リアル?モンスターハンター 異世界に飛んだ男の帰宅物語?   作:刀馬鹿

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今回は二本立てです
戦闘は一切ないのでご了承願います
ちょっと不安だけど……

突っ込みどころは多いとは思いますが、生あったかい目で見守っていただけると……

2011/01/17 に名称間違い修正w
ランポスがレウスに成っていたw
H001様、ありがとうございました


独り立ち?

~リーメ~

 

 

もう、驚くことすらも出来ないほどに、ジンヤさんのレウスを一振りの下で真っ二つにしてしまった。

あのハンマーですら思い切り叩きつけないと、弾かれてしまうあのレウスの鱗も、外殻さえも綺麗に斬っていた。

それにほとんど苦戦すらしていない。

一方的と言ってもいいほどに、圧倒してレウスを討伐してしまった。

 

 

「ば……馬鹿な……」

 

 

僕はまだよかった。

今まで何度かジンヤさんの実力を目の当たりにしてきたのだから。

でもフィーアさんはジンヤさんの力を初めて見たのだから驚愕の度合いもすごかった。

ハンターのエリート達の集まり、ギルドに所属しているフィーアさんも茫然自失といった具合に真っ二つになったレウスを見つめている。

ジンヤさんはあの長い剣を空中に投げると、その間に鞘を組み立てる。

その剣は回転しながら落ちてきて、まるで吸い込まれるようにジンヤさんが組み立てた剣の入れ物へと入っていき、収納された。

外見上は特に喜んでいる様子も見受けられないジンヤさんだったけど、その体から溢れ出てくる雰囲気は喜びに満ちていた。

しかし、直ぐに何かに惹かれるように、その視線をどこかに見やった。

ジンヤさんが向けたのは……。

 

 

尻尾?

 

 

ジンヤさんは先ほど斬った尻尾の方へと視線を投じていた。

直ぐに駆け寄ると、ジンヤさんはその尻尾を後ろ腰に装備している小さな剥ぎ取りナイフのような物で、先ほどと同じように、一瞬で四角に切断していた。

もうそれを見ても溜息しか出てこない。

しかしその次にジンヤさんが尻尾から丸い玉を取り出して、僕とフィーアさんは飛び上がるほどに驚いた。

 

 

「な!? レウスの紅玉だと……!?」

 

 

そうジンヤさんが尻尾から剥ぎ取ったのは、レウスの中でも本当にごく一握りしか出てこない、レウスの紅玉を手にしていたのだ。

 

 

火竜の紅玉

 

 

言葉にすればそれだけだが、その紅玉は破格なんて言う言葉では収まりきらないほどの値段で取引される。

レウスの素材の中だけでなく、モンスター全体の素材を見渡しても、その値段の高さは異常だ。

 

 

何せそれ一つで街を買ってもおつりが出ると言われるほどで、売値になればさらにその値段は跳ね上がる。

そもそもその素材が出ること自体も珍しいのだ。

稀少素材が出てしまったことで、僕ら二人が止まっていると、ジンヤさんが突然叫びだした。

 

 

「リーメすまん! ユクモに先に帰れ! 用事ある! これ、好きにしろ!」

 

 

そう言うと左手に紅玉を持って、目にも眼にもとまらぬ速さで、ジンヤさんはどこかに走り去っていってしまった。

驚きの連続過ぎて、僕らはただそれを呆然と見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

ジンヤさんがハンターになって、直ぐに目的のレウス討伐の依頼がやってきて、ジンヤさんは無事にそれを無事に討伐できたみたい。

リーメさんが、剥ぎ取り素材でいっぱいになったリュックを二つ提げて夕方にユクモ村に帰ってきていた。

でも、討伐して直ぐにジンヤさんはどこかに行ってしまったみたいで、姿はなかった。

 

 

ジンヤさんのことだからあまり心配ないんだろうけど……

 

 

リーメさんも、レウスとの戦闘でも傷一つ負わなかったと言っていたけど、それでも私は胸騒ぎがした。

確かにジンヤさんは強いけど……あの私を庇ってジンヤさんが傷を負ったときのことが脳裏をよぎってしまう。

夜になっても帰ってこないジンヤさんに、さすがに村のみんなも心配になったけど、明日の仕事もあるし、いつもの時間になるとみんな自宅へと帰っていった。

私は悪いと思ったけど、ジンヤさんの部屋に忍び込んで帰りを待つことにした。

この胸騒ぎが、ただの杞憂であって欲しいと祈りながら……。

 

