やはり俺のSAOは楽しい。   作:Aru96-

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-15話-

 

 

 

 

「手練れが一人いると戦闘が安定するな……」

 

74層迷宮区。俺とアスナはパーティを組み、レベリングをしている。最近はデートとかデートとかデートでサボり気味だったので流石にやばいと思い、2人で挑んでいた。

ほぼアスナによる華麗な攻撃で俺はトドメといった形でモンスターを倒している。蝶のように舞い蜂のように刺すという表現がぴったりな戦い方であった。

 

マップを見ながら道を進んでいく。それからしばらく歩いていると目の前に大きな扉が現れる。

 

「……ボス部屋だな」

 

「覗くだけ覗いてみる?」

 

そう言いながら服の裾を掴んでくる。絶対に2人だけでは74層のボスには敵わないだろう。てかまず行かないだろう。ボスモンスターは守護する部屋からは出ないため覗くだけ覗いてみるのもありだな。

 

「作戦も建てやすくなるだろうし、念のため転移結晶は持っておこう」

 

俺とアスナは手に結晶を持つと扉に手を当てて軽く押す。唸るような音と共に扉が開かれ、前を見る。薄暗い部屋に勢いよく青い炎が灯り、青白く照らされる。

 

「ヴヴヴヴヴ……」

 

部屋の中央に両手用大剣を持ち、羊の頭をしている二足歩行の巨大悪魔型モンスターが堂々たる風格で立っていた。一瞬にして身体中から嫌な汗が吹き出る。圧倒的その姿は俺はお前達より強いと物語っているようだった。

 

「き、きゃぁぁああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

おかしい。絶対に敏捷性低いのに俺の倍の速さで道を駆け抜けて行きやがった。ついにバグったかこのゲーム。速すぎて追いつこうとするのが馬鹿馬鹿しくなり、のんびり歩いていると岩の陰でへたりこんでいるアスナを見つけた。

 

ちょっとだけ早歩きになる。これも恐らく慣れ。ほぼ毎日一緒にいたりするとこういう事になっちゃうのね。つくづく自分はアスナに惚れているんだなと自覚する。

 

「……おい」

 

「ひゃっ!?」

 

……かわいい。じゃねぇ、いや確かに可愛いんだけどね? でもそんなに驚かなくたっていいじゃない。傷ついちゃうだろーが。

 

「なんだハチくんかー、驚かせないでよー」

 

「驚かせたつもりはないんだが」

 

ゆっくりとアスナの隣に腰を下ろす。そうするとアイテム欄から何かを取り出して目の前に置き、それに掛かっている布をめくる。

 

それは何時ぞや食べたアスナが作る手料理の中で最も好きなバケットサンドが敷き詰められていた。思わず唾を飲んでしまう。クスリとかわいく微笑むと手渡ししてくれた。

 

アーンとかしてほしい訳じゃないからね?本当だから。

 

「美味しい」

 

率直に味の感想を述べるとやはりアスナは笑ってくれる。そのストレートな表情は俺には少しむず痒いモノだが、とても嬉しく思える。

 

やっと"ホンモノ"が手に入った気がする。

 

しみじみとそれをサンドの味と共に感じながら互いに無言でたまに笑いが溢れる空間が心地よいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

その後、クラインたちと久々に出会うとパーティは組まないでとりあえず一緒に行動をする様になった。

 

「この先がボス部屋か?」

 

「あぁ、この人数というかフルパのレイドじゃなきゃまともに戦うことすら出来ないかもな」

 

うーんと唸りながら何かをする考え始めているのか、はたまた考えてますよアピールをしているのか。それは分からないが空っぽの頭で何かしてるようだった。

 

特に話す事もないので黙ってクラインの行く末を見守っていると、暇だったのかアスナが俺の手を取りにぎにぎとしたり指を絡めたりしてきた。やっべぇ、幸せだわ。

 

「お、ハチたちじゃん、久しぶりだな」

 

俺たちの後ろから声がする。何でこうよく集まるんだろうね。赤い糸で繋がってるの?やだなにそれ、運命感じちゃう。

 

後ろを振り向くと見慣れた全身黒ずくめの服装に盾無しの片手用直剣さえも黒い。どこかの組織ですか、薬飲まされて小さくされちゃうの?

 

カツカツと靴の音を響かせて此方に歩み寄る姿には何処か王者の風格とでも言えばいいのだろうか、そんな雰囲気を纏っている。

 

「ボス部屋ね、中のモンスターに関してはアルゴから情報は聞いてる。一回街に戻って会議開くか?」

 

キリトがリーダーシップを発揮し、この場を纏める。流石黒の剣士様です。何処ぞの赤い髭面のサムライとは違いますねぇ。てかクソネズミ、モンスター知ってるなら教えろよ。

 

そして俺たちはキリトを先頭に一旦そのフィールドから離れようとするとまたも少し先から全員が黒い甲冑にマントを身につけている連中を見つけた。

 

あれは確か……連合軍のやつら。

 

それを見かけると場に静寂が訪れ、足音のみが響いていた。少しずつ距離を縮めるとすれ違う。先頭のリーダーらしき人と目が合うとそいつは笑っていた。不気味な雰囲気にのまれ鈍い感覚に襲われてしまい、ぼーっとしてしまう。

 

完全に交差すると緊張の糸が切れたように周りから息が漏れる。かく言う俺も肩で息をしてしまっていた。さっき目があった時から自然と呼吸をしていなかったのだろう。

 

「……あいつら多分、あの人数でボスに挑むぞ」

 

落ち着きを取り戻すと思っとことを述べる。当たり前に驚きの声が上がるが分かっていた、そんな感じの声。そんな中アスナだけは一人取り乱していた。

 

「ダメよ、助けなきゃ、あれじゃあ全員死んじゃう!」

 

一目散に元の道を駆け出して行く。それに合わせて目が追ってしまうが先を見ると連合軍は中に入っているようだ。いくら評判の悪いといっても無茶する戦いはしないだろう。

 

それを願いながらもキリトやクラインとその連中に顔を向ける。

 

「しょうがない、いっちょやるか!」

 

「そうだな、ハチ、クライン、行くぞ!」

 

 

 

 

 

 


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