やはり俺のSAOは楽しい。   作:Aru96-

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-5話-

 

 

 

 

 

 

 

36層迷宮区。俺は次の階層へ行くため、ボス部屋をソロで探している。

 

「……クッ」

 

30層を突破してからモンスターの動きが変化してきた。ソロだと骨が折れる厄介ぶりだな。1体倒すのに少し時間がかかる、いくら強い武器だからと言って油断してたら一瞬でやられるな。気を引き締めよう。

 

「おっ、はーちゃん」

 

どこからともなく鼠の様に現れる茶色いローブに黄色い髪。印象的なのが頬に描かれた三本の線。まるでどこかの九尾ですね、わかります。

そしてなによりこいつは女だという事。ちょっと前まで男だと思ってました。

 

「キー坊とアーちゃんとはまだ仲直りしてないのカ?」

 

「いいかアルゴ、そもそも喧嘩なんてしてない。俺が一方的に避けてるだけだよ」

 

キリトとアスナさん、俺。俺は悪者であいつらはヒーロー。それでいい。今じゃアスナさんは攻略の鬼、黒の剣士と言われるキリトは有名な攻略組トッププレイヤー。あいつらが目立つと俺はそいつらの影で静かに居られるから悪者も捨てたもんじゃない。まぁたまに視線が痛いけど。一回泣いちゃったけど。

 

「それでもダ。はーちゃんはキー坊達と一緒に居た方がいい。それにあの2人から毎回会うたびにはーちゃんの場所を教えてって言ってくるの迷惑してるんダヨ。特にアーちゃんがナ」

 

言葉は冗談交じりでも顔は真剣そのもの。まぁ、アスナさんにはキリトを押し付けるような事を言って別れてしまったからな。それだけが少し後悔というかなんというか。

 

「あぁ、分かったよ、次会ったら話し合う」

 

「いーヤ、今回とは別の件だけど前もそんなこと言って一回も連絡寄越さなかったじゃないカ。だからオイラが場所と時間をセッティングしておいたゾ」

 

ちっ、こいつまだあの事根に持ってんのか。しつこい奴は嫌われるぞ。あ、嫌われてるのは僕の方でしたね。あれ、目にゴミが……

 

「わかったわかったんで、いつ?何処で何時何分地球が何回回った時なわけ?」

 

「小学生かよお前。恥ずかしいぞ。時間は17:30。場所はアーちゃんの宿だそうダ。何処にあるかはメールで送るヨ。まぁそゆことだからじゃあナ」

 

初めの方一瞬素に戻ったよね?怖い。超怖い。これから敬語使ったほうがいいかな。メールで場所が送られてきた。29層で場所は随分端っこだな。アスナさんなら中心部に住みそうなんだけど。

 

「まぁ、行くか…」

 

あまり気乗りはしないものの転移結晶で迷宮区を出た。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

指定された場所に行くと誰もいない。イジメかな。俺は仮想世界でもイジメられるのか。何個かのトラウマが蘇ってくると同時に帰ろうと元来た道を歩こうとする。

 

「ハチ君待ってよ」

 

後ろから随分聞いてない声。だけどはっきり覚えている凛とした声は俺を振り向かせた。栗色の綺麗な髪。可愛らしく綺麗な顔立ちに華奢な体。俺は覚えている。なんか変態っぽいな、止めよう。

要はあれだ、振り返るとアスナさんが笑顔で立っていた。

 

「久しぶりです。アスナさん」

 

「そういう所、変わってないんだね。敬語じゃなくていいし呼び捨てにして。それにハチ君の方が年上でしょ?」

 

そう言ってベンチに座り隣をポンポンと叩いて俺に何かの合図をする。

一色に教えてもらったこの合図。ここ座れって言う意味だそうだ。

 

「別に気にしないのに」

 

彼女がそう言ったのは多分一人分間を空けて座ったからだろう。俺が気にするんですいません。

髪の毛を耳にかけこちらに顔を向けるアスナに胸がざわついてしまい、封印していた感情が出ようとしていた。

 

「敬語の件はすまん。なんつーの、あまりに綺麗だからつい現実世界みたいに萎縮しちゃってよ」

 

唇をきゅっと閉めて顔を真っ赤に染めて彼女は俯いてしまった。あれ〜、怒っちゃったのかな?後で謝っておこう。

 

「んで、話ってのは?」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

-アスナside-

 

 

ーー綺麗だから

 

ーー綺麗だから

 

ーー綺麗だから

 

さっきからこの言葉が頭の中で無限ループしてる。顔が熱くなるのがわかる。何で仮想世界なのにこういう所は妙にリアルなのよ。

彼は冗談で言ったのかもしれない。横目で彼を見ると鼓動が早くなり、胸がざわつく。一度見てしまうと目が離せなくなってしまう。

 

「んで、話ってのは?」

 

その言葉により冷静さを取り戻す私。そして今の気持ちを存分に言ってやった。彼の顔はびっくりしていて少し笑いそうになる。

 

「まぁ、わかった。あの時はごめんな。何かあったらアスナ頼るから。これからもよろしくお願いします」

 

馬鹿正直に頭を下げてきてつい私はその頭に手を乗せて撫でてしまう。

現実世界でもこんな感じの髪の毛なのだろうか。アホ毛が立っていて少し癖毛。いつまでも触りたくなってしまう。

 

「何してんの? 俺そろそろ帰りたいんだけど」

 

「ご、ごめんね。うん今日は時間作ってくれてありがとう。また会おうね」

 

フレンド登録を済まし、無愛想におうと返事をして去って行く彼。彼の大きな背中を見て小さくなるまで見送る。そして宿に戻ってベットにダイブする。

フカフカな羽毛のベット。枕に顔を埋めて気持ちを整理する。

 

さっき私は今の気持ちを全て言った。でも心の奥に残ってしまうこの思い。

 

 

 

 

この気持ちはいつかまた、きっと……

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

-キリトside-

 

面白い場面に遭遇した。俺とアスナとハチで話し合うために指定の場所に行く途中でアスナがハチの頭を撫でていた。

俺はその場面を動画と写真に収めてハチが去っていったあと送ってやった。

 

「うそだろ!」

 

ハチからすぐにメールが来て文面を見たら衝撃が走った。

 

 

《今までありがとう、キリト》

 

背筋が凍った。しばらくするとピロリーンと運営からの着信が入る。

メッセージを押して内容を見てみるとそこには、

 

 

 

 

 

 

『フレンドから《ハチ》が消去されました』

 

 

 

 

 


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