 

結果として、その胸騒ぎは別の形で実現することになってしまったけど……。

 

 

「ジ、ジンヤさん……これって」

 

 

机で思わず寝てしまっていた私にはまさに青天の霹靂だった。

なんだかわからないけど体が震えてしまう。

ジンヤさんは何とも言えない微妙な表情をすると、苦笑いしながら私に振り向いてこう言った。

 

 

『………………………生まれちゃった』

 

 

言っていることはわからなかったけど……ジンヤさんもこの状況に戸惑っているみたいだった。

 

 

そしてこの火竜、リオレウスの赤ちゃんは……当然として次の日に村中に知れ渡り、村に驚きと恐怖をまき散らすのだった。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

まぁ確かに……隠れながら帰っては来たけどね、長く持つとは思わなかったよ。でもね~まさか帰って部屋に置いて十秒も待たずに見つかるとは……

 

 

それから大変だった。

レーファが悲鳴を上げて、何事かとリオスさんとラーファさんが飛び起きてきて俺部屋に転がるように入ってくると、位置が悪いのか、最初二人は俺がレーファを襲おうとしているのかと勘違いして、リオスさんは怒り、何でか知らないがラーファさんは笑みを浮かべたが……

 

 

「キュルル? キュ~、キュ~」

 

 

という甘えているっぽい声をレウスが上げて、ラーファさん、リオスさんともに停止した。

さすがに長く生きているからか、レーファのように悲鳴を上げたりはしなかったが、それでもラーファさんも怖がるように距離を取って、リオスさんも怖くはないにしてもあまり近寄りたくはないらしく、一歩もそこから動こうとしなかった。

 

 

騒がしくしていると、他の家の人が起きてしまうかと思って、とりあえずレウスが寝付いてから、一階のリビングに降りて、三人で俺を尋問しだした。

村が震え上がったほどのモンスターが子供とはいえ、直ぐ上にいるんだからそれは怖いだろう。

そして尋問されたわけですが、まだ会話が十全にできない俺との会議だから当然、うまくいかないわけで……。

それにリオスさんも俺が手に入れた紅玉の方に興味がいってしまったみたいでさらにまともな会話にならず……。

普段よりも二時間ほど遅い時間に、みんなで寝付いた。

 

 

そして翌日。

娯楽の少ない辺境といっても差し支えない村に、飛びきりのネタが湧いて出てきたら当然誰もが飛びつくわけで……。

リーメと俺は朝早くから村長の村に呼び出されていた。

無論レウスも連れてくるように言われた。

そしてレーファも一緒だ。

 

 

ひなの刷り込みって知ってる?

あれは生まれたばかりの雛が、目の前で動いた者を自分の親だと思う、生命のシステムだ。

まぁ普通の野生動物ならば、最初に目にするのは当然親なのだが……その親レウスは俺が狩っており、運が悪いというのか、こいつが生まれた時にいたのは俺とレーファだったわけで……。

まぁそういうわけでレーファもいないとレウスが愚図る愚図る。

 

 

「キュ~キュ~キュルルル」

 

 

最初こそレーファも怖がっていたが、まだ抱きかかえられるサイズの、かわいらしい幼竜に甘えられてはさすがに勝てなかったらしい。

しぶしぶ俺の後についてきて、こうして村長の家にある会議室のようなところで俺とリーメと一緒に座っている。

席順はソファーの片側に、俺を真ん中にして左にレーファ、右にリーメ。

向かい側には村長が真ん中に一人座っており、後ろに代表者達が立っている状態だ。

ちなみに、レウスは最初に見た俺に一番懐いているようで、俺の膝の上に甘えるように大人しく、が、興味はあるらしく、キョロキョロと周りを見渡していた。

 

 

「まずはレウス討伐おめでとう。森と丘で仕事も出来る」

 

 

