと言うと、ついこの間から最強ギルドと呼ばれる《血盟騎士団》の団長《ヒースクリフ》が使うスキル《神聖剣》で楽々とボスを倒していった。大きな十字の盾に片手用直剣というスタイルで戦い、盾の耐久力は凄まじく、ヒースクリフのHPがレッドゾーンを切った事を見たことがないという。
何より神聖剣はヒースクリフだけのユニークスキルらしく、凄まじい強さで知られていた。
すぐに次の階層へと急ぐのはよくない。ここ最近は緊張した毎日が続いているから一旦攻略を中断させ、1週間の休暇をみんなに与えた。カリスマ性半端ねぇな、葉山かよ爆発しろ。
そんな俺は今アスナから教えられたオススメの武具店に来ていた。
ウザいほど元気いっぱいに挨拶をしてくれるこの子はリズベットという名前で何でも凄腕らしい。
「そうだな、君を信用してこれを見せる。だだし誰にも言うなよ」
「うぇっ!? 何これこんな知らない? これを作れって、どうやって作るよ……」
ぶつぶつ文句を言っているが渋々了承してくれた。これのために寝る間を惜しんで素材を全て腐るほど集めた。それを全部渡すと彼女は奥の製造部屋に入っていった。
「なるべく早めに作ってくれ」
少し恥ずかしいが大きめに言うと部屋からわかったわよと言う怒号が聞こえ逃げるように店を後にした。
そして俺はある噂を確かめるべく46層にある森の中に来ていた。確かめるというか手に入れるが正しいか。
何でも森の中心部には突然丸い平地に太陽の光が直接差している場所があってそこには刀掛けに掛けてある名刀正宗があるらしい。あれが完成するまでの武器。
「ここか…」
そんなこんなで特にモンスターも出ることなく中心に辿り着いたわけだが、本当に刀掛けに刀が置いてあった。
平地に足を踏み入れると先程まで濁っていた視界が突然クリアになる。風の流れを感じ、ゾワゾワっと背筋に寒気が走る。木の呼吸。森のざわめきがはっきり聞こえ生命を感じると言えばいいのだろうか。
「これが正宗。確か何人か此処に来てこいつを取ろうとしたら拒絶され気絶させられたらしいな」
恐れたら掴めなくなるようで怖いため、勢いよく正宗を掴む。途端世界が凍ったかのように感じ、周りには冷気が漂い始める。
俺はこいつに拒絶されている。直感的にそう思った。
「逃げてたまるかよ」
ぐっと力を入れて掴み直す。ヒシヒシと伝わるこいつの力。割れる音が聞こえる。それはまるで俺の精神が壊れる感覚で冷や汗をかき、全身に痛みが走り始める。
「ガッ!」
破裂音とともに吹き飛ばされ、後方に吹き飛ぶと背中から地面に落下した。冷気は収まっておらずそれどころか冷気自体が形を作り始めモンスターに変形した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「我、汝ヲ試スモノ」
頭に語りかけてくるそいつはまさに自然そのもの。そいつには何故かHPゲージがなく《?》で埋め尽くされていた。名前を見るが同じようだ。
「まぁやるしかないよな」
そいつは突進をしてきた。俺も走り出すとそいつの目の前で刀を抜く。
そして空を斬った。すぐに後ろを振り返るがそいつは真っ二つになりながらも平然としていた。
「こんなんありかよ…」
不定形なそいつは、雲のようにフワフワしていて斬っても斬っても当たる感覚すらない。
後方にジャンプして距離を取ると、そいつから白い冷気が飛び出してくる。俺はそれを敏捷スキルで避けていくが何本も枝分かれして襲ってキリがなく、ついには捕まった。
「何で俺を掴めるんだよ!」
俺がいくら刀を振っても傷どころかかすめるだけなのにそいつは俺を平然と掴んできた。
「っらぁ!」
掴んでいる手を斬るとそいつは苦しみだし、手らしき物を引っ込めた。
……攻撃するときだけ具現化するのか。と一つ仮説を立ててみた。どうしても確信が持てない。
「もう一回試してみるか」
もう一度そいつに向かって走り出す。そして敢えて目の前に行っても何もせずほんの少し止まってみると腕らしきものが伸びてきた。そしてそれは俺に近づいて来るたびに形を作り始め、目にはっきり映るようになる。
「よし、こっからが本番だ」
一旦距離を置く。相手が自然そのものならこちらも自然エネルギーを使えばいい。とどこかの九尾が言っていたのを何故か思い出してしまう。本当に出来るかは疑問だがやるしかない。まぁあれだ、俺もあるんだよ、そういうスキルが。
「いくぜ、俺だけのユニークスキル」
大きく息を吸って止める。ゆっくり吐き体の力を抜くと、小さな光の粒子が俺を取り囲む。それを危険だと察知したのか範囲攻撃をして邪魔をしようとする。
「もう遅いぜ」
エネルギーが溜まってきたのか身体がポカポカする。そして足に力を入れて思いっきり地面を蹴る。一瞬にして間合いを詰めてソードスキルを発動した。そいつは俺に気づくと攻撃をやめ不定形に戻るが、エネルギーを武器に通しているためそいつを斬る事ができ、倒せた。フシューと空気が抜ける音と共に刀に吸い込まれていった。
「これでこいつは俺のものか?」
正宗を掴んで見ると先程感じた憎悪の塊は感じない。持ち主を許されたのだろう。システムコマンドを表示させてアイテムを見ると《名刀・正宗》の文字があった。
そしてもう一つ確認する。スキル欄には《氣》が表示されていた。
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八幡のユニークスキルの説明です。
これはSAO内で一番一人でいる時間が多い人に与えられるスキル。
《氣》は自然から取り寄せるエネルギーを使い、それを体内で練り上げ、爆発的な力を得られるというものです。
武器や防具に通すことも可能で一時的に攻撃力や耐久力が格段にあがったりします。
移動する際も足に練り上げた氣を集中させてものすごい速さで走れたり自分の体なら何処にでも集中させることは可能です。
但しものすごい集中し、膨大なエネルギーを体に入れ込むため限界があり、一度にHPゲージ以上のエネルギーを取り込むと自爆する。
精神を相当すり減らすので一度にできるのは回数には限界がある。
今のところ八幡が出来る回数は3回。
ものすごいチートになってますね 笑
てかSAO内って氣とかあるのかな……まぁその辺はオリジナルってことで 笑
変えたほうがいいという意見があったら変えたいと思います。