やはり俺のSAOは楽しい。   作:Aru96-

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-16話-

 

 

 

 

 

鳴り響くのは度重なる金属音がぶつかり合う音。聞こえるのは感情が恐怖に支配された声。連合軍がボス部屋に入った数分後に俺たちは入るとそこには予想しなかった光景が目の前に映し出されていた。

 

例え少ない人数で戦闘を行ったとしても早すぎる展開、俺たち以外そこにいるほぼ全員のHPゲージがイエローゾーンに入っていた。小さく舌打ちする。

 

考えろ、思考を止めるな、集中しろ。どうすれば現状を打破出来る。何かいい手は無いのか。しかし考えれば考えるほど深みにハマり、モンスターの攻撃に反応が遅れてしまう。

 

キリトの呼び声に意識が戻され、周りに意識が行く。前を見るとその時にはもう大剣は振り下ろされていた。

 

一つの声と共に横に視界がぐらりと動く。死を覚悟した俺にとっては刹那の出来事。まるで空間ごとどこかに弾き飛ばされた気分。

 

「しっかりして、ハチくん。考えてる暇なんてないよ!」

 

ハッと完全に覚醒する。俺はさっきの出来事がアスナが俺を抱えて攻撃を交わしたのだと分かる。そうだな。俺にはこんなにも頼れるな、仲間たちがいる。少しだけこちらに視線を向けたキリトに気づく、考えるな、感じろ。そう言われているようで少し笑ってしまう。

 

溜め息を一つ。すると全ての邪念が消え、視界がクリーンになる。心臓の音がやけに大きい。みんなの呼吸が聞こえる気がする。

多分これはそう、集中するの究極形態。鞘から刀を抜くと、底冷えするような冷気を纏う。

 

「よし、こっから切り返そうか」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ……はぁ」

 

俺、キリト、アスナ、クライン。とその仲間たちで連合軍を庇いながらも何とか闘えている。残りのHPが1本になったその時。グリーム・アイズは自身の大剣を上に掲げ、それを真っ二つに割り出す。そうするとこのゲームには存在しない筈の両手剣になり俺たちに先ほどとは比べ物にならない様な連続攻撃を仕掛けてきた。左右によければもう片方の剣で上によければしっぽ攻撃。あらゆる場面で自分の体を最大限に活かし殺そうとしてくる。

 

「こいつはキツイぞ」

 

クラインが言う。確かにそうだ。回復アイテムも底を尽きてきたし、何より使えるほど暇にならない。レイドによる大人数パーティなら時間を多少取れるものの今はかなりの少数。このゲーム内最強の剣士のキリトでさえも苦い顔をしている。クラインのギルド風林火山のメンバーに至ってはほぼ使い物にならない程の大ダメージを食らってしまい安易に動けない状態。

 

「ちっ」

 

そうこうして一瞬でもスキが出来ればブレスなどで範囲攻撃を仕掛けてくる。交わすのは安易だが、やはりそれにより考えが遮られる。考えながら闘うなどという器用なことは出来ない。感じろとは言ってる気がしたもののそれは俺の推測でしかなく、本当にキリトがそう思っていたのかなんて知る由もない。

 

やはり第一に必要になるのは作戦。それらを建てずにボス部屋に行くには無理がある。だが諦めるという言葉は不思議と浮かんではこなかった。アスナがいるから、仲間と呼べる人たちが出来たからだろうか。守るべきものがあるからか。

 

それは分からないが、それらを思い浮かべるだけで勇気が湧いてくる。何処かの主人公っぽく必殺技なんてない。俺は俺なりに、泥臭く。格好悪く。

 

「この際勝てれば何でもいい。とことん真正面からぶつかってやる」

 

クラインが言うとキリトたちは返事をして一気に畳み掛ける。俺は出せるトップスピードで背後に回り込み両足の腱に深く切り傷を入れる。リアルの世界に似せたと言うならこの辺もそういう事か。この世界にそれが加わっているか分からないが確か一時的な行動不可が与えられた筈。永遠に足が使えなくなる訳では無いけれど彼奴らに攻撃チャンスを与えられる、それだけで大きい。意識を完全にキリトたちに向けてしまい、俺は尻尾に薙ぎ払われる。

 

「ぐっ!」

 

「ハチ!」

 

「ハチ君!」

 

吹き飛ばされる中、空中で体勢を立て直し壁に足をつける。残りHPを即座に確認する、残り僅か、レッドゾーンに近いイエロー。少しだけ意識が朦朧として、感覚が鈍くなる。

何とかそれに耐えつつ目標をしっかりと見据える。まだ硬直自体は解けていないらしい。

必死にブレスと尻尾で攻撃をしている。

 

ぐっと力一杯に壁を蹴る。確かアタックの巨人の兵長さんはこうしてたな。見よう見まねで人類最強と言われる人の技を真似してみる。身体を捻らせ回転する。そしてそのままグリームアイズのうなじに3回攻撃。

 

「ギャアアアア!!」

 

部屋自体が大きく揺れるほどの鳴き声。これは効いたらしい。すると衝撃波の様なモノが俺たちを襲った。またも吹き飛ばされ壁に衝突する。地面に落ちると落下ダメージも加えられた。

 

 

 

 

 

 

ーー視界がボヤける中、HPが無くなっていくのだけがハッキリと見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅くなり申し訳有りません。

お知らせです。少しだけ長い期間休載します。
この作品は終わりが近いので近いうちに更新はしますが、恋愛短編集は今のところはあれで終了です。

休載期間が終わりましたら必ずALO編を投稿しますのでしばしお待ちください。

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