まず代表者として村長が一番に口を開いた。

それに続いてその場にいる人間もレウスのことで戸惑いつつも、頭を下げてきた。

俺としては自分のけじめとして討伐に向かっただけなのだが……。

 

 

『しかし、ジンヤ君。さすがにそれは厳しいものがあるんではないか?』

 

 

言い回しが多くてわかりにくかったが、レウスを見ながらしゃべっていたので考えなくてもわかる。

 

 

まぁそうだろうなぁ

 

 

自分でもよくわかっていない。

だが、紅玉の必死さが俺にこの竜を捨てるという選択肢を浮かばせることはなかった。

そしてその紅玉は今、ポーチに忍ばせて持ってきている。

どうやら親の気配を本能で察しているのか、離すとレウスが泣きそうになるのだ。

卵を暖めるので意思が消えたのか、それ以降はただの膨大な気の塊として沈黙を保っている。

リオスさんいわく、街が買えるほど貴重らしいが……。

そうして回想していると、場がとても紛糾していた。

 

 

まぁこんなことほとんどないんだろうな

 

 

話している内容がわからないので、俺はただ聞くことしかできないが、がさすがに単語だけなら聞き取れる。

 

 

『村に被害がでる前に殺すべきだ!』

 

『殺すのはさすがに……古龍観測所に保護してもらえば?』

 

『売り払うのはどうだろう?』

 

 

全部が全部聞き取れないが、殺す、保護、売るとまぁ、あまり穏やかじゃない単語も飛び出している。

しかも眉間に皺を寄せて随分と怖い顔でレウスを指差したり、睨みつけている。

さすがに怖いのか、レウスは俺の腹の方に体を向けて怯えだした。

 

 

まだガキなんだからそら怖いわな

 

 

俺は腰に常に装備している水月を静かに抜くと、気も込めずにそのまま勢いよく、目の前にある木のテーブルに突き刺した。

 

 

ダンッ!!

 

 

それはもうものすごい音を立てて、それはテーブルに刃の根元まで突き刺さった。

その音にその場にいる全員が、レウスもビクッと震えて音がしたテーブルへと顔を向けた。

俺はそのレウスの頭を優しく撫でてあげた。

 

 

「勝手言うな。レウス、俺が育てる。ダメなら村出る」

 

 

まだ片言ですよ。

はやく覚えたいんだがなぁ。

片言だが、確かな意志を込めて、他の連中を睨みつける。

威嚇のつもりはないが、まぁレウスを怖がらせたからどっこいどっこいと勝手にしておこう。

レウスを討伐した俺に文句をいうことが出来るわけもなく、シンと静まり返ってしまった。

俺はそのまま、借りている部屋の荷物をまとめて部屋を出ようと考えながら席を立とうとすると、両側から腰をガッチリと掴まれた!

 

 

「ダメ、ジンヤさん!」

 

「出て行く必要なんてないですよ!」

 

 

どうしてこいつらはこう勘がいいんだ?

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

ジンヤさんがナイフを突き刺して言った私は慌ててジンヤさんに抱きついて動きを止めた。

リーメさんも気持ちは同じらしく、私と同じようにジンヤさんの動きを止めている。

 

 

「村長さん! 何も追い出す必要はないんじゃないんですか!?」

 

「レーファ、私としてもジンヤ君には村にいてほしいが、村人達の安全を脅かすわけには……」

 

「でも、この子はまだ生まれたばかりで……何も悪いことはしてないじゃないですか!?」

 

 

私は、ジンヤさんが抱いているレウスの赤ん坊を見やる。

何を言っているのかわからないだろうが、私が声を張り上げているのをじっとつぶらな瞳で見つめていた。

 

 

「キュウ~?」

 

 

確かにこの子は飛竜の赤ん坊。

さっきまでは確かに怖かった。

だけど何もしていないのに生まれたばかりの赤ん坊を殺すなんて……私には出来ない!

 

 

私は縋るような目つきを村長に向ける。

リーメさんも私とほとんど同じ気持ちなのか、私と同じように村長に顔を向けている。

村長は私たちの顔を交互に見比べると、やれやれといった感じに溜め息を吐いた。

 

 

「ジンヤ君、座って。レーファもリーメも座りなさい」

 

 

村長は私たちに座るように促す。

何を言われるのかわからなかったけど、ジンヤさんが座った以上私たちも座らないわけにはいかない。

心持ち前傾姿勢になりながら、村長の言葉を待つ。

村長は、静かに手を組んでこちらを見てきた。

 

 

「確かに、レーファの言うとおりただモンスターというだけで殺すことはよくない」

 

 

そのまま、私たち三人にゆっくりと言い聞かせるような優しい口調で語り出した。

 

 

「だが、その赤ん坊が凶暴なリオレウスの赤ん坊である以上、いつ凶暴化するのかわからない。だから私は村の長として、残酷なようだがその子をこのまま村の中では生活させるわけにはいかない」

 

「で、でも!!!」

 

「待って、レーファさん! あの、村長? よろしいでしょうか?」

 

「何だい、リーメ?」

 

「今……村の中では、って言いましたよね? それって……」

 

「え?」

 

 

リーメさんが確認したその言葉に、私は思わずひょんな声を上げてしまう。

村長はとても柔和な笑みを浮かべていた。

 

 

「そういうことだリーメ。村の中で過ごすのはさすがに見過ごせないが、村の近くに家を建ててジンヤ君がその子と暮らす分には、私は反対するどころか賛成意見を上げるよ」

 

 

その言葉に、私たち二人は諸手を挙げて喜び、ジンヤさんに思わず抱きついてしまった。

 

 

「キュウゥ~」

 

 

その雰囲気がわかっているのか、レウスの赤ん坊が嬉しそうに声を上げていた。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

う~ん、この絵を見るとどうやらとりあえず村の塀の外に家を造ってそこに住めと言っているのか?

 

 

レーファとリーメがとても嬉しそうにはしゃいでいたのだが、いつものように俺には何が起こっているのかわからない。

そこでリーメがとてもうまい絵を黒板に描いてくれて説明してくれた。

村長としても苦肉の策だったのだろう。

確かに人里がある場所にモンスターがやってくることはほとんどないだろうが、それでも絶対にこないと言うことはないのだ。

前回のランポス襲来が例外だとしても、何かしらモンスターが来ることはある。

だが、俺がレウスを飼うと言って聞かない以上、何らかの及第点の策を出さなければ村人達にしこりが残り、不安や不満も出てくるだろう。

ならば村に近いとはいえとりあえず村から出て行ってもらうのが簡単だ。

あのランポス襲撃以来、モンスターがここまでやってきたことはなかったのでほとんど問題ないだろう。

仮に来ても一瞬で返り討ちだけど。

 

 

まぁ俺としてもそっちの方がいいかな?

 

 

リオスさんが悪いわけでは決してないが、俺にはリオスさんの家の……否! この世界の生活にそろそろいらだちを覚えていたのでちょうどいい。

何にいらだってるかって?

それは家を建てたら語ろうかな。

 

 

「村長」

 

 

俺はいったんレウスをレーファに預ける。

初めて抱くことになったのでとても怖がっていたが、レウスが舌でレーファの手を舐めたのでだいぶ恐怖心が薄れたようだ。

俺はその様子を横目で見ながら、起立して頭を深く下げた。

 

 

「ありがとう……」

 

「ふふふ、いやいや。ジンヤ君こそいろいろとありがとう」

 

 

村長は俺に向かって優しくそう声を掛けてくれた。

俺はそれにさらに心の中で礼を言った。

 

 

こうして、形だけとはいえ、俺はいったんユクモ村から出ることになったのだった。

 

 

 

 

その後、俺はリオスさんの家に帰り、レーファが村長の家での出来事をいろいろと話してくれた。

最初こそ呆れていたリオスさんだったが、すぐに渋い顔になって、俺にこう言ってくれた。

 

 

「いつでも飯、食べにきな」

 

 

ぶっきらぼうだったが、その声はとても優しさにあふれていた。

俺はそんなリオスさんの優しさに感謝しつつ家を出た。

もちろんレウスも一緒である。

まだ歩く速度が遅いし、というよりもほとんど歩けないので胸に優しく抱いたまま、俺は村のすぐそばの山の麓まで歩いていた。

 

 

そういえばこいつの名前が決まってないな……

 

「キュゥ?」

 

 

俺が何もしゃべらずにじっと見つめていると、レウスの赤ん坊は俺のことを不思議そうに眺めていた。

それに笑顔を向けつつ、俺は思案を巡らせた。

 

 

ふうむ……名前ねぇ……刀の名前つけると不便だな……

 

 

一瞬村正とか、正宗にしてやろうと思ったが合いそうにないのですぐにやめた。

正宗と思い浮かんだ瞬間に……

 

正義!

 

という言葉が浮かんだのは何故?

 

それでどうするか悩むと、今まで生涯を共にしてきた相棒達が思い浮かんだ。

 

 

愛刀からもじるか……一番の愛刀は夜月……月夜からとってムーナってのはどうだろう?

 

 

夜月→月夜→ムーンナイト→頭文字をとってムーナ

 

 

安直とも言えなくもないが、他にいいのが思いつかなかったので俺はこのレウスのことを、ムーナと名付けることにした。

 

 

「ムーナ。お前の名前はムーナだ」

 

「キュイ?」

 

「ムーナ。ムーナだよ」

 

 

無論わかっていないだろうが、俺はそれを繰り返すことによって俺はこのレウスに名前を覚えさせようとした。

これが後に進化するなんて……その時の俺はもちろん知るよしもない。

 

 

 

 

さて、麓にやってきた時間は朝十時、とりあえず森の一角を狩竜で一瞬にしてぽっかりと穴を空けるように木々をぶった切る。

そして気を使って木の根を総勢二十ほど引っこ抜く。

 

 

「キュウ~」

 

 

豪快っぷりがおもしろいのか、レウスは終始楽しそうに見つめて鳴いていた。

寒くないように木の葉を敷き詰めたとりあえず作業中に置いておく場所を造ってそこに置いている。

俺はムーナに当たらないように狩竜を気をつけて振るう。

村長が俺の新居を造るのを手伝うと言ってくれたのだが、一人でやった方が速いし、ムーナにビクビクされながらやるのも厄介なので、俺は丁重にお断りした。

が、必要な材料は結構いただいている。

 

 

三十分と立たずに更地になったところに、俺は狩竜をいったんしまうと、今度は夜月を抜き、切った木を綺麗にパーツ分けしていく。

昔ながらの屋根が藁で出来ている家を建てようと思ったのだ。

造り方は大体知っているので俺は夜月でパーツ分けすると、それらに短刀の水月で枠組み用の穴を空けてそれらを連結していく。

骨組みだけ完成すると、ちょうど昼になった。

村から風に乗ってうまそうな臭いを漂わせてくる。

 

 

「ジンヤさ~ん!」

 

 

そうして腹を空かせながら昼をどうしようか悩んでいると、村の方角からレーファの声が響いてきた。

その声に気づいたムーナが嬉しそうに鳴いている。

そちらを見ると、レーファだけでなくリーメも一緒だった。

護衛のためなのか、きちんとハンターの格好をしてこちらに向かってきている。

 

 

「こんにちはジンヤさん。お昼にしませんか?」

 

「ちゃんとレウスの分も持ってきました」

 

 

バスケットをそういって二人が掲げてきた。

俺はそれをありがたく受け取ろうとして、先に二人にレウスの名前をムーナにしたことを伝えた。

 

 

「レウス、ムーナ。ムーナ」

 

 

ムーナと連呼すると、レーファはすぐにわかったらしい。

このやりとりが森と丘での一件を思い出させた。

レーファもそれを思い出しているのか、俺と同様懐かしむような目をしていた。

 

 

「二人ともすまん。ムーナの餌取ってくる。ランポス。ちょっと頼む」

 

 

いつも勝手なお願いをしてばかりだが、俺はレーファに紅玉を渡すと、花月だけを装備して全力で走り出した。

 

 

 

 

~レーファ~

 

 

「二人ともすまん。ムーナの餌取ってくる。ランポス。ちょっと頼む」

 

 

ジンヤさんはそういって紅玉を私に渡すと、全力で森と丘方面へと駆けていった。

私たち二人は呆気にとられてしまって何も反応することが出来なかった。

 

 

「キュ? キューキュ!」

 

 

そしてジンヤさんがいなくなると、レウス……ムーナちゃんが途端に泣き出した。

やっぱりジンヤさんが一番好きみたいだった。

 

 

私とリーメさんは慌ててムーナちゃんに近寄って、二人であやした。

その間それが忙しくってご飯どころの話ではなかった。

 

 

それから一時間ほどムーナちゃんをあやしていると、ようやく泣きやんでくれた。

そうして一段落していると、再びムーナちゃんが鳴きだした。

それに慌てた私とリーメさんだったけど、すぐにそれが泣いているのではなく、鳴いていることに気がついた。

 

 

何?

 

 

『ただいま~』

 

 

何事か呟きながら、ジンヤさんが首のないランポスを肩に担いで走ってきていた。

たったの一時間で往復四時間の森と丘まで行ってランポスを狩って帰ってきたらしい。

それが餌だとわかっているのか、ムーナちゃんが途端に騒がしく鳴きだしている。

ジンヤさんはそれに苦笑しながら、ナイフで肉を小さくちぎって、ムーナちゃんの口元に持って行く。

ムーナちゃんはそれをおっかなびっくりしながらも元気に食べていた。

その様子を眺めつつ、私たちは少し遅めの昼食を取ることにした。

 

 

 

 

~刃夜~

 

 

久しぶりに全力で走って少し疲れた……

 

 

外見には出さなかったが、実は結構疲れていた。

何せ歩いて二時間のところを超ダッシュして往復一時間ほどで帰ってきたのだから。

しかも帰りはランポスまで担いで。

疲れもするが、二人だけに任せるのは不安だったのと、村の連中がまだどう動くかわからなかったからだ。

 

 

村長がああ言った手前露骨に行動することはないかもしれないが……とりあえず家が出来るまではあまり安心できない

 

 

家を造ればちょっとした結界を張ることも出来る。

それが出来れば少なくとそうそう破られることはないはずだ。

俺はムーナにのんびり餌を与えながら、俺は猛スピードで昼食を飲み込むように平らげる。

二人がいろいろとあまりの速さに驚いていたが、それにかまってあげる余裕もなかった。

 

 

「キュクゥ」

 

 

ランポス足まるまる一本ほど食すと、ムーナは眠くなったのか、そのまま丸くなって眠ってしまった。

俺はそれを見届けると、早速家の工事を再開する。

 

 

木の板を大量生産し、それらをつなげて壁を造る。

それと同様に床も造る。

家の中心部には囲炉裏を設置したいので中心部当たりを少し掘り下げた床にして、灰をそこに入れる。

いくつか部屋も造りたかったが、それに関してはいったん後にして外から見たら家に見えるように外側だけの完成を急ぐ。

 

 

レーファとリーメが何か手伝いたいと言ってくれたので、俺は屋根になる藁を束にまとめてもらう仕事をしてもらったおかげで、たった一日で外側だけは完璧な家が出来た。

 

 

時間が出来たら畳と障子も造りたい物だ……

 

 

がそれよりも優先しなければいけないのは他にもいろいろある。

次に俺は余っていた木材を使用して、俺は外枠を簡素に作り上げていく。

これも後に造る予定だが、まぁとりあえずである。

 

 

内装があれではあるが、とりあえず普通に暮らせる一軒家の完成だった。

あまり見慣れたことのない家のためか、二人が物珍しそうに家を眺めている。

俺も二人と同じように並び立って、俺の新しい住居を見つめていた。

これからまだやらなきゃならないことは山積みだったが、それでも嬉しい物だった。

 

 

「キュ。キュゥ~?」

 

 

音がやんだのに気づいてムーナが目を開けてこちらを見つめてくる。

俺はそのムーナをだっこしてやると、ムーナも一緒になって家を見つめる。

 

 

「ここが、俺たちの家だぞ、ムーナ」

 

「キュウゥゥ」

 

 

まるで俺の言葉が通じているのか、ムーナが夕焼けに染まって赤くなる俺たちの家を見つめてそう、一声鳴いた。

 

 

ここに真に、俺がこの世界で暮らす家が出来た。

この先どうなるかわからないけど……とりあえずここで骨を埋める覚悟を決めた瞬間だった……。

 

 

 




突っ込みどころは満載!

後編に続く

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